東京のしゃれた街並みづくり推進条例
過去4回にわたってお送りした「裁判官語録」も、さすがに一通りは洗い出せたかなぁ、というところですので、また次の気まぐれ新企画を打ち出すことにいたします。
とりあえず仰々しく「条例で見る“地方の時代”」などと題してみましたが、もちろん難しく構える必要はございません。 この法律系おちゃらけブログがやることですんで。
まずは、東京都の条例に、なにか面白そうなものがないか調査してまいりました。 当たり前ですが、都立の図書館では、東京の資料が一番探しやすいわけでして。
◆ 東京のしゃれた街並みづくり推進条例 第1条(目的)
この条例は、都市計画法(昭和43年法律第100号)等の適切な運用を図りながら、東京都民(以下「都民」という。)、事業者及びまちづくり団体(以下「都民等」という。)の意欲と創意工夫をいかして、個性豊かで魅力のあるしゃれた街並みを形成するための制度を整備することにより、都民等による主体的な都市づくりを推進し、もって都市の再生を進め、東京の魅力の向上に資することを目的とする。
平成15年3月14日 東京都条例第30号です。
自分たちで「しゃれた街並みをつくろう」「みんなから魅力ある街だと言われたい」と意気込んでおられる、その態度も、なかなかオシャレであります。
一説には、石原慎太郎 都知事おんみずからが命名なさった条例だともいわれておりますが、未確認情報です。
■ 文京区議会 建設委員会会議録 (平成15年7月4日)
【 小野孝道 計画調整課長 】
『例えば、“東京のしゃれた街並みづくり推進条例”が、今度東京都でできましたけれども、略して「しゃれまち」と呼んでいるんですが、……(※以下略)』
やっぱり、しゃれた条例は一味違いますねぇ。 略して「しゃれまち」とな。 万が一、「ごきげんよう」のサイコロトークで出てきたとしても、観客が戸惑うことはありません。
■ 『街並み再生地区』に指定されたところ
第1号 : 武蔵小山駅東(平成16年)
第2号 : 南池袋(平成16年)
ネットでは、これだけしか見つかりませんでしたが、まさか、以上で「打ち止め」ってことはないですよね。
武蔵小山は、うんざりするほど長いアーケード商店街があったり、南池袋はオフィス街、少し離れれば、庶民が息づく古くからの住宅街…… といった興味深い風情をかもし出しています。
しかし、そこに突然、リンク先のような「オシャレ」な景観を創出しようというんですか? ほぉ。
武蔵小山の「整備イメージ図」なんて、こういう、いかにも合理的パッケージ設計の箱モノは、どこにだってありますよね。 あんな理屈抜きでダダ長い商店街を擁する、いい意味でエネルギッシュな地域には似合わないんじゃないでしょうか。
南池袋の「広場状空地の整備イメージ」も、残念ながら個人的には何の興味もわきません。 排ガスで薄汚れた灰色のテーブルセットに腰掛けて、しこたま排ガス吸いながら美味しい食事を楽しむ施設を、これ以上つくって面白いのでしょうか。 こんな類のは、広尾か表参道に任せておけばいいんです。
時代の蓄積を追いやり、地域住人たちの営みを無視して、真っ白な画用紙の上で、優秀なデザイナーのやりたいようにやらせる街づくり。
過去から連綿と引き継がれた「魅力」を、なんの躊躇なく捨て去ったうえで、土台なきマイナスから立ち上げる街づくりです。 「魅力」というものが何なのか、少しでも思うところがある人ならば、決してやらない取り引きに違いありません。
電車から降りて、自分がどこの街に来たのかピンと来ないような景観を、これ以上増やすだけなら、何のための、誰のための条例なのでしょう。 「個性豊かで魅力のあるしゃれた街並み」が聞いてあきれます。
この「しゃれまち」は、都民のためを考えて制定したのか、それとも建設業界のお偉方を喜ばせるために作ったのか、早めにハッキリさせてくださいね。
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