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2006年6月 6日 (火)

日本全国 裁判官語録2 (賛否両論?編)

 

(((参考過去ログ)))

日本全国 裁判官語録(説諭) 2006/05/24

説諭判事(4コマ) 2005/06/18

 

>>> さだまさしの曲引用で被告を諭す 三茶駅事件の裁判
 東京・世田谷区の東急田園都市線三軒茶屋駅で昨年4月、銀行員の男性が殴られ死亡した事件で、傷害致死罪に問われた当時18歳の少年2人の判決公判が19日、東京地裁で行われ、山室恵裁判長は求刑通り、それぞれ懲役3年以上5年以下の不定期刑とする実刑判決を言い渡した。裁判長は2人に対し、歌手、さだまさし(49)の曲「償い」を引用し、異例の説教。伝え聞いたさだも「法律で心を裁くには限界があるから…」と話した。
 判決後、閉廷する直前だった。反省の色が見られない少年2人に対し、裁判長は「唐突だが、さだまさしの『償い』という歌を聴いたことがあるだろうか」と切り出した。うつむいたままの2人に、「この歌の、せめて歌詞だけでも読めば、なぜ君らの反省の弁が人の心を打たないか分かるだろう」と少年の心に訴えた。(サンケイスポーツ)2002/02/20

 当時は、発言のインパクトの強さから、スポーツ紙やテレビのワイドショー番組で、繰り返し特集されました。 ご記憶の方も多いことでしょう。

 法廷で、ありきたりな反省の言葉を繰り返してきた被告人の少年。 しかし、人ひとりが亡くなっているのだ。 彼らに、なんらかの感銘を自覚させるためには、このまま決着させるわけにはいかない。 裁く側としても「謝りなさい、立ち直りなさい」と、月並みな言葉を投げかけるだけで済ませてはならない。 山室裁判長には、そういう危機感がおありだったのかもしれません。

 さださんの書いた『償い』の歌詞を読んでみますと、交通事故で男性を死亡させてしまった若者が、ひたすら働いて遺族に毎月の仕送りを続ける、という話です。
 もう、一生許されないかもしれない、と覚悟した7年目、 ついに「あなたの優しい気持ちは、よく分かりました。どうか、あなたご自身の人生を、もとに戻してあげて欲しい」という遺族からの手紙を受け取るのです。

 国家権力や経済力が、どんなに頑張っても成しえなかったことでも、芸術や文化が実現させてしまう場面。 この人間社会ではあちこちで見受けられますね。 世の中の力も、力同士で支え合って、かばい合っているのかもしれません。

 判決公判で時々行われる、裁判官から被告人へのお説教。 もちろん、判決文の中に書かれた内容を読みあげているのではありません。 かといって、裁判長が気まぐれで放ってみせた不規則発言、というわけでもないのです。

 

◆ 刑事訴訟規則 第221条(判決宣告後の訓戒)
 裁判長は、判決の宣告をした後、被告人に対し、その将来について適当な訓戒をすることができる。

 

 マスメディアが「説諭」という言葉で報道する裁判官のセリフは、法令上は「訓戒」と呼ばれるものです。

 実は、「さだまさし」を引用した山室判事の説諭ほどは知られていませんが、海外の裁判所でも、似たような趣旨の発言はされているようです。こういう形態のメッセージは、洋の東西を問わないのでしょうね。

 

>>> 軍人の功績、映画で学べ/アメリカ
 映画「プライベート・ライアン」を見て反省しなさい――。米テキサス州ポートアーサーの裁判所はこのほど、戦死者慰霊碑を壊した十代の少年少女9人に、第二次大戦の欧州戦線を描いた同映画の鑑賞や社会奉仕を命じる判決を言い渡した。
 9人は今年2月、退役軍人記念公園の施設を壊し、約4万5000ドルの損害を与えた。裁判長は判決で、「自由を守るため犠牲になった米兵に学びなさい」と諭した。(読売新聞・ニューヨーク発外電)2000/09/01

 
 映画鑑賞を命じる判決……。 アメリカって国は、なんとフレキシブルな。 日本の刑罰は、たった7種類しかないのに。

 まして、少年審判だったら、少年院や施設に入れるとか、保護観察付けるとか、それくらいでしょ? ……って、専門外なので、知ったかぶりですが。

  

 かつて、3人の少女を買春したとして、ひとりの職業裁判官が被告人として法廷に立ったことがありましたね。 じつは、あの事件の裁きを担当したのも、山室判事でした。

 2001年7月の初公判で、判事は、法壇の下にいる12年後輩の被告人に向かって「言葉は悪いが、単なるロリコン、単なるスケベおやじだったのではないのか」と問いかけたことでも知られています。

 その公判の最後には「日本の司法の歴史の中で、とんでもないことをしたというのは分かってますな」「まさかこういうことで裁判官を裁くとは思っていなかったよ」と、苛立ち交じりの言葉で締めくくったといいます。

 たしかに辛らつな発言ですが、「これは、裁判官同士の馴れ合い法廷ではない」と、世間にアピールし、場の雰囲気を引き締める効果も期待したのだ、と私は理解しています。

 それを「スタンドプレー」と批判する人々もいたのですが、判事はご自分のスタイルを貫き通しました。 昇進・栄転の話は尽きなかったようですので、司法組織内部での評価も高かったのでしょう。 しかし、山室判事は「現場」にこだわりつづけました。

 現在は、裁判官を辞められて、後進の指導にあたっておられます。

 

 さて、ご好評につき、第2弾をお送りしております「裁判官語録」。 今回は、ちまたで過去に、多かれ少なかれ物議をかもした発言の数々を集めてみました。

 もちろん中には、「よく言った!」というものもあるでしょうが、そのあたりのご判断は、訪問者の皆さん各自のご判断に委ねます。
 

>>>>>>>>> 続 日本全国 裁判官語録 <<<<<<<<<
 

『パソコンのバーチャルな世界に入るのではなく、実社会で働くことが大事です』

 ファイル共有ソフト「ウィニー」を使い、「スーパーマリオアドバンス」など、人気ゲームソフトをインターネットで違法公開した、19歳の少年に対して。
 (京都地裁 楢崎康英裁判官)2004/03/05

 

『あなたの印鑑が押してある以上、あなたは負けますよ』

 建設会社社長(被告)が、知人(原告)と共同で購入した土地を、被告が無断で売り払った事件の民事裁判・第1回口頭弁論期日で。 被告が、行政書士に土地売却を依頼した委任状を、原告が証拠として提出し、「自分の委任状ではない」と反論した被告に対して。

 (甲府地裁 都留支部 某男性裁判官)2004/01/20

 

『暴走族は、暴力団の少年部だ。 リサイクルも出来ない暴走族は、産業廃棄物以下。 肥料にすらならない暴走族は、犬のうんこより悪い』

 暴走族らによる15歳少年のリンチ死亡事件。 非公開の少年審判の中で、そのような趣旨の発言があったと、のちに加害者家族が地方裁判所で証言。
 (水戸家裁 下妻支部 富永良朗裁判官)2003/07/22

 

『タクシー乗務員には雲助まがいの者や、賭け事などで借財を抱えた者が、まま見受けられる。 こうしたことは、顕著な事実と言ってよいかと思われる』

 強盗殺人罪に問われた元タクシー運転手とタクシー会社に対し、遺族が損害賠償を求めた民事訴訟で、その請求を認めた判決理由の中で。
 (京都地裁 山本和人裁判官)1999/10/18

 

『こんな裁判をやるのはおかしい。 今のままで不都合があるんですか』

 共同墓地の自分の区画に、別の男性がはみ出して墓を改築したとして、明け渡しを求めた民事訴訟で、被告側が、墓の改築業者を証人申請した際に。
 (神戸地裁 竜野支部 土居三千代裁判官)1998/02/13

 

『もし、私が毛を茶色に染めて、ピアスをしてしゃべったら、みんなは真剣に聞いてくれると思いますか。 それぞれの場所には、ふさわしい格好があると思います』

 中学校の入学式前に、女子生徒の茶髪を黒スプレーで染めた教師を殴ってケガを負わせた父親に対し、被告人質問で。
 (高松地裁 橋本一裁判官)1996/07/15判決

 

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コメント

なんじゃそりゃ的な発言もありますねぇ。
けっこう裁判官って言ってるもんなんですね。

さだまさしの裁判官は・・・さだまさしファンなのかな?w
さだまさし「償い」を主題歌にした運転免許の講習時にビデオ映画を見ますよね。(そちらでも同じでしょうか?)
この映画、かなりよくできてて、しかもさだまさしの歌がすごく合っていて、映画を見てる講習会場で泣いてる人がたくさんでした。私も泣いた中の一人。
この裁判官も、この講習ビデオに感動しちゃったのかなあー

投稿: ましーん10号 | 2006年6月 6日 (火) 11:25

毎度、コメントありがとうございます。

私は、まだ東京で免許を更新していないので、わかりませんが、福岡では「償い」が流れるビデオは無かったですかね。地域によって違うんでしょうか。

こないだ、たまたまテレビで、さだまさし氏がインタビューを受けて半生を振り返るみたいな特集をしていまして、そこで「償い」を聴く機会がありましたよ。たしかに、聴きいっているうちにウルッときてしまいました。

私自身「裁判官の説諭」を集中的に調べていて、なかなか新しい発見があり楽しいのですが、これ…… 出版企画として売り込んだら、イケますかねぇ……?

たとえばタイトルは『裁判官、しゃべりだす』だとか? まぁ、なんでもいいですけど。

もし、そういう本を書店で見つけたら、買ってやってもいいぞ! という方、コメントをお待ちしております。

投稿: みそしる | 2006年6月 7日 (水) 01:18

こんにちは はじめまして

私は裁判官の人間性が見え隠れするのが面白いと思います。良くも悪くもですね。

ですから、もし本にするなら、できるだけ事件の背景や裁判の経過まで押さえて頂けると、裁判官の言葉がカタルシスとなるでしょうね。

全ては無理でも、いくつかを詳しく説明して頂ければ、立ち読みの時に興味を抱くかもしれません。

タイトルは「司法はしゃべり好き」でどうでしょう?

投稿: 絶坊主 | 2006年6月10日 (土) 00:31

>絶坊主さん

こちらでは、はじめまして。ご支持1票ありがとうございます。

私の頭の中にあるイメージは、縦書きで、見開き2ページで1セット。右ページに太字で発言1つと裁判官名、ちょっとしたプロフィール。左ページに、その事件の概要や私のコメント、必要な法律知識などを載せる、といった具合です。

絶坊主さんのタイトル案もいい感じです。どっちかというと『"裁判官は"しゃべり好き』のほうが、実際に本屋に置かれたとき、みんなにピンと来てくれるかな、とは思いますが。

企画さえ通れば、出版社の経費で、新聞の有料検索を駆使して、もっと興味深い発言が見つかると思いますけどねぇ。しばらくは無料検索や図書館で頑張ります。

投稿: みそしる | 2006年6月10日 (土) 02:10

まさに山室先生の「後進」として指導を受けたものです。山室先生は、お人柄も大変よろしく、言葉に深みのある方です。ここに書くことができないのが残念ですが、三茶の判決の背景なども色々お聞きしたことがあります。
裁判官も人間ですし、判文にはそれぞれ個性があって面白いです。みそしるさんの言うような本があれば、私は買いたいですね。

投稿: 匿名 | 2006年6月21日 (水) 00:46

いらっしゃいませ。もう1票いただきました。ありがとうございます。
 

おぉ、「さだまさし」判決の背景…… ぜひ聞いてみたいですけど、どうやらオフレコみたいですので、まぁ仕方がないですね。でも、知りたい。

よし、小さい文字ででも書いていただければ。(おい)

山室元判事は、いつかインタビューを決行してみたい法曹のおひとりです。そのためにも、ライターとして、もっとチカラをつけていきたいです。

投稿: みそしる | 2006年6月22日 (木) 22:59

ぜひ頑張ってください。みそしるさんなら、必ず出来ると思っております。

背景については、別に大したことを知っているわけではありませんが、やはり控えさせていただきます。申し訳ありません。
その代わりといってはなんですが、ロースクール研究という雑誌の2号?あたりに、山室先生の面白いコラムが載っていたと思いますので、立ち読みでもしていただくとイメージが沸くかもしれません。

投稿: 匿名 | 2006年7月 2日 (日) 14:01

ご親切にありがとうございます。

たしか、店頭で表紙を見かけたことありますね。今度、手にとって読んでみようと思います。

投稿: みそしる | 2006年7月 3日 (月) 11:01

Y裁判官は「償い」でも有名ですが、
同時に話題の痴漢冤罪映画の原作の裁判の判事ですね。

投稿: kit | 2006年12月26日 (火) 01:58

kitさま
 

いらっしゃいませ。
 

これですね。
http://www.soreboku.jp/index.html

おぉ、なるほど。「室山」裁判長!!(笑)
劇中で、なにか説諭のセリフもあるんですかね。

この映画のこと、かなり前にネットニュースで見て、すでに忘れかけておりました……。知らないうちに完成していて、年明けに公開が決まっていたのですね。ぜひ劇場で観てみようと思います。

貴重な情報をお寄せいただき、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
 

「シャル・ウィ・ダンス」の域までは行かずとも、本作もヒットしてほしいですね。ぬれぎぬの中でも一番身近で怖いものがテーマですから。

投稿: みそしる | 2006年12月26日 (火) 19:18

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