予習! 在日韓国人が公務管理職就任を拒否された事件
明日の午後3時。いよいよ1年ぶり、個人的には上京してきて初の大法廷判断がなされます。それに備えて、ちょっと事案を整理してみることにしました。
原告(被上告人)は、在日韓国人2世の女性(54)。都の保健師の方です。主に保健所や保健センターに所属し、住民の健康増進・疾病予防のために、様々な保健事業を行う職業で、保健事業には、住民健診・乳幼児健診・健康相談・リハビリ・予防接種 ・家庭訪問などがあります(サイト 青空保健師様より引用)。
しかし、管理職昇任試験を受験すること自体が、日本国籍がないことを理由に東京都に拒まれたということで、受験資格の確認などを求めて提訴、という経緯です。日本国籍が無ければ、誰もが一律に受験資格がない、ということのようですね。都側としては、その既存の規律にのっとって処理したまででしょう。
まぁ、外国人は外国人でも、在日コリアンということで、先の戦争や朝鮮併合など、史実の評価じたいが分かれる非常にデリケートな問題も絡みます。今でこそ空前の韓国ブームで、朝鮮名をオープンにするのも支障無くなってきた時代ですが。私が大学で朝鮮語を第二外国語にしていた頃(単に「ハングルがカッコよく感じた」という動機で)は、まさかこんな世の中が来るとは思ってませんでしたしね。
■第一審:1996/05/16
国民主権の原理は、我が国の統治作用が「主権者と同質的な存在」である国民によって行われることを要請。
↓よって
憲法は、外国人が、直接的・間接的に国の統治作用にかかわる公務員に就任することを保障するものではない。
↓もっとも
法律で、外国人に対して間接的に国の統治作用にかかわる職務に従事する公務員に就任する権限を授与することは、憲法上禁止されていない。
↓本件では
権利職選考は、我が国の統治作用にかかわる職への任用が目的。
↓
在日韓国人に管理職選考試験の受験資格を認めないことは、22条1項(職業選択の自由)、14条1項(法の下の平等)に反せず適法。
■第二審:1997/11/26
管理職は、統治作用にかかわる蓋然性の高い職。
↓よって
外国人に管理職就任権を認めることは、国民主権に照らして問題。
↓もっとも
管理職でも、統治作用にかかわる程度の弱いものも存在。
↓
これらの管理職については、管理職就任権を外国人に認めても、国民主権に反しない。その範囲で、22条1項、14条1項による保障が及ぶ。
↓
在日韓国人に管理職選考試験の受験資格を認めないことは、職業選択の自由・法の下の平等に反し違法。慰謝料40万円。
まず、一般論として、そもそも外国人に日本国憲法の基本的人権規定は、どこまで保障されていいものか、という問題があります。これについては、権利の性質上、日本国民のみを対象としているものを除いては、外国人にも及ぶというのが最高裁の判例です。昭和53年でしたかね。
それを思うと、公務管理職の就任権というものを外国人に認めるというのは、なかなか厳しいものがありそうです。「人類普遍の原理」なんていう格好の良いものではなく、まさに国内問題ですから。ちなみに、地方自治とか地方公務員の話であっても「国民」主権の問題になります。
一審の地裁と二審の高裁では、結論こそ真逆ですが、論理の流れとしては少し似ているように見えます。どちらも、一般論としては国民主権との兼ね合いで問題があることを指摘しておいて、次に公務管理職を十把一絡げにしてるわけではなく、二種類に分けようとなさっているんですね。かなりザックリとではありますが。
地裁は、国の統治作用に「直接的」に関わるか、「間接的」に関わるかで管理職を分類しています。そして、原則として、外国人の就任はどっちもダメだが、例外的に法律の特別規定を作れば、「間接的」なほうへの就任はオッケー、という基準を立てました。
定住外国人の地方参政権も、特別法さえあれば認められるという10年前の判例がありますが、おそらく、それを下敷きになさったのでしょう。
ただ、地裁は本件保健師の管理職が、「直接」「間接」いずれに該当するのかは明言していないようです。たぶん「直接」ということは無かろうな、という気はしますが、まぁ、どっちみち特別法が作られてなかった以上、どう転んでも結論は変わらないからでしょう。
高裁は、国の統治作用に関わる「程度の強弱」という表現を使っています。それで、その程度が「弱い」管理職であれば、外国人に任せても構わないだろう、という基準を立てています。その条件さえクリアしていれば、法律の特別規定なんかいらんよ、というわけです。
そうして、本件保健師管理職を「弱い」ほうだと認定し、控訴人に管理職試験を受けさせろ、受けさせなければ違法だ、という結論を導きました。
◎上告審の口頭弁論:2004/12/15
ご本人:「少数者である外国籍住民の人権を回復し、保障できるのは司法しかない」
その弁護団:「外国人をすべての管理職から一律に排除しようとする都の姿勢は人権意識を欠いている」
東京都:「公務に就任する権利は国家の主権者である国民にのみ保障されており、外国人は憲法上の権利として主張することはできない。昇任させないことは自治体の裁量として許される」
二審判決から、足かけ9年ですか。何があったんでしょうかね。これぞまさしく「最高裁 忘れたころの 棄却判決」(by才口千晴判事)ってやつでしょうか。でも、明日棄却判決が出たら、都の違法性を認めた二審判決が確定するわけですから、えらいことになりますね。都知事のコメントにも注目せねばなりません。
日本国の地方自治体の公務員になろう、という意思を持っているほどの外国人ですから、日本に定住する意思もあるのでしょう。だったら、帰化という選択肢もありますし、民間で活躍するという選択肢だってあるわけです。自らのアイデンティティを海の向こうに置き、帰化申請が通る以上の時間を訴訟に費やし、民間の保健センターを横目に見てまで、都の管理職にこだわらなければならない理由って何なんでしょう。この被上告人は、何と戦っておられるのでしょう。保健師の仕事ができるのなら、それでよかろうもん。
…やっぱり、公務員の管理職って、そんなにグッド待遇なのか! いいなぁ~、役人天国。(笑)
でも、役人天国に入国する権利って、人が人であるゆえに当然に享受すべき基本的人権なのでしょうか。素朴な疑問です。これを「差別」だと誤解する方がいらっしゃるのでしょうが、それでも構いません。この疑問への答えをお持ちの方、コメントお待ちしています。
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コメント
国籍がないから公務員になれないのは
しょうがないと思います。
民間の別の仕事についたらいいのでは?
投稿: 匿名希望 | 2005年9月 5日 (月) 20:06
>匿名希望さま
同感です。民間企業や、保育園・老人ホーム・高齢者介護などの現場などでは、保健師資格者の需要が高いようですし、いろいろ自己実現の方法はありそうなものですよね。
出世したければ、そこで保健職のチーフになればいいじゃないかと思うのですが、私には、組織の中で出世したい方々の、本当の気持ちがわかっていないのかもしれません。
しかも、この方は、日本国籍をお持ちでありませんが、現に東京都の公務員です。そのわりには日本をお嫌いみたいですが。
投稿: みそしる | 2005年9月 6日 (火) 00:32
管理職なんてどこいっても苦労は付き物だと思いますよ。不況の折はともかく景気が良くても手当が変わったりしませんし、そもそも公の立場という物を死守しなければならないので、非現実的な綺麗事に縛られるものです。
彼らはその辺の考え方が既におかしいので(公平とは、他人が持ってる物は自分ももらうべき物としか考えない)、公務員としては一般職としてさえ概ね不的確です。
せいぜい、その系統の内輪の為に冊子作らせてガス抜きさせる役とかぐらいじゃないでしょうかね
投稿: 匿名 | 2009年8月27日 (木) 23:33