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2006年12月21日 (木)

私の知らない「火薬類取締法」の世界

>>> 深夜花火禁止条例が成立へ = 神奈川
 

 海岸で深夜に花火をしたり、大声で騒いだりすることを禁じる全国初の迷惑防止条例改正案が18日、神奈川県議会の防災警察委員会で全会一致により可決された。21日の本会議でも可決、成立の見込み。夏の湘南海岸で深夜に騒ぐ若者らを想定したもので、来年4月の施行を目指している。 (時事通信)2006年12月19日0時0分配信

 

 もともとは、2000年に兵庫県明石市で制定された「夜間花火の規制にかかる条例」が元祖です。

 そこから、兵庫県西宮市や岡山県倉敷市・笠岡市、島根県出雲市などに広がり、神奈川県内でも茅ヶ崎市や鎌倉市で同様の条例ができています。

 ただ、違反による罰金の定めの有る無しは、まちまちのようですね。 しかも、「市」という水準での規制にとどまっていました。

 この「夜間花火禁止」という方針を、あらためて都道府県レベルの迷惑防止条例に組みこもうとするのが、神奈川県の試みのようです。 松沢成文知事の話では、罰則は設けない方向だそうですが。

 たしかに、花火や大音量音楽の禁止を条例の上でアピールするだけでも、かなりの効果が期待できるでしょう。 花火が近所迷惑だという事実に気づいていない、あまり深く考えずに遊んでいる連中は、口頭の注意だけで素直に謝罪してやめてくれるはずです。

 しかし、やはり懲りない悪質な輩はいるものです。

 地元のボランティアがパトロールに動いても、罰則がなければ現行犯での検挙もできないどころか、実力行使が許されないわけで、そういった輩に対して強く出にくく、ナメられてしまうことも懸念されます。

 次々に飛び交うロケット花火の弾道を背にして、無力感を噛み締めつつその場を後にするのでは、ボランティアの方も辛いですよ。

 でも、こういった深夜のロケット花火に興じる若者たちも、「ストレス社会の被害者」だという見かただってできますけどね。

 窮屈で余裕の欠けた現代社会で居場所を失い、その行き場の無いウップンを、粗暴犯罪や万引きなどで発散したりしないだけ、まだ彼ら彼女らはマシなのかもしれません。

 以前も書きましたが、現代の日本には「祭り」が圧倒的に足りません。 サッカーや野球など、プロスポーツがらみの勝った負けたを除いて、パワーを有り余らせた若者が心置きなく大騒ぎできる場があるでしょうか。

 悪いことは悪いと取り締まる一方で、「祭り」を温かい目で見守る寛容さも必要です。 ただ……、具体的に何が彼らにとっての「祭り」になりうるのか。 価値観が多様化した世の中ですから、地域でひとつに決めるのが難しくなっているのは確かですよね。

 

 一般的にいう花火は、法律上「がん具煙火」と呼ばれます。 と、エラそうに書いてますが、私も今日知りました。

 

◆ 火薬類取締法 第2条(定義)
2  この法律において「がん具煙火」とは、がん具として用いられる煙火その他のこれに類する煙火であつて、経済産業省令で定めるものをいう。

◆ 火薬類取締法施行規則(※経済産業省令) 第1条の5
 法第2条第2項 に規定するがん具煙火は、次の各号に掲げるものとする。
  一  がん具として用いられる煙火
 
   イ 炎、火の粉又は火花を出すことを主とするもの
    (1) 吹出し、スモールトーチ、噴火山その他の筒物、すすきその他柄付きの筒物又は球物であつて、火薬15グラム以下のもの
    (2) 朝顔その他の炎を出す柄付きのより物であつて、火薬10グラム以下のもの
    (3) 銀波その他のひも付きのより物であつて、火薬10グラム以下のもの
    (4) スパークラーその他の光輝のある火の粉を出す柄付きのねり物であつて、火薬が露出しているもののうち、火薬10グラム(鉄粉を30パーセント以上含んでいるものにあつては、火薬15グラム)以下のもの
    (5) サーチライト、コメットその他の柄付きのねり物であつて、紙に包まれたもののうち、火薬10グラム以下のもの
    (6) 線香花火その他の火花を出す柄付きのより物又は火薬が露出しているねり物であつて、火薬0.5グラム以下のもの
 
   ロ 回転することを主とするもの
    (1) ピンホイールその他の円盤の周囲に火薬を紙で包んだ管を巻き付けたものであつて、火薬4グラム(爆発音を出すものにあつては、火薬3.9グラム)以下、爆薬(爆発音を出すためのものに限る。)0.1グラム以下のもの
    (2) サキソンその他の筒又は板の端に筒物を装着したものであつて、火薬4グラム(爆発音を出すものにあつては、火薬3.9グラム)以下、爆薬(爆発音を出すためのものに限る。)0.1グラム以下のもの
    (3) ヨーヨーその他の円盤又は板に輪形のより物をはり付けたものであつて、火薬1グラム(爆発音を出すものにあつては、火薬0.9グラム)以下、爆薬(爆発音を出すためのものに限る。)0.1グラム以下のもの
 
   ハ 走行することを主とするもの
    (1) 金魚その他の水上を走行する筒物であつて、火薬2グラム以下のもの
    (2) 小笛その他の笛音を出す筒物であつて、火薬0.5グラム以下、爆薬(笛音を出すためのものに限る。)1.5グラム以下のもの
    (3) ケーブルカーその他の糸を通す筒等を装着した筒物であつて、火薬1.5グラム以下のもの
    (4) 花車その他の紡錘形又は輪形のより物であつて、火薬1グラム(爆発音を出すものにあつては、火薬0.9グラム)以下、爆薬(爆発音を出すためのものに限る。)0.1グラム以下のもの
    (5) 爆龍その他の火薬を紙で包んで折りたたんだものであつて、火薬1グラム以下のもの
 
   ニ 飛しようすることを主とするもの
    (1) 笛ロケットその他の笛音を出す尾つきの筒物であつて、火薬0.5グラム以下、爆薬(笛音を出すためのものに限る。)2グラム以下のもの
    (2) 流星その他の尾付きの筒物であつて、火薬2グラム(爆発音を出すものにあつては、火薬1.9グラム)以下、爆薬(爆発音を出すためのものに限る。)0.3グラム(硫化ひ素を含むものにあつては、爆薬0.1グラム)以下のもの
    (3) 人工衛星その他の板に筒物を装着し、回転上昇するものであつて、火薬1.5グラム以下のもの
 
   ホ 打ち揚げることを主とするもの
    (1) 乱玉その他の星を打ち揚げる筒物であつて、単発式のもののうち、火薬10グラム以下のもの又は筒の内径が1センチメートル以下の連発式のもののうち、火薬15グラム以下のもの
    (2) パラシュートその他の内筒に入れた放出物を打ち揚げる筒物であつて、火薬10グラム以下のもの
 
   ヘ 爆発音を出すことを主とするもの
    (1) スモーククラッカーであつて、火薬1グラム以下、爆薬(爆発音を出すためのものに限る。)0.1グラム以下のもの(マッチの側薬又は頭薬との摩擦によつて発火するものを除く。)及びファイヤークラッカーその他の点火によつて爆発音を出す筒物(スモーククラッカーを除く。)であつて、その筒の外径が4ミリメートル以下のもののうち、火薬1グラム以下、爆薬(爆発音を出すためのものに限る。)0.05グラム以下のもの(マッチの側薬又は頭薬との摩擦によつて発火するものを除く。)
    (2) クラッカーボールであつて、直径1センチメートル以下、重量1グラム以下のもののうち、爆薬(爆発音を出すためのものに限る。)0.08グラム以下のもの
    (3) クリスマスクラッカーその他の摩擦によつて爆発音を出す小形の筒物を内部に装着し、その爆発により軽量の紙テープ等を放出するものであつて、爆薬(爆発音を出すためのものに限る。)0.05グラム以下のもの
    (4) 平玉であつて、その一粒が直径4.5ミリメートル以下、高さ1ミリメートル以下のもののうち、爆薬(爆発音を出すためのものに限る。)0.01グラム以下のもの及び巻玉であつて、その一粒が直径3.5ミリメートル以下、高さ0.7ミリメートル以下のもののうち、爆薬(爆発音を出すためのものに限る。)0.004グラム以下のもの
    (5) 爆竹(点火によつて爆発音を出す筒物であつて筒の外径が4ミリメートル以下のものを連結したもののうち、その本数が20本以下のものに限る。)であつて、その一本が火薬1グラム以下、爆薬(爆発音を出すためのものに限る。)0.05グラム以下のもの
 
   ト 煙を出すことを主とするもの
     煙幕その他の筒物又は球物であつて、火薬15グラム以下のもの
 
   チ その他
     へび玉であつて、火薬5グラム以下のもの
 
 二  削除
 三  始発筒であつて、火薬15グラム以下のもの
 四  火災警報用又は盗難防止用として用いられる煙火であつて、爆薬(爆発音を出すためのものに限る。)0.18グラム以下のもの
 五  気密試験用として用いられる発煙火工品であつて、火薬15グラム以下のもの
 六  経済産業大臣が告示で定める緊急保安炎筒であつて、火薬150グラム以下のもの
 七  経済産業大臣が告示で定める模型ロケットに用いられる噴射推進器(経済産業大臣が告示で定めるものに限る。)であつて、火薬20グラム以下のもの
 八  前号に定める模型ロケットに用いられる点火具であつて、火薬0.1グラム以下のもののうち、経済産業大臣が告示で定めるもの
 九  経済産業大臣が告示で定める内容物盗用防止装置付きかばんに用いられる発煙火工品(経済産業大臣が告示で定めるものに限る。)であつて、爆薬125グラム以下のもの

 

 ……オモシロォォーい! これ、面白くないっスか?

 よくもまぁ、これだけ厳密に花火を分類したもんだと感心します。 ロケット花火から線香花火まで、具体的な数値を出してピッチリ定義されてるんですね。 素人としては、「火薬」と「爆薬」が別のものとは、いちいち意識しません。

 ヘビ花火も懐かしいな。 あの花火らしからぬ華の無さ。 地味すぎるほど地味だけど、味わい深い褐色のモコモコが、私のツボにハマっていました。 あれは夜にやっても、果たして何が起こっているのかわからぬ、まるっきり昼用の花火でして、しかも特別、音も鳴りませんので近所迷惑になりえません。 ヘビ花火については、条例が規制する意図はないでしょうね。

 一号ハ(4)の「輪形のより物」って、ネズミ花火ですかね? こんな、文字で書かれてもイメージしにくいから、すべてを画像で紹介していただきたいですよね。

 いささか季節はずれの話題かなぁとも思いましたが、一号ヘ(3)で、クリスマスクラッカーまで「がん具煙火」に含まれるとされています。

 六号の「緊急保安円筒」は、クルマに積み込んでおいて、故障などで路上に停車せざるをえないときなどに焚いて、煙で他のドライバーに存在を知らせるやつです。自動車学校の学科で習ったような。

 気になるのは九号です。「内容物盗用防止装置付きかばんに用いられる発煙火工品」って何なんだ? 125グラムの爆薬で中身の機密情報を盗もうとした泥棒に攻撃を仕掛ける、産業スパイのシークレットかばんなのか?

 「このカバンは、自動的に消滅する」とか何とか。

……もはや「がん具」の域を超えているような気もしますが。

 

 火薬類というのは危険物ですので、取り扱いの国家資格を持っている人でないと、一切手にできないのが原則です。

 一方で例外として、「がん具煙火」については、そのへんの規制が大幅に緩和されているようですね。

 

◆ 火薬類取締法 第51条(適用除外)

3  煙火については、第17条(※譲渡または譲受の許可)、第20条第2項(※運搬許可証の内容遵守)(第19条第1項ただし書の内閣府令で定める数量以下のものを運搬する場合に限る。)、第21条(※所持者の範囲)、第22条(※残火薬類の措置)、第27条、第27条の2(※廃棄)、第36条(※安定度試験)及び第45条の2(※警察官の緊急措置)(第19条第1項ただし書の内閣府令で定める数量以下のものを運搬する場合に限る。)の規定は、適用しない。
4  がん具煙火については、前項に規定するもののほか、第5条(※販売営業の許可)、第18条(※行商及び屋外販売の禁止)、第25条及び第26条(※消費)の規定は、適用しない。
5  前2項に規定するもののほか、第3条、第4条(※製造の許可)、第11条第2項及び第3項(※貯蔵の条件)、第13条(※製造業者・販売業者の火薬庫所有義務)、第29条(※保安教育)、第30条第1項及び第2項(※保安責任者)、第35条(※保安検査)、第35条の2(※定期自主検査)、第38条(※火薬類の混包禁止)、第41条(※帳簿)並びに第46条第1項第2号(※証明書喪失の事故届提出)の規定は、各規定ごとに経済産業省令で定める数量以下のがん具煙火については、適用しない。

 

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 「教科書ではともかく、裁判所では“疑わしきは罰する”だよ」
 

 ……全体のごく一部には違いありませんが、現に裁判官が出した「問題判決」「問題発言」の例が挙げられています。 こんな現状の中で、「冤罪」「誤判」を減らそう、無くそうというほうがムチャなのでしょうか。

 うちの「裁判官語録」のコーナーを気に入ってくださっている方に、特に読んでいただきたいと思います。 私が一度書いてみたい媒体のひとつ、 “別冊宝島Real”から。
 

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