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2006年4月30日 (日)

神々しさも形無し?

 やっぱり、耐震偽装については、しばらく置かせてください。

 素人目には、詐欺罪が成立するとはとても思えないんですけどね。 でも、プロである検察の皆さんには「詐欺での立件を!」という特命が出ているとのことですから、私の知らない何かアクロバチックな法律構成があるのでしょう。

 いろいろ悩むための素材を得るべく、図書館で少し調べてきます。

>>> 「火災予防の神様」秋葉山神社が全焼 ろうそくから引火?/秋田
 24日午前10時15分ごろ、「火災予防の神様」として知られる横手市雄物川町沼舘中島の秋葉山神社から煙が出ているのを近くに住む男性が発見し、119番通報した。横手消防署雄物川分署の署員が出動し、約20分後に消し止めたが、木造平屋建ての同神社約11平方メートルは全焼した。同分署などによると、神社は4畳半ほどの部屋に祭壇をまつった小さなほこらで、地域の人たちが交代で管理している。
 神社では午前11時からの「例祭」に備え、近くに住む氏子2人が午前10時ごろから準備をしていたという。燭台のろうそくに火をつけた後、料理を取りに出て無人だったという。ろうそくが倒れて引火したらしい。この日の祭りも地域の火災予防を祈るためのもので、約20人が参加する予定だった。(毎日新聞) 4月25日朝刊

 以前にも似たような事故がありましたよね。覚えているのは、私ぐらいでしょうけど。

雷よけ信仰の神社に雷が落ちる(2005/11/10)
 

 
 偶発的だが皮肉っぽい火災である点で、似てはいるんですが、今回は「全焼」ですからね。かなり気の毒です。

 氏子さんがお供えしたろうそくが倒れて、火がついたということですね。 もし、ろうそくの立て方や立てた位置が悪かったりするなら、その氏子さんの過失ということになるでしょうか。 野暮に法律論を持ち出すなら、失火罪の可能性があります。

 もちろん、断言はできません。 わからないですけどね。 すでに誰かによって立てられていたろうそくに火をつけただけなら、だいぶ責任は分散されるでしょうけど。
 

◆ 刑法 第116条(失火)
1 失火により、第108条に規定する物(※現住建造物)又は他人の所有に係る第109条に規定する物(※非現住建造物)を焼損した者は、50万円以下の罰金に処する。
2 失火により、第109条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第110条に規定する物(※建造物等以外)を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。
 

 あんまり面白くない部分なので結論からいえば、この神社施設は、氏子さんにとって「他人所有の非現住建造物」です。 なので、本当に氏子さんの過失だとしたら、失火罪が成立するでしょうね。
 また、普通にやってれば、そんな間違いせんぞ……と思えるほど過失が重大だった場合は、重過失失火罪で、禁固刑までありえてしまいます。

 火災予防の神社の敷地に、けたたましいサイレンを鳴らした消防車が集結してきて、ほこらに容赦なく水をぶっかける絵を想像すると、ちょっと物悲しくなります。 極端な政教分離を主張する学者みたいなこと言うようですが、神聖な祈りの場に、世俗の価値が乱暴に踏みこんで荒らしていくような。
 もちろん、消防署員の懸命な消火活動に水を差したいわけではないんですけどね。

 神道とは、もっと大らかなものかもしれません。 神社の物理的な施設なんか、儀式の都合のためにつくられた仮初めの場なのだから、燃えつきて無くなるなら、それはそれで構わない、と。 ほこらが滅したからといって、そこに宿る神々や、息災の祈りをささげる気持ちまで潰えるわけではない、と。

 ただし、神社から俗世間へ燃え移りそうだったら、それはそれで、世俗の力で防いでね、と。 ……そんな勝手なことはハッキリ消防署に言わないでしょうけど。

 

>>> 華厳の滝:落水量を倍に 恵みの雨で県決定--GW期間中 /栃木
 ゴールデンウイーク期間中(28日~5月7日)の華厳の滝の落水量について、県は27日、当初予定の毎秒0.5トンから毎秒1トンに増量すると発表した。
 ここ数日の降雨で中禅寺ダム(中禅寺湖)の貯水量が回復したため。それでも依然、昨年の半分の水量で、県は「貯水量が影響するのは滝の宿命。いろんな滝の表情を楽しんでほしい」とアピールしている。
 県が「毎秒0.5トンの見込み」と発表したのは25日。基準とした20日現在の貯水量が、平年の半分以下の約205万トンにとどまっていたためで、「0.5トンはギリギリの数字」だった。しかし、恵みの雨に雪解け水も加わり、26日には貯水量が約376万トンに回復した。27日までは落水量を毎秒0.3トンに抑えていた。
 県によると、過去10年間のGW期間中、最も落水量が多かったのは02年の毎秒2.5トン。過去3年間は同2トンで、最近で同1トンだったのは、01年。(毎日新聞) 2006年4月28日

 

 壮大さでは天下一と謳われる華厳の滝ですが、「ダムの水」が「落とされている」という現実は、少し興ざめでしょうか。 しかし、背後のダムで貯水されていなければ、滝はとっくに枯れて無くなっているかもしれません。

 できる限りの手を尽くし、地元の水資源のコントロールと、華厳の滝を頼れる観光資源として残すことの両立を目指すのか。 それとも、人間は手を出さずに「枯れたら枯れたで仕方がない」と、ただただ自然の偉大さに身を任せ、圧倒されることを楽しむのか。

 そのあたりは、個人の生き方の問題になるでしょうか。 たとえば、絶滅が危惧されるトキのような動物や、日本国の少子化・人口現象問題にどう対峙するか。 万物の霊長としての知恵を注ぎ込んで、やるだけのことはやるのか。 あるいは自然の大きな流れを尊重するのか。 そういった選択とパラレルに考えられるかもしれません。

 しかも「連休に合わせて、華厳の滝の見栄えを良くする!?」といいます……。 貴重な資源を大切にするのはいいけど、この「企画された水量」というのは……? 私もさすがに、少し複雑な気持ちになってきます。

「華厳の滝」の秘密 (river-ing.com)

 

 「自然と人間社会」なんか、法律系ブログに書く内容か? とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、法律というテーマほど、自然の摂理と真逆なものもございません。自然な行動を制御して、人為的に条件づける取り決めですからね。

 だからこそ、直接の司法関連ニュースのみにこだわらず、私はもっと広い視野を持って、「自然の法則」と「人間の都合」のせめぎ合いを観察していきたいわけです。 そこから間接的に法律というものの別の一面が見えてくるかもしれませんので。

 ね、こんな理由づけ、 完全に今考えましたけどね。
 

 面白いからやってるだけでぇす。 楠田枝里子でぇす。

 

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