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2006年1月22日 (日)

登録商標になれなかった「草加せんべい」

草加せんべい、偽物許さず(朝日新聞)

 そんなブランドせんべいを食べるような身分でない私が、どうこう書く話ではないでしょうが、ま、あれこれ書いてみることにいたします。

 商標(ブランド)って、なかなか面白い世界です。日本では、文字や図形など、視覚的な目印のみしか許されませんが、国によっては、音やニオイなども立派な商標として通用したりします
 たしかに、ただよってきたニオイで、「あっ、あの店のポークカレー!」という認識をすることもあるでしょうが、そんなボンヤリしたものを法律で保護しようってんですから、ちょっと不思議な感覚です。国民の嗅覚が発達したワンワン王国ならありうるでしょうか。 なんだ、ワンワン王国って。

 ただ、創作した瞬間に発生する著作権などと違って、商標は、わざわざ特許庁に登録しないと権利を持てないことになっています。めでたく登録商標として認められれば、まぎらわしい商標を勝手に騙るニセモノに対して、差し止めや損害賠償を求める強力なチカラ(商標権)が備わるのですが……。

◆ 商標法 第3条(登録商標の要件)

1 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。

 一  その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
 二  その商品又は役務について慣用されている商標
 三  その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
 四  ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
 五  極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
 六  前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標

 『草加』が、3号にいう「産地、販売地」に該当するのでしょう。埼玉県草加市ですね。そして『せんべい』が1号の「その商品の普通名称」にあたるということだと思われます。

 草加に住んでいるせんべい屋が、自分の商品を「草加せんべい」と名付けるのは、当たり前の発想で、このような一般名詞の組み合わせは、強力な商標権を認めるほどの保護に値しないという事情があるのかもしれません。
 それに、地域の名前が付いているなら、無条件に、その地元を代表する商品だという有利なイメージが付着するでしょうから、草加のせんべい屋なら誰だって「草加せんべい」を名乗りたいと願うはずです。だとしたら、一般名詞の組み合わせを、たった一業者のみに認めるのは、不公平感がぬぐいきれません。

 というふうに考えてみると、「地域名+商品名」の商標登録は原則ダメ、とする特許庁の運用は、ある種合理的です。ただ、この商標法3条には、2項で例外が設けられているのです。これがよくわかりません。

2 前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。

 たとえば「西陣織」や「夕張メロン」は、消費者がその名前を聞いたときに具体的なイメージが浮かぶので、一般名詞の組み合わせでも例外的に商標登録できるのだそうです。しかし、「草加せんべい」は、そこまでの知名度がないと。だから、文字単独での登録が認められてこなかったようなのです。

 でも、九州人の私、草加せんべいは、前から知っとったばい。

  1. 文字のみの登録商標
     西陣織、夕張メロン、前沢牛、佐賀牛、笹野彫,信州味噌,三輪素麺,佐賀海苔、宇都宮餃子,富士宮やきそば,中房温泉
  2. 図形やデザイン化された文字、または他の名称と組み合わせて使用する商標登録
     桐生織,大島紬,久米島紬,八重山上布,東京染小紋,加賀繍,京くみひも,有田焼,岩谷堂箪笥,駿河竹千筋細工,井波彫刻,名古屋仏壇,京仏壇,川辺仏壇,大館曲げわっぱ、幌加内そば,山形牛,仙台牛,浜名湖うなぎ,三ケ日みかん,宇治茶,壬生菜,伏見とうがらし,関あじ,関さば、稲庭うどん,仙台みそ,草加せんべい小田原蒲鉾,島原手延素麺,信州そば

 ……うーむ、全国的な知名度につき、(1)のグループのほうが(2)よりも高いと、本当に言い切れるでしょうか。

 そもそも、草加市内の、あるひとつのせんべい屋にだけ「草加せんべい」を名乗らせる、その狭い領域での不公平感だけで語られるべき時代ではないでしょう。最初に商標法が公布された当時に想定されていたであろう「近所のせんべい屋同士の対立」という問題をすでに超えているのです。
 記事中にもありますように、異国のせんべいまで、袋にデカデカと「草加せんべい」と書き始めているそうでして、そういう外部の者がブランドの信用にタダ乗りする不利益のほうが、はるかに深刻となっているのです。だから、「せんべい組合」として、地域が誇るブランドの法的保護に向け、一丸となって動いているのでしょう。

 4月に商標法が改正され、近隣都道府県レベルの知名度があれば、一般名詞のみの組み合わせでも登録を認める方向になるのだそうです。 別に「白い恋人」や「萩の月」のような、洗練されたフレーズばかりでなくてもいいじゃないですか。地元の特産品は特産品らしく、郷土の名前を冠に付ける。骨太で素晴らしいことだと思います。

◇ 商標法 第7条の2(地域団体商標)※2006年4月1日施行
1 事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(※中略)又はこれに相当する外国の法人(以下「組合等」という。)は、その構成員に使用をさせる商標であつて、次の各号のいずれかに該当するものについて、その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、第三条の規定(同条第一項第一号又は第二号に係る場合を除く。)にかかわらず、地域団体商標の商標登録を受けることができる。
 一  地域の名称及び自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標
 二  地域の名称及び自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして慣用されている名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標
 三  地域の名称及び自己若しくはその構成員の業務に係る商品若しくは役務の普通名称又はこれらを表示するものとして慣用されている名称を普通に用いられる方法で表示する文字並びに商品の産地又は役務の提供の場所を表示する際に付される文字として慣用されている文字であつて、普通に用いられる方法で表示するもののみからなる商標
2 前項において「地域の名称」とは、自己若しくはその構成員が商標登録出願前から当該出願に係る商標の使用をしている商品の産地若しくは役務の提供の場所その他これらに準ずる程度に当該商品若しくは当該役務と密接な関連性を有すると認められる地域の名称又はその略称をいう。(※以下略)

 あー、せんべい食いたくなってきた。

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