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2004年11月12日 (金)

自民党が国民審査制度を廃止しようとしている

 皆さん、おひさしぶりです。ひさしぶりすぎて、私ひとりしか読者がいなくなっているのかもしれないという思いが、チラッと頭をよぎりつつも、とにかくおひさしぶりです。
 先月1日に念願の上京を果たしたわけですが、インターネットが使えない環境の中で、いろんな情報収集に数十倍ぐらいの手間がかかってしまったため、生活を軌道に乗せるのに四苦八苦しておりました。そして昨日、ようやく我が部屋にADSLが開通いたしました。わたしの新生活もちょっぴり文化的なものになったところで、このブログも更新再開というわけです。

 ご挨拶は以上で失礼させていただいて、去る6月に発表された、憲法改正の「論点整理(案)」自民党憲法調査会「憲法改正プロジェクトチーム」作成)なるものについてです。私は別に護憲論者でも何でもありませんが、今まで数ヶ月間、ロクに目を通してこなかったことを後悔してしまうほど、ツッコミどころ満載の内容に仕上がっております。まぁ、たしかに自民党も「この案をたたき台にしてくれ」ぐらいの意識で出してきているんでしょうが。

 今回は『六 司法』の章について特集してみようと思います。なお、引用文中の誤字脱字は、私が勝手に修正しました。

1 共通認識

 次の点については、異論がなかった。

○ 最高裁判所による違憲立法審査権の行使の現状には、極めて不満がある。

○ 民主的統制を確保しつつも政治部門が行う政策決定・執行に対する第三者的な立場から憲法判断をする仕組み(憲法裁判所制度、あるいは最高裁判所の改組など)について検討すべきである。

○ 裁判官の身分保障のあり方について見直すべきである。

○ 民事・刑事を問わず裁判の迅速化を図るべきである。

 おおむねその通りなんでしょうけど、司法という「第三者的な立場」による憲法判断をしづらくしているのは、政治部門の憲法解釈や運用を一手に引き受けている内閣法制局の現状にも原因がありそうです。政府が国会へ提出しようとする法案は、すべてこの内閣法制局によって点検されます。その点検があまりに微に入り細に入りという感じなので、最高裁が事後チェックする余地がないほどなんですね。立法・行政・司法の三権を実質的に掌握している、世論から浮き上がった、その選良的官僚組織を横に置いて、司法へ一生懸命民主的コントロールを向けようとしても、私には目くらましだとしか思えません。

2 改正意見

 現憲法第6章(司法)に関する改正意見は、次のとおりである。

○ 最高裁判所裁判官の国民審査の制度(現憲法79条)は廃止し、廃止後の適格性審査の制度についてはさらに検討を行うべきである。

○ 最高裁判所裁判官の任期は10年とし、再任を行わないものとする。

○ 下級裁判所の裁判官の任期は、3年を下回ってはならず、10年を超えてはならないとすべきである(再任は妨げないものとする)。

○ 一定の場合には裁判官の報酬(現憲法79条・80条)を減額することができる旨の明文規定を置くべきである。

 憲法調査会第7回会合議事録(司法について)

 いやいやいや、ちょっと待っていただきたいですね。自民党のオッサンオバサンの皆様。国民審査はたしかに形骸化・儀式化しています。衆議院総選挙の投票がようやく終わって帰ろうとしていたら、もう1枚紙を渡されて「最高裁判所の裁判官を審査しろ」なんて言われても、有権者はみんな戸惑うしかありません。司法試験受験生ですら、最高裁長官の名前だけでも挙げられたら御の字だと思います。
 読売新聞が毎年憲法記念日に作成している「読売憲法試案」でも、国民審査制度はとっくに削除されていますし、実効性には乏しいとされています。

 しかし、最初の国民審査が始まってから55年、これまで19回行われてきて、その形骸化・儀式化の現状を改善し、本気で克服しよう、息を吹き返してやろうとした動きが少しでもあったでしょうか。最高裁判決の審査資料といったら、投票日の3,4日前に各家庭のポストに届く、ペラの藁半紙1枚。あとは同じ頃、朝日・毎日・読売・東京の各新聞に各判事へのアンケート記事が申し訳程度に載せられているぐらい。判例解説も文字の羅列のみで、一般の読み手に本気で分からせようという気持ちが微塵も感じられません。
 国民審査制度が形骸化している理由は、有権者に判断能力が無いからではありません。有権者によってちゃんと判決内容を吟味できるようなシステムとして整備されてしまえば困る人たちがいるからでしょう。

 じゃあ、廃止してどうするのかというと、最高裁判事を国民が審査する代わりに、参議院に審査させようというんですから驚きです。形骸化した制度のフォローを、形骸化した組織に託そうというのは、冗談としてもイマイチでしょう。それにますます司法が政治に遠慮ないし追従して、やたらと憲法判断を回避してしまう発想を加速させるものではないですか。さらに、ただでさえ国民から遠い存在である裁判所が、世論から孤立していく方向性は不可逆的なものになることでしょう。
 なるほど、これが半世紀に1度の「司法制度改革」の顛末というわけですね。

 おそらく、このまま行けば、最高裁判事の国民審査は、次回の衆院選(たぶん2007年の夏ごろに衆参同日選として行われそうな雰囲気ですが)にともなう第20回目で最後になりそうです。私はそのときまでに、審査対象の裁判官について、私なりの審査資料を作成し、ここに分かりやすく整理・図解し、編集して公開していこうと考えています。ゆくゆくは、選挙の投票に出かける気概のある有権者の皆さんなら、誰でも一読してスッと理解できるほどの内容にまで洗練させて、できれば、出版にまで漕ぎ着けていきたいという思いもございます。そうして、国民審査をもっと緊張感あるイベントにしてみたいんです。
 なお、才口判事と津野判事に関しては、ネットや紙の上で揃う資料はほぼ集め終わりました。この点で、東京は素晴らしいですね。九州くんだりに比べれば情報が格段に集めやすいです。これからは、周辺取材から始めて、ご本人インタビューの実現に向けて準備を整えていきます。

 ちなみに、現在の最高裁判事・北川弘治氏が、12月26日に定年退官されます。また、同じく梶谷 玄氏も、来年1月14日に退官なさいます。後任の判事はだいたい1ヶ月ほど前に内定が出るようですので、両判事の後任についての報道にも、そろそろ注目していきたいところです。

 


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