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2005年7月 7日 (木)

郵政民営化は憲法違反?

◆ 中央省庁等改革基本法 第33条(郵政事業)
 政府は、次に掲げる方針に従い、総務省に置かれる郵政事業庁の所掌に係る事務を一体的に遂行する国営の新たな公社(以下「郵政公社」という。)を設立するために必要な措置を講ずるものとする。
  一  郵政公社は、第17条第7号ロに定めるところによる移行の時(※この法律の施行の日から起算して5年を経過する日[2003年6月まで])に、法律により直接に設立されるものとすること。
  二  郵政公社の経営については、独立採算制の下、自律的かつ弾力的な経営を可能とすること。
  三  主務大臣による監督については、法令で定めるものに限定するものとすること。
  四  予算及び決算は、企業会計原則に基づき処理するものとし、その予算について毎年度の国会の議決を要しないものとするほか、繰越し、移用、流用、剰余金の留保を可能とするなどその統制を必要最小限のものとすること。
  五  経営に関する具体的な目標の設定、中期経営計画の策定及びこれに基づく業績評価を実施するものとすること。
  六  前各号に掲げる措置により民営化等の見直しは行わないものとすること。
(※以下略)


◆ 日本国憲法 第73条
 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
  一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
(※以下略)


 普通の感覚だと、郵政民営化法案と併せて、この中央省庁基本法の改正についても国会で審議を尽くすべきじゃないかという印象を受けてしまうのですが。
 そこで、国会の会議録の中から、関連する小泉さんの発言を探してみました。検索がヘタクソなので、見つけるのに1時間半ほどかかってしまいましたが。


■平成14年5月21日(火曜日) 衆議院本会議

○荒井聰議員(民主党)
 総理が重ねて主張してきた、中央省庁等改革基本法第33条第1項第6号の「民営化等の見直しは行わないものとする」という条項が削除されておりませんが、断念したという理解でよろしいのでありましょうか。

○小泉純一郎・内閣総理大臣
 中央省庁等改革基本法についてのお尋ねでございます。
 基本法は、郵政三事業について、国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針の一つとして、「民営化等の見直しは行わない」旨を定めておりますが、これは、公社化までのことを規定したものであります。
 したがって、民営化問題も含め、公社化後のあり方を検討すること自体は、法制局にも確認しておりますが、法律上、何ら問題はありません。
 そこで、今回の公社化関連法案には削除は盛り込まないこととしたものでありますが、郵政事業のあり方については、この条項にとらわれることなく、自由に議論を進めてまいりたいと考えております。

 どこに「郵政公社ができるまで」という限定が付いているのか不明ですが、内閣法制局がそう言っているのだそうです。1項6号だけでなく、1項の本文も一体として読んで、そのように解釈するとのこと。おぉ、ニホンゴ、ムズカシイデース。

 公社ができるまで民営化は行わないって……、何をおっしゃってるんでしょう。いずれ民営化させるために公社をつくったんでしょうが。

 浪人生が、「大学入試に合格するまで大学には行かない」と言っているようなもんでしょうか。
……いや、すいません。うまいこと言おうとして、たとえ間違えました。


■平成17年05月20日 予算委員会

○若林秀樹委員(民主党)
 …(前略)…初めて聞かれる方もいると思うんですが、資料の2の2ページ目に33条の6項ということが書かれております。「前各号に掲げる措置により民営化等の見直しは行わないものとすること。」ということで、これまでの経緯から内閣法制局では、公社化後の組織の在り方を規定するものではないという御判断をいただいておりますが、私は、この日本語、通常の日本語の読解力と常識にのっとれば、私は公社化後も規定するものであるというふうに読むのが普通ではないかなというふうに思っております。
 その上で、資料1ページ目でごらんいただきたいんですけれども、「「中央省庁等改革基本法」の帰趨」ということであります。この論文を書かれました藤田宙靖教授という方を、小泉総理はその経歴、肩書は御存じでしょうか。

○小泉純一郎・内閣総理大臣
 いえ、存じておりません。

○若林委員
 びっくりしました。藤田さんは、中央省庁等改革基本法の基となる報告書を作成した中心人物であります。行革会議の委員であります。平成8年から、11月から務めました。さらに、この改革を実行するために設置されました中央省庁改革推進本部の下に、国会の附帯決議を設けて承認された第三者機関である顧問会議のメンバーであります。
 ですから、改革会議のメンバーと顧問会議のメンバーを両方やっている人は極めて少ない。つまり、一番この一連のことについて承知している人の法学者であります。さらに、小泉内閣により平成14年9月30日に最高裁の判事に任命されております。
 小泉総理、総理が任命された判事であります。行革会議で一番尽くされて今日までやってきたを御存じないというのは私はびっくりしたところでございます。
 つまり、法学者であり法律解釈に精通、かつ中心メンバーで様々な議論を承知していた人が何を言っているか。御案内のとおり、最高裁の判事というのは、当然法律的な解釈能力とか判断能力というのは十分小泉内閣が調査をされ、そして任命されたわけであります。
 その上で、中央省庁改革基本法の帰趨の資料の3ページ目を見ていただきたいんですが、この藤田判事が、一言で言えば、公社化後の組織の在り方も規定し、民営化しないことを、民営化しないということを法律に規定したものであるということを言っております。…(後略)…

○小泉総理
 先ほど私は、藤田氏のことに対して詳しくは存じておりませんということで訂正したいと思います。個人的に親しくということではございませんが、見識のある方だということは存じております。個人的にそう詳しく知っているわけではございませんが、この辺については、今までの見識を持った方であるという程度にしか詳しくは存じておりませんということでございます。
 私は、この問題につきましては、既に法制局長官からの答弁ありますように、法制的に問題ないと、決着は付いていると思います。そういう観点から、政治的に、この郵政民営化法案におきましても、公社化の段階で見直さないということがあったとしても、民営化の問題については政治的に民営化の法案を出しても何ら問題ないものと思っております。

○若林委員
 政治的に決着ではなくて、この法律の解釈として、この藤田さんは公社化後も規定するものであるということをはっきり明言してあるわけです。
 冒頭、私、藤田さん御存じですかと言ったのは、経歴等御存じですかということに対して知らないということですから、個人的云々ということを聞いているわけではありません。
 一番この民営化にかかわった藤田さんというのは実は民営化推進論者なんです、いろんなレポートを見ますと。その方があえて民営化はしないんだということをここに書かれているというのは、非常に私は重いんではないかなというふうに思っております。
 藤田さんのホームページによりますと、「学問の世界では、真実であることにつき確信が持てない場合には、率直にそのことを告げて、最終的な判断を控えることが許されますし、むしろ、そうしなければなりません。」、はっきり言っているんですね。
 つまり、確信が持てない場合にはやっぱりコメントを差し控える、その方が、郵政民営化推進論者があえてここは明らかに改革の結果の維持、つまり公社化の後も維持をするという規定であるということを明言しているわけですよ、これは。…(※後略)…

○小泉総理
 これは、平成14年6月4日、委員会で、衆議院の総務委員会で津野内閣法制局長官の答弁がございます。その際に、この津野法制局長官いわく、ここの33条1項6号でございますけれども、これは先ほど条文を読ませていただきましたけれども、この第1項で、「政府は、次に掲げる方針に従い、」と、まず方針を言っているわけであります。その方針に従って「総務省に置かれる郵政事業庁の所掌に係る事務を一体的に遂行する国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずるものとする。」。正に、次に掲げる方針に従って必要な措置を講ずるというふうになっているわけでありまして、これは、郵政三事業において国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針の一つとして、民営化等の見直しを行わない旨を定めているものでございまして、公社化以後のことまでも規定したものではないというふうに解されるわけであります。答弁しているわけであります。
 そういうことから、法制的にも問題ないと思っております。

○若林秀樹
 よくよく見ますと、例えば中期計画の策定及びこれに基づく業務評価を実施するものと書いてありますが、中期計画というのはある程度年限があって、それに対して業績評価をすると、そういうことを通じて民営化しないということを言っていますので、これは、中期計画というのはこれはかなり長いわけでありますし、明らかにこれは必ずしもそういうことだけではないというふうに思います。
 最高裁の判事が、これは公社後も規定すると、それは最高裁になる前ですけれど、はっきり明言して言っている。その方をやっぱり任命しているわけですから、これはどう見ても、これは常識的に見れば、私はやっぱり公社後のことを規定しているというふうに思いますので、もし谷垣大臣、首ひねっていますし、法律の専門家であればちょっと見解を聞かせてくださいよ、もし。

○谷垣財務大臣
 どう考えてもとおっしゃったんで首をひねったんです。
 それは、確かに藤田先生のような御見解もあるかもしれませんが、どう考えてもというところに私は疑問を持っております。

 この中で、奇しくも藤田氏と津野氏というお二人の最高裁判事が登場しています。藤田氏は、もともと行政法の御用学者で、国立大学の独立行政法人化でも、法律雑誌「ジュリスト」の中で、あたかも法人化が既定路線であるかのような論調で書き、専門家たちを騒がせました。そして、その論文を下敷きにして実際に国立大学の独立行政法人化が進められたといわれるほど、国政に対して影響力をお持ちの御仁です。
 津野氏は津野氏で、時の政府の方針に合うよう、法律の条文をどうアクロバチックに読み替えるかについて知恵を絞るのがお仕事でした。

 まぁ、藤田氏ご本人に真意を聞かず「民営化推進論者」と断言するのも、いささか強引な気がしますが、小泉内閣が犯した中央省庁基本法違反の主張を補強するためには、やむを得ない前提でしょうか。
 ただ、『公務員削減』という目標が最初にあって、その数合わせの手段として、いろいろ政府にくっついていたものを切り離していってる作業中なわけですよね。その切り離された組織が独立採算を余儀なくされるとすれば(郵便局は明治時代の昔から独立採算だったんですけど)自然なゆくえとしては、やはり民営化に進まざるをえないわけです。
 その作業に藤田教授が一貫して携わっていれば、そりゃ外から見れば「民営化推進論者」だと思われますよ。先生が何をどうしたいのかは存じませんが。

 


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コメント

9/11は衆議院選挙日。郵政族議員らを排除した新しい自民党に期待する。民主党、共産党及び社民党は論外。

投稿: 落選させるべき議員リスト | 2005年8月 8日 (月) 19:25

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こんにちは。 どうも先日からRankingがおかしい気がする。 いつになったら安定するのだろう……? それにしても郵政民営化、どうなるんでしょう? 参議院が通れば景気回復するでしょうか、でも廃案になったら後退するのは必死ですよねぇ。 う~ん、/(-_-)\ こまっ... [続きを読む]

受信: 2005年7月 7日 (木) 20:42

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