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2005年6月29日 (水)

現代の直接民主制「村民総会」

>>> 議会廃止し村民総会に 王滝村(長野県)で異例の議員提案

 木曽郡王滝村議会の6月定例会は23日開会し、議員定数を現在の10から6に削減する条例改正案と、村議会を廃止し代わりに「村民総会」を設置する条例案が、いずれも議員提案された。総会設置条例案は、町村議会を置かずに、有権者の「総会」を設けることができるとした地方自治法の規定に基づくが、提案されるのは異例。王滝村は近隣町村と合併できず、村営スキー場関連の多額債務を抱えて財政再建団体への転落も予想される状況。定数を削減せず、チェック機能も果たしていない、として、住民グループが村議会解散を請求している。(信濃毎日新聞)6/24

◆ 地方自治法 第76条(リコール)
 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の3分の1(※中略)以上の者の連署をもつて、その代表者から、普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共団体の議会の解散の請求をすることができる。

◆地方自治法 第94条(町村総会)
 町村は、条例で、第89条の規定(※普通地方公共団体の議会設置)にかかわらず、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる。

 いわゆる「平成の大合併」によって、地方自治体は中規模のものばかりになり、過疎地域の財政難は解消されると思われていました。しかし、このように「大合併」の流れに取り残されてしまった小さな村もあるわけです。

 長野県王滝村は、2000年の国勢調査によると1,205人。その中に10人いる村議会議員を6人に削減しようと2議員(共産1無所属1)が提案し、また、村議会そのものをつぶして、住民みんなでつくる「村民総会」を置こうという案が別の2議員(いずれも無所属)から提起されています。このまま読むと、既得権を失うことを恐れない議員さんの英断のようにも思えます。おそらく、その通りなのでしょう。

 「条例案は、村民総会は18歳以上の全村民を構成員とし、定例会を年1回開催、半数以上を定足数とし、報酬は支給しない」……これが、画期的な王滝村の総会設置案です。

 だいたい、選挙にも議会の維持にも、とにかく金がかかるんです。そして、人口が少なく、社会的構成もそれほど複雑ではない地域では、住民が一堂に会して議論をすることにも、それほど支障はないはずで、むしろメリットのほうが大きいと思われるんですね。自分たちの住む故郷の方針を自分たちで決められたら、少なくとも地方政治に対して不満やグチを言い合う必要はなくなります。 まぁ、その代わりに小泉さんに向けて、倍の集中砲火が浴びせられることになるのかもしれませんが。

 しかし、現在、町村総会が設けられている自治体は存在しません。戦前には、神奈川県の足柄下郡芦之湯村(※現在の箱根町の一部)に町村総会が設けられていたことはあったようですが、昭和22年4月に議会が設置されました。戦前には、地方自治体が、なんと7万以上あったらしいので、現在では考えられないほど規模が小さい町村が多数散在していたのでしょうが、それでも設置例はただ1つでした。また、戦後の地方自治法施行後ですと、東京都八丈支庁管内の宇津木村(人口61人、有権者数30人前後)に総会が設置されたことがありましたが、やがて合併によって八丈町の一部とされたようです。

 地方自治法94条の規定を読むと、間接民主制のもとに村議会を設置するのが原則で、それができない場合に例外的に直接民主制の町村議会を開くというふうな印象を受けがちかもしれません。それに、司法試験受験生にとっては「たしか大昔の憲法過去問で1回だけ聞かれとったな。でも、今の出題傾向なら無視無視……」という程度の認識だと思うんです。町村総会。

 しかし、あらためて考えてみたら、間接民主制の権化である議会制と、地域の将来に利害のある住民たちが直接話し合って決める総会との間に、理論的には原則例外の関係や優劣の差は無いように感じるんです。むしろ、住民が集まって議論する町村総会こそ、地方自治が理想とする本来の姿で、それができないほど膨れ上がった自治体では、しょうがないので代表者を選出して政治を任せようというふうな構成ではなかろうかと考えています。私に言わせりゃ、議会のほうが地方自治の「仮の姿」です。ちなみに、スイスには「コンミューン」という制度があって、地域住民が全員参加で、まさに町村総会さながらに物事を決めていくようですが。

 たしかに、憲法が制定している地方自治の形は首長議会制で、町村総会については明文を置いていません。とはいえ、住民の意思によって地方自治が行われるべきという「住民自治」、憲法用語でいえば「地方自治の本旨」に、より近いのは、果たしてどちらでしょうか。

 とはいうものの、直接民主的な町村総会は、戦前の「町村制」の遺物で原始的だ、という捉え方をされがちなのも確かです。なにせ、これから都道府県が「道州制」に切り替わろうとし、自治体がどんどん肥大化する流れになっていますので、町村総会の精神は、今にも消えそうな風前の灯火にも見えます。
 ただ、一方で並行してブロードバンドや多チャンネルの技術も急速に広がりを見せているのです。家で自由に議会を傍聴でき、掲示板や音声などでリアルタイムに議員に質問できたり、長ったらしいヨタ話にツッコミを入れられるような仕組みができれば、われわれの政治離れも少しは解消されるのかな、と思っています。

 野党の皆さん、投票率を上げて、政権を勝ち取りたいんでしょ? だったら、世間からの批判を直接耳に入れる勇気も振り絞って、「直接民主制」のエッセンスを取り入れてみるのも、ひとつかもしれませんよ。

 今日は、新生「会社法」が国会で成立した日でもありますが、時代を切り開くのは、そんな耳目を集める最先端の新法だけではないのかもしれません。



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