模擬裁判with模擬裁判員(早稲田の法科大学院)
裁判員制度体験狙い、あす模擬裁判 商店会と早大有志(朝日新聞)2005/11/26
「不倫相手を刺殺」学生と商店主ら、早大で模擬裁判(読売新聞)2005/11/27
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早稲田大学の法科大学院生有志が、裁判員入りの模擬裁判を行うということで、きのう、都の西北へ行ってまいりました。時間帯が、伊集院光先生のラジオとモロかぶりなのが気になりましたが、今週は泣く泣くガマン。
法廷を直接傍聴するのは、あまり法律に詳しくない一般の方を優先させる方針とのことで、私は大画面に生中継映像が公開されるという第2会場にまわりました。それでも、予約席をとっていただいたこともあって、法廷の模様は把握しやすかったです。
今回は、早稲田キャンパスの周辺にある商店街の店主や、その奥様方に裁判員役をお願いしたとのこと。会社員の場合、裁判員としての参加を理由に休暇を取ることは、いちおう裁判員法の条文上で保護されております。しかし、個人で事業をしておられる皆さんにとって、法廷に裁判員として呼び出されることは死活問題といえるでしょう。
たしかに国庫から日当は支払われますけれども、現行の検察審査会のメンバーに支払われる金額とのバランスを考えれば、1万円弱程度でしょうか。そこからバイト君の給料を出せば手元には残りませんし、しかも、急に雇ったバイト君が満足に働いてくれるかも心許ない。そんなリアルな問題点に目を付けるとは、さすが早稲田です。
模擬裁判員の方が言及しておられたことですが、裁判員候補者が裁判所に、スケジュールを提出するというアイデアもありえます。裁判員としての参加に都合のいい日程や曜日、シーズンなどを申告して、そこを考慮しながら任命してもらうような運用がされれば、問題解決に一歩近づくのでしょう。それに加えて、裁判員対象事件ぐらい、裁判所も土日祝日を返上しておくれよ、というのが私の本音です。全国で年間220万件ある公判のうちの3千件なんですから。
今回の模擬裁判。被告人は外国出身の女性(アンジェラ)で、かけられた容疑は殺人。
夫(太郎)の暴力に耐えかねて、幼い娘(めぐみ)を連れて家を出た被告人アンジェラは、ホステスとして働いていた客の男性(啓一)と同棲をするようになり、娘は夫・太郎のもとに預けられた。
ある晩、午後10時30分に「(ぜんそくで入院していた)めぐみの体調が悪くなった」と太郎から電話があり、アンジェラは同50分から11時の間に「都の西北病院」へ向かった。その夜は、太郎は病院廊下のベンチで眠り、被告人はめぐみのベッドで添い寝。翌朝8時に帰宅。その時点で、寝室でメッタ刺しにされた啓一の遺体を発見。
部屋の鍵は、アンジェラと啓一しか持っておらず、その夜、アンジェラは鍵をカーディガンのポケットに入れて、そのカーディガンを病室のイスにかけていました。
直接の物証は、血液反応のある包丁と、米粒ないし粟粒大の血痕が9つ付いた被告人のカーディガン。メッタ刺しにした返り血にしては少なすぎないかと思えますが、検察側は「延髄切断は、頸動脈切断等に比べれば出血しない。しかも被害者・啓一は、ふとんをかぶっていた」と主張しています。
加えて、被告人アンジェラが重要参考人段階で書いたという「私が啓一さんを殺しました」との上申書があるのみ。しかも、そこに至るまでの取り調べが、病院で2日間、警察の寮で2日間、警官を配備したビジネスホテルで5日間に及び、その間、帰宅どころか電話もできなかった状態。
一方で、夫・太郎は証人として「あの夜、『啓一さんを殺してきた』と言って青ざめていた」と、上申書の内容を裏付ける証言も行っています。
(1)死亡推定時刻
検察官は午後10時30分から55分の間の犯行であり、そのような短時間での殺害も可能であったと主張しており、その裏付けとして、被害者の遺体を直接解剖し、死亡推定時刻を「午後10時から翌朝5時」と出した法医学者の鑑定を付与。
一方で、弁護側は、推定時刻を「翌朝2時から4時」と絞り込んだ別の法医学者の鑑定を根拠に、被告人のアリバイを主張。深夜巡回した看護師も、この時間帯に被告人が眠っていたところを複数回見たと証言しています。ただ、この鑑定人は書面のみを用いて鑑定を行っており、しかも検察側鑑定人に比べて鑑定歴が短いといいます。
(2)殺害の動機があったのか
あの晩、太郎に呼び出された被告人に向け、ひとりにされて嫉妬した啓一は「めぐみなんか死ねばいいんだ」と言いはなち、その言葉に逆上した被告人による突発的な犯行……と検察側は主張しています。
太郎も、被告人には不満が積み重なっており、啓一殺害の動機があったと証言しています。
(3)上申書は信用できるのか
取り調べ担当の警察官は、「被告人をひとりホテルの部屋に残し、母国語で書いてもらった上申書を日本語に翻訳させた」と証言しています。また、取り調べ中の厳重な監視は「『死にたい』と言っていたので、自殺防止のため」と主張しています。
一方で、被告人自身は「警官から言われたとおりに答えて、それが書き留められた」と主張。「死にたいとも言っていない」と強調します。
検察側は懲役10年を求刑。
別室での評議室の模様も中継されましたが、その議論の中で裁判員役の皆さんが出してくる意見の一つひとつが、想像以上に素晴らしかったです。「自殺防止だと言っておきながら、警察は重要参考人をひとりにするのか」「突発的な犯行というが、太郎から電話があった時は、娘の容態のことで頭がいっぱいなはず」「7年間も夫婦でいれば、部屋の鍵をどこに入れて持ち歩くか、互いのクセもわかっている」など、思わずうなずいてしまう鋭い指摘の連続なのです。
正直「大丈夫かなぁ」と心配している裁判員制度ですが、意外とポジティブな期待をしてもいいのではないかと思ってしまう私は、単なるお気楽人間なのでしょう。それは別にいいですが。
さすがに、「太郎が怪しい」という説も自然と盛り上がりをみせるのですが、「あくまで、被告人のアンジェラさんが有罪か無罪かを判断してください」と、裁判官役の院生が的確に軌道修正していました。
ただ、証拠が少なすぎて、「無罪」というシナリオが最初から用意されていたような気がするのは、うがった見方でしょうか。裁判員役の皆さんからも「これだけの証拠で有罪にするのは勇気が要る」「凶器の指紋は採っていないのか」など、無理もない声が噴出していました。
また、法廷での話に戻りますが、裁判員の質問権行使。あれもいかがなものなんでしょう。実際にどうなるかは、3年半後にフタを開けてみなければわからないのですが、今回は質問したい内容を裁判員の手元にある紙に書かせて、それを手渡された裁判長が代読するという形式を採用しました。その代読の前に、裁判官役の3人が頭を付き合わせて、なにやらゴニョゴニョ話し合うんですね。そのあげく「これは証人が経験した事項ではありませんので、質問をご遠慮ください」と言っちゃう裁判長。
たしかに正しいです。しかし、正しけりゃいいってもんじゃありません。
法廷の雰囲気に慣れないなりに、せっかくひねり出した質問にもかかわらず、そんなようわからん「プチ検閲」をされるんじゃ、裁判員の皆さんとしては決して気分の良いもんじゃありませんよ。傍聴してる私まで気持ち悪くなりました。あんなことをしていたんじゃ、ますます一般の方を萎縮させてしまうのは目に見えています。だから、評議の段階で「あれも聞きたかった」「これも確かめたかった」と、裁判員役の方々の不満が露わになってしまうのです。
証人の証言や被告人質問が一通り終了するたびに、裁判官・裁判員はいったん退廷し、別室で裁判員からの質問事項を収集・整理してから、満を持して再入廷、そして質問を代読……という方法もありえます。一般生活者の常識や直感を本気で活かしたかったら、それくらいの配慮をしてもバチは当たらないでしょう。もちろん、時間的な制約という問題もあったんでしょうけれどもね。
そうです。時間が限られていたせいか、審理が何時間もぶっ通しで行われていました。あれでは、集中が一瞬フッと途切れたときに重要な証言がなされても、つい聞き逃してしまうおそれがあります。一般の方の多くは、メモを採りながら話を聞きつづけるという行動に慣れていませんから、なおさら聞き逃しが増えるはずです。
本番になると、速記官の作成した証言の書き起こしが、各裁判員にも手渡されるようになるのかなぁ。それでも、1時間につき5分程度の小休止は入れてしかるべきです。集中力に人一倍の自信がある院生たちにとっては、見逃しがちな要素なのかもしれませんが、被告人の人生を左右する極めて大切な審理ですから。
それに、裁判員役のひとりからは、もっと死亡推定時刻を限定できないのか、もっと証拠はないのか、という苛立ちに似た発言もあり、「今ここにある材料だけで判断する」「欠けた穴を埋める」という思考にとまどっているようにも感じられました。この点について、もっと丁寧に説明がなされるべきかもしれません。
もっとも、これらは近い将来の「マジ裁判員裁判」も含めて、一般的にいえることでしょう。
とはいえ、全体的には非常に充実した企画内容でした。スタッフの方々も、とても丁寧に対応してくださり、ありがたかったです。
もっと、裁判員入りの模擬裁判を観てみたいと思いました。 どこの誰が主催するかは特に問いません。とにかく東京近郊で開催される予定の模擬裁判について、なにか情報をお持ちの方は、ぜひお寄せください。
最後に特筆すべきは、被告人・アンジェラ役の大学院生。パンフレットを見たら、……日本人だったんですね。あのセリフのイントネーションは何だったんでしょう。そして、証人の証言を聞いているときの表情。あんな卓越した演技力を法曹業務で見せつけていくのかと思ったら、恐ろしいものがあります。少なくとも、敵に回したくはありません。(笑)
皆さん、新しい司法試験がどうなるかわかりませんが、ぜひ全力を出しきってパスしてください。
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気軽に読めば「よい本」
ジャケ買いしたが…
タイトル負けしてますね。

これからの日本の課題
現代は希望に満ちた社会












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