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2007年6月24日 (日)

証人の「ウソをつかない」旨の宣誓文が、日本各地で違うナゾ

 これから裁判員制度が動き出すことになると、法廷で語られる証人の証言というものの重要性がますます高まります。

 裁判員が参加する公判は、殺人事件でせいぜい1,2週間に3回など、短期間で終わらせることになっています。 となると、一般の方に大量の調書を読み込ませる負担を課すわけにはいきません。

 そこで、実際に法廷でしゃべってもらい、その証言内容を聞き、証言態度を観察することで事件を把握していくわけです。 取り調べを担当した刑事や検事にも、どんどん法廷に出てきてもらうことになるでしょう。

 となると、証人が法廷でウソをつかれたら、今までにまして困ってしまいますよ。 冤罪など、取り返しのつかない事態に陥るおそれもあります。

 

◆ 刑法 第169条(偽証)
 法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3月以上10年以下の懲役に処する。

 

◆ 刑事訴訟法 第154条
 証人には、この法律に特別の定のある場合を除いて、宣誓をさせなければならない。

 

◆ 刑事訴訟規則 第117条(宣誓の時期)
 宣誓は、尋問前に、これをさせなければならない。

 

◆ 刑事訴訟規則 第118条(宣誓の方式)
1 宣誓は、宣誓書によりこれをしなければならない。
2 宣誓書には、良心に従つて、真実を述べ何事も隠さず、又何事も附け加えないことを誓う旨を記載しなければならない。
3 裁判長は、証人に宣誓書を朗読させ、且つこれに署名押印させなければならない。証人が宣誓書を朗読することができないときは、裁判長は、裁判所書記官にこれを朗読させなければならない。
4 宣誓は、起立して厳粛にこれを行わなければならない。


 

 ところで、宣誓の文章が、裁判所によって微妙に違っていることをご存知でしょうか。


【東京高裁/地裁/簡裁】

「良心に従って、真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います」


 

【神戸地裁】

「良心に従って、真実を述べ、何事も隠さず、また何事も付け加えないことを誓います」



【福岡地裁】

「良心に従い、知っていることを正直に述べることを誓います」



 なぜなのでしょうか。 こんなところに裁判所の地方自治が??

 こういうテクニカルなことこそ、最高裁の事務総局が全国まとめて、まっさきに統一してしまいそうなものなのに。 不思議です。

 ちなみに、神戸地裁のは、国会での証人喚問のときと同じ宣誓文みたいです。

 

 ところで、私は先日、大阪へ行ってまいりました。前のエントリでお伝えしたとおりですが、じつは、大阪地裁の法廷も傍聴してきたのです。

 浪速の地では、はたしてどんな衝撃的な宣誓文が飛び出すのか?

  

【大阪地裁】

「良心に従って、真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います」


……あれ? 東京と同じでした。 くっそー、楽しみにしとったのに、つまらんなぁ。(←勝手)

 東京と大阪が共通だということは、高等裁判所の管轄ごとに宣誓文がつくられているわけでもなさそうです。 ますますわからなくなってきました。

 ところで、大阪から東京へ戻る前に、名古屋にも寄ってきたんですよね。 絶坊主さんと一緒に地裁を傍聴。 さて、宣誓文は いかに!?

 

【名古屋地裁】

「良心に従ってほんとうのことを申しあげます。知っていることをかくしたり、ないことを申しあげたりなど決していたしません。右のとおり誓います」



 右のとおり誓います…… ということは、宣誓書は縦書きなのかと思いきや、遠目で確認した限りでは横に書いてありましたよ。 きっと、昔のなごりでしょう。

 全国の他の裁判所では、どういう宣誓文になっているのか、他にどんなバリエーションがあるのか興味があります。 皆様、お気軽に情報をお寄せください。

 また、このように各地で違う理由についてご存知の方も、ぜひ教えていただきたいと思います。

 もうひとつ気になること。 証人が宣誓文を読みあげる際、民事や行政裁判では傍聴人も裁判官も全員が起立するのに、刑事裁判では座ったままでも怒られないんです。 あの運用もナゾですね。 あれは東京だけ?

 法廷は、まだまだ私にとってワンダーランドです。

 
 

>>>>>>> みそしるオススメブログ

 「志布志事件」や「富山強姦事件」など、無実の者にぬれぎぬを着せる捜査が耳目を集めている昨今。

 

過去のエントリでご紹介しました、熊本弁護士(元裁判官)のブログを見つけました。

 袴田事件(昭和41年・静岡・4人殺害・死刑確定)の被告人について、2人の先輩裁判官に反旗を翻し、いったんは「無罪」の意見を述べた方です。

 評議の場は一切非公開で、内容も他言無用なのですが、今年になって熊本弁護士はあえて、その評議内容を語りはじめました。

 大学の大先輩だったのか…… 知らなんだ。

『裁判官の良心』 袴田事件えん罪 ~ 熊本典道 Blog ~

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コメント

先日はありがとうございました。

ささいな点ですが情報を少しばかり。

名古屋地裁の宣誓文、私の記憶では、
「以上の通り誓います」
だったと思います。
今日も「以上の」と聞こえました。

部署によって違うのかもしれませんが、今のところはちょっとよく分かりません。聞き間違いだったらすみません。
また何か分かったらお知らせします。

それから、福岡地裁小倉支部では、
「良心に従い 知っていることを隠さず 正直に述べることを誓います」
だったと思います。

また次の機会にでも、しっかり聞いてこようと思います。

宣誓での起立は、名古屋簡裁の刑事、名古屋地裁一宮支部の刑事で、それぞれ確認しております。

他はちょっと記憶にありません。
起立の有無もメモするように心がけますね。

投稿: 絶坊主 | 2007年6月27日 (水) 21:06

ありがとうございます。

聞くのが1~2回きりだと勘違いしている可能性がありますね。大阪地裁もよく聞くと、もしかしたら東京と微妙に違うかもしれません。再確認が必要なようです。

鑑定人や通訳人の宣誓もありますが、あの文章も地方によるバリエーションがあるんですかね。たしか「良心に従って、誠実に通訳することを誓います」だったかと思いますが? 鑑定人も似たようなものでしたっけ。

刑事訴訟規則118条4項に「宣誓は、起立して厳粛にこれを行わなければならない」とありますので、宣誓の際に最低限、証人自身が起立するのはわかるのですが、法廷に居合わせた全員が起立するような運用はありますか?

投稿: みそしる | 2007年6月30日 (土) 12:11

通訳の宣誓文はその通りだったと思います。

名古屋(丸の内)以外で通訳の宣誓を聞いたことがないので、違いがあるのかどうか、分かりません。
またよそに行ったら確認してみます。

法廷にいる全員が起立しているのが、名古屋簡裁の刑事、名古屋地裁一宮支部の刑事です。

名古屋簡裁では、起立しないと、「立って」と指示されます。
一宮支部では、下を向いていて気付かず、起立しないでいたことがありましたが(すみません)、何も言われませんでした。

当たり前ですが、他では、証人だけが起立しています。

投稿: 絶坊主 | 2007年6月30日 (土) 19:31

ありがとうございます。

なんでこんなにバラバラなんでしょうね。ナゾばかりが深まりますよ。

もし、ニッポン司法における何か深い意味が秘められているとしたら、そのときは1冊にまとめるかもしれませんし、まとめないかもしれません。(笑

投稿: みそしる | 2007年7月 1日 (日) 21:58

宣誓の時の起立、昔は刑事・民事を通じて、傍聴人も含めて全員起立していたそうです。それが、昭和30~40年代の「荒れる法廷」(公安・労働関係の刑事事件)で一部弁護士が「宣誓する証人以外は起立する必要がない」とゴネ、裁判所もそれを認めてしまったため、刑事法廷では証人だけが起立し、民事法廷では昔のとおり全員が起立するようになった・・・と、知り合いの法曹関係者から聞いたことがあります。
裏を取っていないので、引用される場合は真偽の程を改めてご確認下さい。

投稿: 通りすがり | 2007年10月29日 (月) 22:29

>通りすがりさま

どうもご親切に情報をお寄せくださいまして、ありがとうございます。

「荒れる法廷」時代の話は、書物等でしか知りませんので、まず、当時の新聞記事ぐらいは調べていこうと思います。

なにか、そこからいろんなことがつながっていけば面白いなと思いますが、あまり欲をかかずにネタ探ししてまいります。

投稿: みそしる | 2007年10月30日 (火) 19:08

 大分地裁では、「良心に従って真実を述べ、何ごとも隠さず、また、何ごとも付け加えないことを誓います。(氏名)」です。
 宣誓のときは、裁判官も書記官も両当事者も傍聴人も全員起立します(民事刑事とも。刑事では事務官が「ご起立ください」とか「ご起立願います」と言う)。

投稿: 東九州人 | 2011年4月20日 (水) 17:52

>東九州人さま

どうもありがとうございます。神戸地裁の宣誓文に近いみたいですね。まだ大分地裁には行ったことがないので、情報ご提供、助かります。

刑事裁判でも、裁判官によっては傍聴人に起立を求める場合が、たまにありますね。

投稿: みそしる | 2011年4月22日 (金) 23:53

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