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2005年6月13日 (月)

司法試験挫折後…… 「人生再建」あれこれ

 司法試験の世界では、すでに「2008年問題」「2009年問題」ということが囁かれています。

 弁護士・裁判官・検察官になりたいと、うかつにも夢見てしまった者たちに、現在は2つの方法が与えられています。今までの司法試験を受験する方法と、法科大学院という特殊機関に通って修士号をとり、来年から新しく実施される司法試験を受ける方法です。
 法学部出身である、生粋の「法律漬け」院生は2年、他学部から来た人は3年で法科大学院を修了することになっていますから、首尾良くいけば、各大学院の1期生は、それぞれ、2006年、2007年から新司法試験の受験資格をゲットすることになります。

 受験センスがある人の立場で見たら、大学に2年間通って単位を揃えれば誰でも受験可能な従来の司法試験は、合格することで、一気に「社会的ステイタス」と「高収入」と「先生呼ばわり」を同時に獲得できるステップとなりえます。しかし、司法試験は、何回受けても受けても受けいれられず、先の見えない不安と同じことの繰り返しで、不器用な者たちの精神を傷めてしまいかねない暗黒面も持ち合わせています。良く言えば粘り強く、悪く言えば往生際の悪い者たちを、ずっと底なし沼にハメてきたのが、今までの司法試験です。

 そこで、新しい司法試験は、『5年間で3回』という受験制限を設けました。これからは、司法試験の年間合格者数が3000人に増やされます。それで3回受けてもダメな受験生は、法曹界にとって粗悪な人材なのだから要らん。言うことを素直に聞いてくれるお利口さんだけを純粋に選別しよう、という小賢しくも真っ当な方針です。
 受験制限に『5年間で3回』という、若干の幅が設けられているとはいえ、早く法律屋になって現場に出たいと願う受験生なら、よほどの事情がない限り3年連続で挑戦します。すると、受験3年目にあたる2008年や2009年以降、司法試験の受験制限を切らしてしまった浪人たちが、日本中に溢れることになります。それが、2008年ないし2009年問題と呼ばれるものです。

 最終合格者は当然、蝶よ花よと大切に育てられ、各方面の有力者たちがこぞって、エリートへの『王道』を連続的に指し示してくれることでしょう。しかし、相対評価の抽選から漏れた者は、あきらめて民間企業に就職するなどして、それぞれの『人生の再建』を求められるわけです。たしかに、予備試験合格などで再度司法試験の受験資格を得るという選択肢もありますが、そこは鬼の棲む熾烈な競争地獄。ヘタすれば現行司法浪人以上の泥沼に陥るであろうことは目に見えています。
 当然ですが、司法試験委員会は、ダメな受験生に不合格を言い渡しても、再就職の世話までしてくれるほどお人好しではありません。おじいちゃんたちは、毎年の問題づくりと採点でお忙しいんですから。これ以上仕事を増やしたら、お身体に障ります。

 法曹資格を得るために多額の投資をしながら、結局は志半ばに撤退を余儀なくされてしまう。われわれにとって、いったん外れたレールにまた乗っかろうとするのも、レールに見切りを付けて新しい道を求めるのも、まるっきり自己責任です。なぜなら、司法試験は公営ギャンブルだからです。ハイリスク・ハイリターンを公認する国家政策なのは、法律屋を目指す前の段階で、誰もが大なり小なり覚悟していますから、これはやむを得ません。

 長年ダラダラと司法浪人を続けたあげく、結局『王道』を踏み外した世間知らずのアナタを、再就職の面接で嘲笑する面接官もいるでしょう。めでたく企業法務のイスにありつけても、法の理論面しか学習していないアナタを『けっ、使い物にならん』と、苦虫を噛みつぶしたような顔で小バカにする年下の上司もいるはずです。

 そこで、そんな現状を憂う私は、一般企業の方々に向けて、どうか司法試験挫折者を邪魔者扱いしないでいただきたいと、声を大にして訴えていきたいのです。2008年に間に合うように。

 別に温かく迎えなくてもいい。ただ、せめて理解だけはしていただきたいと願い、このブログで、いろんな挫折者の生き方を随時ご紹介していきます。私も、これからネット上や書籍・雑誌で探していきますし、皆さまからの自薦・他薦も大歓迎です。

 なにも、合格者だけにデカい顔をさせておくことは無いんです。司法試験に魂を売ってしまった暗い経歴を引きずっている、司法試験挫折者たちだって、『あぁ、あのとき落とされて助かったわぁ』と、もっと胸を張っていいはずなんです。

 おそらく、有名人や成功者と呼ばれている人たちの中にも、過去に司法試験で失敗した方がたくさん埋もれていると私は見込んでいます。そこを発掘して、お一人おひとりに勝手なスポットライトを当てていければと考えております。

 もちろん、会社に収まるだけでなく、たとえば、文章を書くのが3度の飯より好きだという挫折者は、私のようにライターへの道を模索するのも結構でしょう。この私も、まだまだ見苦しくもがいている最中ですが、少しでも『未来の挫折者たち』にヒントを分けていけるようなもがき方をしたいものです。




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コメント

私は大学院生のときに一度だけ司法試験を受けましたが、合格できませんでした。そこで民間企業に就職しました。他にもそのような人は少なからずいます。
でも法務関係の仕事は、多くの場合きちんとこなすことができます。中途入社の場合は、普通は同じ年に大学を出た者と同等の待遇で受け入れてくれますので、司法試験に合格しなかったからとてハンデになることはありません。
それでは、実務を知らないから馬鹿にされるおそれがあるかというと、必ずしもそうではありません。私が聞いた限りでは、驚くほど法的素養の低い法務担当者は少なくありません。むしろ大学院で得た知識を活用しようとすると、周囲の者のレベルが低すぎて人間関係の摩擦を起こすことがあるくらいです。
今大体35歳ぐらいまでであれば、中途入社は十分に可能です。結局司法試験に合格できず、民間会社に就職して法務関係の仕事をせざるを得なくなったからといって、普通であれば何の心配もありません。ご安心ください。

投稿: 元刑法専攻の大学院生 | 2005年6月18日 (土) 05:00

はじめまして。

早めに司法試験に見切りを付けて撤退を
決めたことが、結果的に良い結果へつな
がったとのご報告ですね。
しかも、大学院の研究と並行しての受験
だったそうですから、『新卒』の身分に
さらに箔が付き、企業側も欲しがったと
いうことでしょう。

コメントありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。

投稿: みそしる | 2005年6月18日 (土) 18:54

はじめまして。
身内に法律家はおらず、自身も法学部卒ではないですが、弁護士の下で働いています。
大学在学中に合格、とか1回目の受験で合格
という修習生の話を聞いてきましたが
こちらのblogを知り、とても興味深く読んでいます。
これからも楽しみにしてますね。

投稿: みつまめ | 2005年6月24日 (金) 20:59

こんにちわ。トラックバックさせていただきました。

僕自身、現在別の進路を目指して活動している最中ですので、同じようにレーンチェンジを考えている人たちの力になれればと思います。

有名人の中にいる「隠れ元受験生」の皆さんには、是非アピールしていただきたいですね。政治家や実業家にも結構いそう・・・。

投稿: mark | 2005年6月24日 (金) 21:33

>みつまめさん

 いらっしゃいませ。
 私がそうだからですが、法学部出身だからこそ、その先入観ゆえに見通せないことというのは多いです。なので、他学部出身者が法律事務所で勤務してくださるというのは、とても意義のあることだと思います。
 本当は、法学部出が法律関係の仕事を独占していたという、今までが間違いなんです。法律というのはシステムなんであって、パソコンのハードとかOSみたいなものです。パソコンに付いてくるマニュアル以上の使い方は、なかなか思いつきません。
 なので、他分野の知識を身につけた者がロースクールに入って社会システムを学ぶという、法学部が存在しないアメリカ等は、その点で合理的な手順を踏ませていると思います。
 これからも、ご愛読お願いします。

>markさん

 裁判所を受験されるんですか? ぼくも一時期考えたことがあります。あの世界は、司法試験からの撤退組が相当多いみたいですからね。
 たしか、評論家の呉智英氏が、早大法学部卒業後に司法試験を受けていた時期があったと書かれてましたけど、ほとんど勉強してなかったとも……。あとは、たしか作家の中にもいらしたと思うんですが……どなただったか思い出せず。

投稿: みそしる | 2005年6月24日 (金) 23:47

私も司法試験挫折組みです。
大学卒業後からLECに通いはじめ、気がつけばもう6年!?7年!?
去年で完全に撤退したつもりだったのですが、就職も決まらず惰性で今年も受けてしまいました(^^;
何もしていないので当然択一落ちですが。

で、さすがに今年は完全に離別しまして。

ようやく就職も決まりました。
ソフトウェア会社です。
来月から入社となります。
(プログラミングが少しだけできたので。)

今年30になりますが、意外となんとかなるものですね。

お互い第二の人生がんばりましょう!

投稿: はる | 2005年6月25日 (土) 03:35

いらっしゃいませ。

試験撤退&就職おめでとうございます。

はるさんは、最初からご自分のスキルを念頭に
置いて、そういうコンピュータ関係の企業に
的を絞って就職活動をかけていったのでしょう
か。
やはり、リアル社会で通用する特殊技能を持って
いると強いですかね。

> お互い第二の人生がんばりましょう!

そうですね。私も、なんとか立て直していきたい
と強く願ってます。今より悪くなることは無いと
信じつつ。

投稿: みそしる | 2005年6月25日 (土) 20:25

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» 真夏日 [menschlichkeit]
多少違う角度からの活動となるが、僕のようないちブロガーが出来ることといえば、司法試験を辞めた・辞めようとする人間がどうやって民間や官公庁に就職したかを記録することだと思う。 大学を卒業してから、司法試験の勉強をしている人というのは、一般的に見て人間関係が狭くなるので、こういった情報に触れる機会が少ないと思う。 そういった人たちが情報交換できる場所があったら良いのかもしれない。 ... [続きを読む]

受信: 2005年6月24日 (金) 21:23

» 人生再建! [☆司法試験崩れの人生再建日記☆]
題名を変えるにあたって、『人生再建』という言葉を使っていますが、 これは、みそしるさんの『法治国家のつまみぐい』というブログで、 使用されている言葉です。 みそしるさんは、三度の飯より文章を書くのがお好きとのことで、 司法試験挫折後は、ライターを目指し....... [続きを読む]

受信: 2005年9月 2日 (金) 19:51

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