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2005年12月12日 (月)

それでもダメなのか? ネット選挙運動

 まだウィンドウズ95フィーバーが冷めやらない頃、当時の自治相が1996年に出した通達があります。「インターネットで選挙運動をすんな」と。選挙期間中にサイトを立ち上げたり、既存のページ内容を更新したりすることは、公職選挙法に違反するというのです。

 このお達しは、全国の選管が各方面からの問い合わせに答える形で、一般に広まっていったわけです。現に、今年9月の総選挙を前にして、民主党と自民党のホームページに対し、総務省からの「指導」が入り、各党は内容の一部を削除しています。

 「そういうオマエは、最高裁判事の国民審査のページを作って、選挙期間中なのに、ああでもないこうでもないと、バンバン書き換えとったじゃないか」とお思いになる方もいらっしゃるかもしれません。が、国民審査に公職選挙法の適用は無いのです。


◆ 公職選挙法 第2条(この法律の適用範囲)
 この法律は、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長の選挙について、適用する。


 ただ、お上のお墨付きがあったわけではありません。もしかしたら、「国民審査のオカズ」も公職選挙法に違反した存在だった可能性が無いともいえませんので、あるとき突然、このブログごと消されているかもしれません。

 一緒に私も消されたりして。夜道を歩くときには気を付けます。


 きたる今月22日、ネット上の選挙運動が認められないまま行われた先の衆院選(殊に比例代表)は無効であると訴えた裁判の判決が、東京高裁で言い渡されます。
 この訴訟の原告は、なんと法学部の学生さんとのことで驚きました。立派にキッチリと勉強なさってるんでしょうね。日本の将来に期待が持てます。

http://www.geocities.jp/netelec05/


 ネット選挙運動が、なぜ認められないのか。総務省の見解によると、ホームページやEメールは、公職選挙法にいう「選挙運動のために使用する文書図画」にあたるというのですが。

 この「文書図画」を配る場合、142条で枚数が制限されていますし、上空などからバラ撒くことは全面禁止です。あるいは、2003年に新設された142条の2にもとづき、各党のマニフェストを配布することが許されるぐらいです。
 また、「文書図画」を掲示することは、あらかじめ143条に挙げられているもの以外は禁止されています。
 
 ちなみに、法律業界で「図画」は “とが”と読みます。“ずが”ですと、小学校の図画工作を連想させるので、なんとなく安っぽいからでしょう。


◆ 公職選挙法 第143条(文書図画の掲示)
1 選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号のいずれかに該当するもの(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては、第一号、第二号、第四号及び第五号に該当するものであつて衆議院名簿届出政党等が使用するもの)のほかは、掲示することができない。
  一  選挙事務所を表示するために、その場所において使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
  二  第141条の規定により選挙運動のために使用される自動車又は船舶に取り付けて使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
  三  公職の候補者が使用するたすき、胸章及び腕章の類
  四  演説会場においてその演説会の開催中使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
  四の二  個人演説会告知用ポスター(衆議院小選挙区選出議員、参議院選挙区選出議員又は都道府県知事の選挙の場合に限る。)
  五  前各号に掲げるものを除くほか、選挙運動のために使用するポスター(参議院比例代表選出議員の選挙にあつては、公職の候補者たる参議院名簿登載者が使用するものに限る。)
2 選挙運動のために、アドバルーン、ネオン・サイン又は電光による表示、スライドその他の方法による映写等の類を掲示する行為は、前項の禁止行為に該当するものとみなす。
(※以下略)


 ひょっとして、ホームページは、この143条2項で禁止されている「映写等の類」にあたるんでしょうか……。うーむ。だとしたら次の手段。そういった映写等の類を「掲示」していないと主張すればいいのです。

 この「掲示」とは何かについて、学者さんはいろいろ定義してらっしゃるようですが、ネット上にホームページのデータをアップロードすることを、ポスターの貼り付けと同列に扱っていいものかどうかは、あらためて考える必要があります。

 街中に、見たくもないポスターがベタベタ貼られ、「○山○夫」と書かれた派手なネオンサインが頭上を覆い、その下で「お兄さん、スケベかーい? 寄ってかないかぁ~い」と呼び込みされるような選挙運動が行われれば、そりゃ世も末でしょう。 ちょっと楽しそうだけど。
 しかし、選挙運動用のホームページを立ち上げることは、そこまで選挙制度や日常生活の秩序を乱したりはしません。なぜなら、ホームページは見たい人が見るのであって、わざわざ自分でURLや検索ワードを入力したりしてアクセスするものだからです。逆に、作った側からみれば、受け身のメディアです。そこが、ポスターなどで想定される「掲示」という概念とは根本的に違う点だといえます。

 まぁ、たとえば、ヤフーのトップページなど、非常に目に付く場所にバナーリンクを掲載したりすれば、また性格が違ってきますし、「金のかからない選挙」という理念にも反するでしょう。
 それに、ブログはどうなるんでしょうかね。トラックバック機能で、他人のブログからリンクを貼ることができる点を考えれば、少し攻撃的です。とすれば、ホームページとは、いちおう分けて考えていく必要があります。

 この訴訟では、ホームページと一緒にEメールでの選挙運動についても解禁を目指しているようですが、私に言わせてもらえば、ホームページとメールは、似て非なるメディアです。メールは相手にムリヤリ送りつけるものであって、しかも送信した後の書き直しができません。だからメールマガジンは難しいんです。(と、ついでにメルマガ休刊の言い訳)

 ホームページの立ち上げは143条の「掲示」の問題でしょうが、ダイレクトEメールの送信は142条の「頒布」「散布」に近いイメージであろうかと思います。文書の「頒布」については、ビラの数量規制がありますし、ましてや「散布」とみなされて全面禁止されては厄介です。なので、ここは「ホームページ等」とせず、ホームページのみに的を絞って争ってみるのも、ひとつの作戦だったかな、とオジサンは考えます。

 奇しくも、こないだの総選挙からわずか数日後、外国に住む日本人の選挙権を十分に保障してこなかった国の違法性を認めた最高裁判所大法廷判決が出ています。外国に住む方々が、故郷のどの政党やどの候補者に投票するかを決めるのに使える情報源として、インターネットは第一に挙げられるものです。なのに、ネット選挙が認められなければ、あの大法廷判決の威光は半減してしまう、というべきでしょう。

 さて、「最高裁チルドレン」の東京高裁は、どう出ますか? 22日に、ひと足早いクリスマスプレゼントを、ちょうだいな!


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コメント

残念ながら,東京高裁はネットによる選挙運動は公選法違反であると判断し,そのことは憲法に違反しないとして敗訴となりました。
おって,詳細はホームページでお知らせします。
なお,近日中に上告する予定です。

投稿: 選挙無効訴訟実行委員会 | 2005年12月22日 (木) 18:01

いらっしゃいませ。お返事が遅れて失礼いたしました。当ブログにもリンクしていただき、ありがとうございます。

今回の判決は残念でした。ただ、政治家レベルでは、ネット選挙運動を実現させる方向で話が進んでいるようですよね。立法と司法の両面で、動向を見守っていきたいと思います。

上告なさるとのことで、まずは、最高裁で口頭弁論が開かれることが第一目標かもしれませんね。陰ながら応援しております。

投稿: みそしる | 2005年12月27日 (火) 01:25

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