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2005年7月16日 (土)

裁判スピードアップの検証結果

>>> 最高裁:迅速化検証結果 刑事事件の審理には時間

 09年までに導入される裁判員制度では、殺人や傷害致死、放火事件などの審理を市民が担当する。内閣府の世論調査では、裁判員として法廷に通う日数の限度は「5日以内」との回答が約7割に上るが、制度の対象事件は審理に時間がかかるケースが多い。

 検証結果によると、主要罪名別の平均審理期間で最長は、殺人の10.1カ月。全体平均(3.2カ月)の3倍以上を要し、傷害致死は8.8カ月、現住建造物放火は7.0カ月で、対象事件が上位を占める。平均開廷回数でも殺人は7.5回、傷害致死6.1回、強盗・強盗致死傷4.9回と、対象事件は全体平均の2.7回より多い。

 最高裁は「対象事件における否認率の高さが影響している」と分析する。殺人の否認率は47.5%、傷害致死では同33.2%で、確かに全体平均6.7%を大幅に上回る。それでも、裁判員制度導入に国民の理解を得るには、大幅なスピードアップが欠かせない。(毎日新聞)

 裁判官が法廷で告げる決まり文句や、「求刑の8掛け(8割)」という判決相場から、『裁判なんかパソコンにやらせればいい』と、冗談半分 本気半分で言う方もいらっしゃいます。しかし、やはり現実社会の法は人間がつかさどるもの。裁判のスピードアップは、メモリを増設したりCPUのクロック周波数を上げたりしてなんとかなるもんじゃなかったりします。当然。

 私は、少なくとも現在計画されている裁判員制度に対しては懐疑的です。重大事件になるほど、被告人が犯行の否認にまわり、しかも冤罪を回避するために慎重に証拠を取り調べることから、審理に時間がかかるのは最初から分かり切っていることでしょう。どうしてそんな重大事件にいきなり裁判所に入った経験もない庶民を入れようとするのか、理解に苦しみます。
 私なんて、派遣元の把握不足で、ロクに説明もなく初めての派遣先に行かされることほどプレッシャーを感じることはありません。人の命に関わる出来事を裁く負担は、そんな重圧とは比べものにならないほどでしょう。


 もちろん、「犯罪被害者に対する裁判員の質問権」など、裁判員計画には期待すべき仕組みも少なくないのですが、とくに刑事事件で何らかの制度を設ける場合は、「その制度は、冤罪を少なくする方向に働いてくれるのか」を常に念頭に置く必要があると考えます。今の裁判員制度案で、本当にぬれぎぬを減らすことができるのでしょうか。裁判所は「一般の方々が日常で育んできた感覚を司法に採り入れたい」と意気込んでらっしゃいますが、刑事事件も公判も非日常です。

 私は、むしろ民事訴訟や和解に、裁判員を立ち入らせていただきたいなと考えております。最初から殺人事件の審理をしろと命じるのは厳しすぎるでしょう。正直、私でもイヤですもん。
 民事事件での裁判は、必ずしも真実発見の要請は高くなく、「結論の落としどころ」といった多角的視野に基づくべき要素が求められます。たしかに、プライバシーや企業機密などが他人の目に触れる可能性はありますが、プライバシーが制約される程度は、刑事事件での裁判員とそれほど大差なかろうとも思っております。いかがでしょうか。



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コメント

 全く同じ意見を持っております。重罪事件を対象にして「裁判員制度」を作った(それも国家権力総与党化の大暴力で)ことによって、国民の生活の権利が著しく脅かされる(重大な人権侵害が起こりうる)ことさえ懸念されます。被告人に裁判員裁判を回避する権利をなくしたため、国民が裁判員任官を拒否する事態になれば、これは国際的な日本の信用にまでつながりかねないため、国家権力が国民に対する締め付けを強化しかねないことも理由になります。
 刑事司法においては、(特に冤罪が起こった場合に取り返しが付かない重罪事件である)数学的な、100%に近い証明がなければ有罪にできない原則があります。このような数学的証明が必要とされる裁判に、国民の常識とか感覚という曖昧な基準を取り入れる考え方は全く理解できません。

投稿: 高野 善通 | 2005年8月 5日 (金) 19:50

いらっしゃいませ。裁判員制度を疑う方からコメントを頂戴することができ、心強い限りです。


>重罪事件を対象にして「裁判員制度」を作った(それ
>も国家権力総与党化の大暴力で)ことによって、国民
>の生活の権利が著しく脅かされる(重大な人権侵害が
>起こりうる)ことさえ懸念されます。

 はたして、国民のどういう人権が、どのように侵害されるでしょうか。

>被告人に裁判員裁判を回避する権利をなくしたため、
>国民が裁判員任官を拒否する事態になれば、これは
>国際的な日本の信用にまでつながりかねないため、
>国家権力が国民に対する締め付けを強化しかねない
>ことも理由になります。

 すみません。このあたりをもう少し噛み砕いて説明していただけますでしょうか。あいにく私は、制度の問題点について隅々まで精通しているわけではございませんので。

投稿: みそしる | 2005年8月 8日 (月) 21:39

 重大な人権侵害、色々なケースがあります。例えば、裁判員任官の表向きの理由が隠されて違法なリストラを受けるケース。裁判員が尾行されて個人情報が割り出され(ここまでは何と違法でも何でもない!!)、2chなどに個人情報が流出する(これにより被告人サイドからの圧力、場合によっては身体への攻撃など)。裁判員として不適切な人間を排除するための思想信条に踏み込んだ質問を受けるなどなどです。
 
 もう一つ、>>被告人に裁判員裁判を…
の部分に関してはトラックバックで理由を示します。

投稿: 高野 善通 | 2005年8月 9日 (火) 00:53

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