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2005年10月28日 (金)

裁判長の滑舌

判決2通りに聞こえ混乱…松山地裁(愛媛新聞)2005/10/22

 松山地裁で6日あった旧越智郡上浦町(現今治市)の公金詐欺事件の判決公判で、裁判長が被告2人に言い渡した量刑を弁護士、検察官、傍聴者が「懲役1年」と「懲役2年」の2通りに聞き、裁判長が口頭で告げた量刑は閉廷後は撤回できないことになっており、混乱した。地裁は2年と主張し弁護側が受け入れたため、控訴期限が過ぎた21日、判決は「懲役2年、執行猶予4年」で確定した。
(中略)
 愛媛新聞社などの調べでは、懲役1年と聞いたのは弁護人3人のうち2人のほか、傍聴席にいた取材記者全員と被告の友人。懲役2年と聞いたのは、弁護人1人と検察官1人だった。
 同公判について新聞、通信、放送局計11社すべてが「懲役1年、執行猶予4年」と報道。一方、地裁は「懲役2年、執行猶予4年を言い渡した」と主張していた。

 これが多数決だったら「懲役1年」で決まりということになるでしょうが、正解は「懲役2年」だった模様です。何が悲しくて、法廷でいきなりヒアリングテストをさせられにゃならんかったのでしょうか。

 ニホンゴでは、「1(イチ)」と「7(シチ)」は音として紛らわしいということで、これらの数を明確に区別するため、伝統的に「7」は固有数詞の「ななつ」から拝借して「ナナ」と呼ぶことになっております。これは、日本人なら幼稚園児ですらご存じの常識ですね。
 「7月1日」は「なながつ いっぴ」だとか言ったりします。とはいえ、「今日からナナ月だ」「ナナ時に集合」などと嬉々として言いたがるオッサンたちが、なんか鼻につくのも否定しがたい事実ですが。

 ただ、この場合は懲役「1年」と「2年」ですよ。「イチ」と「ニ」を聞き違えるような言い方って、どんなんですか、裁判長!

 もしかして、この日は御愛用の入れ歯が、いまいち歯ぐきとフィットしていなかったのでしょうかね。お気の毒に。

 裁判長「ひ……ひほふにんを(被告人を)……、」

 被告人「……」

 裁判長「ひょーえひ(懲役)ひひぇんにひょふ……」

 被告人「…………はぁ?」

 弁護人「裁判長! ただいまの主文は何と?」

 裁判長「えぇ? あんだって?」

 弁護人「いったい、何年の懲役に処すとおっしゃったのでしょうか」

 裁判長「あにぃ? ……ボラギノールぅ?」

 ……これじゃあ、完全にドリフの世界ですよね。この裁判長、さすがにここまでヨボヨボじゃなかろうけど。
 
 
◆刑事訴訟規則 第35条(裁判の宣告)
1 裁判の宣告は、裁判長がこれを行う。
2 判決の宣告をするには、主文及び理由を朗読し、又は主文の朗読と同時に理由の要旨を告げなければならない。

 
 
 つい2,3年前のことですが、最高裁が判決を出す際に、主文だけを言い渡して、判決理由を朗読せずに済ましてきた慣例が、弁護士らから問題として採り上げられたことがありました。刑事訴訟規則とは、他でもない最高裁判所がつくった決まりでして、「オイオイ、自分でつくった規則を自分で破って平気なのか?」という、至極まっとうな批判です。

 
 
◆日本国憲法 第77条(最高裁判所の規則制定権)
1 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。

 
 
 それを受けて、当時の最高裁判事全員一致の申し合わせで、他の下級裁判所と同じように、裁判長は法廷にいる者に向けて、判決理由も読んで聞かせることになりました。

 そして同時に、最高裁にはトイレが新たに増設されたらしいのです。同裁判所の建物内部には、裁判妨害を理由に退廷を命じた傍聴人を一時的に収容しておく「拘束室」という部屋があるんですが、そこに隣接するトイレです。 このプロジェクトに投じられたとされる予算は、約400万円也。
 判決理由を長々と朗読するようになれば、その朗読を妨害しようとする輩も増えそうだし、判決公判がなかなか終わらないから、今まで以上に彼らを拘束室に長居させることになってしまうじゃないか。 だったら、お便所を!……という、最高裁のイキな計らいなのかもしれません。
 
 
 さて、記事の中身に戻りますが、それにしても「裁判長が口頭で告げた量刑は閉廷後は撤回できないことになっており」……? こんな条文ありましたっけ? それとも、これも裁判所の慣行ですか?
 ということは、裁判書には「懲役2年」と書いてあっても、もし裁判長が「1年」と言い間違えて(あるいは法廷に居合わせた者が聞き間違えて)そのまま閉廷すれば、その言い間違い(聞き間違い)のほうが優先されるってことなんですか? そんなルールに何の意味があるのよ??

 現在あいにく、手元に刑事訴訟法の資料がありませんので、どなたかお助けを。

 

>>>> 自己補足 (2007/03/09)

◆ 刑事訴訟法 第342条 
 判決は、公判廷において、宣告によりこれを告知する。


……ですから、この342条の反対解釈により、公判廷でないところで告知しても、判決としての効力はない、ということになります。 なので、閉廷後に判決を撤回することは許されないのです。

 わかりましたか? 1年半前のオレ。

 

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コメント

ちょうどよい人がいました。

試験観察と言う判決が難しい場合、家裁調査官の監察下において(管理責任が生じる)経過を見るという罰則がありますが、この場合保護委託施設に預けて働かせながら更正指導を行ない、更正をはかるという事ですが、全ての施設が同じなのか分かりませんが、千葉県■■市にある●●●●という保護委託施設があります。

収容されてる物は当然未成年者です。タバコの支給が2日に一度、月1回外食時にビール飲食、そしてここは人夫として刑務所の懲役より遙かにきつい危険作業もある重労働をさせられ、中には親方が毎日のように暴行的に手を出してる場合もあり、その暴行も慰謝料レベルの暴行もあります。

仕事の帰りには会社には良い人もいて、毎日ビールとつまみを車の中で飲ませてくれます。

タバコは仕事の勤務時間以外は吸い放題です。

施設内では一服時間が設けられてます。未成年者です。

最近のニュースでも未成年者にタバコの販売、親がタスポの貸与で子供がタバコを購入などで逮捕と、書類送検がありましたね。

試験観察の定義はおかしく既にその罰則内容の判決を下してる事に成っており、まして刑務所の懲役(懲役と言う刑事罰)より遙かにきつい労働に従事させられること自体がおかしく、裁判所、家裁調査官の責任であり、またこれが報告してるにも拘わらず何十年と続けられているのです。

あきらかに了解の元に行なわれていて、また暴行に関しても裁判所が慰謝料を支払わなければならないはずで、まして判決自体も不当な判決の場合もあります。

一般の人はこういう現実を理解しておらず、裁判官の判決だから正しく、絶対だととんでもない勘違いをしていて、いざ逆に責任を問われかねない事実が発覚すると法律を駆使して逃げるのが現実です。

とてもちょうど良い材料でしょう。

善人ならすぐに分かる事です。記事にして下さい。

投稿: 通行人 | 2010年7月11日 (日) 07:08

お伝えいただいた内容が真実なら、たしかに問題は大きいですね。しかるべき媒体の編集者に、それとなく報告・相談してみます。どうもありがとうございました。

※なお、会社の実名は伏せ字にさせていただきました。現時点では名誉毀損になる可能性がありますので。

投稿: みそしる | 2010年7月12日 (月) 08:42

法務相には問い合わせしないで下さい。

こっそりと対処、真実の隠蔽をはかられる可能性もあるので。

と言っても証人は何百人ですから。

大きくしてから法務相、全国の裁判所、家裁調査官に未成年者の日本国憲法抵触に対しての監督、管理責任を追及するべきです。

裁判所の職員、家裁調査官も了解済みなのです。

ちゃんと家裁調査官に告げてあるのです。

それが何十年と続いていたのです。

本来であればとんでもない大きな問題なのです。

未成年で不良だからなめてかかっていたのでしょう。

収監された不良もその方が都合いいですが。

施設管理人もそうですが管理人の責任だけに留まらせる訳にはいきません。

慰謝料レベルで暴行も何回もあったのですから。

もし過去であっても実際の実情を詳しく知りたいのであれば、コメントの返答でお願いします。

自サイトに詳細に載せ、そのサイトを教えますので。

投稿: 通行人 | 2010年7月13日 (火) 01:39

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