「呪いのエレベーター」の受難
>>> シンドラー社製エレベーター、壊されて停止
14日午前5時40分ごろ、兵庫県西宮市西宮浜の市営住宅の「西宮浜4丁目住宅」2号棟で、2基あるエレベーターのうち1基が7階で扉が開いたまま止まっているのを、入居者が見付けた。入居者がボタン操作をしても動かなかったため、管理会社に連絡した。
「シンドラーエレベータ」社製で、同社の担当者が調べたところ、建物4階のエレベーター乗り場にあるドアスイッチが押しつぶされたように変形していた。さらに4階のエレベーター乗り場ドアに激しくけったような靴跡が残っていた。(2006/06/14 17:19) 産経新聞・関西
もぉー、ダメでしょう? もともと壊れてるものを壊しちゃあ。
エレベーターって、なにかとイタズラされやすい装置ですよね。 タバコの火で、ボタンを黒く溶かされたり。 たまに、何者かがツバでも床に吐きかけたのか、むちゃくちゃクッサいエレベーターに遭遇することもありますよね。
誰もが抱え込む現代社会へのルサンチマンが、一部、行くあてを失い、やがて、エレベーターや公衆トイレなど、密室の空間へと終着してしまうのでしょうか。
ただ、本件は、時期的にみて、「シンドラー社製」という属性を持つ、特定のエレベーターが攻撃されたと考えるのが自然でしょうか。 「今のうちなら、こいつらは、やっつけてかまわない連中だ」と、無法者のストレスを解消する格好の標的となったシンドラーエレベーター(株)。
先日、ヤミ金融業者を襲った若者らが被告人となっている、強盗被疑事件の初公判を傍聴しました。 「違法なことで儲けているヤツらを襲撃するのなら、こちらも後ろめたさが薄らぐ」と思いついたらしき彼らと、本件犯行に及んだ輩は、根っこで通ずる発想を持っているとみられます。
どうせなら、シンドラーの日本支社に乗りこんで、その建物のエレベーターにイタズラしてやったほうが、より先方へメッセージが伝わったかもしれませんね。
ただ、当のシンドラー社内に備え付けられたエレベーターのゴンドラに、「MITSUBISHI」とか「HITACHI」なんて刻印されてたとしたら…… 笑えませんね。 すいません。
私の自宅は、某ボロアパートの3階なので、エレベーターなんて設置されちゃおりません。 自分の足で階段を1段1段確かめ、踏みしめて、毎日上り下りしておるわけです。 が、福岡の実家でお勉強してたころは、エレベーターの点検がしょっちゅう、多いときは月に2回あったりで、あれにはうっとうしい思いをしていました。
でも、エレベーターの不具合(プログラムミス?)が原因で、ああいうふうに利用者の死亡事故が起こってしまうとなると、やっぱり点検はしっかりしていただかなきゃな、と思わずにいられませんね。
ちまたには、航空機が墜落すれば、空港から足が遠のき、通勤電車がマンションに衝突すれば、マイカー通勤になり……、というデリケートな感覚の持ち主が多くいらっしゃいます。 彼らは、今回のような事故が生じたことをきっかけに、エレベーターにも乗れなくなったものと思われます。 不便を強いられますね。
そういう面に関しては、私はかなり鈍感というか、平和ボケしてますので、おかげさまで今日も明日もエレベーターを利用し続けますが。
住民の女性は「7階のドアが開いたまんま(だった)。すぐにシンドラーに電話した」と話しています。エレベーターは、壊された装置を交換し午前中には復旧しましたが、警察では、悪質ないたずらとみて器物損壊の疑いで調べを進めています。(ABC朝日放送 6/14 19:09)
直接、シンドラー社へ連絡したので、その日のうちに復旧したのでしょう。 もし、この修理を、エレベーターの保守点検業者に依頼していたら、どうにもならなかった可能性が高いのです。
先週のTBS「報道特集」で、独立系のメンテナンス業者が、エレベーターのメーカー側から“嫌がらせ”を受けている構図が伝えられていました。 TBSいわく、この構図は、なにもシンドラー社に限った話ではなく、国内メーカーとの関係でも同様だとのことですね。
かつては、メーカーが言い値でメンテナンスも行っていて、エレベーター業界にとっての“ドル箱業務”となっていたそうです。 しかし、メンテナンス業が自由化された昨今、安く請け負う保守点検の専門業者に、仕事を奪われる形となり、やがて、メーカーは点検業者に対し、無言のプレッシャーをかけ始めるようになったといいます。
たとえば、ゴンドラに備え付けられた階数のボタンが、イタズラで焼け焦げたとして、オーナーがボタンの交換を依頼したとしますよね。 それを受けて、点検業者はボタン1個を発注するわけですが、肝心のメーカーからは「1ヶ月待ってくれ」との、つれない返事が返ってくるのみ。
しかし、メーカーが、替えのボタンを在庫として持っていないわけがないんです。 現に、今回の通報を受けて、シンドラー社はボタンの交換も含めて数時間で対応できているじゃありませんか。 ……やればできる。 必ずできるのです。
例の死亡事故で、エレベーターの点検業者が「原因がわからない」とコメントしていたのを、フシギに思った方も多いでしょう。 私もそのひとりです。
じつは、エレベーター各メーカーは点検業者に、エレベーターの設計図や修理マニュアルなどの資料を、1ページたりとも渡していません。 また、点検業者が別の会社に代わった際にも、エレベーターの不具合などの情報が伝えられておらず、業者相互間でも満足な引き継ぎが行われていない実態も明らかになっています。
それでも、長年の経験や勘(?)で、現場の修理担当者は、エレベーターの安全を維持してきた実績があります。 それを、「一流の職人技」として喝采を贈るべきなのか。 それとも、国内製のエレベーターについては、たまたま無事という“奇跡”が続いている最中なのか。 私たちは、いまだ見ぬけないままでいます。
◆ 刑法 第261条(器物損壊等)
前3条に規定するもの(※文書・建造物)のほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
◆ 建築基準法施行令 第129条の10(エレベーターの安全装置)
1 エレベーターには、制動装置を設けなければならない。
2 前項のエレベーターの制動装置の構造は、次に掲げる基準に適合するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
一 かごが昇降路の頂部又は底部に衝突するおそれがある場合に、自動的かつ段階的に作動し、これにより、かごに生ずる垂直方向の加速度が9・8メートル毎秒毎秒を、水平方向の加速度が5・0メートル毎秒毎秒を超えることなく安全にかごを制止させることができるものであること。
二 保守点検をかごの上に人が乗り行うエレベーターにあつては、点検を行う者が昇降路の頂部とかごの間に挟まれることのないよう自動的にかごを制止させることができるものであること。
3 エレベーターには、前項に定める制動装置のほか、次に掲げる安全装置を設けなければならない。
一 かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じていなければ、かごを昇降させることができない装置
二 昇降路の出入口の戸は、かごがその戸の位置に停止していない場合においては、かぎを用いなければ外から開くことができない装置
三 停電等の非常の場合においてかご内からかご外に連絡することができる装置
四 乗用エレベーター又は寝台用エレベーターにあつては、次に掲げる安全装置
イ 積載荷重を著しく超えた場合において警報を発し、かつ、出入口の戸の閉鎖を自動的に制止する装置
ロ 停電の場合においても、床面で1ルクス以上の照度を確保することができる照明装置
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