最高裁判所判事 須藤正彦 (すどう・まさひこ)
小学生の時、友情や正義を描いたイタリアの物語「クオレ」(『母をたずねて三千里』などで有名)を夢中で読み、「自分も正義の世界で人生を過ごしたい」と思うようになったという。
弁護士になってからは、幅広く仕事をしたいと、専門分野をつくることは意識しなかったという。
しかし、経済や金融が社会の基盤だと痛感することもあり、それらの分野を主に手がけた。
「ゴルフ会員権」という言葉すらがなじみのなかった70年代、その譲渡や差し押さえの法的な意味について理論を構築。 ゴルフ会員権が「財産」の一つとして脚光を浴びたバブル期以降、その理論は学界の主流と占めた。
東京弁護士会の副会長、そごうグループの民事再生申立代理人などを歴任。 日本長期信用銀行と足利銀行の国有化では、取引先の再生可能性などを判断する内部調査委員、業務監査委員を任された。
足利事件の冤罪被害者 菅家利和さん(幼女殺害の容疑で無期懲役が確定し、刑務所で服役していたが、DNA鑑定やり直しを経て無罪)とは実家が近いという。
冤罪問題について尋ねられて、「足利事件は私の郷里で起きた。予断や偏見を排除して真実発見に最大限努めるしかない」と答えたことも。
地方や欧州での街歩きが趣味。 ひなびた温泉宿でゆったり過ごし、バスで少し遠出して散歩するのが楽しみだという。 妻と2人暮らし。
◆ 「世間の目は冷たいし、待遇が厳しい中、行員はみんな歯を食いしばって頑張っていた。地域の活性化には、銀行が要の役割を果たさないといけない。経済が発展してこそ、教育や福祉などが充実できると強く感じた」 (地元の足利銀行の再生などに携わったことを振り返って)
◆ 「裁判官としても、弁護士時代の在野精神と、市民に密着してきた経験を持ち込みたい。 弱者に温かい手を差し伸べるのが司法の役割。 法を血の通ったものにしたい。 司法はいつも正義を感じさせる安定した存在であり続けなければならないと思う」 (最高裁判事 就任会見にて)
◆ 「知識を磨いて、人生というリングで闘う力を付けてください」 (最高裁判事に就任後、母校の足利高校の講演会にて、後輩に向けてメッセージ)
● 「多くの市民や関係者が、献身的に力を尽くしていることに感銘を覚えます」 (最高裁判事 就任会見にて)