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2004年11月24日 (水)

ロースクール院生「詐欺だ!」

 今週号(12/5)の「Yomiuri Weekly」の記事(pp.26-27)によります。

 法科大学院卒業生の司法試験合格率を「7-8割」にして、「法曹人口の大幅な増加」を図るはずが、結局は「2-3割」程度の合格率に抑えられかねないことについて、学生たちから「ペテンだ」「話が違う」という声が出て、複数の私立大学の各院生が、合格者増加を求める署名運動を始めたのだそうです。

 しかし、語学力や交渉能力など、多様な能力を持って各方面から集結した優秀な皆さんのことですから、当然そのようなことは先刻承知・覚悟の上で法科大学院に通っておられるものとばかり思っていました。現行司法試験を7回受けて、結局弁護士を諦めた私に言わせてもらえば、「なんで、そんな単純な詐欺にだまされる連中が、法律のプロを目指すのか。この世界をナメとんのか」と思ってしまうんですね。ハッキリ申し上げて、甘ちゃんです。

 現在2%台の合格率で推移しているものが、70とか80%になると信じ込める思考回路が信じられませんし、「最終合格者を3000人に」というのも、2010年までの目標です。目標なんですから、遵守する法的義務なんて無いでしょう。しかも、皆さんが1回目の「ネオ司法試験」を受ける2006-7年には、3000人に遠く及ばない合格枠を、現行の「レトロ司法試験」と二分しなければならないわけです。どんなに多く見積もっても、ネオ司法試験の合格人数は千人台の前半に落ち着くことが容易に予想できるはずです。そして先日、ネオ司法試験の第1回最終合格人数は、結局「800人前後」と発表されてしまったわけですが。
 まぁ、文部科学省が、露骨に予備校と連携しようとしたり、明らかに講師人数が足りなかったりした設置志望大学院を除いて、全国で68校(約6000人分)もの法科大学院が昨年の今ごろ認可された段階で、ちょこっと頭の中で暗算して、「こりゃ70%は無理だ」と即座に気づかなければなりません。さらに暗算して、初回のネオ司法試験に落ちたロー卒生が次年度に受け直すことを思えば、初回の合格率水準がピークだということも読み取るべきです。署名運動も結構ですが、やるんだったら、この時点でやらなければなりませんでした。

 でもねぇ、法務省や司法試験委員会と文科省のすれ違い。よくある縦割り行政ですよ。

 合格枠800名の試験の合格率を80%にするには、受験者は1000人に規制しなければなりません。現在全国に約6000人いらっしゃる法科大学院生のうち、再来年に受験する既習者は1000名まで。それ以外は退学するか未習者枠に編入するかしてもらわなければなりません。もちろん、激しい競争が2007年度へ先延ばしになるだけですが。

 司法改革審議会は、ありもしない「法曹になるべき人材の多様性」「新規参入の開放性」をアピールする象徴として、「合格率7割」という客寄せパンダで皆さん方を釣っただけです。ちょっとキレイごとを言ってみたかっただけで、悪気はなかったんです。許してやってくださいよ。でも、まさか本気で信用した人たちが、こんなに釣れるとはさすがに思わなかったでしょう。おじいちゃん達もビックリしたんじゃないですか。
 しかも、仮に「合格率7割」の枠が実現したとして、その中に、皆さんが入れる保障なんて無いんですよ。皆さん方は、かつて受験競争の勝ち組だったんでしょうけど、司法試験受験生というのは、皆さん方が昔誇っていた偏差値レベルなんて、当然の前提です。その中で争うんですから、大学受験とは母集団が異質なんですよ。そのへんの覚悟がどれだけリアルにできているのか。

 署名運動でお上が動くと信じているのなら、しかも、一度決まった政策が署名運動で覆ると真剣に思いこめるのなら、なにもわざわざ法律屋になる必要なんてないでしょうにね。とにかく、生まれ変わる司法試験に向けて、精一杯頑張ってください。理想を追いながらも、現実は直視し続けてください。硬直しきっている司法に新鮮な風を吹き込んで、思いっきり引っかき回してください。応援しています。

 


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2004年11月12日 (金)

自民党が国民審査制度を廃止しようとしている

 皆さん、おひさしぶりです。ひさしぶりすぎて、私ひとりしか読者がいなくなっているのかもしれないという思いが、チラッと頭をよぎりつつも、とにかくおひさしぶりです。
 先月1日に念願の上京を果たしたわけですが、インターネットが使えない環境の中で、いろんな情報収集に数十倍ぐらいの手間がかかってしまったため、生活を軌道に乗せるのに四苦八苦しておりました。そして昨日、ようやく我が部屋にADSLが開通いたしました。わたしの新生活もちょっぴり文化的なものになったところで、このブログも更新再開というわけです。

 ご挨拶は以上で失礼させていただいて、去る6月に発表された、憲法改正の「論点整理(案)」自民党憲法調査会「憲法改正プロジェクトチーム」作成)なるものについてです。私は別に護憲論者でも何でもありませんが、今まで数ヶ月間、ロクに目を通してこなかったことを後悔してしまうほど、ツッコミどころ満載の内容に仕上がっております。まぁ、たしかに自民党も「この案をたたき台にしてくれ」ぐらいの意識で出してきているんでしょうが。

 今回は『六 司法』の章について特集してみようと思います。なお、引用文中の誤字脱字は、私が勝手に修正しました。

1 共通認識

 次の点については、異論がなかった。

○ 最高裁判所による違憲立法審査権の行使の現状には、極めて不満がある。

○ 民主的統制を確保しつつも政治部門が行う政策決定・執行に対する第三者的な立場から憲法判断をする仕組み(憲法裁判所制度、あるいは最高裁判所の改組など)について検討すべきである。

○ 裁判官の身分保障のあり方について見直すべきである。

○ 民事・刑事を問わず裁判の迅速化を図るべきである。

 おおむねその通りなんでしょうけど、司法という「第三者的な立場」による憲法判断をしづらくしているのは、政治部門の憲法解釈や運用を一手に引き受けている内閣法制局の現状にも原因がありそうです。政府が国会へ提出しようとする法案は、すべてこの内閣法制局によって点検されます。その点検があまりに微に入り細に入りという感じなので、最高裁が事後チェックする余地がないほどなんですね。立法・行政・司法の三権を実質的に掌握している、世論から浮き上がった、その選良的官僚組織を横に置いて、司法へ一生懸命民主的コントロールを向けようとしても、私には目くらましだとしか思えません。

2 改正意見

 現憲法第6章(司法)に関する改正意見は、次のとおりである。

○ 最高裁判所裁判官の国民審査の制度(現憲法79条)は廃止し、廃止後の適格性審査の制度についてはさらに検討を行うべきである。

○ 最高裁判所裁判官の任期は10年とし、再任を行わないものとする。

○ 下級裁判所の裁判官の任期は、3年を下回ってはならず、10年を超えてはならないとすべきである(再任は妨げないものとする)。

○ 一定の場合には裁判官の報酬(現憲法79条・80条)を減額することができる旨の明文規定を置くべきである。

 憲法調査会第7回会合議事録(司法について)

 いやいやいや、ちょっと待っていただきたいですね。自民党のオッサンオバサンの皆様。国民審査はたしかに形骸化・儀式化しています。衆議院総選挙の投票がようやく終わって帰ろうとしていたら、もう1枚紙を渡されて「最高裁判所の裁判官を審査しろ」なんて言われても、有権者はみんな戸惑うしかありません。司法試験受験生ですら、最高裁長官の名前だけでも挙げられたら御の字だと思います。
 読売新聞が毎年憲法記念日に作成している「読売憲法試案」でも、国民審査制度はとっくに削除されていますし、実効性には乏しいとされています。

 しかし、最初の国民審査が始まってから55年、これまで19回行われてきて、その形骸化・儀式化の現状を改善し、本気で克服しよう、息を吹き返してやろうとした動きが少しでもあったでしょうか。最高裁判決の審査資料といったら、投票日の3,4日前に各家庭のポストに届く、ペラの藁半紙1枚。あとは同じ頃、朝日・毎日・読売・東京の各新聞に各判事へのアンケート記事が申し訳程度に載せられているぐらい。判例解説も文字の羅列のみで、一般の読み手に本気で分からせようという気持ちが微塵も感じられません。
 国民審査制度が形骸化している理由は、有権者に判断能力が無いからではありません。有権者によってちゃんと判決内容を吟味できるようなシステムとして整備されてしまえば困る人たちがいるからでしょう。

 じゃあ、廃止してどうするのかというと、最高裁判事を国民が審査する代わりに、参議院に審査させようというんですから驚きです。形骸化した制度のフォローを、形骸化した組織に託そうというのは、冗談としてもイマイチでしょう。それにますます司法が政治に遠慮ないし追従して、やたらと憲法判断を回避してしまう発想を加速させるものではないですか。さらに、ただでさえ国民から遠い存在である裁判所が、世論から孤立していく方向性は不可逆的なものになることでしょう。
 なるほど、これが半世紀に1度の「司法制度改革」の顛末というわけですね。

 おそらく、このまま行けば、最高裁判事の国民審査は、次回の衆院選(たぶん2007年の夏ごろに衆参同日選として行われそうな雰囲気ですが)にともなう第20回目で最後になりそうです。私はそのときまでに、審査対象の裁判官について、私なりの審査資料を作成し、ここに分かりやすく整理・図解し、編集して公開していこうと考えています。ゆくゆくは、選挙の投票に出かける気概のある有権者の皆さんなら、誰でも一読してスッと理解できるほどの内容にまで洗練させて、できれば、出版にまで漕ぎ着けていきたいという思いもございます。そうして、国民審査をもっと緊張感あるイベントにしてみたいんです。
 なお、才口判事と津野判事に関しては、ネットや紙の上で揃う資料はほぼ集め終わりました。この点で、東京は素晴らしいですね。九州くんだりに比べれば情報が格段に集めやすいです。これからは、周辺取材から始めて、ご本人インタビューの実現に向けて準備を整えていきます。

 ちなみに、現在の最高裁判事・北川弘治氏が、12月26日に定年退官されます。また、同じく梶谷 玄氏も、来年1月14日に退官なさいます。後任の判事はだいたい1ヶ月ほど前に内定が出るようですので、両判事の後任についての報道にも、そろそろ注目していきたいところです。

 


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