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2009年7月22日 (水)

宮川光治(みやかわ・こうじ)

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 最高裁判事 在任期間
  2008年9月3日 ~ 2012年2月27日

 

エピソード

 
 名古屋大学の大学院にいた時代に、司法試験に合格。

 公害裁判のプロフェッショナルは、修習生(法律家の卵)のころ、すでに四日市ぜんそく訴訟の準備を手伝うなどしていたという。 大気汚染で悩まされる住民(患者)の家々をまわり、ときには泊まり込むなどの体験を経て、その思いを、裁判所へ提出した陳述書に込めている。

 その後、東京弁護士会に所属。 全国公害弁護団連絡会議の事務局に入り、全国各地の公害問題にかかわった。つねに住民側の目線で、法理論を組み立てる手伝いをした。

 一方で、司法制度改革にも取り組み、法科大学院の仕組みづくりに携わったり、国内の弁護士の数を大幅に増やすよう弁護士会に提言したりした。

 また、住宅金融専門会社(住専)の不正融資事件で、融資金の借り手側だった不動産会社「コリンズ」元社長の弁護を引き受けた。

 元社長は捜査段階で犯行を自白していたが、「担保不足で借り入れたと被告人が認識していたとするには合理的な疑いが残り、貸し手側と共謀したとは認め難い」と裁判所は判断し、特別背任罪の点で無罪を勝ち取った。

 「立件に政治的意図を感じた。国策捜査の始まりだ」と、当時を振り返る。

 

プライベートの横顔

 

 これまでに2千本近くの映画を鑑賞し、今でも年間に20~40本は映画館で観る。「暗闇の中でわくわくする特別な空間や時間が好き」と語る。

 最近では、吉永小百合主演の映画「母べえ」を観て、涙したという。

 趣味として映画評をノートに書きため、採点をしている。ちなみに「母べえ」は80点。「インディ・ジョーンズ」最新作(クリスタル・スカルの王国)は55点。

 少年時代から詩を読んだり書いたりすることを好み、今もカバンには、リルケや堀口大学らの詩集が入っているとのこと。

 

最高裁判事 就任のあいさつ

 
 私が数々の裁判で学んだのは、「検察官は秩序を重んじるが、弁護士は人間の側から法をみる」という姿勢。法を人間の側から見ることが弁護士の役割と教わり、考えてきた。

 判事になっても、そのアプローチを失うことなく、弁護士らしい発想、考え方を裁判の中に生かしていきたい。気負うことなく、自然体で同僚とさわやかに議論したい。

 


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裁判員制度について

 
 裁判員制度への反対論・延期論の理由は、よく存じ上げているつもりだが、予定どおり実施すべきだと考えている。 国民性からいって、日本の方々が誠実に真面目に取り組むことは、すでに検察審査会で実証されている。

 刑事裁判が、今までの“調書中心”から“公判中心”に劇的に変化しようとしている。自白調書が従来ほど重視されなくなるだけに、冤罪も減るはずだ。

 予定通り実施し、成功させる必要がある。批判や延期すべきだとの意見もあるが、スタートすれば短期間でなじみ、国民の間に定着すると確信している。

 


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宮川判事の おもな個別意見

 

< 最高裁・個別意見制度の凡例 >

補足意見 … 多数派を占めた法廷意見と、結論は同じで、さらに付け加えたいことがある場合。
意見    … 多数派を占めた法廷意見と、結論は同じだが、その結論に至るまでの理由づけが異なる場合。

反対意見 … 多数派を占めた法廷意見とは結論が違う少数意見。

 

2009年2月12日

 敗戦後の混乱で中国に取り残された、日本人孤児・婦人の4人が、「国の帰国措置が遅すぎた。帰国後の自立支援も不十分」として、国に損害賠償を求めた裁判。 → ×
 

 ただし、宮川光治裁判官は、この結論に同意できなかったので、以下のような反対意見を述べている。(【注】 意見文は、当サイト管理人が簡略化しています ↓)
 
  「政府に自立支援の法的義務があったと解する余地があり、日本語習得などの支援が早期・適切に行われたか、国に違法性があるかについて議論の余地がある。上告を受理して判断を示すべきである」(毎日新聞より)

 

2009年1月15日

 沖縄国際大学のキャンパスに、米軍ヘリが墜落した事故をめぐって、国民が情報公開を求めた裁判。
 今の裁判制度では、国や地方自治体が開示を拒んでいる公文書を、裁判所が直接こっそり見て調べることはできない。憲法82条が保障する「公開裁判」のタテマエがあるためだ。
 そこで、裁判所が独自に非開示の文書を直接調べて、ホントに非開示でいいのかどうかを密室で判断できる「インカメラ審理」が認められるかのかどうかが争われた。

 原審(福岡高裁)は、「国や地方自治体から協力を得られない限り、裁判所は非開示文書をチェックできないとすれば、情報公開裁判の最終判断権が裁判所にある制度趣旨にもとる」として、国から裁判所へ非公開文書の開示するよう命じていた。

 しかし、最高裁は「訴訟の当事者が立ち会わないインカメラ審理(密室)での証拠調べは、民事訴訟手続きの原則に反する」と理由づけて、開示命令を取り消した。

 

 あくまで、その結論に同調したうえで、宮川光治裁判官は、以下のような補足意見を述べている。(【注】 意見文は、当サイト管理人が簡略化しています ↓)

  「原審の判断は、法解釈の枠を超えており、破棄するしかない。 しかし、本件は、情報公開訴訟にインカメラ審理を導入することを考えさせる事例 とみることができる。行政機関である“情報公開・個人情報保護審査会”には、インカメラ手続きがあるのに、最終判断権のある裁判所に認められないのは、情報公開制度の趣旨にそぐわない」

 

そのほかの判断
(宮川判事が裁判長として関与・小法廷で全員一致の意見)


 
2009年7月16日
 New!
 自宅の壁に、不動産会社の社員が「立入禁止」などと記した看板を設置しようとしたため、女性がその社員と口論になり、社員の胸を両手で突き飛ばし、転倒させ、全治1週間のケガを負わせたことが、傷害罪に当たるとして起訴された裁判。
 宮川裁判長らは、いわゆる「急迫不正の侵害」(刑法36条)の意味を広げる解釈をし、女性による攻撃は、その自宅の建物所有権を実力で侵害する行為を繰り返す不動産会社社員に対する「反撃」というべきだとして、正当防衛を認めて無罪判決

2009年7月2日 New!
 被疑者を逮捕する条件である「証拠隠滅」や「逃亡のおそれ」がないのに、スピード違反で現行犯逮捕・勾留したのは、警察の違法捜査として、県に慰謝料を求めた訴え ⇒ ×

2009年7月2日
 東京・日の出町の新たな一般廃棄物最終処分場につき、都が事業認定したのは、自然環境に破壊的影響を与える違法な行政処分であり、用地の収用裁決は取り消されるべきだとする訴え → × (∵ 環境に与える影響は深刻なものとはいえない)

2009年6月9日
 船橋市(千葉)で、盗まれそうになった愛車を追いかけて、走行中の車体にしがみついた男性を、振り落として殺害した車両泥棒につき、無期懲役を言いわたした判決を支持。

2009年5月28日
 十分な検討を行わず、不要な手術によって、患者の子宮や卵巣を摘出したとして、厚生労働省が、所沢市(埼玉)の富士見産婦人科病院(現在は閉鎖)の元院長の医師免許を剥奪したのは、不当だとする訴え → ×

2009年3月12日
 2005年に、長野県内で開催された「スペシャルオリンピックス冬季世界大会」をめぐって、実態は「人的応援目的」だったにもかかわらず、県の職員が「研修目的」で実行委員会などに派遣されたのは違法として、住民が知事側を相手取り、派遣職員の給与(計4億円あまり)を県の予算へ返還させるよう求めた訴訟 → ×

2009年1月22日
 住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)からの離脱(個人データ削除)を求めた住民5人が、住基ネットはプライバシー権を侵害しており、違憲無効だと主張した訴え → ×

2008年11月27日
 2001年、名古屋刑務所で、刑務官から10~20秒間にわたって臀部に放水を受け、直腸裂傷による腹膜炎で死亡した男性受刑者の遺族が、国家賠償を求めた訴訟 →  (国から遺族へ約3930万円の支払いを命じた判決を確定させる)

2008年10月7日
 家庭用ごみ集積場から勝手に古紙(新聞紙など約35キロ)を持ち去ったとして、山口県下関市の廃棄物減量・適正処理条例違反に問われた、古紙回収業者に対し、罰金10万円を言いわたした判決を確定させる。
 弁護側は「他の地方自治体で制限されない行為が、下関市内で犯罪とされており、憲法が定める法の下の平等に反する」として、最高裁まで争ったが、「不合理な差別ではない」と結論づけ、主張を退けた。


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