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2005年7月10日 (日)

電子投票に明日はあるか?

電子投票普及協同組合
 (↑平成元年から過去16年にわたって、電子投票の普及・推進に尽力し、少しずつ信頼を構築してきた組織です。それだけに、電子投票に対する信用を1日で崩してくれた可児市や投票システム請負業者に向けられた底知れぬ怒りが、今回の判決に対するコメントの端々に感じられます)


 世界史上初の「電子投票無効判決」で、司法府から選挙やり直しを命じられてしまった岐阜県可児市。それを受けて、山田豊 市長が辞意をほのめかす発言。

 「自らの責任は再選挙後に、それなりの対処をしたい」

 3月の名古屋高裁判決の直後には、「(電子投票トラブルへの)苦情の手紙やメールなどまったく来ていない。なんの問題もない」と開き直っていた市長なのに、それにしては、お利口さんなコメントです。
 
 一方で、原告(被上告人)側だった市民団体「電子投票を問う会」の代表者は、おととし7月20日当日、トラブル続きでまったく前に進まない投票所の行列に嫌気がさして、投票をあきらめて帰ろうとした有権者170人以上に対して、直に「証人になってほしい」と頼み込み、うち20名ほどに、その場で陳述書を書いてもらっていたそうです。その努力が、「お粗末な電子投票のせいで、選挙結果に影響を与えた」という認定につながる一因となったのでしょう。
 しかも、この選挙無効訴訟に対して、「電子投票を問う会」は代理人を付けずに本人訴訟で臨んだとのことです。弁護士を依頼しなかったことに何か特別な理由があったのかどうかは定かではありません(経費削減?)が、こういう団体でも、ちゃんと地に足を付けて理不尽と闘っている人々もいるんだなと思いました。「市民団体」という存在に対する私の偏見が、2%ぐらい緩和されたかもしれません。

 選挙という民主政治の根幹にかかわる制度で、電子投票というものを「電子手帳」か何かと同じくらいの感覚で、軽々しく採用していいものかどうか。この機会にあらためて問われるべきです。
 電子投票のメリットとされているのは、おもに「開票速度」と「バリアフリー」ですが、そのメリットは、「投票の秘密への疑念」「厳密には再集計不可」といった、民主主義がさらされるリスクを凌駕して、なおありあまるものなのでしょうか。

 ・色覚障害の人のために画面の色合いを調整
 ・視覚障害の人のために音声案内を付ける
 ・お年寄りのために文字の大きさや台の高さを調整
 ・画面に指紋が付着して、投票の秘密が侵害されないよう、「タッチペン」を採用する
 ・画面上で候補者の顔写真やプロフィールを確認できるようにする

 ……などといったバリアフリー対策や投票秘密の確保は、従来の投票用紙に鉛筆で書く方法の領域でも、十分に実行できたことばかりです。それに、「開票結果がすぐにわかる」といった要素は、かならずしも有権者にとってのメリットとして直結しません。メルマガにも書きましたが、日曜日の晩、あの開票を待っているときのドキドキ感や、やきもき感、すっかり血の気の引いた候補者たちの表情だとか一面ピリピリムードで支配されている事務所の空気をテレビで眺めながら、それをつまみにのんびりビールを飲むのを楽しみにしている国民も少なくないんです。
 ああいう選挙特番で、時間とともに開票率や得票数が少しずつ動いていく様子が、かえって「選挙戦が争われている」という演出になって、民主主義を構成する一員としての実感がちょっとだけ湧く効果もある、……というふうに私は見ております。

 選挙管理委員会側にとっては、「開票作業の手間が省ける」といった類の意識でしょうが、有権者にとっては、その手間の削減が『人件費(公費支出)の削減』として目に見える形であらわれてこなければ腹が立つばかりです。その程度の動機だったら、わざわざ投票所に機械を持ち込むことなんかないし、田舎のジジイが「電子投票!電子電子!」なんて、無理して背伸びしてもらわなくてもいいんですよ。
 ちなみに、日本初の電子投票採用ケースとなった岡山県新見市では、電子投票ぶんの開票は、わずか2名で25分で終了したそうですが、不在者投票は従来どおりの投票用紙方式でした。なので、開票の手間としてはそれほど劇的に効果が表れたわけではなかった模様です。そのへんが、役人たちに一貫して抜けているコスト意識の低さでしょうかね。まぁ、クレジットカードで借金しとるような売れないライターに、コスト意識を問われたくないでしょうが。

 一方で、新見市の電子投票全体に投じられた予算は、約1億4620万円。前回のアナログ投票の実施よりも約2700万円増(電子投票がらみでの純増は約1280万円)という結果になったそうです。電子投票機を導入する計画に対しては、国から補助金がおりているはずなんですが、その具体的な額などについては明らかになっていません。なお、当年度に総務省は電子投票補助金の予算として約4億円を計上しています。だとしたら、かかった費用を全額補助金でまかなえたんでしょうかね……。

 ただ、新見市での電子投票のサポートは、前述の「電子投票普及協同組合」が行ったそうで、可児市のように民間企業(ムサシ・富士通・富士通フロンテック)がベンダーとなったケースでは、もっと費用がかかっていたとも考えられます。投票機はレンタルだそうですが、その機械を管理・維持するために、専門の技術者を派遣してもらって待機させていたら、開票で減らせたはずの人件費をまわしてきても足りないんじゃないでしょうか。

 ひきつづき、資料を探してみます。


 

【参考過去ログ】
 トラブル続発の電子投票 選挙無効判決が確定(7/7)

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