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2005年11月11日 (金)

2円盗んで捕まった男

>>> さい銭2円盗み逮捕、起訴

 寺のさい銭箱から現金2円を盗んだとして、兵庫県警須磨署は9日までに、窃盗の現行犯で神戸市兵庫区の無職男(27)を逮捕、神戸地検は窃盗の罪で起訴した。

 須磨署は「過去に2、3回さい銭泥棒を繰り返しており、再犯の可能性や逃亡の恐れがあったために逮捕した」と話している。被告は「のどが渇きジュースが飲みたかった。100円玉と思ったら1円玉だった」と供述しているという。(共同通信)

 
 被疑者(いや、起訴後なので被告人か)は、事件当時シンナーを吸っていたとのこと。そんなわけわからん状態なら見間違えもするかもな、とも思ってしまいますが。ただ、小売店でレジを打っているとわかりますけども、100円玉と1円玉を間違えるお客さんって、意外と普通にいらっしゃいます。50円玉と間違える場合よりもむしろ多いかもしれません。

 200円盗むつもりだったとはいえ、結果的に賽銭箱からつまみ出されたのはたった2円。そんな事件まで起訴すんのか? 税金の無駄づかいじゃないのか……とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
 

◆ 刑事訴訟法 第248条(検察官の起訴便宜主義)
 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。


 警察から次々に送られてくる各刑事事件を、法廷というまな板の上に乗せるべきかどうかの判断は、その事件を担当する検察官に任せられています。今回は、被害額こそ現代の物価じゃ何も買えないほどの微々たるものとはいえ、犯人の性格なども含めて全体的に観察すれば、事件としては決して軽くないと認めたのでしょう。

 今でも100円ショップで売られたりしていますが、ガムのケースに似せて作られたイタズラ用のオモチャがありますよね。「おひとつどうぞ」と勧められて、板ガム状の仕掛けを引っぱると、針金でできたムチ状のワナが、油断したあなたの親指を容赦なく打ち付けてくるという、なんとも加虐スピリッツあふるる代物です。

 もっとベタな例を出すなら、チョークの粉を飽和状態になるまで含ませた黒板消しを、教室のドアの上に挟んでおいて、イヤミな数学教師のハゲ頭に落とすとか。ああいう行為は、「人の身体に向けられた有形力の行使」ということで、刑法第208条の暴行罪に該当するはずです。
 しかし、先ほども触れたように、そんなイタズラまで取り締まっていたら、税金や人員がいくらあっても足りない。それ以前に無粋であろうということで、実際には不問に付されています。理論的には「絶対的軽微の可罰的違法性」という問題でして、たしかに刑法の条文に形式的にはあてはまるけれども、条文が犯罪として想定しているほどの悪さではなく、国家が罰するまでもない、と説明されます。

 今回は、その可罰的違法性の理論について、少なくとも検察官は念頭に置いていないということでしょう。もちろん、弁護人は法廷で主張するのかもしれませんが。
 ただ、本件について「起訴してみたところで、どうなのかなぁ……」という疑問も少し残ります。


◆ 刑法 第235条(窃盗)
 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役に処する。

◆ 刑法 第12条(懲役)
1 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上20年以下とする。
(※第2項は略)


 昔から指摘されている問題点ですが、窃盗罪は懲役刑のみで罰金刑が用意されていません。刑法が初めてつくられた明治時代には「盗みというのは、追いつめられた貧乏人がやるものだ。貧乏人に罰金を科しても仕方がない。」という前提があったからのようです。そこには、国が強制的にカネを吸い上げるよりも、窃盗の被害にあった者のために、民事の損害賠償請求のぶんを手元に残しておくべき、という考慮もあったのかもしれません。
 しかし、財布に万札を何枚も入れているようなガキが「毎日がつまらないからスリルを味わいたい」と平気で万引きをするこのご時世、「盗みをはたらくのは貧乏人」という前提など、もはや通用しません。先日も、修学旅行先の京都で、八つ橋などの土産物を集団万引きした中坊が集団逮捕されましたよね。連中も「自分のカネを使いたくなかった」などと供述している始末。

 裁判で有罪とされた窃盗犯には、最低でも1ヶ月の懲役刑を科すことになっています(究極に刑を軽くしても、減軽の限度は4分の1までですので7日の懲役)。ということで、「たしかにコイツは悪いけど、刑務所に送るほどじゃないなぁ」との判断で、検察レベルで不起訴とされたり、仮に起訴されても裁判所が執行猶予を言い渡したりするのが既定路線となりつつあります。このままですと、「盗み程度じゃ大した問題にはならん」という、モラルハザードすら世間に生じさせかねません。いや、すでに生じてるかも。

 まぁ、じつは、罰金刑の執行猶予だってありうるんですけれども、それはともかく、刑の選択の幅が広がるぶん、もっと現実の要請に見合った対応ができるのではないかと私は期待しております。窃盗罪に罰金刑を置く案は、国会でも議論されていますので、今後に注目ですね。


 寺によると、さい銭は前日夕に回収したばかりだったという。住職(50)は「被害は2円でも、仏様にお供えされた人の気持ちをふみにじる行為だ。改心したら寺の掃除にでも来てほしい」と話している。(同上)

 お寺の掃除が済んだら、性根の掃除もしてくださいね。




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