« 注目の判決スケジュール 【4月第3週】 | トップページ | 戦前のポップな法律雑誌 »

2006年4月13日 (木)

強盗と認められなかった男

>>> コンビニ強盗:消え入りそうな声で「金を出せ……」
 1日午前3時ごろ、奈良市東部のコンビニエンスストアで、レジに弁当とお茶など3点(約700円相当)を持って来た男が、ドライバーのようなものを女性店員(37)に見せ、消え入りそうな声で「金を出せ」とつぶやいた。店員が応じずにいると、未精算商品を持ち逃げした。
 通報を受けた天理署は、男の様子があまりに弱々しく、「強盗」とまでは言えないと判断、恐喝か窃盗事件にあたるとみて捜査している。
 調べでは、男は50歳前後で身長約170センチ。上下深緑の作業服姿。レジ精算中にいったん店外に出て、ドライバーのようなものを持って戻って来たという。(毎日新聞)2006/04/02

 このオッサンが、どういう思いで犯行に及んだのやら、この情報だけではわかりかねるのですが、法律的には少し面白いです。

◆ 刑法 第236条(強盗)
1 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。

◆ 刑法 第12条(懲役)
1 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上20年以下とする。

 強盗って何だろう……。 最近は、残念なことに「コンビニ強盗」というものが報道で一般化されつつありますが、一昔前の人間が普通イメージするのは「銀行強盗」かもしれません。 白昼堂々と、客のいる銀行に武器を持って乗りこんで、多額の金銭を要求する……。

 強盗の行為を解きほぐすと、「暴行や脅迫」+「窃盗」となりますね。そして、暴行罪や脅迫罪は、どちらも法定刑の最高が懲役2年、窃盗罪は懲役10年です。

 一方で、強盗罪は法定刑の最高が20年と設定されている重罪です。とすれば、「暴行や脅迫」と「窃盗」の単純な組み合わせだとは言いきれない、悪質さが何か上乗せされているのが強盗罪だといえそうです。強盗罪の手段としての「暴行や脅迫」は、単なる相手への嫌がらせにはとどまらず、もっとえげつないものだと考えなければ、法律上、罪刑のバランスが取れないのです。

 このことを前提に、最高裁の判例や、法学部を出てれば誰でも知ってる偉い刑法学者たちがおっしゃるには、刑法236条の「暴行又は脅迫」とは、「被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のもの」なのだそうです。

 本件での、「金を出せ」という犯人の言葉や、ドライバー様のものを見せつけた行為は、コンビニ店員が反抗できなくなるどころか、「店員が応じずに」やり過ごしていられる程度だったようです。ならば、強盗行為とは程遠いですね。

◆ 刑法 第249条(恐喝)
1 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

 ここにいう「恐喝」とは、相手の反抗を押さえつけるまではいかなくとも、相手を怖がらせることが必要です。しかも「財物を交付」させなければならないわけです。

 コンビニの女性店員は、犯人の態度に怖がるどころか、無視すらしていたようです。しかも、犯人は、まだレジで精算が済んでいない商品を勝手に持って逃げていますので、コンビニからの財物の交付も無い。

 こりゃ、やっぱり窃盗ですかね。

◆ 刑法 第235条(窃盗)
 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役に処する。

 もちろん、この37歳の女性店員が、特別に肝の座った人物であった可能性も考えられます。強盗の静かな恫喝を「かぼそい声」と認識してたりして。
 もっと上の中年オバチャンになると、レジでのクレームに対しても、毅然とした態度で臨んでおり、敬服するばかりですよね。たまに、お客さんの反抗を抑圧しているんじゃないかと思える態度を見せるときもあったり。

 警察も油断しちゃいけませんよ。実はれっきとした強盗事件なのかもしれませんから。

 判断基準は客観的なものであるべき。それが法律というものの建て前です。被害者の根性や豪胆の具合によって、罪名が変わったりしてはいけません。 半分冗談ですけど、もう半分は本気で言っています。

 

>>>>>>>>> みそしるオススメ本 <<<<<<<<<

 法令データ提供システムで、条文をネット検索できるようになって数年。 本当に便利になりました。 しかし、やはり限界はあります。 判例も一緒に見たいときだってありますよね。

 たしかに充実した法情報の量と質を誇るけれども、まるで、おせち料理の重箱のような、かさばる模範六法が、このCD-ROM1枚に収まりました。 ハードディスクにも格納できます。 重たい「重箱六法」の代わりに、あなたの愛機が六法に変わります。

 数年前は、少し取って付けたような検索機能に、正直イライラしましたが、その操作性も格段に向上していますね。

模範六法2006 平成18年版 CD-ROM
模範六法2006 平成18年版 CD-ROM
三省堂 2006-01-30
売り上げランキング :


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 「やっぱり、六法は手でピラピラめくらないと!」というアナログ派のあなたも、こちらで納得。

模範六法〈2006〉

模範六法〈2006〉 判例六法編修委員会


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

|

« 注目の判決スケジュール 【4月第3週】 | トップページ | 戦前のポップな法律雑誌 »

泥棒 ふしぎ発見!」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/3002/9578189

この記事へのトラックバック一覧です: 強盗と認められなかった男:

« 注目の判決スケジュール 【4月第3週】 | トップページ | 戦前のポップな法律雑誌 »