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2006年7月30日 (日)

地面あっての飛行

>>> 滑空場の騒音に腹立て … 重機で滑走路掘り返した男逮捕 静岡
 29日午後0時20分ごろ、静岡県浜松市上島の天竜川河川敷にある「天竜川浜北滑空場」の近くの住民から「滑空場を建設用重機で掘り起こしている人がいる」と110番があった。
 駆けつけた浜北署員が航空危険行為処罰法違反の現行犯で、浜松市の無職の男(62)を逮捕した。
 同署によると、滑空場は軽飛行機などが離着陸するための草地で、長さ約1キロ、幅約100メートル。容疑者は29日、滑空場の地面を幅約35メートル、深さ約50センチ掘り起こし、航空機の危険を生じさせた疑い。滑空場の騒音などに腹を立てていたらしい。
 同日は、3人乗りの軽飛行機が着陸できずに他の離着陸場へ向かったという。 (07/29 23:15) 産経新聞

 この方は、先日の大雨で激流が押し寄せた天竜川が、これ以上氾濫しないよう、人工的な「支流」でも造ろうとしたのでしょうか。 気の効く方ですが、場所は選ばなければなりません。

 被疑者の男性は、たびたび「飛行機の音がうるさい」と訴え、滑空場の利用者と昨年もトラブルになっていたとのこと。 ただ、天竜川浜北滑空場は、「滑空場」の名のごとく、グライダーを趣味にする人たちが集うところのようです。

 グライダーには動力がありませんから、うるさい音も出ません。 音を出すとしたら、離陸時にグライダーを引っ張る小型飛行機(いわゆるセスナ機)でしょうか。

 また、同滑空場には、ヘリコプターも離着陸するそうですから。 パラパラパラパラやかましくてガマンならなかった気持ちも理解できます。 被疑者の自宅と滑空場は、約1.5キロ離れていたといいますがね。

 それを思うと、在日アメリカ空軍基地の周辺住民が、同じような事件を起こさないのが、むしろ不思議なくらいですよ。 ガマン強いですね、日本人は。

 

 昨日、なんとなくラジオニュースを聴いていたところ、本件が報じられていて、さらに「航空危険行為処罰法」という聞きなれぬ言葉が飛び込んできました。 家に帰りついて調べてみたところ、そんなにマイナーな法律ではないみたいですね。 単に私が知らなかっただけです。

 
◆ 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律 第1条 (航空の危険を生じさせる罪)
 飛行場の設備若しくは航空保安施設を損壊し、又はその他の方法で航空の危険を生じさせた者は、3年以上の有期懲役に処する。

◆ 刑法 第12条(懲役)
1 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上20年以下とする。
 

 
 重い……。 どうやら本件は、かなり重い犯罪のようですね。

 なにしろ「3年以上20年以下の懲役」なる法定刑が設けられています。 強姦や傷害致死と同等に捉えられている犯罪だ、ということになりますね。

 他人の所有地を勝手に掘り起こす行為は、ふつうは器物損壊罪という扱いです。 しかし、滑走路を掘り起こすのは、航空機に対する危険な影響が直接に生じてきますよね。

 ですから、そういう犯行に対する法定刑を格段に引き上げることによって、航行の安全が担保されているのでしょう。

 
 
◆ 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律 第4条 (業務中の航空機内に爆発物等を持ち込む罪)
 不法に業務中の航空機内に、爆発物を持ち込んだ者は3年以上の有期懲役に処し、銃砲、刀剣類又は火炎びんその他航空の危険を生じさせるおそれのある物件を持ち込んだ者は2年以上の有期懲役に処する。
 

 
 可愛い子には声をかけよ。 ……じゃなくて、旅をさせよ。

 といいますが、最近、ひとり旅(?)していた小学生が「子供用携帯電話(キッズケータイ)」を機内に持ち込んで、離陸が10分以上遅れたというニュースが報じられていましたよね。

 保護者がわが子の位置を捕捉できるよう、キッズケータイの端末からは常に電波が発信されています。 犯罪被害を未然に防ぎ、被害に遭ってからも速やかな事件解決につながりうる強い味方には違いありません。

 しかし、キッズケータイの電波は、端末の電源を切ってからも出されつづけるといいます。 ですから、営業中の機内に持ち込まれれば、この便利な道具も、「その他航空の危険を生じさせるおそれのある物件」に該当する、単なる妨害電波の発生装置になってしまいます。

 子供の位置を捕捉するための電波まで完全に止めるためには、暗証番号を入力しなければならないそうです。 その暗証番号を探り出すのに乗員が手間どって、結局、離陸が予定よりも大幅に遅れてしまいました。

 航空各社は、このキッズケータイの存在に警戒しているといいます。 「警戒すべきもんが違うだろ」と言いたくもなる、なんとも皮肉な出来事ですけれけど、便利な道具には、便利なぶんだけの落とし穴があるものですね。

 できるだけ早い解決策の提示が待たれます。 携帯電話会社か航空会社、どっちからでもいいですから。

 

◆ 航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律 第6条 (過失犯)
1 過失により、航空の危険を生じさせ、又は航行中の航空機を墜落させ、転覆させ、若しくは覆没させ、若しくは破壊した者は、10万円以下の罰金に処する。
2 その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、3年以下の禁錮又は20万円以下の罰金に処する。
 

 
 1条が「わざと」起こされた犯行なら、この6条は、人の「うっかり」で発生した航空危険行為を処罰する規定になります。

 整備士による整備不良によって、航空機に不具合が生じたり、管制官の指示間違いによって航空機同士のニアミスが発生したりすれば、まずは、この「航空危険行為処罰法6条違反」容疑で、捜査が行われるようです。

 もちろん、乗員や乗客にケガ人が出れば、刑法犯である「業務上過失致傷」容疑に切り替わることになりますね。

 
 

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コメント

騒音トラブルが原因のように見えるこの事件ですが、実はそうではありません。一度抗議を受けてから、ずっと彼の家の近くは飛行していません。当日は目に見えるところを飛んでいたのが癪に障ったらしいです。自分の気に入らないことがあると、すぐ駄々をこねる子供のような人間として近所でも有名です。
それはさておき、結局河川法の略式起訴で30万円の罰金刑になりました。航空関連の法律を適用しなかったことが、犯人に誤ったメッセージとして伝わらなければ良いのですが。

投稿: きんとと | 2006年8月22日 (火) 23:44

貴重な情報をどうもありがとうございます。

そうですか。すでに略式で30万円の罰金が科されましたか。 早い展開ですね。

現場がグライダーの飛行場であることや、犯人の自宅からだいぶ離れていることなどを考えに入れると、私も「騒音が原因」とする記事を、素直に読めずにいました。

グライダーを趣味にすると、どれだけお金がかかるのかわかりませんが、彼には内心「うらやましい」という気持ちがあったのかもしれませんね。

だからといって犯行は正当化されませんけど。もちろん。

投稿: みそしる | 2006年8月23日 (水) 11:24

ところが彼はお金持ちなんです。第二東名の建設予定地にかかったため、代償として相当広い宅地を入手しました。家もうらやましいくらい大きいです。
(数年前のことなので、公団の補償金が槍玉に上がる前でしょうか?)

ほんと、悲しい事件です。

投稿: きんとと | 2006年8月25日 (金) 15:48

>きんととさま

なるほど。グライダー乗りに対するジェラシーではないようだと。……ますます分からなくなってきましたね。

彼の言い分を外野から聞いてみたい気もいたしますけれども、どうやら裁判はもう終わってしまったみたいですし。

どうもありがとうございます。

これからも、私の書いたものにフォローすることがございましたら、お気軽に書きこんでいってくださいませ。

投稿: みそしる | 2006年8月26日 (土) 22:31

ご無沙汰しております。
先日犯人との話し合いの席が、市役所+河川事務所(河川の占用担当者)+飛行クラブを交えて設けられました。
”話し合い”は2時間半に及んだのですが、結局彼の一方的な演説に終始しました。つまるところ、「おれは飛行機がうるさいなどと言っていない。あれは枕詞だ。お前らが飛ぶのは気に入らない。俺が生きてる間は、お前らは飛ばさせん。」という様なところです。
”話し合い”の直後には、犯行を伝えた新聞記事の内容が気に入らないと、新聞社に抗議に行ったそうです。曰く、「滑走路をぶっ壊すとは言っていない。正しくは滑走路を掘り返すだ!」・・・もう、どうでもしてくれ。

とはいうものの彼は交渉術に長けています。決して飛行クラブと直に会話を持とうとはしません。(話し合いを申し入れても、拒絶します。)市役所や河川事務所など公的機関にアピールする手法を使います。もっとも市役所はあきれてます。
一方、河川事務所はつい彼を善良な弱者と勘違いしてしまったようで、彼はもっぱら河川事務所を拠り所に利用します。(河川事務所には猫なで声、その他の人には怒鳴り散らす。)

みんながちょっと変(ずいぶん変)と思っていても、真摯に対応してきました。これって社会通念的にはどこまで必要なんでしょうか? (法律的に必要なレベルは当に超えていると思います。)
ちなみに町内会や自治会は彼の立場を支持していません。(あきれています。)もうスパッと終わりにしたいんです。ほんと、疲れます。
河川事務所に早く目覚めてもらいたいです。

投稿: きんとと | 2006年9月11日 (月) 11:05

なるほど。困った方ですね。

いったい何をどうしたいんでしょうか。ただ単に、空には憧れているけど、高所恐怖症とか。そんな矛盾を抱えておいでなのでしょうかね。

 

周囲の人々の神経を磨り減らせて、へとへとに疲れさせるのが生き甲斐なんじゃないかと思われる方って、たまにいらっしゃいますよね。どんな領域にも。

周りの大衆に迷惑をかけていることを「影響力を及ぼしている」と思いこみ、そんな自分ってスゴイということにしたいのでしょう。そして、そんなスゴイ、スゴくて正しい自分を褒めて欲しい、そういう評価を渇望しているのではないか……。お話を伺っていると、そう思えて仕方がないんです。

高すぎるプライドが満たされていない。簡単に言えば、寂しいオッサンなんでしょうかね。

そんな彼がひそかに自慢したい部分を探って、そのプライドをくすぐり、ヨイショヨイショで、ひたすらご機嫌を伺えば、彼の根底にある寂しさも癒えていくかも……というのは正論ですが、実際にその災禍に巻きこまれている、きんととさんたちにしてみたら、たまったもんじゃないですよね。

磨り減った神経をさらに磨り減らせて、そんな気を遣わなければならない義理もありませんから。

オッサンの気が変わらないのなら、もはや、滑走路へ侵入されることを物理的に防ぐ措置を講じるしか、策は残ってませんよね。

たびたび貴重な情報をお寄せいただき、どうもありがとうございます。

投稿: みそしる | 2006年9月15日 (金) 00:03

投稿に失敗したようなので、再送します。
だぶったら、お手数ですが削除ください。
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お久しぶりです。実はまだまだこの話は続いています。

犯人が”浜北滑空場”の名称が気に入らないと文句をつけています。それを聞いた国交省は、看板名称を変更できないかと言ってきました。確かに占用許可書にある名称はグライダー等練習場ですが、世間一般にはグライダー練習場を滑空場と呼んでいると思います。(グライダー=滑空機 航空法の日本語名称なので)
日本滑空協会のHPでも、グライダー練習場をみんな滑空場と紹介しています。http://www.japan-soaring.org/link/gp-club.htm
国交省のHPでも、滑空場という言葉はいくつも書かれています。

そのことを説明して、言葉の意味は理解してもらったのですが、なお法律的な定義づけが欲しいといわれています。そこまでなぜ呼称にこだわるのかという問いには、「”滑空場”という言葉が犯人を刺激するから…」の一言。いったいどこ向いて仕事してるんですかね? だだっこには飽きるまでお菓子を与えろということなのでしょうか?
甘やかしすぎだと思いませんか?

投稿: きんとと | 2006年9月29日 (金) 17:22

コメントを付けるのが遅れて、失礼いたしました。

滑空場の名称を変えろというのは、嫌がらせの域を越えてますね。意図が理解できません。

こちらが名称を変更する代わりに、滑走路侵入を含む一切の嫌がらせ、要求をしない、といった内容の誓約書を書かせるぐらいの利用価値はあるでしょうが、そんな交渉にまともに乗ってくれる相手でもなさそうですしね。

国交省の役人は、「コトなかれ」を基準に動いているんでしょうから、そんなもんなのでしょう。

どうもありがとうございます。このコメント欄でよろしければ、続報もお待ちしております。お気軽に書きこんでいかれてください。

投稿: みそしる | 2006年10月 3日 (火) 21:56

みそしる様

温かいお言葉ありがとうございます。
名称の件は、なんとか納得してもらうことができたようです。

飛行はいつ再開できるか判りませんが、進捗ありましたらまた書き込みさせていただきたいと思います。

よろしくお願いします。

投稿: きんとと | 2006年10月13日 (金) 09:24

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