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2005年10月22日 (土)

スズメバチ駆除のために焚いた花火で、家が全焼

 火事があったのは、山形県川西町の町議会議員(57)の住宅で、18日午後6時過ぎに出火、木造一部2階建ての住宅310平方メートルを全焼し、3時間後にようやく鎮火しました。当時、家には家族ら9人がいましたが、全員、避難して無事でした。 警察の調べによると、家の軒下に直径90センチほどのスズメバチの巣があり、夕方から妻が花火の煙でハチを駆除していたところ、かやぶき屋根に飛び火したということです。 (テレビ朝日)

 全員無事とのことで、なによりです。さすがに家ごと燃やされりゃあ、いくらスズメバチの巣といえども、ひとたまりもないでしょう。肉を斬らせて骨を断つ、といった感じでしょうか。ちょっと違うか。

 「失火罪」という犯罪が刑法に載っています。うっかり建物等を燃やしてしまった場合が該当します。

 
◆刑法 第116条(失火)
1 失火により、第108条に規定する物又は他人の所有に係る第109条に規定する物を焼損した者は、50万円以下の罰金に処する。

 
 ニュースなどで「現住建造物放火の疑いで……」という言葉を聞くことがあるかと思います。この「現住建造物」こそ、失火罪でも問題となる「第108条に規定する物」なわけです。では、現住建造物とは何か。

 【現住性】:犯人以外の人が、実際に日常生活の拠点として利用していること。火が付いた時点で留守だろうが関係なし。

 【現在性】:犯人以外の人が、火が付いた時点で中に存在していること。

 現住性と現在性、このどちらか一方でもあれば、その建物は「現住建造物」となります。本件の建物は、町議会議員さんの住宅で、しかも、事件当時に9人が中で団らんしていたということですから、現住性も現在性も、どちらも満たしています。なので、議員の奥様には、116条1項の失火罪が適用されそうです。

 また、さらに「重過失失火」という犯罪もございます。「失」というネガティブな漢字が連続するので、ちょっとだけ切ない気持ちになりますが、「重過失 失火」罪です。これに該当してしまうようなことになると、罰金だけじゃ済まない可能性が生じてまいります。

 
◆刑法 第117条の2(業務上失火等)
 第116条又は前条第1項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、3年以下の禁錮又は150万円以下の罰金に処する。

 
 では、「重大な過失」とは何か。理論的にはけっこう難しい問題ですが、普通に注意してればそんなドジはしないだろうに……でもやってしまった、という場合が該当します。

 判例では、晴れた真夏の日に、給油所のガソリン缶のそばでライターに火を付けた、ですとか、石油ストーブの燃料として、灯油と間違えてガソリンとオイルの混合油を使ってしまった……などの場合が「重大な過失」だと認定されています。
 かやぶき屋根の下で、花火をかざしていた本件は……、うーむ、じつに微妙。まぁ、理屈はともかく、実際に刑事事件として起訴されることは考えにくいですけどね。なにしろ、スズメバチは刺した相手を絶命させるほどの毒を持つ昆虫ですので、人間の生活圏に入ってくれば駆除もやむなしです。その過程で起こってしまった気の毒な事故、という側面もありますし。

 
 
 ん? どこからともなく小さな声がします。耳を澄ませてみると、「けっ、なにが失火だ」という呟きが聞こえてきませんか。「巣を花火でいぶされた、こっちの立場からすりゃあ、『現住建造物放火』以外の何物でもないよ」と主張する、怒り心頭に発したスズメバチたちの声が。直径90センチの巣といったら、きっとスズメバチにとっては自慢の大豪邸でしょう。

 火災で住む家を一瞬で失ったのは、ヒトもハチも同じなんですが、ハチは保険に入ってませんしね。

 
◆ 商法 第641条
 保険ノ目的ノ性質若クハ瑕疵、其自然ノ消耗又ハ保険契約者若クハ被保険者ノ悪意若クハ重大ナル過失ニ因リテ生シタル損害ハ保険者之ヲ填補スル責ニ任セス

<関連ニュース>
 
【走る車から30連発花火、3棟全焼させた4人書類送検】

 広島県東広島市で昨年5月、走行中の車から打ち上げ花火を発射して住宅など3棟を全焼する火事を引き起こしたとして広島県警西条署は、市内の無職男(22)と土木作業員ら計4人を重過失失火容疑で書類送検した。

 調べでは、5月9日午前0時ごろ、同市西条朝日町の市道を車で走行中、30連発の花火を約1分間発射。この火が、市道沿いの木造2階建て倉庫に燃え移り、倉庫と西隣の鉄筋4階建ての会社事務所兼住宅など計約450平方メートルを全焼させた疑い。
 屋内に出火原因が見当たらず、同署が周辺を聞き込み、住民が花火を発射する車を目撃、近くのコンビニで若者らが花火を買っていたことが判明した。県警科学捜査研究所などが実験を重ね、出火源になることも確認した。

 4人は「ふざけてやったが、燃やすつもりはなく、申し訳ない。まさか花火で家が燃えるとは」と反省しているという。(読売新聞)2005/02/15


【ミツバチ40万匹死ぬ いたずらの疑い】
 千葉県我孫子市の農場で3~4日に行われた「れんげ祭り」で、会場内の畑で木箱に入れて保管していたミツバチ約40万匹が死んでいたことが12日、わかった。我孫子署は、いたずらによって殺された疑いがあるとして、器物損壊事件として捜査している。

 同署の調べなどによると、死んだのは同県市川市の養蜂農家が所有する西洋蜂。会場には11箱の養蜂箱が置かれていたが、このうち8箱のミツバチがほぼ全滅していたという。被害金額は約330万円としている。

 祭り終了後の5日夜、所有者の男性が発見し、同署などに被害を届け出た。4日に確認した際には、異変はなかったという。6日に検査した千葉県中央家畜保健衛生所(千葉市花見川区)によると、伝染病が原因ではないと 判断している。 (朝日新聞)2005/05/12



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コメント

山形県川西町には公立置賜総合病院と
いう病院があって、私の先輩が
そこに医師として勤務しているのですが、

彼によると地元では騒ぎになったようです。
日本では約5000種のハチが生息しているわけですが、毎年約40人がハチに刺されてなくなっています。
自然毒による死亡原因の第1位を占めている
のが現実です。

こういう事件を見聞きすると複雑な気分に
なります。

投稿: カプラン | 2005年10月27日 (木) 11:00

いらっしゃいませ。

なにしろ、直径90センチの巣といいますから、想像を絶します。そんな巣の駆除はプロに任せるべき、というのが正論でしょうけど、プロにお願いする前に「自分でできるだけのことはしておきたい」と思ってしまうのも、ごく自然な人情です。

家族の誰かがスズメバチに刺されて、致命的な症状で苦しめられることを考えれば、どちらの運命が良かったんでしょうかね……。家屋や想い出とともに巨大なスズメバチの巣も、炎の中に消え去りはしたが、全員が無事でいられる今と。

この2つは比較すべきものではないのかもしれませんが。

投稿: みそしる | 2005年10月27日 (木) 16:58

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