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2005年7月27日 (水)

過ちは繰り返しませぬから

>>> 原爆慰霊碑の碑文に傷 ハンマー持ち自首の男逮捕
 26日午後10時55分ごろ、広島市中区中島町の平和記念公園にある原爆慰霊碑が傷つけられたと警備員から110番があった。約15分後、ハンマーとのみを持った男が「慰霊碑を傷つけた」と広島中央署に自首。同署は27日未明、器物損壊の疑いで広島市安佐南区、右翼団体構成員(27)を逮捕した。

 調べでは、容疑者は、原爆慰霊碑の「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」と書かれた碑文の「過ちは」の部分をハンマー(重さ約1.3キロ)とのみ2本で十数カ所傷をつけた疑い。傷はそれぞれ縦2.5センチ、横1.5センチ程度で、警備員が原爆慰霊碑を激しくたたいている容疑者をモニター室の監視カメラ映像で発見、110番したという。

 同容疑者は「碑文の『過ち』の文言が気に入らなかった」と容疑を認め「タクシーで警察に来た」と供述しているという。(中国新聞)



 思想的・宗教的に自分の行為を正しいと信じて行う犯罪を、刑法学の分類上、「確信犯」と呼びます。

 ただ、世間ではたまに誤用があるようで、事前に計画的に練られた犯行みたいなものを指して「こりゃ確信犯だなぁ」などと言われたりします。そりゃ単なる故意犯です。

 この右翼構成員は27歳。「過ちを犯したのは日本国民ではなくアメリカのはずだ」と供述しているとのことです。おそらく、右翼の先輩から吹き込まれたばかりのウンチクを真に受けてしまった、ということなんでしょうかねぇ。

 ヒロシマの原爆慰霊碑は、惨劇から7年経った1952年8月6日に除幕されました。『安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから』の文言は、石碑等の古典研究に精通し、自身も被爆者だった広島大学教養学部教授(当時)・雑賀忠義氏の手によるものです。
 しかし、その『過ち』を犯したというのは、いったい何者なのか、『過ち』の主語をめぐって議論が巻き起こったのです。雑賀氏ご自身は「広島市民であると共に世界市民であるわれわれが、過ちを繰返さないと誓う」と釈明していました。その一方で、同年11月、極東軍事裁判の弁護人であったインドのパール博士は、この石碑を訪れた際、「原爆を落としたのは日本人ではない。落としたアメリカ人の手は、まだ清められていない」と発言しました。このパール氏は、のちに同裁判の判事として、日本国に唯一無罪判決を出したことで知られますね。

 果たして、誰の『過ち』が繰り返されてはならないというのか。原爆を投下されるまで戦争を止めなかった日本国民、つまりわれわれか。それとも、原子爆弾という負の発明を生んでしまった人類全体を指すのか。あるいは彼の言うように、その負の発明を実際に使用したアメリカ合衆国の過ちを追及しているのか。だとしたら、「繰り返しませぬ」ではなく、「繰り返させませぬ」と書くべきではないのか。

 誓いの言葉に込められた、その文学的・詩的な表現がかえってアダとなった形で、1965年には、石碑にドロ絵の具がかけられる事件も起きます(最近ですと、2002年に赤いペンキがベットリかけられました)。やがて「碑文を正す会」と「碑文を守る会」と呼ばれる両組織が、その文面の解釈や改定をめぐって激しくぶつかり合いました。
 かつての「タマちゃんを見守る会」「救う会」の対立のほうが、はるかに平和祈念的かもしれません。

 くわしくはこちら → http://homepage.mac.com/misaon1/hamayuu/hibunronso.html

 広島市は、趣旨を正確に伝え、不毛な論争に終止符を打つために、1983年11月3日、日本語・英語の説明版を設置しました。「碑文はすべての人びとが原爆犠牲者の冥福を祈り、戦争という過ちを再び繰り返さないことを誓う言葉である。過去の悲しみに耐え憎しみを乗り越えて全人類の共存と繁栄を願い真の世界平和の実現を祈念するヒロシマの心がここに刻まれている」と記されています。

 個人的には、戦争が「過ち」か否かについては結論を保留したいのですが、核兵器の使用という「過ち」を三度繰り返さないという誓い・祈りという解釈で十分ではないのかと思っています。

 今日の平和記念公園には、傷つけられた受難の石碑に手を合わせたり、優しくさすったりする人々が後を絶たなかったようです。平和を祈る言葉に寄ってたかって、いかに裏読みしようが、原爆の犠牲者に向けてその冥福を祈りつづける国民の気持ちは変わりません。石碑の言葉がどう定義されようが、静かな川の流れは絶えず、原爆ドームは骨組みのままそびえ立ち、あいかわらずハトはハトを追いかけ回しています。

 容疑者のキミは、「過ちを繰り返すべきでないのはアメリカだ」と主張していますね。しかし、自分の考えを正しいとして、破壊活動という実力行使に及ぶのであれば、キミが批判している「卑怯で往生際の悪いイエローモンキーは殲滅すべし」という考えを実行に移した当時の「鬼畜米英」と、やっとることは同水準です。

 何が『過ち』なのか、おわかりでしょうか。



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2005年7月26日 (火)

普及するか? ドライブレコーダー

車載カメラ「Witness」

 四六時中ひたすら記録しつづけるフライトレコーダーみたいなものを想像していたのですが、少し違うようです。

 Witnessには、当社が最新技術により開発したCCDカメラ・Gセンサー・CFカードを内蔵し、常時、運転者の視点(視野)から自車と周辺状況の記録を行います。事故や急ブレーキ・急ハンドルなどの衝撃(0.4G以上)を受けると、衝撃前 12秒間と衝撃後 6秒間の計18秒間の映像をCFカードに保存します。

 乱暴で危険な運転操作(急ハンドル・急ブレーキ等)を行い、Witnessが作動する際は、警告音を発してドライバーに注意を促し、ある種の緊張感を与えます。また、万が一の事故の時にはビデオ画像と自車の走行データが運転者の正当性を明確に証言してくれる味方となります。

 いわば、自分だけの「セルフ目撃者」を雇うイメージでしょうか。この「Witness」が普及したら、交通事故の鑑識員などは商売あがったりじゃないのかと思っていましたが、どうやら日本交通事故鑑識研究所という組織が販売している商品で、よけいな心配だったようです。
 それに、前方のみの映像記録にとどまりますので、あくまで交通事故鑑識の「補助」として位置づけられた装置なのかもしれません。前方以外の箇所にぶつかる事故に対しては、いまだプロ鑑識員の目が光りつづけるのでしょうが、それでも、画期的な鑑識補助システムであることには違いないはずです。

 ただし、「一般への普及」という観点から見ると、残念ながらかなりの疑問符が付きます。たしかに、乱暴な運転を未然に予防し、交通安全に貢献するという、この商品の目的は正しすぎるほど正しいです。しかし、正しければ売れるのであれば営業は苦労しません。顧客の購買意欲を刺激する「メリット」は用意されているのでしょうか。
 もちろん、事故が起こった後の示談交渉や裁判などの場では、絶大な威力を発揮して助けてくれる(場合によっては自分に不利に働く?)システムです。ただ、ドライバーというものは、交通事故を怖がりながらも「自分に限っては……」と認識しているのが現実です。なので、正しいけれど後ろ向きな車載カメラのメリットを説かれても、あまりピンと来ないはずです。

 ここは、車体価格や保険料の割り引き特典などと連携して売り込むのが得策なんでしょうか。いずれにせよ、法整備という強制力に頼らずに普及を目指すとすれば、この先、長い年月を要することでしょう。



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2005年7月25日 (月)

新しい最高裁判事が内定

最高裁判事に古田・元最高検次長検事(日本経済新聞)

 これで、15名の最高裁判事のうち、検察官が2名に戻りましたが、役人出身が横尾判事の1名のみとなりました。

 過去の実績を調査する前に、肩書きだけで決めつけるのもどうかと思いますが、ま、お世辞にも大胆人事とは言い難いものです。法科大学院だとか裁判員といった、表向きの司法制度改革で世間に目くらまししておいて、このあたりの旧態依然さについては鉄壁の守りを貫いている最高裁。さぞ政府にとって都合がいいでしょう。

 それに、本年中の衆院解散・総選挙がウワサされている昨今ですが、もし、そのウワサどおりになった場合、そこで行われる国民審査までに、古田判事が何らかの最高裁判決に関与することは不可能です。1件も判決を出していない判事につき、適任か否かを投票する……。やっぱり国民審査というシステムには無理があるのかなぁ。

 いずれにせよ、10年間にわたって最高裁で尽力してこられた福田判事、おつかれさまでした。

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2005年7月22日 (金)

もったいない

あぁ~ぁ。

もったいねぇなぁ、奥菜恵。

めぐりめぐって、いつの間にかオレの腕の中に来たりしないんだろうか。

http://www.daily.co.jp/gossip/2005/07/23/181062.shtml

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2005年7月21日 (木)

宮崎さんちのツトムくん

 いつの間にか、15年以上も経過していたんですね。幼女連続誘拐殺人事件の容疑で、一審二審と死刑判決を受け、最高裁に上告中の宮崎勤被告ですが、最高裁は11月22日に口頭弁論を開くことを決定しました。

 事実関係を審理しない「法律審」である最高裁で弁論が行われるのは、例外的な扱いです。たとえば、4月の櫻井よしこさん名誉毀損をめぐる弁論のように、逆転判決や判例変更の可能性が高い場合や、先日の在外邦人選挙権訴訟の弁論のように憲法判断を要求される事件などです。

 ただ、死刑で係争中の事件でも、口頭弁論を開くのは慣例となっているようですね。

 「オタクのパイオニア」との異名を持つ(というより、私が勝手に呼んでいる。しかも今日から)宮崎勤被告ですが、「冤罪説」も、いまだ根強いものがあります。ひょっとしたら、オタク族からの同情票なのかもしれませんけど。

 今日、正義の法律用語辞典の項目を大幅に増強しました。法律の世界にくだらなさを織りまぜた自信作ですので、ぜひ一度ご覧ください。
 もっと項目を増やして、ゆくゆくは本屋に置きたいんですけど、現時点で7社に出版企画書を断られております。でも、オラは負けねぇぞ。

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2005年7月20日 (水)

事情を説明したつもり?

>>> 「こないして殴ったんじゃ」 警官に“実演”で逮捕…兵庫県・神戸市

 14日午後3時50分ごろ、神戸市灘区大石東町の路上で「男が中年男性にからんでいる」と110番があった。

 兵庫県警灘署の巡査長(54)が現場に駆け付けて仲裁に入り、男に事情を聴いたところ、男は「こないして殴ったんじゃ」と叫びながら、巡査長の左ほおを平手で殴打。巡査長は公務執行妨害の現行犯で男を逮捕した。逮捕されたのは同所の無職男(24)。 (時事通信)

 午後3時50分ごろって……。まぁ、その時間帯でも、しばしばスーパーや100円ショップに酒臭いお客さんは出没して、レジ係にからんだりしてきますけどね。
 警官を殴った彼は、後に酔っぱらいの特権として「憶えていない」と供述するのでしょう、きっと。九州男児のクセにアルコールに弱い私(学生時代に5分で酔いつぶれた記録あり……。危ないので真似しないよう)から見れば、記憶がないのに話せる、動ける、ケンカできるという状況が信じられないんですが。

 ただ、「こないして殴ったんじゃ」という言葉の主語が不明です。自分が中年男性を殴ったということなのか、それとも、からまれた中年男性が殴ってきたという意味なのか。後者ならば、念のため中年男性も暴行または傷害の容疑で逮捕しなければなりません。もちろん正当防衛の可能性は残りますので、より突っ込んで事情を尋ねる必要があるのでしょう。
 
 まぁ、昼間っから、路上を普通に通行している人を妨害する酔っぱらいも迷惑だが、その酔っぱらいが、警棒も拳銃も持っている警官を平手打ちした程度で、その職務の何が妨害されるんだろうと思われた方もいらっしゃるかもしれません。その方は刑法95条をごらんください。

◆ 刑法 第95条(公務執行妨害及び職務強要)
1 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役又は禁錮に処する。(※以下略)

 条文そのものには「妨害」という言葉は使われていません。つまり、公務執行妨害罪は、公務に向けられた暴行や脅迫が、特にその執行を妨害する結果とならなくても問題なく成立するんですね。


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2005年7月19日 (火)

贈賄で現行犯逮捕

>>> パトカー内で贈賄 無職の男を現行犯逮捕 札幌白石署

 交通違反もみ消しのため、パトカー車内で現金を差し出したとして、札幌白石署は16日、贈賄(申し込み)の現行犯で、自称後志管内ニセコ町の無職の男(32)を逮捕した。

 調べでは、男は同日夕、札幌市白石区北郷四の二の市道で軽乗用車を運転中、シートベルトをしておらず、白石署員の取り締まりを受けたところ、「20万円ある。これで勘弁してください」と告げ、財布から数十万円を出し、署員に違反もみ消しを依頼した疑い。 同署によると、男は過去にも違反歴があり、免許停止間近だったという。 (北海道新聞)

 なんともミステリアスな事件ですね。どうして無職の男が財布に数十万も持ち歩いておるのか。
 そのうえ、反則金が取られない「座席ベルト装着義務違反」の事実を、なぜ金で揉み消さなければならなかったのか。それに、無職なら運転免許を停められてもあんまり生活に影響はないと思うんです。せいぜい趣味でドライブできなくなるぐらいで。なぜに金で解決しようとしてまで、その1点を引かれることを嫌がったのか。

 謎ですねぇ。しかも、その謎を解きたいという気持ちがまったく起きないのも素晴らしいことです。


◆ 刑法 198条(贈賄)
 第197条から第197条の4までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。

◆ 道路交通法 第71条の3 (普通自動車等の運転者の遵守事項)
 自動車(大型自動二輪車及び普通自動二輪車を除く。以下この条において同じ。)の運転者は、道路運送車両法第三章 及びこれに基づく命令の規定により当該自動車に備えなければならないこととされている座席ベルト(以下「座席ベルト」という。)を装着しないで自動車を運転してはならない。ただし、疾病のため座席ベルトを装着することが療養上適当でない者が自動車を運転するとき、緊急自動車の運転者が当該緊急自動車を運転するとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。

 ↑この条文には初めて目を通しましたが、緊急自動車、つまり救急車や消防車を運転する職員はシートベルトを締めなくてもいいんですね。シートベルトを締めるヒマがあったら、さっさと走り出せってことでしょうか。




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2005年7月18日 (月)

弁護士の青田買い

 東京の大規模な法律事務所で、司法試験合格者の青田買いが激しさを増している。企業再生など大型案件が増加し、優秀な若手を多く確保しないとこなせないといい「早く動かないと人材を奪われる」との危機感が採用活動を過熱させている。  弁護士や裁判官、検察官になるため、10月の司法試験の合格発表後、翌年4月から1年6カ月の司法修習が実施される。日弁連は修習開始から半年間は勧誘しないよう要請しているが、現実は修習開始までが採用活動 のピークになっている。  事務所の大規模化や大型事案に対応するため、質量ともに十分な人材確保が欠かせない。約200人の弁護士を抱え高層ビルにオフィスを構える事務所の担当者は「早まったのはここ1、2年。いいとは思わないが、よそが やるならうちも」と打ち明ける。別の事務所も「大量採用しないと回らない」と話し今年約30人を採用するという。  背景には、司法制度改革で法曹人口が増え、就職先探しが困難になりつつある合格者側の事情も。 (共同通信)

 ますます世間一般の就職活動に近づいてきてますね。「身近な法曹」という意味では、きっと良いことなんでしょう。

 もちろん、「青田買い」というのは、弁護士業界でもごく一部の話だと思います。つまり、大量に人材を雇えるだけの潤沢な財力や競争力を有した、都心のビルの何十何階かに事務所を構える弁護士さんたちの問題です。でなければ、法曹増員に反対する弁護士さんがいるわけありませんから。

 そんなに人材が欲しければ、一般的な司法試験と区別して、「渉外弁護士試験」でもつくればいいんじゃないかと思います。あるいは、現行試験は維持したまま、渉外志望者には憲法や刑事訴訟法は免除する代わりにTOEICスコアを提出させるとか。意外と、業界はその方向で法務省へ働きかけていたりして。とっくの昔に。

 ともかく、法曹選別や養成のプロセスが、時代の要請から取り残されていきはじめているのかもしれません。いまやM&Aなど、企業サバイバルの領域にも「正義」は広がりつつあるのでしょう。企業の生き残りが、その企業に雇用される人材の生き残りにつながる側面もあるのだとすれば。

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2005年7月17日 (日)

時効6日前の逮捕

 高知県警安芸署などは14日、7年前に発生した強盗容疑で、大分県杵築市の会社員の男(35)を逮捕した。時効は今月20日で、6日前の逮捕だった。

 調べでは、男は1998年7月20日に高知県安芸市の無職の男性=当時(21)=宅に侵入、包丁を突きつけて脅し1万円を奪った疑い。犯行を認めているという。

 愛媛県警が別の窃盗事件の捜査中、関係者が男について供述したことから発覚した。同署は余罪などを追及している。 (毎日新聞)

 たとえ被害額がわずか1万円でも、包丁を突き付けての脅迫がありますから、決して許されざる強盗事件です。それでも、心のどこかで1%ぐらい「惜しかったのぉ」と加害者に同情する気持ちが湧いてきてしまうのはなぜなんでしょう……。

 ただ、勘違いしてはならないのは、犯行から7年という強盗罪の時効は、あくまで「公訴時効」だということです。つまり、検察官が裁判所へ起訴するまでのタイムリミットという意味ですから、警察官が被疑者を逮捕した時点では、依然として時効は進行しつづけます。残り6日で、被疑者の身柄を警察から検察に送って、起訴状を書けるだけの証拠を集めなければなりません。これらの手続きには、通常だと最大22日間使えるわけですが、果たして間に合うのでしょうか。

 ちなみに、逮捕・勾留に22日間もかけることが法律上許されているのは、いわゆる先進国の中では日本だけなのだそうです。だとすれば、やってやれないこともないのかも。

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2005年7月16日 (土)

裁判スピードアップの検証結果

>>> 最高裁:迅速化検証結果 刑事事件の審理には時間

 09年までに導入される裁判員制度では、殺人や傷害致死、放火事件などの審理を市民が担当する。内閣府の世論調査では、裁判員として法廷に通う日数の限度は「5日以内」との回答が約7割に上るが、制度の対象事件は審理に時間がかかるケースが多い。

 検証結果によると、主要罪名別の平均審理期間で最長は、殺人の10.1カ月。全体平均(3.2カ月)の3倍以上を要し、傷害致死は8.8カ月、現住建造物放火は7.0カ月で、対象事件が上位を占める。平均開廷回数でも殺人は7.5回、傷害致死6.1回、強盗・強盗致死傷4.9回と、対象事件は全体平均の2.7回より多い。

 最高裁は「対象事件における否認率の高さが影響している」と分析する。殺人の否認率は47.5%、傷害致死では同33.2%で、確かに全体平均6.7%を大幅に上回る。それでも、裁判員制度導入に国民の理解を得るには、大幅なスピードアップが欠かせない。(毎日新聞)

 裁判官が法廷で告げる決まり文句や、「求刑の8掛け(8割)」という判決相場から、『裁判なんかパソコンにやらせればいい』と、冗談半分 本気半分で言う方もいらっしゃいます。しかし、やはり現実社会の法は人間がつかさどるもの。裁判のスピードアップは、メモリを増設したりCPUのクロック周波数を上げたりしてなんとかなるもんじゃなかったりします。当然。

 私は、少なくとも現在計画されている裁判員制度に対しては懐疑的です。重大事件になるほど、被告人が犯行の否認にまわり、しかも冤罪を回避するために慎重に証拠を取り調べることから、審理に時間がかかるのは最初から分かり切っていることでしょう。どうしてそんな重大事件にいきなり裁判所に入った経験もない庶民を入れようとするのか、理解に苦しみます。
 私なんて、派遣元の把握不足で、ロクに説明もなく初めての派遣先に行かされることほどプレッシャーを感じることはありません。人の命に関わる出来事を裁く負担は、そんな重圧とは比べものにならないほどでしょう。


 もちろん、「犯罪被害者に対する裁判員の質問権」など、裁判員計画には期待すべき仕組みも少なくないのですが、とくに刑事事件で何らかの制度を設ける場合は、「その制度は、冤罪を少なくする方向に働いてくれるのか」を常に念頭に置く必要があると考えます。今の裁判員制度案で、本当にぬれぎぬを減らすことができるのでしょうか。裁判所は「一般の方々が日常で育んできた感覚を司法に採り入れたい」と意気込んでらっしゃいますが、刑事事件も公判も非日常です。

 私は、むしろ民事訴訟や和解に、裁判員を立ち入らせていただきたいなと考えております。最初から殺人事件の審理をしろと命じるのは厳しすぎるでしょう。正直、私でもイヤですもん。
 民事事件での裁判は、必ずしも真実発見の要請は高くなく、「結論の落としどころ」といった多角的視野に基づくべき要素が求められます。たしかに、プライバシーや企業機密などが他人の目に触れる可能性はありますが、プライバシーが制約される程度は、刑事事件での裁判員とそれほど大差なかろうとも思っております。いかがでしょうか。



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2005年7月15日 (金)

「何か臭う!」駅の不審物

>>> JR熊本駅で不審な箱、箱の中身はメバル

 JR熊本駅で13日午後、不審物が見つかり、一時、現場周辺が騒然となった。不審物の中身は魚だった。
13日午後3時10分ごろ、熊本市のJR熊本駅の改札口前に不審な箱が置かれているのをJRの職員が見つけた。見つかった箱は白い発泡スチロール製で、緑色のテープが巻かれていた。駅ではすべての電車が構内に入らないように手前の駅で止められ、利用者や店の従業員は避難した。

 警察の爆発物処理班が確認作業を行ったが、箱から出てきたのはラップに包まれたメバル5パックだった。この騒ぎで、特急と普通列車計4本に最大14分の遅れが出た。 (日本テレビ)

 爆発物処理班が、エックス線で箱の中身を確認している間、駅舎1階の改札口とホームが、テープで封鎖されたとのこと。個人的にはガキの頃から慣れ親しんでいた駅なので、そんな人騒がせな事態の絵も、わりと容易に想像できます。

 夕刊フジによると、不審物発見(午前11時ごろ)から現場封鎖(午後3時ごろ)までに時間がかかったことについて、同駅は「現場には不審物を速やかに報告するよう伝えており、なぜ遅れたか調査する」とコメントしているようです。ただ、駅員も「発泡スチロールの箱で、このニオイだったら、中身は魚だろう」と思うのが自然でしょうし、誰かが取りに来るまで、忘れ物としてしばらく預かっておこうとしたのでしょう。

 駅に魚を忘れた張本人も、「今から駅まで取りに行ったっちゃ、どうせ傷んどるやろ」と思って、ついそのままにしてしまったのかもしれません。それがこんな人騒がせな事態を呼んでしまいました。

 このニュース、しっかり者の方が聞いたら「魚の箱みたいな、そんなデカいもの、どうやって忘れるんじゃ」と呆れるでしょうけど、悩み事や考え事をしていたり、自分にあまり利害のない頼まれごとのような場合だと、けっこう置き忘れたりしますよね。私、登校するついでにゴミを捨ててくれと母親に頼まれて、捨て忘れたまま気づかずに歩いていたことがあります。

 
 こういう迷惑な不審物事件、わりと多いみたいですね。「不審物シリーズ」を、新カテゴリとして作りましょうか。


 

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2005年7月14日 (木)

著書廃棄訴訟 「つくる会」側の逆転勝訴の見通し

>>> 「つくる会」関係者著作の図書館蔵書処分は違法 最高裁

 市立図書館の司書が、「新しい歴史教科書をつくる会」や関係者の著作などを処分したことが違法かどうかが争われた訴訟で、最高裁第一小法廷(横尾和子裁判長)は14日、「公立図書館は住民のほか著者にとっても公的な場で、著者には思想や意見を伝えるという法的に保護される利益がある」との初判断を示した。「職員の独断的な評価や個人的な好みで著書を廃棄することは、著者の利益を不当に損なうものだ」として、つくる会側の主張を退けた二審・東京高裁判決を破棄。審理を同高裁に差し戻した。

 第一小法廷は、著者の思想の自由や表現の自由が憲法で保障された基本的人権であることを重視。「著者が意見などを伝える利益は、法的保護に値する人格的利益だ」と位置づけ、「図書の廃棄は著者の人格的利益を侵害し、違法」と結論づけた。 (朝日新聞)


 千葉・船橋市立西図書館による「つくる会」著書 集中廃棄問題


 【 事実関係 】

 2001年8月、船橋市立西図書館が、「新しい歴史教科書をつくる会」が扶桑社から出版した教科書執筆者の著書を廃棄処分していたことが、翌年4月に一部新聞で報じられた。
 同市教育委員会の調査では、同図書館はこの評論家らの著書を45冊所蔵していたが、このうち44冊を廃棄した。同図書館は毎年9月、蔵書の虫干しをするのに合わせて破損した本や貸し出し回数の少ない本を処分しているという。原告の著書以外で廃棄されたのは、西部邁氏(評論家)の著書43冊と渡部昇一氏(上智大学名誉教授)の著書25冊など。

 

(図書館 臨時記者発表)2002/05/10
 平成13年8月に除籍された541冊(内訳 一般図書170冊、児童図書17冊、雑誌354冊)の除籍理由については、職員からの事情聴取の中で判断しましたが、一般図書170冊のうち63冊、児童図書17冊、雑誌354冊は、船橋市図書館資料除籍基準に基づき除籍したものでありました。

 しかし、一般図書107冊については、利用が低下しているものや、受入れ年月日の古いものなどがありましたが、除籍理由を明確にすることは出来ませんでした。

(除籍の内訳)  (除籍数)  (基準に基づいた除籍) (不 明)
 一般図書     170冊       63冊         107冊
 児童図書      17冊       17冊           0冊
 雑  誌      354冊      354冊           0冊

廃棄書籍リスト (「正論」2002/06)

【 司法判断 】

●2002/08/13 提訴
  原 告 : 著者ら8名 新しい歴史教科書をつくる会
  被 告 : 図書館 担当司書
  請求額 : 一人当たり300万円
  根 拠 : 憲法違反、名誉毀損、著作者人格権の侵害

●2003/09/09 第一審判決 東京地裁

 司書による廃棄について、「決して一時の偶発的行為ではなく、周到な準備をした上で計画的に実行された行為であることが明らか」、「市が定めた除籍基準を無視し、個人的な好き嫌いの判断によって大量の図書館の蔵書を除籍し廃棄して船橋市の公的財産を不当に損壊したもの」であると認定し、船橋市に対しても「責任の所在を曖昧
にしたまま幕を引こうとしており、このような被告船橋市の姿勢に原告らが強く反発するのも理解し得ないではない」との見解を示した。

 しかし、損害賠償請求については、「司書によって除籍等がなされた図書は、すべて船橋市が購入して所有し管理していたものであって、原告らの所有・管理に属するものではなく、これらの蔵書をどのように取り扱うかは、原則として被告船橋市の自由裁量にまかされているところであり、仮に、これを除籍するなどした
としても、それが直ちにその著者との関係で違法になることはないと考えられる」として、原告側の訴えを退けている。


●2004/03/03 控訴審判決 東京高裁

 本控訴審判決は、事実認定および原審にて既に争われた論点については原審判決を採用した上で、追加の控訴趣意に対して、
 (1) 検閲とは行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、発表前にその審査をした上、不適当と認めるものの発表を禁止することをいうものと解されるから、本件除籍等はこれに該当しない。
 (2) 不合理な差別的取扱いを受けたとしても、それについて不法行為が成立するためには、控訴人らに侵害されるべき法的権利ないし法的保護に値する利益が存することが前提となるから、取扱いが不合理であることにより直ちに損害賠償請求権が発生するとは解されず、控訴人らの主張は採用できない。
 (3) 公貸権は、控訴人らの主張によれば、書籍が図書館に所蔵され閲覧に供されることにより著作者らが被る経済的不利益に関する議論であり、本件で侵害されたとする控訴人らの利益が法的権利ないし法的に保護されるべきものであることを直接根拠づけるような内容にまでその議論が及んでいるとは理解し難い。
 との判断を下し、控訴棄却を言い渡した。

 (「つくる会」HPより)


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2005/06/02  上告審 口頭弁論 
          (最高裁第一小法廷 横尾和子裁判長)


 13:20 入廷して傍聴席の2列目中央に着席。原告(上告人)席には、すでに西尾幹二氏と井沢元彦氏の姿があった。被上告人席にも、弁護人などの関係者が5名ほどスタンバイしている。

 きょろきょろ見回すと、傍聴席には若い学生さんらしき人も混じっている。最高裁の入り口で金属探知器を通るとき、「今日は、大学生の人も傍聴に来てらっしゃいますけど、授業か何かですか」と警備員さんに聞かれてしまったのを思い出した。「いえ、私ひとりです」と答えたのだが、今年三十路を迎える私が、学生に見られている場合ではない。おそらく、ラフすぎる服装のせいだろう。

 13:30 5人の最高裁判事が入廷し、全員が起立して一礼。裁判長が両当事者に対して、上告趣意書と答弁書の陳述を確認した後、他に陳述することは無いかと促した。

 まずは西尾氏が起立して口を開く。3つの点について述べたいと前置きして弁論を開始。

 
■ 判決についての個人的印象

 日本国の公立図書館から、著書を処分されるというのは計り知れない屈辱。公的機関から差別されたという屈辱である。

■ 歴史的・公的意見として

 廃棄された私の著書9冊のうち7冊は、「つくる会」発足以前のもので、人生論について書いたような内容である。それらを無差別に廃棄されたというのでは、なんらかの組織に属していることが悪いことのようにされる。これは集団の罪や全体主義と質的に同じ。
 

■ 焚書とはなにか

 歴史の抹殺である。一国の人々を抹殺するには、その人々の記憶を消し去り、新しい記憶を植え付ければいい、といわれる。それが本を消す、歴史を消すということにつながっていく。
 少し大げさな話になるが、スペインは「闇の歴史」を背負ってしまったがために、先進国としてなかなか表に出て来られない。スペイン軍によるインディオの侵略については「インディアスの破壊についての簡潔な報告」(岩波書店)に詳しい。イギリスやオランダは、そのことについて世界に広めていったが、スペインは反論の書を書かなかったために、最大級の自虐国家となってしまった。

 敗戦直後の日本で、検閲があったのは知られているが、焚書もされたことはあまり知られていない。なぜ、日本が戦争に突入していかなければならなかったのか、その自己弁護すらできなかったのである。どこか強くつながる問題ではないか。

 本件は、左翼イデオロギーによる、相当犯意の濃い、個人でなく団体の罪である。


 
 次に、西尾氏とは少し主張根拠が違うということで、井沢氏も弁論。
 

 これは、民主主義に対する挑戦である。相手が自分と違う意見を述べても、それを認めるのがルールであり、出版された内容を自由に読めなければ意味がない。
 歴史上、数多くの焚書がなされてきて、ナチスドイツによるそれが最後かと思っていたが、今回の事件である。

 私は船橋市在住で、10年以上住民税を払っている市民である。まさか、そんな身近で焚書が行われるとは思わなかった。市からの謝罪もない。ただ、これは個人的憤懣についてであり、大した問題ではないが。

 これを認めれば、たとえば訴訟の相手方を支持する判決文が気に入らなければ処分することも可能ということになってしまう。この野蛮な行為に対して、厳しく処断されることを望む。右とか左とかではなく、民主主義に基づく最低限のルールを問題としているのだ。

 最後に弁護人から。


 本件は船橋市民の知る権利を侵害しかねない問題。なにも、図書館に対して、ある著書を購入せよと求めているわけではない。もともと図書館員によって広く閲覧に供されていた蔵書を、司書が単なる好き嫌いで処分したことを指摘したい。

 図書館利用者からの「最近、あの本が無いね」という素朴な申し出を不当に無視した。単なる司書一個人の問題ではなく、広く、公立図書館の健全な運営の問題である。また、一公務員の意図で、言論が不当に妨げられてはならないという、民主主義の問題でもある。

 地裁や高裁が、旧来からの意識にとらわれすぎ、高い見識を見せてこなかったのはまことに遺憾である。こうして最高裁が弁論を開いてくださったことに、深く敬意を表するものである。


 被上告人からは、「答弁書の通り」とのことで、特に口頭で述べられることはなかった。

 判決期日は、7月14日午前10時30分と指定され、13:50に閉廷した。

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2005年7月13日 (水)

大法廷を傍聴してきました … 【在外邦人選挙権訴訟 最高裁口頭弁論】

>>> 在外投票権、初の憲法判断へ 最高裁大法廷で双方が弁論

 「海外に住む日本人の国政選挙での投票が制限されているのは参政権を保障した憲法や国際条約に違反する」として、在外邦人らが国を相手に、違法確認と損害賠償を求めた訴訟で、最高裁大法廷(裁判長・町田顕最高裁長官)は13日、双方から意見を聴く弁論を開いた。原告の1人、若尾龍彦さん(64)は「大勢の国民が海外に住むようになった現状に適切な法改正を行ってこなかった国会は怠慢だったといえるのではないか」と主張。国側代理人の大竹たかし・法務省訟務総括審議官は「海外の有権者が当分の間、選挙区選挙について選挙権を行使できないことは、必要かつやむを得ない制約であり、立法府の裁量の範囲内にある」と反論した。

 大法廷は秋にも判決を言い渡し、在外邦人の選挙権を巡る初の憲法判断を示す見通しだ。

 在外邦人の選挙権行使については長年、衆院選と参院選のすべてで認められていなかった。98年の公選法改正で衆院と参院の比例区についてだけ認められたが、選挙区については認められていない。

 一審・東京地裁は99年、違法確認の訴えについては「法律上の争いに当たらない」として却下。賠償請求も棄却した。二審・東京高裁も00年、原告側の控訴を棄却した。 (朝日新聞)

 書いても特に問題がないと思われますので書きますけれども、私の隣の傍聴席に、偶然、辻元清美衆議院議員が座ってらっしゃいました。とはいえ、閉廷して間もなくしてから、中年男性が「辻元さん!」と声を掛けるまで、私はまったく気づかなかったのですが。

 奇しくも今日、2003年の衆院選に関する議員定数不均衡訴訟の審理が、大法廷へ回付されたと発表されました。この選挙も、鈴木宗男元議員が立候補したり、福岡2区で山拓と古賀氏が激戦を繰り広げたりと話題になりました。
 また、翌年7月の参院選に関する不均衡訴訟についても、「そのうち必ず(最高裁へ)上がってくる」と町田長官は憲法記念日の会見でおっしゃってます。執行猶予中の辻元候補が『おわび選挙戦』を繰り広げた大阪選挙区で71万票を獲得したものの落選し、別の鳥取か島根の候補者が15万票あまりで当選した選挙。記憶にも新しいところです。

 昨年は1回しか判決が出されなかった大法廷ですが、にわかにヒートアップしてきましたね。

 【傍聴録】
 14時に最高裁判事14名が勢揃いし、厳粛な雰囲気の中で審理開始。新任の堀籠判事など、私が初めて拝見する裁判官もいらっしゃいます。
 まずは、お決まりの手続きとして、両当事者から提出された書面を陳述するかの確認をする町田裁判長。途中、セリフを少しとちり気味でした。大法廷以外では裁判現場にタッチしない長官ですので、ひさびさの舞台に緊張しておられるご様子、などと書いては失礼か。

 【意見陳述】
■上告代理人・北村氏
 まず、最高裁判事に向けて、大法廷弁論の機会を与えていただき感謝する旨を述べて始まりました。
 相手方の国が主張する「在外日本人の把握の困難」については、実務上特に問題はないことを詳細に述べておられました。その詳細部分については、私のメモが付いていけませんでしたが(恥)
 また、「在外日本人の、選挙に関する情報不足」という主張に対して、衛星テレビやインターネットなどで、日本に居ながらに得られるものと同等の水準の情報が入手可能であると反論。
 さらに、在外邦人に十全な選挙権を認めないのには「選挙権行使の公正を確保し、投票の混乱を回避する」という目的があるという主張に対しては、このような抽象的な理由で、憲法が認めた選挙権をすべて制約することはできないとしました。

 そして、憲法15条1項では、公務員の選定罷免権が認められているが、司法的救済が与えられなければ、それを「権利」と呼ぶことはできない、としました。続けて、原審や第一審が、本件の提訴を「却下」したことについて、立法措置の違法確認の訴えも、行訴法上の実質的当事者訴訟に含まれると主張していました。

 次に、在外邦人の選挙権剥奪は、重大な人権侵害であるだけでなく、社会的に大きな損失であると、以下の統計データを提示。

 敗戦直後の在外邦人      約24万人
 1996年(当訴訟の提起当時)  約76万人 (うち有権者 約61万人)
 2003年(最新統計)        約91万人 (うち有権者 約72万人)

 これは最小選挙区で換算すれば、衆議院議員3人を選びうるだけの人数であると付け加えておられました。

 「ふるさとは とおきにありて おもうもの」 この想いは、現代においても決して変わるものではなく、彼らが外国で働き学びしたことを持ち帰ってきたからこそ、今の日本の発展があるのだと。現代では日本に戻らない場合も多いかもしれないが、彼らにも選挙権を認める道を模索することが最高裁の崇高な理念であると締めくくりました。

 
■上告代理人・二関氏
 若手弁護士らしき方。まず憲法15条や43条といった選挙権の一般論や、数々の判例について言及。国民の選挙権は、表現の自由と並んで民主政プロセスの中核を成すもので、その制約については、いわゆる厳格な基準によるべきと、最高裁判事に向けて、判例・通説をあらためて説明。

 次に本件の選挙権制約の特徴について。たとえば、定数不均衡訴訟では、「一票の価値」の格差はあるが、選挙権がまったく奪われているわけではない。しかし、在外邦人はたとえ投票所へ行っても投票できないのであって、いわば「定数不均衡の極限的状態」であると主張しておられました。
 それだけに選挙権制約が重大であり、定数不均衡より救済の必要性が高い、ということでした。

 
■上告代理人・近藤氏
 この方はおもに「法の下の平等」の観点から主張を展開してらっしゃいました。
 本件は、有権者に日本国籍があるのに、彼・彼女がどこに住んでいるかで差別されるという点で、定数不均衡の問題と基本的に同様の構造だと指摘。
 しかし、日本に住んでいるかどうかで選挙権の取り扱いを区別する目的が存在せず、自治体による住民票管理の便宜のために差別されるのは不当であると主張していました。

 最高裁の判例では、おおよそ、衆院選では1対3、参院選では1対6の格差までが許容範囲とされているが、本件は、いわば「1対無限大」の格差だと説明。さらに、憲法は「信条」などの後天的要素による差別も許さず、その区別的取り扱いには違憲性の推定が働くが、「住所地」での差別も同様だとしました。

■上告代理人・林氏
 この女性弁護士は、国際人権規約25条や、国際人権委員会の一般的勧告・選挙権保障措置について、いろいろ話されていました。これらは「すべての市民に選挙権を与えろ」と言っているらしく、その「市民」には、ホームレスですら除外されていないということでした。いわんや在外邦人をや、という主張なのでしょう。

 あとは、条約と法律の関係について、一般論を述べていました。

■上告代理人・古田氏
 丸顔にメガネ、蝶ネクタイで、うちわで扇ぎながら開廷を待つ姿から、どんな興味深い理論構成を展開なさるのかと期待しておりましたが、風貌に似合わぬ爽やかな弁舌で、至極まっとうな主張をしておられたので、少し拍子抜けしました。まぁ、弁護士は主張内容で個性を出しても金にはなりませんから、それで結構なのですが。

 この方は国家賠償法について重点的に絞って相手方を攻撃。まず、著名な1985年判決(在宅投票制度)での基準について(※国会議員の立法行為であっても、立法内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うような、容易に想定し難いような例外的な場合には国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受ける)、

 「では、本件は『例外的な場合』に該当するのでありましょうか。答えはYesであります」

 すかさず、選挙権侵害は、『憲法の一義的な文言に違反』しているのが明らかで、公選法に不備、つまり、国会の立法行為に不備があった、はなはだしい憲法違反の状態だと主張。
 1984年4月に、在外邦人の投票を認める公選法改正案が提出されたが、86年の衆院解散により廃案となって、その後10年間放置されたという事実関係を指摘しておられました。

 「そもそも、昭和60年判決の規範は適切なのでありましょうか。答えはNoであります」

 憲法41条は、国会が何の制約もなく活動できることを保障しているものではなく、同98条や99条の制約で、憲法を遵守しなければならない。最高裁が今回も昭和60年判決のような極めて狭い基準を採用するのであれば、立法府の怠慢を追認することになり、最高裁の役割を忘れたものといわざるをえない。三権分立の存在を否定し、「憲法の番人」としての役割を自ら抹殺することであると訴えてらっしゃいました。

■上告人代表・若尾氏

 米ロサンゼルスに在住の方。外国に駐在する日本人が急増し、われわれの現地での評価が日本という国の評価につながるような存在である。「日本という国は、外から見たらこう見えるよ」ということを、日本の人たち、また国政にも伝えたいと思っている。

 1996年の総選挙に際して、在外邦人が投票できないという事実を確認するための運動をしてきた。
 (1)投票用紙を配布するよう要求したが、「選挙人名簿に載っていない」との理由で断られた。
 (2)総領事館に出向き、投票用紙の発行を求めたが「そのような事務はしていない」との理由で断られた。
 (3)投票日当日に、浦和市の選挙区で直接交渉したが、やはり断られた。

 私は法には疎いが、法律は完全無垢なものより、現実に即して移り変わるものがいいと思う。それが「自分の社会は自分で創る」という、民主主義社会にあるべき姿であると思う、と話しておられました。


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■被上告人・大竹氏
 基本的には答弁書に書いたとおりだが、2点だけ付け加えたい。

・ 平成10年改正前の公選法は、憲法に違反していない。
   一定の期間(3ヶ月間)、一定の住所に居住することを条件とすることは、不正な投票を防止し、混乱をなくすために必要やむを得ない制度である。
   選挙人の調査については職権で行えるが、海外に住む者については、わが国の調査が十分に及ばず、かえって不平等な結果を引き起こすことになる。
   また、在外邦人の投票を認めようとする場合、郵便投票の是非や、二重投票の回避など、さまざまな問題点が生じる。これは国会の裁量事項である。


・ 改正後の現行公選法は、憲法に違反していない。
   選挙区選挙については、候補者の政党や政策などを有権者に十分に周知させる必要がある。選挙運動期間という短い間に、世界中へ散らばる邦人へこれらの情報を知らせるのは難しい。


 

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2005年7月12日 (火)

エクボちゃん

>>> ひょう被害のサクランボ「エクボちゃん」発売

 サクランボの収穫直前にひょう被害を受けた山形県河北町で、生産者を助けようと地元の農協が傷の浅い実の出荷を始めた。商品名は「エクボちゃん」。

 同県では5、6月に計3回ひょうが降り、今年の予想収穫量の約5%に当たる約600トンの減収見込み。中でも河北町は栽培面積の4分の1以上が被災し、過去最悪の被害となった。

 傷のないものより3~4割安く、各地から問い合わせが来ている。農協担当者は「生産者に笑顔が戻ってくれれば」。「赤い宝石」の小さなエクボに、大きな期待をかけている。(毎日新聞)6/17

 これは、人間の逞しさの勝利といえるのではないでしょうか。味が変わらないというんであれば、普段高価で買わない(買えない)人たちも試し食いできそうですし。山形の高級サクランボといえば「佐藤錦」ですけど、たしか1粒100円とかが相場ですよね……。4割安くなっても1粒60円です。1粒売りっていうのがあれば、私も買いますけど。

 笑うとエクボが出てくるような女の子は素晴らしいですよね。でも、そういう人って絶滅が危惧されているような気がします。とくに東京では。
 「エクボちゃん」が減りつつある現象には、なにか客観的な原因があるんでしょうか。それとも「東京にいる人間は冷たい」という先入観のせいで、私が見過ごしているだけなのか。

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2005年7月11日 (月)

さよなら破壊王

 電子投票で大失敗を喫した「民主制度の破壊王」岐阜県可児市議選の再選挙は、8月21日投開票と決定しました。さすがに、今度は自書式のアナログ投票だそうです。

 名古屋高裁判決は、市選管の不手際を厳しく追及していましたが、本来は電子投票システムの構築を請け負った民間企業(ムサシ・富士通グループ)も同様に責められるべきです。プロの技術者としてあるまじき初歩的ミスを犯したにもかかわらず、世間の批判から隠れている感じになっているのが不可解なのです。
 電子投票よりもずっと複雑な金融ネットワークが、まがりなりにも稼働しているのは、そこに市場原理という「緊張感」があるからだと考えます。そのネットワークにエラーが出れば、最も痛い目に遭うのは信用が失墜した企業側です。それを思うと、市場原理という世間の常識を外れた「電子投票利権」のもとでは、彼らに専門家としてのプライドがなければ「やっつけ仕事でもいいか」と考えてしまうのは自然の流れです。システムを精巧に組もうが適当に作ろうが、どっちみち自分たちの立場は安泰なんですから。

 可児市側は、電子投票システムの請負企業に対して賠償請求も辞さないとコメントしているようですが、当然のことです。最低限の職業モラルを確保するためにも。

 アンディ・フグのときよりも寝耳に水でした。あまりにも早すぎる死ですよね。……やっぱり、これはステロイドの影響? あんまり憶測を書くのはよくありませんが。

 観客を楽しませることに人生を捧げたプロフェッショナル、橋本真也選手のご冥福をお祈り申し上げます。

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2005年7月10日 (日)

電子投票に明日はあるか?

電子投票普及協同組合
 (↑平成元年から過去16年にわたって、電子投票の普及・推進に尽力し、少しずつ信頼を構築してきた組織です。それだけに、電子投票に対する信用を1日で崩してくれた可児市や投票システム請負業者に向けられた底知れぬ怒りが、今回の判決に対するコメントの端々に感じられます)


 世界史上初の「電子投票無効判決」で、司法府から選挙やり直しを命じられてしまった岐阜県可児市。それを受けて、山田豊 市長が辞意をほのめかす発言。

 「自らの責任は再選挙後に、それなりの対処をしたい」

 3月の名古屋高裁判決の直後には、「(電子投票トラブルへの)苦情の手紙やメールなどまったく来ていない。なんの問題もない」と開き直っていた市長なのに、それにしては、お利口さんなコメントです。
 
 一方で、原告(被上告人)側だった市民団体「電子投票を問う会」の代表者は、おととし7月20日当日、トラブル続きでまったく前に進まない投票所の行列に嫌気がさして、投票をあきらめて帰ろうとした有権者170人以上に対して、直に「証人になってほしい」と頼み込み、うち20名ほどに、その場で陳述書を書いてもらっていたそうです。その努力が、「お粗末な電子投票のせいで、選挙結果に影響を与えた」という認定につながる一因となったのでしょう。
 しかも、この選挙無効訴訟に対して、「電子投票を問う会」は代理人を付けずに本人訴訟で臨んだとのことです。弁護士を依頼しなかったことに何か特別な理由があったのかどうかは定かではありません(経費削減?)が、こういう団体でも、ちゃんと地に足を付けて理不尽と闘っている人々もいるんだなと思いました。「市民団体」という存在に対する私の偏見が、2%ぐらい緩和されたかもしれません。

 選挙という民主政治の根幹にかかわる制度で、電子投票というものを「電子手帳」か何かと同じくらいの感覚で、軽々しく採用していいものかどうか。この機会にあらためて問われるべきです。
 電子投票のメリットとされているのは、おもに「開票速度」と「バリアフリー」ですが、そのメリットは、「投票の秘密への疑念」「厳密には再集計不可」といった、民主主義がさらされるリスクを凌駕して、なおありあまるものなのでしょうか。

 ・色覚障害の人のために画面の色合いを調整
 ・視覚障害の人のために音声案内を付ける
 ・お年寄りのために文字の大きさや台の高さを調整
 ・画面に指紋が付着して、投票の秘密が侵害されないよう、「タッチペン」を採用する
 ・画面上で候補者の顔写真やプロフィールを確認できるようにする

 ……などといったバリアフリー対策や投票秘密の確保は、従来の投票用紙に鉛筆で書く方法の領域でも、十分に実行できたことばかりです。それに、「開票結果がすぐにわかる」といった要素は、かならずしも有権者にとってのメリットとして直結しません。メルマガにも書きましたが、日曜日の晩、あの開票を待っているときのドキドキ感や、やきもき感、すっかり血の気の引いた候補者たちの表情だとか一面ピリピリムードで支配されている事務所の空気をテレビで眺めながら、それをつまみにのんびりビールを飲むのを楽しみにしている国民も少なくないんです。
 ああいう選挙特番で、時間とともに開票率や得票数が少しずつ動いていく様子が、かえって「選挙戦が争われている」という演出になって、民主主義を構成する一員としての実感がちょっとだけ湧く効果もある、……というふうに私は見ております。

 選挙管理委員会側にとっては、「開票作業の手間が省ける」といった類の意識でしょうが、有権者にとっては、その手間の削減が『人件費(公費支出)の削減』として目に見える形であらわれてこなければ腹が立つばかりです。その程度の動機だったら、わざわざ投票所に機械を持ち込むことなんかないし、田舎のジジイが「電子投票!電子電子!」なんて、無理して背伸びしてもらわなくてもいいんですよ。
 ちなみに、日本初の電子投票採用ケースとなった岡山県新見市では、電子投票ぶんの開票は、わずか2名で25分で終了したそうですが、不在者投票は従来どおりの投票用紙方式でした。なので、開票の手間としてはそれほど劇的に効果が表れたわけではなかった模様です。そのへんが、役人たちに一貫して抜けているコスト意識の低さでしょうかね。まぁ、クレジットカードで借金しとるような売れないライターに、コスト意識を問われたくないでしょうが。

 一方で、新見市の電子投票全体に投じられた予算は、約1億4620万円。前回のアナログ投票の実施よりも約2700万円増(電子投票がらみでの純増は約1280万円)という結果になったそうです。電子投票機を導入する計画に対しては、国から補助金がおりているはずなんですが、その具体的な額などについては明らかになっていません。なお、当年度に総務省は電子投票補助金の予算として約4億円を計上しています。だとしたら、かかった費用を全額補助金でまかなえたんでしょうかね……。

 ただ、新見市での電子投票のサポートは、前述の「電子投票普及協同組合」が行ったそうで、可児市のように民間企業(ムサシ・富士通・富士通フロンテック)がベンダーとなったケースでは、もっと費用がかかっていたとも考えられます。投票機はレンタルだそうですが、その機械を管理・維持するために、専門の技術者を派遣してもらって待機させていたら、開票で減らせたはずの人件費をまわしてきても足りないんじゃないでしょうか。

 ひきつづき、資料を探してみます。


 

【参考過去ログ】
 トラブル続発の電子投票 選挙無効判決が確定(7/7)

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2005年7月 9日 (土)

来週の判決スケジュール

7月11日(月)
 【東京高裁】
 埼玉 愛犬家4人連続殺害事件 控訴審(一審:死刑)

7月13日(水)
 【さいたま地裁】
 社員寮放火・重過失致死事件(求刑:懲役12年)

 【東京地裁】
   衆院事務局発注の工事をめぐる汚職
    元電気施設課長:受託収賄容疑(求刑:懲役2年 追徴100万)
    電気施設会社元社長ら:贈賄容疑(求刑:懲役1年6ヶ月)

7月14日(木)
 【松山地裁】
  出所直後 19歳女性を監禁強姦殺害した容疑(求刑:無期懲役)

 【神戸地裁】
  県警 機動パトロール隊員 捜査書類ねつ造(求刑:懲役2年)

7月15日(金)
 【東京地裁】
  宗教法人「法の華三法行」代表・詐欺容疑(求刑:懲役13年)

 いよいよ「法の華」教祖 福永“最高ですか”法源容疑者に刑事判決が言い渡されます。詐欺罪の最高法定刑は、懲役10年なのですが、おそらく疑われている詐欺の犯行が多くて、併合罪加重(刑法の規定により、最高刑を1.5倍まで引き上げられる)されたのでしょう。民事では、全国各地で元信者の皆さんが損害賠償訴訟を起こして、実際に巨額の賠償命令が出されています。

 そのうえで、検察官は2月、懲役13年を求刑しました。有期懲役で法定刑の上限いっぱい(※本件では懲役15年)での処罰を求めるということは、よっぽどの悪質さが無い限りなされない慣行ですが、本件は「よっぽど」でいいんじゃないですかねぇ……。

 だって、「足裏診断」などと称して、「ガンになる」などと、お年寄りの弱みに付け込み、800億円以上ダマしとってるんですよ。宗教という高尚な体裁をまとっているぶん、単なる詐欺よりも根深いあくどさがあります。

 金儲けは結構ですが、その儲けは、お客さんの幸せや笑顔と引き替えでありたいものです。

 ひょっとしたら、現世で得た経済力を持てあました方が信者になって、怪しげな「研修」や「天声グッズ」などに有り金を注ぎ込んでいるケースも少なくないのかもしれません。そうして、お布施や寄付などの形で教団に尽くしている信者ご本人が幸せならば、それでいいじゃないかという意見も論理的には成り立ち得ます。
 ただ、そうした信者たちの自己犠牲に対して、教団側はどう応えたのか、何を返したのかは問われるべきでしょう。それでも、宗教活動の内容は金銭価値に換算しづらいので、認定はムズカシイといえば難しいのかも……?

 もしかして検察側は、信者から奪った800億円に見合うだけの価値ある宗教活動をしていた可能性があると見ているのでしょうか。もっともらしく「ガンになる」などと告げており、詐欺は詐欺だろうが、凶悪な詐欺事件だと断定できないため、その自信のなさが、最高刑から懲役2年分を引いた求刑として現れてしまった、というのは穿った見方でしょうか。

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2005年7月 8日 (金)

さらば司法修習生

 7日6時25分ごろ、鳥取市川端5のマンション(13階建て)敷地内で、男性(27)が倒れているのをマンションに住む女性(50)が発見。鳥取署員らが通報で駆け付けたが、男性は頭の骨などを折り死亡していた。自殺とみられる。男性は同市内に住む司法修習生で、マンションの13階から飛び降りたらしい。  鳥取地検などによると、男性は6月29日から同地検で司法修習を始め、6日まで休むことなく修習し、事件捜査にはかかわっていないという。同地検は「修習が始まったばかりで残念」とコメントした。(鳥取署調べ)(毎日新聞)

 おいおい、司法試験に7回落ちてあきらめて、日雇いのバイトで食いつないどる私が、こうして生きとるのに……。むちゃくちゃ腹が立つけども、ご冥福をお祈りします。

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トラブル続発の電子投票 選挙無効判決が確定

電子投票の市議選「無効」が確定 岐阜県選管の上告棄却(朝日新聞)

 裁判長の今井判事は、国民審査の対象判事なのですが、今回の判断は「上告理由がない」という手続違背で切っていますので、事件の中身にはまったく触れていません。
 もし、郵政民営化法案のゴタゴタで衆議院が解散になれば、この今井判事にも罷免の「×」を付けるか否かの選択を迫られるわけですが、まだ前回の審査から1年半しか経過していませんので、ほとんど材料が蓄積していない状態なんです。大法廷の審理では、裁判官個人の価値観が出やすいと言われていますが、今のところ、ほぼ唯一の大法廷判断だった今年1月の「在日韓国人に対する公務管理職受験拒否事件」にも、今井判事はタッチしてませんし。これじゃ、実効的な審査はできませんよ。

 以前のエントリの繰り返しになりますが、現時点での衆議院解散は回避していただきたいなと思います。

 今すぐ、国費を投じて総選挙をしなければならない高度な必要性があるのなら、百歩譲って国民審査が多少おざなりになっても仕方がないかもしれません。

 ただ、法案が参議院で否決された場合に、衆議院が解散されるのって、何か意味があるんですか? 目的が挫折した失意の小泉さんが、単なるヤケクソで権限を行使しようとしてるだけのようにしか見えないのですが。たとえ僅差でも可決は可決なんですから、それでも参院で否決されたときに選挙を強いられるというのであれば、衆議院のセンセイたちは、誰かの罪をかぶって上司から叱られるような心境のはずです。いや、落選したら職を失うんですから、リスクはそれ以上かもしれません。

 閑話休題。こういう選挙無効裁判は、

 1審:市町村の選挙管理委員会
 2審:都道府県の選挙管理委員会
 3審:高等裁判所
 4審:最高裁判所

 …というシステムになっているのですが、本件における3審(司法での1審)である名古屋高裁の認定事実は、以下の通りです。


○「多数が投票あきらめた」エラー続発の電子投票は無効 ○
 …名古屋高裁(3/9)

 【 原  告 】落選した候補者ら 市民15人(岐阜県可児[かに]市)

 【 被  告 】岐阜県 選挙管理委員会

 【 請求内容 】選挙無効の申し立てを棄却した、被告による裁決の取り消し

 【 根拠法条 】公職選挙法第205条

 【 認定事実 】
  2003年7月20日投開票の岐阜県可児市議選(定数24に29人が立候補)では、29カ所の投票所で投票サーバー58台、投票端末機189台を使い、電子投票を実施した。午前7時から投票が開始されたが、午前8時半ごろから午前9時半ごろにかけ、各投票所の投票機に投票記録の失敗や記録の遅延という異常が発生した。

  異常の発生は、投票サーバーの放熱ファンの位置を変更したことなどにより、サーバー内部の放熱が不十分となって温度が規定値より上昇したため。電源を切って再起動したり、第2サーバーに切り替えたり、本体の扉を開けてうちわであおぐなどの対応が取られた。

  異常が3回発生した投票所や、回復が午前11時以降になった投票所があり、異常が最も長くなった投票所では1時間23分に達し、全29投票所の合計は15時間33分だった。異常発生中は記録の失敗や遅延もあり、成功、失敗が混在した状態だった。

 (1)最後まで投票できなかった投票カードが13枚。
 (2)投票の記録の失敗が97件。
 (3)一時的とはいえ、記録媒体に記録された516個の記録を削除。
 (4)投票の記録ができたのに端末が情報を受信できず不良カード
  として処理したカードが25枚。
 (5)操作端末に挿入した後で、排出されないなどで正常に使用で
  きなかったカードが26枚。
 (6)最後まで投票できたと認識できなかったカードが発生したた
  め、別のカードを交付して再度投票させた投票所があった。
  すべてが二重投票になったわけではないが、少なくとも9人が
  二重投票になったと確認されている。
 (7)広見第二投票所(※広見公民館ゆとりピア)では、投票機を
  提供した会社の従業員が、画面のタッチ感度を調整中、操作を
  誤り「終了」ボタンに触れた。
 (8)塩河投票所から開票所に送られた記録媒体には封印がなかっ
  た。他2投票所で、記録媒体の扱いに誤りがあった。


  可児市選管が発表した選挙結果は、投票総数4万6594票で、有効4万6526票、無効68票。投票機の操作を途中で終了したのは262票だった。最下位当選者の得票は1361票、次点は1326票。

  岐阜県選管が選挙後に調査した結果、投票者数と投票数の差は計24票で、カード発券数は投票者数より34枚多いことが判明した。

  (※以上、四国新聞「電子投票訴訟の判決要旨」より)


  その後の調査で、被告は選挙当日に備えて、本番並みの負荷をかけたリハーサルを行っていなかったことなどが判明した。被告は、原因究明のため、可児市で4回にわたって現地調査を行うなどし、2004年9月10日、「選挙は有効」とする裁決を下していた。

 【 原告主張 】
  最下位当選者と次点者との得票差は35票しかなかった。電子投票システムのトラブルで、のべ約17時間もの間投票できず、棄権した有権者は、約2200人いた。

 【 被告主張 】 
  調査の結果、選挙結果に影響を及ぼす恐れがある票数は24票。次点者との得票差の範囲内であり、選挙結果に変動はない。投票所で待機した有権者数は、少なくとも1000人程度いたと思われるが、投票所にいた職員らが見た範囲では、帰った有権者はいない。


 【 判  決 】 ● 裁決取り消し(選挙無効を認定) ●


 【 判決理由 】
  <選挙の違法性について>
  (7)広見第二投票所で、有権者でない者が「終了」ボタンに触れた点は、過失とはいえ、公職選挙法に違反する。
  (8)塩河投票所の記録媒体に封印がなかった点は、電子投票法施行令に違反する。

  その他(1)~(6)の異常などで、受付前で待機した有権者は1000人を相当上回り、投票せずに帰った人も多数いたと認められる。投票機に異常が発生しても短時間で解消されなければならないのに、多くの有権者を待機させ、投票を断念する有権者がいたことが認められ、選挙の公正かつ適正な執行を妨げた。

  選挙管理については、市選管と投票管理者の間でカードの受け渡しに関する記録が作成されていなかった。カードの再発行に関する経緯も記録されておらず、有権者の信頼を損ねただけでなく、選挙事務に重大な誤りを生じさせる可能性があったといわざるを得ない。
  投票機に異常が発生し投票の記録が確実に行われることが保証されていない状況で、投票を行わせたことも不適切だったといわざるを得ない。

  いずれも電子投票法の条件を満たしていない状態にあった。

 <選挙結果に異常をもたらす恐れについて>

  異常を及ぼす恐れがあると認められる票は、(6)二重投票や(1)投票の失敗などで計27票である。最下位当選者と次点の得票差は35票で、受付前に待機しながら投票しないで帰った者の票が8票以上あれば結果が変わることになる。

  投票機の異常は午前中にほぼ解消し、午後からは支障なく投票できる状態にあり、投票時間も午後8時まで確保され、選管が同報無線で復旧状況を知らせていた。

  しかし、投票を済ませずに帰った選挙人の数は多数に上り、無視できない多数の有権者が、仕事や余暇の都合で再度投票所を訪れることができず、投票をしなかったということも推認できる。

  投票機が法の条件を一時的に備えていない状態で、選管の過誤により最下位と次点の得票が逆転する恐れがあり、選挙結果に変動をもたらす恐れがあると認められる。選挙は無効である。

  (※以上、四国新聞「電子投票訴訟の判決要旨」より)

 【 原告談話 】
  こんな選挙を認めたら、民主主義の崩壊と思って争ってきた。選挙は有効とする県側の主張を一つずつ崩した。認めてくれて感激している。 可児市では、実施に必要な情報公開や説明がなされておらず、そのような自治体では電子投票をすべきではない。(原告代表)

 【 被告談話 】
  選管の裁決が取り消されたことは残念。判決を精読し、今後の対応を検討したい。(※まもなく上告。現在、最高裁に係属中)

  可児市長「選挙が無効とされたことは残念至極。県選管は上告して最後まで争ってほしい」

 【 裁 判 長 】青山邦夫


 電子投票の方式には、「スタンド・アローン」と「クライアント・サーバー」という2つの方式があります。

 スタンドアローンは、電源コード以外の配線が不要な分、構築が簡単に済むので、トラブルが生じにくいという利点があります。現に、スタンドアローンを採用して選挙を行った日本の自治体で、大きな支障が発生したということは報告されていません。しかし、投票機がそれぞれ記録するため、フラッシュメモリの数が増え、集計が多少面倒になるため、有権者人口の比較的少ない自治体向けだとはいわれています。


■スタンド・アローン方式■ 

    □
 (入力・記録)
 
    □
 (入力・記録)

    □
 (入力・記録)


 一方で、クライアントサーバーは、各投票機の記録を、サーバーに集約させるため、多数の投票を効率的にさばくことができますが、システム内の1箇所にトラブルが発生すると、その投票所が全て機能しなくなる可能性があります。日本の自治体選挙で生じた電子投票トラブルは、すべてクライアントサーバー方式を採用した場合でした。
 もちろん、本件の岐阜県可児市も、その例から漏れるものではありません。夏場の密室で、コンピュータにとっては過酷な状況だったにもかかわらず、投票日のシミュレーションをほとんど行っていなかったことも、トラブル連発の一因だったようです。

 そのため、昨年11月28日の三重県四日市市議選では、有権者数23万人という比較的大きな規模の自治体だったにもかかわらず、大事をとってスタンドアローン方式を採用し、何事もなく終了しました。


■クライアント・サーバー方式■

    □ 
   (入力)\
         \
    □-----■(記録)
   (入力)  / ※サーバー
       /
    □ 
   (入力)

◆ 公職選挙法 第213条(争訟の処理)
1 本章に規定する争訟については、異議の申出に対する決定はその申出を受けた日から30日以内に、審査の申立てに対する裁決はその申立てを受理した日から60日以内に、訴訟の判決は事件を受理した日から100日以内に、これをするように努めなければならない。
2 前項の訴訟については、裁判所は、他の訴訟の順序にかかわらず速かにその裁判をしなければならない。

◆ 公職選挙法 第34条(地方公共団体の議会の議員及び長の再選挙等)
 地方公共団体の議会の議員及び長の再選挙(※中略)は、これを行うべき事由が生じた日から50日以内に行う。


●被告(県選管)が上告関連書類を最高裁に郵送……3月18日
 それから112日経過しての判決なので、「百日裁判」の努力義務は、いちおうクリアしたとみてよい。

●今日(7月8日)から50日後の「再選挙タイムリミット」……8月27日 



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2005年7月 7日 (木)

郵政民営化は憲法違反?

◆ 中央省庁等改革基本法 第33条(郵政事業)
 政府は、次に掲げる方針に従い、総務省に置かれる郵政事業庁の所掌に係る事務を一体的に遂行する国営の新たな公社(以下「郵政公社」という。)を設立するために必要な措置を講ずるものとする。
  一  郵政公社は、第17条第7号ロに定めるところによる移行の時(※この法律の施行の日から起算して5年を経過する日[2003年6月まで])に、法律により直接に設立されるものとすること。
  二  郵政公社の経営については、独立採算制の下、自律的かつ弾力的な経営を可能とすること。
  三  主務大臣による監督については、法令で定めるものに限定するものとすること。
  四  予算及び決算は、企業会計原則に基づき処理するものとし、その予算について毎年度の国会の議決を要しないものとするほか、繰越し、移用、流用、剰余金の留保を可能とするなどその統制を必要最小限のものとすること。
  五  経営に関する具体的な目標の設定、中期経営計画の策定及びこれに基づく業績評価を実施するものとすること。
  六  前各号に掲げる措置により民営化等の見直しは行わないものとすること。
(※以下略)


◆ 日本国憲法 第73条
 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
  一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
(※以下略)


 普通の感覚だと、郵政民営化法案と併せて、この中央省庁基本法の改正についても国会で審議を尽くすべきじゃないかという印象を受けてしまうのですが。
 そこで、国会の会議録の中から、関連する小泉さんの発言を探してみました。検索がヘタクソなので、見つけるのに1時間半ほどかかってしまいましたが。


■平成14年5月21日(火曜日) 衆議院本会議

○荒井聰議員(民主党)
 総理が重ねて主張してきた、中央省庁等改革基本法第33条第1項第6号の「民営化等の見直しは行わないものとする」という条項が削除されておりませんが、断念したという理解でよろしいのでありましょうか。

○小泉純一郎・内閣総理大臣
 中央省庁等改革基本法についてのお尋ねでございます。
 基本法は、郵政三事業について、国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針の一つとして、「民営化等の見直しは行わない」旨を定めておりますが、これは、公社化までのことを規定したものであります。
 したがって、民営化問題も含め、公社化後のあり方を検討すること自体は、法制局にも確認しておりますが、法律上、何ら問題はありません。
 そこで、今回の公社化関連法案には削除は盛り込まないこととしたものでありますが、郵政事業のあり方については、この条項にとらわれることなく、自由に議論を進めてまいりたいと考えております。

 どこに「郵政公社ができるまで」という限定が付いているのか不明ですが、内閣法制局がそう言っているのだそうです。1項6号だけでなく、1項の本文も一体として読んで、そのように解釈するとのこと。おぉ、ニホンゴ、ムズカシイデース。

 公社ができるまで民営化は行わないって……、何をおっしゃってるんでしょう。いずれ民営化させるために公社をつくったんでしょうが。

 浪人生が、「大学入試に合格するまで大学には行かない」と言っているようなもんでしょうか。
……いや、すいません。うまいこと言おうとして、たとえ間違えました。


■平成17年05月20日 予算委員会

○若林秀樹委員(民主党)
 …(前略)…初めて聞かれる方もいると思うんですが、資料の2の2ページ目に33条の6項ということが書かれております。「前各号に掲げる措置により民営化等の見直しは行わないものとすること。」ということで、これまでの経緯から内閣法制局では、公社化後の組織の在り方を規定するものではないという御判断をいただいておりますが、私は、この日本語、通常の日本語の読解力と常識にのっとれば、私は公社化後も規定するものであるというふうに読むのが普通ではないかなというふうに思っております。
 その上で、資料1ページ目でごらんいただきたいんですけれども、「「中央省庁等改革基本法」の帰趨」ということであります。この論文を書かれました藤田宙靖教授という方を、小泉総理はその経歴、肩書は御存じでしょうか。

○小泉純一郎・内閣総理大臣
 いえ、存じておりません。

○若林委員
 びっくりしました。藤田さんは、中央省庁等改革基本法の基となる報告書を作成した中心人物であります。行革会議の委員であります。平成8年から、11月から務めました。さらに、この改革を実行するために設置されました中央省庁改革推進本部の下に、国会の附帯決議を設けて承認された第三者機関である顧問会議のメンバーであります。
 ですから、改革会議のメンバーと顧問会議のメンバーを両方やっている人は極めて少ない。つまり、一番この一連のことについて承知している人の法学者であります。さらに、小泉内閣により平成14年9月30日に最高裁の判事に任命されております。
 小泉総理、総理が任命された判事であります。行革会議で一番尽くされて今日までやってきたを御存じないというのは私はびっくりしたところでございます。
 つまり、法学者であり法律解釈に精通、かつ中心メンバーで様々な議論を承知していた人が何を言っているか。御案内のとおり、最高裁の判事というのは、当然法律的な解釈能力とか判断能力というのは十分小泉内閣が調査をされ、そして任命されたわけであります。
 その上で、中央省庁改革基本法の帰趨の資料の3ページ目を見ていただきたいんですが、この藤田判事が、一言で言えば、公社化後の組織の在り方も規定し、民営化しないことを、民営化しないということを法律に規定したものであるということを言っております。…(後略)…

○小泉総理
 先ほど私は、藤田氏のことに対して詳しくは存じておりませんということで訂正したいと思います。個人的に親しくということではございませんが、見識のある方だということは存じております。個人的にそう詳しく知っているわけではございませんが、この辺については、今までの見識を持った方であるという程度にしか詳しくは存じておりませんということでございます。
 私は、この問題につきましては、既に法制局長官からの答弁ありますように、法制的に問題ないと、決着は付いていると思います。そういう観点から、政治的に、この郵政民営化法案におきましても、公社化の段階で見直さないということがあったとしても、民営化の問題については政治的に民営化の法案を出しても何ら問題ないものと思っております。

○若林委員
 政治的に決着ではなくて、この法律の解釈として、この藤田さんは公社化後も規定するものであるということをはっきり明言してあるわけです。
 冒頭、私、藤田さん御存じですかと言ったのは、経歴等御存じですかということに対して知らないということですから、個人的云々ということを聞いているわけではありません。
 一番この民営化にかかわった藤田さんというのは実は民営化推進論者なんです、いろんなレポートを見ますと。その方があえて民営化はしないんだということをここに書かれているというのは、非常に私は重いんではないかなというふうに思っております。
 藤田さんのホームページによりますと、「学問の世界では、真実であることにつき確信が持てない場合には、率直にそのことを告げて、最終的な判断を控えることが許されますし、むしろ、そうしなければなりません。」、はっきり言っているんですね。
 つまり、確信が持てない場合にはやっぱりコメントを差し控える、その方が、郵政民営化推進論者があえてここは明らかに改革の結果の維持、つまり公社化の後も維持をするという規定であるということを明言しているわけですよ、これは。…(※後略)…

○小泉総理
 これは、平成14年6月4日、委員会で、衆議院の総務委員会で津野内閣法制局長官の答弁がございます。その際に、この津野法制局長官いわく、ここの33条1項6号でございますけれども、これは先ほど条文を読ませていただきましたけれども、この第1項で、「政府は、次に掲げる方針に従い、」と、まず方針を言っているわけであります。その方針に従って「総務省に置かれる郵政事業庁の所掌に係る事務を一体的に遂行する国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずるものとする。」。正に、次に掲げる方針に従って必要な措置を講ずるというふうになっているわけでありまして、これは、郵政三事業において国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針の一つとして、民営化等の見直しを行わない旨を定めているものでございまして、公社化以後のことまでも規定したものではないというふうに解されるわけであります。答弁しているわけであります。
 そういうことから、法制的にも問題ないと思っております。

○若林秀樹
 よくよく見ますと、例えば中期計画の策定及びこれに基づく業務評価を実施するものと書いてありますが、中期計画というのはある程度年限があって、それに対して業績評価をすると、そういうことを通じて民営化しないということを言っていますので、これは、中期計画というのはこれはかなり長いわけでありますし、明らかにこれは必ずしもそういうことだけではないというふうに思います。
 最高裁の判事が、これは公社後も規定すると、それは最高裁になる前ですけれど、はっきり明言して言っている。その方をやっぱり任命しているわけですから、これはどう見ても、これは常識的に見れば、私はやっぱり公社後のことを規定しているというふうに思いますので、もし谷垣大臣、首ひねっていますし、法律の専門家であればちょっと見解を聞かせてくださいよ、もし。

○谷垣財務大臣
 どう考えてもとおっしゃったんで首をひねったんです。
 それは、確かに藤田先生のような御見解もあるかもしれませんが、どう考えてもというところに私は疑問を持っております。

 この中で、奇しくも藤田氏と津野氏というお二人の最高裁判事が登場しています。藤田氏は、もともと行政法の御用学者で、国立大学の独立行政法人化でも、法律雑誌「ジュリスト」の中で、あたかも法人化が既定路線であるかのような論調で書き、専門家たちを騒がせました。そして、その論文を下敷きにして実際に国立大学の独立行政法人化が進められたといわれるほど、国政に対して影響力をお持ちの御仁です。
 津野氏は津野氏で、時の政府の方針に合うよう、法律の条文をどうアクロバチックに読み替えるかについて知恵を絞るのがお仕事でした。

 まぁ、藤田氏ご本人に真意を聞かず「民営化推進論者」と断言するのも、いささか強引な気がしますが、小泉内閣が犯した中央省庁基本法違反の主張を補強するためには、やむを得ない前提でしょうか。
 ただ、『公務員削減』という目標が最初にあって、その数合わせの手段として、いろいろ政府にくっついていたものを切り離していってる作業中なわけですよね。その切り離された組織が独立採算を余儀なくされるとすれば(郵便局は明治時代の昔から独立採算だったんですけど)自然なゆくえとしては、やはり民営化に進まざるをえないわけです。
 その作業に藤田教授が一貫して携わっていれば、そりゃ外から見れば「民営化推進論者」だと思われますよ。先生が何をどうしたいのかは存じませんが。

 


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2005年7月 6日 (水)

遺骨の誘拐

>>> 墓から遺骨盗み金銭要求 容疑者「罰当たりなことした」
 知人の親の遺骨を盗んだとして警視庁は4日、東京都瑞穂町の無職男性(68)=恐喝未遂容疑で逮捕、処分保留で釈放=を墳墓発掘遺骨領得の疑いで再逮捕した。遺骨と引き換えに知人をゆすったことを認めており、「ギャンブルで借金があった。罰当たりなことをした」と反省しているという。 (朝日新聞)


 なるほど、親族の遺骨をさらって、身代金目的の誘拐をやろうとしたわけですね。さすがに現行刑法は、そんな犯行を想定していませんので、遺骨領得と恐喝の組み合わせという形になります。

 それにしても、遺骨で金銭をゆすろうとするとは……、まるで日本海の向こうにいらっしゃる将軍様がやりそうな話です。罰当たりですね。まぁ、この事件を「泥棒シリーズ」と同じカテゴリに入れてしまう私も、デリカシーが欠けているかもしれません。

 被疑者は、名字から被害者の家系の墓を割り出して、骨つぼは墓地内の別の場所に埋めていたといいます。さすがに持ち帰りはしなかったようですね。自分のやっていることに対して、いちおう気持ち悪さは感じていたのでしょう。

◆ 刑法 第189条(墳墓発掘)
 墳墓を発掘した者は、2年以下の懲役に処する。

◆ 刑法 第191条(墳墓発掘死体損壊等)
 第189条の罪を犯して、死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

◆ 刑法 第249条(恐喝)
 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

◆ 刑法 第250条(未遂罪)
 この章の罪の未遂は、罰する。


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2005年7月 5日 (火)

おくやみ 理系出身で初の最高裁判事

肥大した欲望抑える倫理必要 元最高裁判事 大堀誠一さん(東京新聞)

 東北帝国大学工学部卒で、理系学部出身者では初の最高裁判事。弁護士を半年間経験した後に検事に。

 東京地検特捜部で「武州鉄道事件(営業免許取得をめぐる贈賄)」の捜査に加わった。また、東京地検検事正や最高裁次長検事などを歴任。この経歴から、最高裁にロッキード事件丸紅ルートが係属された際は、審理に関与しなかった。

 【最高裁での主な判断】 (在任:1988/06/17 - 1995/08/10)
 (1)大阪府知事の交際費公開を求めた訴訟では、「行政事務への支障・個人のプライバシー重視」を理由に、全面公開を認めた原審判決を破棄差し戻しした。

 (2)非嫡出子(婚外子)の法定相続分訴訟で、嫡出子の半分とした民法900条を「法律婚主義のたてまえからは合理的な区別」とした法廷意見に賛同。

 (3)一票の価値の最大格差が3.18倍となった1990年衆院選の議員定数不均衡訴訟について、「違憲的状態だが、かろうじて合憲」とする多数意見に付いた。

 つつしんで、大堀誠一さんのご冥福をお祈りいたします。上の東京新聞の記事をもとに、こちらで、大堀元判事のプロフィールに加筆いたしました。

 歴代最高裁判事についての自主研究は、ひととおり形になってきたので、次は日弁連の歴代会長でも調べてみようかと思っております。本当は、偉い弁護士さんにはあんまり興味ないんですが、お偉いさんの経歴や業績から、弁護士業界の歴史が透けて見えてくるかもしれませんし。
 それと、いかにして全国2万弁護士の頂点の座を射止めたのか、そのへんの真相あたりを知りたいですね。会長選挙は、ドラマ「白い巨塔」の教授選さながらの様相を呈するとのウワサもあります。投票日までに、いろんなものが飛び交うらしいですし。

 ま、それについて、どうやって調べればいいのやら、方法がわかりませんが。



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2005年7月 4日 (月)

2億キロカロリー泥棒

>>> 史上最大の米泥棒の正体は……(6/28)

 栃木県警小山署は28日、小山農協中支店の倉庫から大量のコシヒカリを盗んだとして、窃盗の疑いで同支店の元職員(23)を逮捕した。

 調べでは、容疑者は同支店で倉庫管理を担当していた4月初旬と中旬の2回、出荷を装って倉庫からコシヒカリの玄米計170袋(約5トン、販売価格計約102万円)を盗んだ疑い。 容疑者は4月末に退職。 「現金が欲しかった。一人でやった」と供述しているという。 (共同通信)


 
 佃煮など、濃い味付けのオカズを「飯泥棒」と呼んだりします。……いえ、あんまり深い意味はありません。ただ書いてみただけです。今日、シジミの佃煮をスーパーで見かけたのですが、580円したので泣く泣く購入を断念しました。

 先月14日に、コシヒカリの米袋1956個、計58トン(被害総額1270万円)が盗まれたとして、『史上最大の米泥棒』として話題をさらった本件。仮に一度に倉庫から持ち出そうとすれば、10トントラック6台分となり、熟練者でも、積み込みだけで「フォークリフトを使っても、トラック1台につき30分はかかる」(関係者)とされ、6台分では約3時間を要する計算になります。
 倉庫の鍵が壊されていないことから、内部の者による犯行の可能性が、当初から報じられていました。今回の逮捕は、うち5トンについての窃盗容疑ですが、当然余罪について追及されていることでしょう。

 倉庫管理の担当者ということですが、窃盗容疑なんですね。まだ23歳という若者ですので、倉庫の中にある物について、農協の組織から実質的な占有を委ねられた責任者というわけではないのでしょう。農作物の積み込み積み卸しや、見張りなどの役割をまかされていただけだとすれば、その農作物を横流ししても、業務上横領罪にはなりません。たとえ内部の犯行でも、他人の物をくすねる窃盗罪の成立となります。

 ところで、面白いのは、スポーツ報知の記事。

【米58トンメモ】

 今回、農協の倉庫から消えた米58トンとは、どれぐらいの量なのか?

 平均的なコンビニエンスストアのおにぎり1個(米100グラム)で計算すると、58万個分。丼(米1合=160グラム)で換算すると、36万2500杯分。1人で毎日3食、丼1杯ずつ食べ続けたとしても、約331年分にあたる。

 カロリー(米100グラム当たり356キロカロリー)に換算すると、2億648万キロカロリーとなり、成人男性の1日平均摂取量(2200キロカロリー)の約257年分となる。

 ものすごい規模ですね。かえって想像するのが難しいです。記者の方は、電卓片手に計算したのでしょうか。ごくろうさまです。

 いやぁ、それにしても、今回の容疑者は食いしん坊ですねぇ。(イヤミ) まぁ、男に生まれたからには、でっかいことを成し遂げたいものですが。その気持ちだけはわかります。
 
 
 ↓ コシヒカリに合う、ぜいたくなオカズ! 

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2005年7月 3日 (日)

「衆議院解散」チラつかせ

「郵政民営化法案 じっくり議論必要」野田氏、草津で講演(京都新聞)

 郵政事業が民営化しても、そんなにマズいことにはならないと思うんですけど、私が懸念しているのは、もし法案が否決されてしまった場合に、失意の総理が逆上して、本当に「解散! 解散っ!」という事態になることです。

 別に衆院選で、国会の勢力図がいかに塗り変わるかは、比較的どうでもいいんです。困るのは、衆院選と同時に最高裁判事の国民審査をすることになってしまう点です。今の段階で審査しろと言われても、かなり無理があります。まだ判断材料が十分に蓄積されていないので、裁判官を審査する側としては心細いんですよね。再来年の任期満了まで現在の衆議院を保たせてもらえると、その間に審査対象判事について、経歴やモノの考え方、関与判決などなどを私が調査・収集できますので、充実した判断材料を皆さまにご提供できることと思います。

 なので、民営化法案の行くえについて、本来の問題点とはまったく関係のない視点から心配をしています。とりあえず、法案が可決成立するか、それとも否決されてしまうのか……などという細かい話は横に置いといて。とにかく、現段階での衆議院解散は断固阻止し、最高裁国民審査を実効性あらしめるべく、両陣営の先生方、頑張ってください。

 今、歴代長官を中心に、歴代裁判官ページの加筆修正作業をしています。昔の最高裁は、すごくエネルギッシュで、個々が自らの思想信条を堂々と述べて、タテマエ論や通り一遍のコメントなんか語られない、厳しくも気持ちのいい時代だったんだな、とあらためて思います。発足初期の最高裁の歴史は、物語としてとてもスリリングで読みごたえがありますからね。




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2005年7月 2日 (土)

27歳でIT業界へ

「自分戦略研究所」転職者インタビュー(JOB@IT) 

 法学部卒業後に司法試験に挑戦し、27歳で撤退。そこから新入社員として、未経験の孫請け情報システム企業に就職なさった男性です。ここに「ITバブル」という表現がありますが、今から5,6年前なら、27歳の未経験者も受け入れる余裕があったのかもしれません。 今だと、多少なりとも専門知識が無いと厳しいのでしょうか。

 ただ、当時でも新入社員に対してSEとしての専門技術について手取り足取り教えるような風土ではなかったようです。それでも、責任感と努力で急速に高度なスキルを身につけ、会社には無くてはならない存在に成長。そこから、単なるプログラマで終わるだけでなく、依頼企業とのコミュニケーション能力も鍛えたいという意欲が湧いてきたのだそうです。しかし、孫請け・曾孫受けの仕事ばかりでは、依頼者との直接のコミュニケーションもなかなかかなわなかったようで、そこに物足りなさを感じていらっしゃったのかもしれません。

 そして、現在は、個人や企業にIT技術を指導する講師の職に就いておられます。転職の第一志望は、もっとシステムの上流工程で仕事をしたいということでしたが、この『教育コンサルティング』の業務にもやり甲斐を感じているとのこと。自分の話をうなずきながら聞いてくれる人がいるとうれしい、という気持ちは、私も学習塾講師経験者ですからわかります。

 「疑似恋愛で乗り切る受験」のラストにも書きましたが、第一志望から外れていくこと、つまり「不本意」が積み重なっていくほど、かえってその人の可能性を掘り起こしてくれる契機にもなりうるんですよね。何事も順風満帆にいく人生も結構ですけれども、また違う幅や深みが生まれていきそうです。


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2005年7月 1日 (金)

ナゾの「メガネ狩り」

>>> 眼鏡マニア?警察困惑  宮前区で泥棒8件  夜間に若い男性狙う  川崎市宮前区で昨年1月から今年6月までに、道などを尋ねてきた男に、かけていた眼鏡をひったくられる事件が8件起きていたことが28日、分かった。被害に遭っているのはいずれも若い男性で、ほかにも、持っていたコンタクトレンズを盗まれる事件や、コンタクトレンズを貸してくれるよう頼まれて拒否した男性が、男に殴られる事件も発生している。宮前署では、同一犯の可能性が高いとみているが、同署幹部は「誰が何のために」と首をかしげている。(2005年6月29日 読売新聞)

 昔、10年ぐらい前ですかね、「ナイキ狩り」というのがありました。エアマックスやエアジョーダンといった人気スニーカーを履いている青年たちを脅して、そのスニーカーを脱がせ強奪するという、何のヒネリもない手口です。まぁ、ヒネりゃやっていいという話では当然ありませんが。
 あのナイキ狩りは、稀少なスニーカーの高価なプレミアム狙いでした。単に所持の事実を自慢したかったり、転売したりという目的でしょう。それを考えると、このメガネハンターの犯行動機は謎に包まれています。

 記事によると、警察(宮前署)幹部は「高価なサングラスなら転売目的なのかもしれないが。単なるメガネの収集家だろうか」と語っているようです。しかし、私は別の視点から考えてみました。

 犯行時間は、1件を除き、すべて夜間なのだそうです。男は、バイクや軽トラック、徒歩で男性たちに近づき、道を尋ねたり、「眼鏡を見せてくれ」などと声を掛けたりした後、相手のすきを見て眼鏡をひったくっているといいます。
 男の目撃情報は、年齢が20~40歳、身長が1メートル65~1メートル78とまちまちですが、メガネやコンタクトを盗むという極めて特殊な犯行から、読売新聞の記事の通り、同一犯によるものと考えるのが自然でしょう。

 なぜ、被害者が語る犯人の情報がまちまちなのでしょうか。

 理由は簡単です。被害者はド近眼だからです。

 ド近眼の人間がメガネやコンタクトをなくすと、心の底からヘコみます。作り直すのが面倒とか高価であること以上に、とにかく目先の問題として、何も見えませんので。タダでさえメガネ無しでは困るのに、さらに視界の狭まる夜に引ったくっているというところからも、犯人の底知れぬ嫌らしさを感じます。
 そんな状況で被害者が犯人の人相を確認しようとしても、視力が0.1に満たない場合、どこに目や鼻が付いているのかすら判別できない場合もありえます。あらゆる推論をフル回転させて、せいぜい「このあたりが肌色だから、ありゃ顔かな」といった認知が精一杯なんです。

 まるで犯人の顔にモザイクがかかっているように映るんですよ。そいつが捕まる前から。

 ド近眼の人間が銭湯などにいきますと、周囲の人の大事なところに、すでにモザイクがかかっているんです。ナチュラル自主規制です。私は男女混浴の露天風呂や温泉などに入った経験はありませんが、私が混浴の楽しみを100%享受するためには、コンタクトレンズをつくる必要があるでしょう。

 この事件について、私は、ド近眼として生きる我々の弱みにつけこむ、嫌がらせ目的であろうと見ています。いずれにせよ、ミョーな事件です。
 
 
◆ 刑法 第235条(窃盗)
 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役に処する。

【参考】
◆ 盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律 第3条(常習累犯窃盗等)
 常習トシテ前条ニ掲ゲタル刑法各条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニシテ其ノ行為前10年内ニ此等ノ罪又ハ此等ノ罪ト他ノ罪トノ併合罪ニ付3回以上6月ノ懲役以上ノ刑ノ執行ヲ受ケ又ハ其ノ執行ノ免除ヲ得タルモノニ対シ刑ヲ科スベキトキハ前条ノ例(※3年以上20年以下の懲役)ニ依ル



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