2980円のドライヤー盗んで、罰金30万円
>>> ドライヤー盗み罰金30万円 新設の改正刑法適用
山形区検は30日、電器店からドライヤー1個を盗んだとして窃盗容疑で逮捕された男性会社員(57)を山形簡裁に略式起訴し、会社員は罰金30万円の略式命令を受けた。
5月から施行された改正刑法で、窃盗罪に罰金刑が新設されて以来、略式起訴で罰金刑を受けたことが明らかになったのは初めて。
改正前の窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役で、刑法改正で50万円以下の罰金刑が導入された。改正前は、万引など懲役刑とするには重すぎるケースは起訴猶予にするなどしていた。
山形地検の小池充夫次席検事は「これまでは起訴しなかったような事件でも、罰金を科せられるようになったことで抑止につながれば」と話している。 (共同通信) - 6月30日
◆ 刑法(旧) 第235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役に処する。
◆ 刑法(新) 第235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
このブログでも、「どうやら窃盗罪に罰金刑が付きそうだ」という話はしていたんですが、ついに刑法の改正が、今年4月25日に行われました。 そして先日、実際に適用されましたね。
今回の改正刑法は「万引き犯罪に対する厳罰化」だという説明が、マスコミ等でされたりしています。
ただ、法定刑が「懲役だけ」という場合と、「懲役か罰金」という場合とでは、後者のほうが刑が軽いとされるんです。 後者だと、刑務所に入る以外に、罰金という比較的穏便な刑罰で落ち着く余地があるからです。
とはいえ、今まで万引きに対しては、
(1) 店側の厳重注意だけで済ませ、警察にすら引き渡さない。
(2) 店から警察に引き渡されても、検察には引き渡さない「微罪処分」
(↑ 2006/08/12 一部修正 ※コメント欄参照)
(3) 検察に引き渡されても、裁判所に起訴しない「起訴猶予処分」
(4) 起訴されて裁判官が判決を言い渡しても、懲役刑をいったん保留にする「執行猶予処分」
……などになっていました。 従来、「懲役10年以下」という法定刑が、刑法で掲げられていたのですが、その出る幕は、常習犯の事件等は別にして、実際にはほとんど無かったわけです。
しかし、このたび「50万円以下」という罰金刑が加わりました。 懲役刑と違い、罰金刑が執行猶予になることは、まずありません(全体の1%ほど)。 罰金判決は、ふつう実刑なのです。
「罰金なんて払う経済的余裕は無いよ」などという、被告人の言いわけも効きません。 罰金を払えないのなら、「だったら、労役場で働け」となり、そこでの労働が、1日あたり5000円や1万円などと換算されていきます。 けっこう容赦ありません。
なので、法律学の理論上はともかく、実質的には「厳罰化」だと評価していいのでしょう。
昨年に、若手の女性バラエティタレントが、仲間と一緒に、小売店の在庫商品を盗み出して、店をつぶしたという話を深夜番組で「告白」してしまい、しばらく芸能活動を謹慎する大きな騒動になりました。
一方で、万引き事件は、しばしばテレビのトーク番組でも「若気の至り」や「武勇伝」として語られる場面を目にします。 万引きだって窃盗には違いないのに、こちらはおとがめなしのようですね。
この改正刑法によって、本件では、万引きした商品の価値と比べ、100倍の罰金を支払うよう命じられました。
「万引きは、れっきとした犯罪だ。 『スリルを味わう』には、割に合わない」という意識が、これから少しでも浸透していくといいですね。 生活のために、小売店での販売応援としても飛び回るフリーライターは、そう思います。
あ、そうそう。 改正されたのは窃盗罪の規定だけではありません。 以下の犯罪についても、新たに罰金刑が設けられています。
◆ 刑法 第95条(公務執行妨害及び職務強要)
1 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
◆ 刑法 第211条(業務上過失致死傷等)
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
ただ、気になるのは、実際に改正刑法が裁判所の判決で適用されたにもかかわらず、まだ、法令データ提供システムでも、法庫でも、この改正が反映されていないことです。
他にも法改正が多くて、更新作業が大変なのはわかりますが、頑張ってください。(他人事)
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この方、大衆にインパクトのある言葉を選ぶのがお好きなようですね。
まだ記憶に生々しい、秋田の男児殺害事件。 容疑者が具体的に判明していない段階で、ワイドショーに出演していた際、容疑者を指して「モンスター」と言っていたのが印象的なコメンテーターの著書。
警察官には、九州出身者が多い? やくざと癒着する検察官?
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コメント
>(1) 店側の厳重注意だけで済ませ、警察にすら引き渡さない「微罪処分」
「微罪処分」とは、刑事訴訟法第246条但書を根拠に、警察から検察に実質上送致しない処分のことをさします(形式上は、1ヶ月に一度、その月の微罪事件をまとめて検察に報告)。前科はつきませんが、前歴がつくことになります。
なお、当然のごとく、店側の注意で済ませられた場合は、前歴はつきません。
投稿: 通りすがり | 2006年8月12日 (土) 19:31
>通りすがり さま
間違いのご指摘、本当にありがとうございます。
ご指摘にともない、本文も修正させていただきました。
これで間違いないと思うのですが。
今後とも、よろしくお願いいたします。
投稿: みそしる | 2006年8月12日 (土) 22:29