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2007年1月27日 (土)

「離婚まもない頃に誕生した子の父親は、母の前の夫である」民法規定 110年ぶり見直しへ

>>> <民法772条>法務省 実態把握のため調査に乗り出す
 「離婚から300日以内に誕生した子は前夫の子」とする民法772条の規定について、法務省は26日、実態把握のため自治体などを通じた初の調査に乗り出すことを決めた。長勢甚遠法相が同日午前の閣議後の記者会見で明らかにした。同省は、結果を受けて、規定の改正や運用の見直しなどの検討に入る。
 規定を巡っては、前夫の子となるのを拒んだことによる無戸籍の子供の存在や、今の夫の子とするために前夫を巻き込んだ裁判などの法的手続きが必要――などの問題点が明らかになっている。
 長勢法相は「(1898年の法律施行)当時とは、家族についての意識も変わってきているかもしれないし、医療技術も発達したことが影響している」との見方を示し、「(子が無戸籍になるような)問題が比較的多く見られることは考えなければならない」と述べた。調査の結果を受けて、「裁判などを要する手続きがどの程度必要なのかや、(運用について)工夫する余地があるか検討したい」と語った。(毎日新聞)2007年1月26日11時34分配信

 
 民法の家族法の施行は、1898年ですか。 歴史は苦手ですけど、日清戦争とか日露戦争のころですよね。

 いくらレトロな条文がお好きな法律業界とはいえ、さすがに耐用年数が切れているとお気づきになったようですね。

 でも、長勢法務大臣、ナイス判断には違いないですよ。 これからも期待を持って見守ることにいたします。 今の内閣がどれだけ続くのか知りませんが。

 

◆ 民法 第772条(嫡出の推定)
1 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2  婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

 

 もうねぇ…… こんなもん、時代が違いすぎるんですよ。

 
 

 あーあーあー またオムツかえなくっちゃ。
 

 あの人…… 今日も朝帰り。 ホンットに…… どういうこと?

 あたしほっといて、遊んでばっかり。
 

 ……弱ったわねぇ。 今月も赤字だわ。

 でも、この子がいるんじゃ、パートになんて行けっこないし。
 

 えー? 今度はミルクが欲しいの?

 もう、わかった、わかったから。ちょっと待っててねぇ~。

 

 そんなとき、玄関に訪ねてきたのはクリーニング屋さん。

 クリ「ちわーっス」

 人妻「あ…… ごくろうさま。 そうねぇ。 今週もワイシャツがたまってて……」

 クリ「お、奥さん。 どうしたんですか」

 人妻「え? なにが?」

 クリ「目が真っ赤ですよ。 ひょっとして……泣いてらしたんですか」

 人妻「……あぁっ! クリーニング屋さん!」

 クリ「お、奥さんっ! いやっ、やばいですよ。今は仕事中……」

 人妻「ちょっとだけでいいの」

 クリ「……えっ?」

 人妻「少しだけ、今だけはクリーニング屋さんの胸の中で…… 泣かせてください」

 

 

 ……ということも、日常茶飯事なわけですよ。 今の時代は。 えぇ。
 

 それはさておき、たび重なる浮気などでダンナに愛想を尽かした奥様たちが、心を癒してくれる他の男に身を委ねていくのも、まぁねぇ……。 仕方ないですよ。 そりゃ、オスの本能が悪い。

 100歩譲って、そんな「ふしだら」な営みが人倫的に責められうるとしても、そんな親の「ふしだらさ」に対するペナルティが、「無戸籍」という形で子どもに科せられるのは、なんとも理不尽です。

 だいたい、離婚時からの日数で計算するとなると、どうしても無理が出てくるんですよ。前の夫と別れて、ある程度の時期を離して再婚していても、子どもが未熟児で産まれたばかりに「離婚後300日」の条件を満たさず無戸籍…… という例も実際にあるようです。

 わが子が法律上、前の夫の子になっている状態を修正するためには、現行法上、裁判(※細かいことは省略します)を起こすしかありません。

 しかし、特にDV(夫婦間暴力)で別れるなどした関係の場合、「あの男には二度と会いたくない。顔も見たくない」という状況になっていることも考えられます。

 そりゃ、DNA鑑定という技術もありますが、遺伝子的なつながりだけを手がかりに法律上の父親を強引に確定するのでは、離婚からの日数を数えて定量的に決めてしまう民法772条2項と発想は変わらないでしょう。

 「生物学上DNAがつながっている、その男を父親にすることが、本当に子どもの喜びになるのか」を考える場として、家庭裁判所も必要です。 場合によっては、女性が前夫と顔を合わせずに審理をすすめていく方法も採り入れるべきでしょう。

 もうすでに採り入れているかもしれませんが。

 

 戸籍を持たない人は、就職活動などで厳しい扱いを受ける場合が無きにしもあらずでしょうし、法律婚(入籍)もできません。 なぜかプロボクサーのライセンスも取れないようです。 しかし、生活の上で一番の不利益は、パスポートが発行されないことでしょうか。

 (※【業務連絡】 戸籍謄本や抄本を提出しなければ、社会的に受けつけてもらえないことって、他にありますか? ネットで探してみましたがあまり見つかりませんので、詳しい方、ご教示をお願いいたします!)

 

◆ 旅券法 第3条(一般旅券の発給の申請)
 一般旅券の発給を受けようとする者は、外務省令で定めるところにより、次に掲げる書類及び写真を、国内においては都道府県に出頭の上都道府県知事を経由して外務大臣に、国外においては最寄りの領事館(領事館が設置されていない場合には、大使館又は公使館。以下同じ。)に出頭の上領事官(領事館の長をいう。以下同じ。)に提出して、一般旅券の発給を申請しなければならない。ただし、国内において申請する場合において、急を要し、かつ、都道府県知事又は外務大臣がその必要を認めるときは、直接外務省に出頭の上外務大臣に提出することができる。
 1.一般旅券発給申請書
 2.戸籍謄本又は戸籍抄本
 3.申請者の写真
 4.渡航先の官憲が発給した入国に関する許可証、証明書、通知書等を申請書に添付することを必要とされる者にあつては、その書類
 5.前各号に掲げるものを除くほか、渡航先及び渡航目的によつて特に必要とされる書類
 6.その他参考となる書類を有する者にあつては、その書類

 
 

 すっかり引き出しの奥でホコリをかぶっていた私のパスポート。

 その1ページ目には「日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、関係の諸官に要請する。 日本国外務大臣」と書かれています。

 どうやら日本国のパスポートは、「日本国民」に発行されるもののようですね。 当たり前ですが、だって最近じゃあ、北朝鮮お手製の偽……

 

 

 あぁ、危ない危ない。 危うく工作員の方々に連れていかれるところでした。

 では、ある人が「日本国民(日本国籍を持っている人)」だといえる条件とは?

 

◆ 国籍法 第2条(出生による国籍の取得)
  子は、次の場合には、日本国民とする。
   一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき
   二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき
   三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき

 

 産まれた時点で、父親か母親のどちらかが日本国民なら、その人も日本国民です。 戸籍があるかどうかは、なんら条件に入っていません。 戸籍法にもありません。

 それはそうです。 もし、戸籍がなければ日本国籍もないのなら、皇族の皆さんは全員が日本国籍を持ってらっしゃらないことになります。

 戸籍は、その人が日本国民であることを最も雄弁に証明する手段ですが、無ければ無いで、そのほかの有効な手段で証明できるのなら、それでもかまわないはずです。

 この問題、解決方法として一番わかりやすいのは、この種の産まれながらのトラブルに巻き込まれたことが原因で無戸籍状態になっている人たちに対して、国や自治体が積極的に「特例」を認めてパスポートなどを発行するよう努めることではないでしょうか。

 

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 日本の法律は、守れば守るほど社会が成り立たなくなる?

 戦後の高度経済成長を支えてきた「官僚統制型経済」ですが、その副産物として「法令の目指すところと懸け離れた実態」が生じてしまいました。

 お題目のように唱えられる、単純な企業コンプライアンスに警鐘を鳴らす一冊。買った後にベストセラーだと知りました。

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2007年1月24日 (水)

良質のホラー映画「それでもボクはやってない」

 観てます? 日曜9時のTBSドラマ「華麗なる一族」。なかなかイイですね。

 ひさびさに「留守録してでも観たい」と思わせてくれる、しっかりしたテレビドラマが出てきました。うれしいです。

 ま、私はドラマを観ているというより、ハセキョーを観ているのですが。

 
 相変わらず美しい長谷川京子さんは、「裁判員制度の女神」の座を仲間由紀恵さんに奪われるという悲しみを乗り越え、気丈に振る舞ってられますね。

 いや、それとも余計なお荷物から解放されてセイセイしているのか。 あるいは、彼女のキャリアの黒歴史として完全に忘れ去っているのか。

 ……これ以上は言わないことにしましょう。 切なくなりますので。

 
 それにしても、西田敏行は料亭シーンが似合いますねぇ。一瞬「白い巨塔」のデジャヴかと思いましたよ。

 

 さて、裁判員制度が動き出すのも、いよいよ再来年に迫り、しかもチマタは空前の「裁判傍聴ブーム」だといいます。

 マニアの皆さんは、じつに熱心に裁判所へ通われてますよね。 感心いたします。 傍聴マニアのブログを「傍聴」するのが趣味のマニアもいるようで。

 私は近ごろ、週2回行ければイイほうですよ。 他人様の人生を傍観する前に、まずは自分の人生の建て直しを優先させにゃならんところですので。

 これだけ「裁判」というものが注目される中で、あの映画「Shall we ダンス?」で著名の周防正行監督・脚本の最新作「それでもボクはやってない」が封切られました。

 「このジャンルの映画料金なら、司法ライターとしての経費になるはず」という、個人的なセコさもあって、行ってまいりましたよ。 バイトが終わった後にレイトショーで。

 映画館へ映画を観に行くのは、ひさしぶりです。 司法浪人の最後の年に「ゼブラーマン」を観て、どんなに傷ついても何度も何度も空を飛ぶ特訓を繰り返すゼブラーマンの姿に涙して以来でしょうか。(赤恥)

 
 電車のドアにスーツがはさまってしまい、それを抜き取ろうとモゾモゾしていただけなのに、近くの女子中学生から「チカン」と誤解されてしまう男。 容疑をずっと否認しつづけていると、逮捕→勾留→起訴と、みるみる泥沼にはまっていきます。

 しかし、公判担当の裁判官は「疑わしきは罰せず」という鉄則を忠実に守り、否認事件では無罪判決を多く出すことで有名な方。 主人公に一縷の望みが出てきます……。

 日本の「決めつけ司法(命名:みそしる)」の問題点を見事にあぶりだした作品です。 その「決めつけ司法」という巨大な敵に敢然と立ち向かい、あきらめずに闘う弁護人や支援者の努力や苦悩がストレートに胸を打ちます。

 私も観ていて、………なんだか、弁護士になりたくなっちゃいました。

 

 冗談はさておき、出色の完成度なのは法廷シーンです。 東京地裁の傍聴マニアならビックリすると思います。 実際の法廷と違いがまったくわかりませんから。

 私はツッコミどころを探そうと、意地悪く細かく注目していきましたが、法壇の材質や寸法、マイク、傍聴席の柵やイス、それぞれの器材の距離関係、被告人や裁判官が出てくる扉の奥の雰囲気、壁の時計、果ては女子中学生が法廷で証言する場面での遮蔽スクリーンまで……。

 おんなじですねぇ。

 まさか東京地裁がロケに協力したってことはないでしょうし。

 唯一、壁の色が違って、新しい壁紙に見えるぐらいですか。 やっぱり撮影用のセットをつくったんでしょうね。 それにしては、よくできてます。

 ツッコミどころを探せば探すほど感心のしどおしで、一般に非公開である留置場や取り調べのシーンは、逆に「へぇ~」と、発見の連続でした。 法廷をあそこまで忠実に再現なさるぐらいですから、こちらも質量ともに尋常でない取材を重ねて、実際の様子と遜色なく描かれているのでしょう。 私のライターとしての活動が、いかに底の浅いものか思い知らされます。

 撮影セットの見た目だけでなく、ウソをつこうとしていないのに証言が現実の出来事と食い違っていくさまもリアルですし、主人公に当番弁護士を頼まれたときの警官の反応や、弁護人の「しかるべく」「差しつかえです」などのお決まりのセリフがおかしいですね。

 現実の法廷では「異議あぁぁりっ!」なんて派手に叫んだりしていません。 というより、争いのある刑事事件そのものが稀少ですし。

 時系列をぐちゃぐちゃに入れ替えて魅せるような演出に凝る映画が多い中、本作は、事件当時の回想シーンを除いて、物語が時間の進み方に素直に展開していきます。 とても見やすくできているうえに、まったく退屈しません。

 この作品は、じつはホラー映画に分類されるべきかもしれません。 一般的なホラー映画だと、突拍子もない展開につい笑ってしまう私ですが、こればかりは本気で怖かったです。 何の誇張も飾りもなく、司法の現実が淡々と描かれていますから。

 容疑者逮捕のメディア報道をもって「事件は解決した」と思いこみがちな、法律学の予備知識がない一般の皆さんにも、私が感じた怖さがわかってもらえるはずです。

 「誤認逮捕は決して他人事ではない」と痛いほど気づき、「『疑わしきは罰せず』の鉄則が守られない恐ろしさ」を理解していただけるかと思います。 そのへんを説教くさくなく仕上げているところに、人気映画監督らしい仕事の跡が見て取れます。

 そして、周防監督ご自身もおっしゃっていますが、この映画は現職の裁判官にこそ目を見開いて観ていただきたいものです。 というより、裁判官に観せるためにつくったとしか思えないのですがね。

 ラストに近づくにつれて、現実の司法を鋭くえぐるセリフの数々が飛び出します。 監督自身のお考えを、ストレートに登場人物に代弁させているのでしょう。

 ひさしぶりに映画館に行って、楽しかったです。1回分の映画代金があれば2,3日暮らせますから、ついつい私はケチってしまいますが、今度は話題沸騰、「愛ルケ」のハセキョー濡れ場でも拝見しますか?

 

 ……ただ、テレビならまだしも、カネを出してまで逢いに行く気にならない私。ハセキョーへの惜しみない愛も、それまでか。

 いっそのこと「ハセキョーライター」を名乗ったら、愛ルケ代も必要経費で…… とりあえず黙って「贅沢日和」でも飲んどこ。
 
 
 冗談はともかく、「鶴橋康夫監督作品」という要素は気になるなぁ。かつてのドラマ「リミット」や「砦なき者」が実に素晴らしかったので。

 

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2007年1月21日 (日)

今年はいっそ、ジャーナリスティックに

>>> 2.5日に1回遅刻、厚労省職員処分 実家に戻ると止む
 2.5日に1回のペースで遅刻していたとして厚生労働省は26日、同省の男性職員(32)を国家公務員法に基づく職務専念義務違反で戒告処分にしたと発表した。男性は数年前から遅刻を重ねていたが、今年4月から7月にかけては81の出勤日のうち32回にのぼった。特に理由はなく「気を付けます」と言うばかり。親に知らせたところ、8月に一人暮らしの官舎から実家に引っ越し、その後は遅刻しなくなった。
 処分されたのは大臣官房統計情報部の主任。4カ月間の遅刻時間は計1481分間。平均46分、最長は225分だった。
 人事課では「遅刻が理由の懲戒処分は極めて珍しい」としている。 (2006年12月26日19時15分・朝日新聞)

 

 あけまして 今さらでございます。 今年もよろしくおねがいします。

 こんなに長い間ブログを更新できなかったのには、ワケがございまして。

 わたし、何を隠そう、 この遅刻魔のお役人にインタヴュー取材を決行してきたのです。えぇ。

 でも、アポをとるのが大変で、なかなか骨の折れる任務でした。

 
 

――――― えー、よろしくお願いします。

 遅刻役人「よろしくお願いします」

――――― さっそくですが。

 遅刻役人「ハイ」

――――― 今日も、この場に遅れて来ましたよね。

 遅刻役人「あー、すいませんでした。 気をつけます」

――――― もう今は、ご両親が起こしてくれるんじゃなかったんですか。

 遅刻役人「いや、起こしてくれたんですけど」

――――― じゃあ、なんで遅れるんですか。

 遅刻役人「トイレで用をたしてたら、間違えて流されてしまいまして」

――――― ……下水にですか?

 遅刻役人「ハイ。 ものすごい水圧で流されまして」

――――― トイレの水圧に押されてたら、かえって早く着きそうですけどね。

 遅刻役人「でも、今日はあいにく、下水道ルートの運が悪くてですね。 全然違うところに着いてしまいまして」

――――― あの…… いちおうイヤミのつもりなんですけど。

 遅刻役人「地上にあがったら寒くて寒くて。 全身タオルでふいてたら遅れてしまいました。 本当に申し訳ありませんっ」

――――― ……なんか怒るのもバカバカしくなりますよ。

 遅刻役人「下水管の中は暗いし、どこに行きつくかわからず不安で不安で」

――――― はぁ。

 遅刻役人「怖いですよぉ。 わかりますか。そんな気持ち」

――――― いえ。 わかりたくないです。

 遅刻役人「もう、流れに身をまかせて……。気持ち良かったです」

――――― どないやねん。

 遅刻役人「いろんなものにまみれて流されてました」

――――― ……そういえば、なんかニオいますよね。

 遅刻役人「あ、さっき、すかしっぺしちゃいました」

――――― おいおい! 勘弁してくれよ! くっせぇなぁ。

 遅刻役人「すいません。 今までのは全部冗談で」

――――― 冗談……? すかしっぺも?

 遅刻役人「それはマジです」

――――― それを最も冗談にしていただきたかった。

 遅刻役人「断固としてマジです」

――――― 本当は? 遅れた理由。

 遅刻役人「本当は今朝、来る途中に、ウィッキーさんに呼びとめられたんです」

――――― また古典的な言い訳を……。

 遅刻役人「新橋でウロウロしながら『エクスキューズミー』と連呼してましたけど、誰も立ち止まらないので、そんなウィッキーさんが哀れになって私が率先して英会話に協力することを決意したのです。 『わざわざスリランカから来日したのに、仕事あがったりだよな』と同情を寄せつつ」

――――― ……あなた、最近ズームイン観てないでしょう。 ウィッキーさんのコーナーは、とっくの昔に無くなってますよ。

 遅刻役人「えっ、無くなったんですか? そうですかぁ」

――――― 遅刻の言い訳がひとつ無くなって寂しいですか。

 遅刻役人「いやぁ、諸行無常ですね」

――――― やかましいわ。

 遅刻役人「ホントは今朝、めざましテレビの八木亜希子が……」

――――― あなた、さては近ごろ、7時台に目を覚ましてないですね。

 遅刻役人「覚ましてますよぉ。 日曜はいつも『おはようサンデー』のちびっこマラソンを……」

――――― そこまでいくと、逆に懐かしくてたまらんけど。

 遅刻役人「私の早起きモットーは、『飼い犬の遠吠えとともに目を覚ます』です。

――――― それじゃ、起きたら真っ暗ですよ。 

 遅刻役人「夜行性公務員と呼んでください」

――――― 余計なコメントしないでください。それを言うなら『ニワトリの鳴き声とともに……』でしょう。

 遅刻役人「近ごろは、そんな遠吠えするほど野生に目覚めた犬も珍しいですけどね」

――――― だから、余計なコメントは控えてください。 テープのムダなので。

 遅刻役人「えぇっ、今どきカセットテープですかぁ? レトロぉぉ」

――――― だから余計なコメン……

 遅刻役人「失敬。 本当のことを告白しますと……」

――――― はい。

 遅刻役人「今日は別に遅れてもいいかなぁ、と」

――――― ほぉ。 それはまたどうして。

 遅刻役人「売れないへっぽこライターなんかいくら待たせても、特に人生にダメージ無いし」

――――― ハハハハハ……。

 遅刻役人「今日は起きたくなかったんです。 いつものように、すごいイイ夢見てましたから」

――――― どんな?

 遅刻役人「不二家のショートケーキを腹いっぱい食う夢」

――――― なるほど。 いっそのこと、それを正夢にしてみます?

 遅刻役人「だいたいねぇ。 そこまで責められる筋合い無いんですよ。 遅刻ごときで」

――――― おっ。逆ギレ。

 遅刻役人「弁護士だって、法廷に遅刻してるじゃないですか」

 

>>> 奈良地裁:弁護士が遅刻、結審が来月16日に延期 /奈良
 ◇裁判に遅刻しちゃいました 弁護士さん、電車乗り遅れ
 ◇奈良地裁、法廷やきもき 論告求刑できず、結審延期
 奈良地裁で19日、刑事裁判の開廷時間に弁護士が遅刻。検察側の論告求刑など予定を時間内に消化出来ず、結審が来月16日に延期された。弁護士は「事務が立て込み、電車にタッチの差で乗り遅れた」と反省しきりだった。
 地裁によると、裁判は午後3時に開廷後、被告人質問、検察官の論告求刑、弁護人の最終弁論を行い、同4時10分閉廷の予定だった。ところが予定時間になっても弁護士が現れない。12分が経過し、書記官が弁護士に連絡をしようとした直後、「すいません。遅れました」と弁護士が法廷に飛び込んできた。
 裁判は16分遅れで開廷。被告人質問が長引き、次の裁判の予定も立て込んでいたため、裁判長は被告人質問を途中で切り上げ、予定時間通りに閉廷した。(毎日新聞)2007年1月20日18時0分配信

 

――――― 弁護士が裁判に遅刻するのなんか、東京地裁で私しょっちゅう見てますよ。 期日を勘違いしてたとか渋滞に巻き込まれたとか。 ……論点を反らさないでください。あなたの話をしてるんです。

 遅刻役人「すいません」

  

◆ 国家公務員法 第101条(職務に専念する義務)
1 職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、官職を兼ねてはならない。職員は、官職を兼ねる場合においても、それに対して給与を受けてはならない。
2 前項の規定は、地震、火災、水害その他重大な災害に際し、当該官庁が職員を本職以外の業務に従事させることを妨げない。

 

――――― いいですか。 勤務時間に不二家ブランドのショートケーキをたらふく食う夢を見てるなどは、職務専念義務の規定に反するんです。

 遅刻役人「でも、これって違反しても、罰則規定は無いですよね」

――――― いや、ありますよ。

 遅刻役人「ないですよ」

――――― 今からあなたの鼻毛を全部抜きますから。

 遅刻役人「いたたたたた! いってぇ! オマエふざけんな! 単なる私刑じゃねえか」

――――― まだ終わってませんよ。 常習犯は、わき毛も抜くことになっとるんだから。

 遅刻役人「オマエ調子に乗るなよ。 ただのライター風情が国家公務員に逆らうとどうなるか……」

――――― どうなります?

 遅刻役人「こうなったら…… 国民年金を値上げしてやる」

――――― ぬぁあぁぁ…… やめてくれぇぇえぇ!

 遅刻役人「どうだ。 まいったか」

――――― お、オマエも勤務遅刻した時間ぶんぐらい、給料を返納したらどうなんだ。 

 遅刻役人「むっ」

――――― むちゃくちゃもらっとるんだろ、高給取りが。

 遅刻役人「そうでもないよ」

――――― 月に6兆ぐらいもらっとるんだろ。

 遅刻役人「そこまではいかんが、まぁ、そんなもんか」

――――― 遅刻したぶんだけでも返納すれば、だいぶ私が潤うよ。

 遅刻役人「お、おいコラ……。 財布返せ」

――――― ほら、国民とペコちゃんに謝りたまえ。

 遅刻役人「オレが遅刻して、なんで愚民どもに謝る筋合いがあるんだよ」

――――― よーし。 そんなにまつ毛も抜かれたいか。

 遅刻役人「どうもすみませんでした。ペコ」

 

 

 ……なんだこれ。

 

 頑張ってください、厚生労働省。

 
 

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 視聴率至上主義。

 ニュース番組のバラエティ化。

 「CMの後、衝撃の展開が!」の仰々しい煽り。

 

 おなじみ、近年着実につまらなくなってきているテレビであります。 「これが面白いんだ」「これが真実だ」というテレビ局のポリシーを打ち出すより先に、ビジネスの論理が優先されてしまう現状。

 しかし、そもそも「民放局は、番組でなく、CMを放送する目的で設立されたのだ」と考えれば、すべてがスッキリ見えてきます。それで納得できるかどうかは別問題ですが。

 今や、番組の中身まで「タイアップ」という名のCMで駆逐されてしまい、マーケティングの論理でがんじがらめです。番組の流れの中にどれだけの割合で「隠れた宣伝」が組みこまれているのかを探り出してしまう……など、ゆがんだ視点で見始める副作用にご注意。

 本当は、しっかり凝ったつくりの骨太な番組で視聴率をとれないということは、視聴者である私たちにも大きな責任があるんですけどね。

 

CM化するニッポン ― なぜテレビが面白くなくなったのか
CM化するニッポン ― なぜテレビが面白くなくなったのか 谷村 智康

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