こんな事件でも、裁判員が呼ばれることになります
15日午前0時55分ごろ、埼玉県春日部市緑町の東武伊勢崎線一ノ割駅近くの自転車置き場で、男が同市の女性会社員(28)の顔を殴り、はいていた下着を奪い走って逃げた。女性は顔に軽傷を負い、春日部署は強盗致傷事件として調べている。
調べでは、男は30歳ぐらい。自転車で帰宅しようとした女性に近づいて「パンツよこしな」と声を掛けた。女性が断ると殴りかかって押し倒し、スカートの中に手を入れ下着を奪ったという。 (産経新聞)2006/07/15
皆さん、「強盗」と聞いたときに、銀行強盗やコンビニ強盗など、一定のイメージというものが浮かぶと思うのですが、こういうパターンもありうるんですね。 下着ドロも、行きつくトコまで行ってしまえば、こんなタチの悪い重大事件になってしまうのです。
洗濯してベランダに干してあるものでは飽き足らず、1日 直に着用し続けていたものを求める「こだわり」をお持ちだったのでしょうか。
被害を受けた女性も、怖かったろうと思いますよ。 深夜の自転車置き場には、管理者がいない場合がほとんどですから、状況としては、道端で襲われたのとあまり変わりません。
同年代の男として、少しでも犯人の心情を理解したいところなのですが、やっぱりここまでくると気持ち悪いですね。
強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
下着泥棒には、まるで似つかわしくないほどの重い刑罰が用意されています。 しかも、強盗致傷罪は2009年以降、「裁判員が召集される対象の事件」となります。
一般の私たちにとって、ただでさえ気乗りしない裁判員の務めなのに、こんな事件に当たってしまったら……。 「ケガ人の出た強盗事件っていうことで、ある程度の覚悟はしてきたが、コレのこと?」と、拍子抜けするやら、うんざりするやらで、ダブルの衝撃を食らってしまうかもしれません。
でも、こういう事件を放置するわけにもいかないんですよね。 性犯罪には強い常習性がありますので、新たな被害が続いたり、態様がますますエスカレートしたりする前に検挙し、誰かが裁かなければならないのでしょう。
>>> ジュース1本万引し逃走 … “強盗致傷”現行犯で逮捕
1日午後4時25分ごろ、京都府宇治市木幡西中のコンビニ「ショップ99京阪木幡駅前店」で、男がジュースを万引したのを男性店長(31)が見つけた。
男は乗用車に乗り込み発車。止めようとしがみついた店長を引きずって約50メートル走ったが、 対向車に店長の体が接触したのに驚いて止まり、110番で駆け付けた警察官が 強盗致傷の現行犯で逮捕した。 店長は肩の打撲など軽傷。
宇治署の調べでは、宇治市の無職の男(24)。現金を持っておらず「捕まりたくなかったので逃げた」と供述したという。 店長は運転席の窓から上半身を入れ、ドアにしがみついていた。 (夕刊フジ)2006/05/02
本件のように、最初は万引き、窃盗のつもりでも、追いかけてきた店の関係者にケガをさせたなら、たちまち「強盗致傷事件」がひとつ完成するのです。
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
クルマ持ってて、どうして103円のジュースを買う金すら無いの? よくわからない事件です。 まさか……、そのクルマも、どっかから盗んだ、ということではないですよね。 まさかねぇ。
一方、ジュース1本で、ここまで捨て身の勇気を見せる店長さんに脱帽です。 こういう均一ショップは、「薄利多売」で成り立っていますので、値段のほとんどは仕入れや人件費で消えてしまうんです。
「ふざけんな。安いんだから買えよ!」と、身体を張って犯行を止めたくなる店長さんの気持ちには共感できます。
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たとえば、整然と区画された治安の良い街の中に、ある日、フロントガラスの割られた1台のクルマが放置されたとします。 すると、そこから街の平和はほころびを見せ始め、たちまち治安は悪化していくのだといいます。
なぜなら、ガラスの割られたクルマがそのままになっている状態は、「監視や管理がなされていない社会」の象徴だからです。
今回のエントリでご紹介したような万引きや、壁の落書きなど、比較的小さな犯罪こそを逃さず、徹底して取り締まる「ゼロ・トレランス・ポリシング」(容赦なき警察活動)が、欧米で功を奏しているといいます。
ただ、なにも、警官がそこらじゅうを歩いていたり、小型カメラがそこらじゅうからニラみつけていることばかりが「監視」ではないのです。
私たち住人ひとりひとりが、ご近所と交流を持つ、地域の出来事に関心を持つ、というのが、防犯の始まりなのかもしれません。 なかなか一歩踏み出すのが難しいですけどね。
犯罪は、「入りやすく見えにくい場所」で起こる。 とすれば、犯罪の原因を追及するより、「犯罪をあきらめさせる空間デザイン」を追求すべき。 そのほうが実践的で、より防犯の効果は上がる。 それが著者の主張です。
犯人の心理状態・境遇や、犯行に至った動機ばかりに近視眼的な目を向ける、日本の司法や報道に警鐘を鳴らす一冊。 文章での説明だけでなく、国内外で撮影された写真がたくさん載っていて、わかりやすいです。
犯罪は「この場所」で起こる | |
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コメント
初めまして。おもしろいブログ拝見させていただきました。アメリカ在住の一主婦です。木下あいりちゃんの件で検索していておじゃましています。赤の他人の私でも何かできないか悩み、結論として「広島地方検察庁にハガキを書こう」という運動を始めました。はがきの表に 〒730-8539 広島市中区上八丁堀2-15 広島地方検察庁内 木下あいりちゃん殺害事件担当検事様 と書き、裏面には「死刑が求刑されたのに無期懲役の判決で残念です。控訴審での死刑判決を期待します」といった内容を書いてください。極刑と書くのに抵抗があればご遺族ご支援の旨を書いていただければと思います。 ブログ「小さな風」 http://smallwind.blog.shinobi.jp/ にて運動を展開しています。一枚でも多くの支援ハガキを届けたいと思います。よろしくお願い申し上げます。お問い合わせは yachanusa@yahoo.co.jp まで。
投稿: yasuko | 2006年7月27日 (木) 06:30
>yasukoさま
はじめまして。
「おもしろいブログ」と言ってくださると、私は弱いですね。ありがとうございます。
少し前までは、犠牲者が複数出ている事件でないと、なかなか死刑判決は出されませんでした。しかし、最近は犠牲者1名の殺人事件でも、事情次第で死刑判決が出される動きがあります。
木下あいりちゃんの事件では、「少女」「わいせつ目的」という要素がありました。死刑か無期懲役か、悩ましい限界事例だと思われます。
ちなみに、現行法のままでも、わが国で「終身刑」を実現させることは、理論的には可能なのだろうと見ています。無期懲役囚に「仮釈放」を許す場合の条件を厳しくすればいいのでしょうから。
しかし、現実において政策的には、なかなか難しいところがあるのかもしれません。
yasukoさんが進めておられるような形の運動も、あっていいんだろうと思います。国民の素朴な声を直に届けるのですから。
「控訴審で極刑が下されるよう頑張ってください」というメッセージは、広島“高等”検察庁に向けたほうが直接的かなとも思えますが、検察の仕事は「同一体」の組織で遂行されるとのことなので、地検に送られても特に問題はなかろうと考えます。
……いろいろ、ややこしいこと書いてすみません。
投稿: みそしる | 2006年7月27日 (木) 23:16