« 郵政民営化は憲法違反? | トップページ | さらば司法修習生 »

2005年7月 8日 (金)

トラブル続発の電子投票 選挙無効判決が確定

電子投票の市議選「無効」が確定 岐阜県選管の上告棄却(朝日新聞)

 裁判長の今井判事は、国民審査の対象判事なのですが、今回の判断は「上告理由がない」という手続違背で切っていますので、事件の中身にはまったく触れていません。
 もし、郵政民営化法案のゴタゴタで衆議院が解散になれば、この今井判事にも罷免の「×」を付けるか否かの選択を迫られるわけですが、まだ前回の審査から1年半しか経過していませんので、ほとんど材料が蓄積していない状態なんです。大法廷の審理では、裁判官個人の価値観が出やすいと言われていますが、今のところ、ほぼ唯一の大法廷判断だった今年1月の「在日韓国人に対する公務管理職受験拒否事件」にも、今井判事はタッチしてませんし。これじゃ、実効的な審査はできませんよ。

 以前のエントリの繰り返しになりますが、現時点での衆議院解散は回避していただきたいなと思います。

 今すぐ、国費を投じて総選挙をしなければならない高度な必要性があるのなら、百歩譲って国民審査が多少おざなりになっても仕方がないかもしれません。

 ただ、法案が参議院で否決された場合に、衆議院が解散されるのって、何か意味があるんですか? 目的が挫折した失意の小泉さんが、単なるヤケクソで権限を行使しようとしてるだけのようにしか見えないのですが。たとえ僅差でも可決は可決なんですから、それでも参院で否決されたときに選挙を強いられるというのであれば、衆議院のセンセイたちは、誰かの罪をかぶって上司から叱られるような心境のはずです。いや、落選したら職を失うんですから、リスクはそれ以上かもしれません。

 閑話休題。こういう選挙無効裁判は、

 1審:市町村の選挙管理委員会
 2審:都道府県の選挙管理委員会
 3審:高等裁判所
 4審:最高裁判所

 …というシステムになっているのですが、本件における3審(司法での1審)である名古屋高裁の認定事実は、以下の通りです。


○「多数が投票あきらめた」エラー続発の電子投票は無効 ○
 …名古屋高裁(3/9)

 【 原  告 】落選した候補者ら 市民15人(岐阜県可児[かに]市)

 【 被  告 】岐阜県 選挙管理委員会

 【 請求内容 】選挙無効の申し立てを棄却した、被告による裁決の取り消し

 【 根拠法条 】公職選挙法第205条

 【 認定事実 】
  2003年7月20日投開票の岐阜県可児市議選(定数24に29人が立候補)では、29カ所の投票所で投票サーバー58台、投票端末機189台を使い、電子投票を実施した。午前7時から投票が開始されたが、午前8時半ごろから午前9時半ごろにかけ、各投票所の投票機に投票記録の失敗や記録の遅延という異常が発生した。

  異常の発生は、投票サーバーの放熱ファンの位置を変更したことなどにより、サーバー内部の放熱が不十分となって温度が規定値より上昇したため。電源を切って再起動したり、第2サーバーに切り替えたり、本体の扉を開けてうちわであおぐなどの対応が取られた。

  異常が3回発生した投票所や、回復が午前11時以降になった投票所があり、異常が最も長くなった投票所では1時間23分に達し、全29投票所の合計は15時間33分だった。異常発生中は記録の失敗や遅延もあり、成功、失敗が混在した状態だった。

 (1)最後まで投票できなかった投票カードが13枚。
 (2)投票の記録の失敗が97件。
 (3)一時的とはいえ、記録媒体に記録された516個の記録を削除。
 (4)投票の記録ができたのに端末が情報を受信できず不良カード
  として処理したカードが25枚。
 (5)操作端末に挿入した後で、排出されないなどで正常に使用で
  きなかったカードが26枚。
 (6)最後まで投票できたと認識できなかったカードが発生したた
  め、別のカードを交付して再度投票させた投票所があった。
  すべてが二重投票になったわけではないが、少なくとも9人が
  二重投票になったと確認されている。
 (7)広見第二投票所(※広見公民館ゆとりピア)では、投票機を
  提供した会社の従業員が、画面のタッチ感度を調整中、操作を
  誤り「終了」ボタンに触れた。
 (8)塩河投票所から開票所に送られた記録媒体には封印がなかっ
  た。他2投票所で、記録媒体の扱いに誤りがあった。


  可児市選管が発表した選挙結果は、投票総数4万6594票で、有効4万6526票、無効68票。投票機の操作を途中で終了したのは262票だった。最下位当選者の得票は1361票、次点は1326票。

  岐阜県選管が選挙後に調査した結果、投票者数と投票数の差は計24票で、カード発券数は投票者数より34枚多いことが判明した。

  (※以上、四国新聞「電子投票訴訟の判決要旨」より)


  その後の調査で、被告は選挙当日に備えて、本番並みの負荷をかけたリハーサルを行っていなかったことなどが判明した。被告は、原因究明のため、可児市で4回にわたって現地調査を行うなどし、2004年9月10日、「選挙は有効」とする裁決を下していた。

 【 原告主張 】
  最下位当選者と次点者との得票差は35票しかなかった。電子投票システムのトラブルで、のべ約17時間もの間投票できず、棄権した有権者は、約2200人いた。

 【 被告主張 】 
  調査の結果、選挙結果に影響を及ぼす恐れがある票数は24票。次点者との得票差の範囲内であり、選挙結果に変動はない。投票所で待機した有権者数は、少なくとも1000人程度いたと思われるが、投票所にいた職員らが見た範囲では、帰った有権者はいない。


 【 判  決 】 ● 裁決取り消し(選挙無効を認定) ●


 【 判決理由 】
  <選挙の違法性について>
  (7)広見第二投票所で、有権者でない者が「終了」ボタンに触れた点は、過失とはいえ、公職選挙法に違反する。
  (8)塩河投票所の記録媒体に封印がなかった点は、電子投票法施行令に違反する。

  その他(1)~(6)の異常などで、受付前で待機した有権者は1000人を相当上回り、投票せずに帰った人も多数いたと認められる。投票機に異常が発生しても短時間で解消されなければならないのに、多くの有権者を待機させ、投票を断念する有権者がいたことが認められ、選挙の公正かつ適正な執行を妨げた。

  選挙管理については、市選管と投票管理者の間でカードの受け渡しに関する記録が作成されていなかった。カードの再発行に関する経緯も記録されておらず、有権者の信頼を損ねただけでなく、選挙事務に重大な誤りを生じさせる可能性があったといわざるを得ない。
  投票機に異常が発生し投票の記録が確実に行われることが保証されていない状況で、投票を行わせたことも不適切だったといわざるを得ない。

  いずれも電子投票法の条件を満たしていない状態にあった。

 <選挙結果に異常をもたらす恐れについて>

  異常を及ぼす恐れがあると認められる票は、(6)二重投票や(1)投票の失敗などで計27票である。最下位当選者と次点の得票差は35票で、受付前に待機しながら投票しないで帰った者の票が8票以上あれば結果が変わることになる。

  投票機の異常は午前中にほぼ解消し、午後からは支障なく投票できる状態にあり、投票時間も午後8時まで確保され、選管が同報無線で復旧状況を知らせていた。

  しかし、投票を済ませずに帰った選挙人の数は多数に上り、無視できない多数の有権者が、仕事や余暇の都合で再度投票所を訪れることができず、投票をしなかったということも推認できる。

  投票機が法の条件を一時的に備えていない状態で、選管の過誤により最下位と次点の得票が逆転する恐れがあり、選挙結果に変動をもたらす恐れがあると認められる。選挙は無効である。

  (※以上、四国新聞「電子投票訴訟の判決要旨」より)

 【 原告談話 】
  こんな選挙を認めたら、民主主義の崩壊と思って争ってきた。選挙は有効とする県側の主張を一つずつ崩した。認めてくれて感激している。 可児市では、実施に必要な情報公開や説明がなされておらず、そのような自治体では電子投票をすべきではない。(原告代表)

 【 被告談話 】
  選管の裁決が取り消されたことは残念。判決を精読し、今後の対応を検討したい。(※まもなく上告。現在、最高裁に係属中)

  可児市長「選挙が無効とされたことは残念至極。県選管は上告して最後まで争ってほしい」

 【 裁 判 長 】青山邦夫


 電子投票の方式には、「スタンド・アローン」と「クライアント・サーバー」という2つの方式があります。

 スタンドアローンは、電源コード以外の配線が不要な分、構築が簡単に済むので、トラブルが生じにくいという利点があります。現に、スタンドアローンを採用して選挙を行った日本の自治体で、大きな支障が発生したということは報告されていません。しかし、投票機がそれぞれ記録するため、フラッシュメモリの数が増え、集計が多少面倒になるため、有権者人口の比較的少ない自治体向けだとはいわれています。


■スタンド・アローン方式■ 

    □
 (入力・記録)
 
    □
 (入力・記録)

    □
 (入力・記録)


 一方で、クライアントサーバーは、各投票機の記録を、サーバーに集約させるため、多数の投票を効率的にさばくことができますが、システム内の1箇所にトラブルが発生すると、その投票所が全て機能しなくなる可能性があります。日本の自治体選挙で生じた電子投票トラブルは、すべてクライアントサーバー方式を採用した場合でした。
 もちろん、本件の岐阜県可児市も、その例から漏れるものではありません。夏場の密室で、コンピュータにとっては過酷な状況だったにもかかわらず、投票日のシミュレーションをほとんど行っていなかったことも、トラブル連発の一因だったようです。

 そのため、昨年11月28日の三重県四日市市議選では、有権者数23万人という比較的大きな規模の自治体だったにもかかわらず、大事をとってスタンドアローン方式を採用し、何事もなく終了しました。


■クライアント・サーバー方式■

    □ 
   (入力)\
         \
    □-----■(記録)
   (入力)  / ※サーバー
       /
    □ 
   (入力)

◆ 公職選挙法 第213条(争訟の処理)
1 本章に規定する争訟については、異議の申出に対する決定はその申出を受けた日から30日以内に、審査の申立てに対する裁決はその申立てを受理した日から60日以内に、訴訟の判決は事件を受理した日から100日以内に、これをするように努めなければならない。
2 前項の訴訟については、裁判所は、他の訴訟の順序にかかわらず速かにその裁判をしなければならない。

◆ 公職選挙法 第34条(地方公共団体の議会の議員及び長の再選挙等)
 地方公共団体の議会の議員及び長の再選挙(※中略)は、これを行うべき事由が生じた日から50日以内に行う。


●被告(県選管)が上告関連書類を最高裁に郵送……3月18日
 それから112日経過しての判決なので、「百日裁判」の努力義務は、いちおうクリアしたとみてよい。

●今日(7月8日)から50日後の「再選挙タイムリミット」……8月27日 



|

« 郵政民営化は憲法違反? | トップページ | さらば司法修習生 »

第20回最高裁判事国民審査に向けて」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3002/4880181

この記事へのトラックバック一覧です: トラブル続発の電子投票 選挙無効判決が確定:

« 郵政民営化は憲法違反? | トップページ | さらば司法修習生 »