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2008年2月 8日 (金)

拘置所では、「お守り」を差し入れできないらしいゾ

 映画「陰日向に咲く」を観てまいりました。じつは原作をまだ読んでおらず、「短編集のような小説」だという予備知識だけで行ったのでした。失礼な話です。

 最初のほうでトイレに行きたくなって、途中で一時退席するなど、さらに観客として失礼な行為を繰り返していたのですが、物語が進むにつれ……

 泣かされたっ! くっそー、劇団ひとりに泣かされた!!

 全体としては、とても人情味あふれる話なのですが、その裏ではかなり緻密な計算が尽くされています。よくもまぁ、あんな話をつくったなぁ。 逆にあきれました。いい意味で。

 おすすめです。

 

 (( 参考過去ログ ))

 疑わしきは、被告人の利益に (2007.12.17)

 

 今日は、葛飾区小菅の東京拘置所に行ってきました。 昨年末、東京高裁で有罪判決を支持され、最高裁に上告中の韓国人男性に会いに行くためです。 ひとりで向かうのは初めて。 ちょっとドキドキです。

 私の出した1通の年賀状に対して、便せん6枚のお返事が来て、かなりビックリ。 「日本を嫌いにならないでください」とのお願いに答えて、「嫌いというより怖いです」と。

 そりゃ怖いわよ。 犠牲者にとって一番近くにいた存在だったばっかりに。

 外の景色どころか、動くモノすらない閉鎖空間のなかでジッとしながら、有罪判決の確定を待っているかと思えば、これは私が話をしに行かねば!

 

 差し入れは、あの問題作「サイコーですか? 最高裁!」1冊。 この原稿を書いているときは、まさか彼が最高裁のお世話になるとは思ってなかったですし、「いかに最高裁は、多くの上告を門前払いにするか」を説明した本ですので、心境は複雑というか……。

 ただ、少しでも参考になればと。

 

 あのねぇ……、面会時間8分て! 足りるかーい!

 不法滞在していた外国人の立場で言うことではないが……と前置きしたうえで、彼は言ってましたよ。

 日本は世界有数の先進国だと思っていたが、人権に対する配慮は足りないと。

 事件の前は、埼玉の韓国人コミュニティのなかだけで生活し、日本人とふれあう機会など無かったが、今は、こうして日本人と話すことができると。

 皮肉やなぁ。

 私も、外国人が暮らす板橋のゲストハウスで3年間暮らしてましたけど、そこで外国人と積極的に会話を交わしたのって、最初の1カ月ぐらいですから……。 「恥ずかしがり屋の国民性」では済まされません。

 冷たくしているつもりはないけど、この高度国際化時代には、どうしても相対的にみて「外国人に冷たい国」という位置に甘んじてるのかなぁ。

 日本人が被害にあった冤罪事件は積極的に報道されるけれども、こういう外国人がからむ事件の大半は無視ないし軽視されていることは象徴的です。 というより、外国人に対して無罪判決をどれくらい出してるの? この国の裁判所は。

 彼はすごく知的な人だと思いますよ。 しかも、エネルギッシュなほど筆まめ。 こういう人が、同居女性から「セックスがへたくそ」と言われたぐらいで短絡的に殺すの? ホントなの?

 控訴審判決の前に、私が安易に告げてしまった「原田國男裁判長には期待してもいいのでは」という気休めに対して、目を赤くしてうなずいてくれたり。

 有罪判決が維持された事実を知って、我を忘れて怒りをあらわにしたり。

 ああいう振る舞いは、自分が犯した重罪をヒタ隠すために見せている、彼なりの迫真の演技なんでしょうか。

 

 きっと「そうだ、追いつめられたら感情的に反発するのが、韓国人の文化的側面なんだ」という人もいるんでしょうけど、どうなんですか? その思索を節約した単純な切り口。

 人種的・文化的偏見を乗り越えるだけの個人的差異は、必ず見られるものです。 女性に対してシャイなイタリアおやじもいるでしょう。 サッカーが苦手でサンバを踊れないブラジル人もいます。 集団に溶け込めない日本人も、ここにいます。

 だったら、ヒステリックな演技でアピールしたりするのを慎む韓国人だって……

 ……そうですね。 こんなもん、合理的な論拠ではありませんね。

 

 でも、裁判を通じて彼と知り合えたのも、なにかの縁でしょう。 裁判を通じないと知り合えないのも情けないけど。

 来週から、しばらく東京を離れますし、近いうち、取材旅行先でまた手紙を書こうと思います。 だって、向こうから「また手紙書きます」って言われちゃったもん。

 

 あまりにも、私が彼に対して力になれることが無さ過ぎて、「次は、お守りを差し入れしましょうか。日本の神様」と言ってみると、過去に同じことを考えた面会者がいたらしく、結果としてお守りは差し入れが許されなかったとのこと。 拘置所が預かってるんだそうです。

 その理由は「お守りに付いているヒモの部分が問題だから」……なんですって! 奥様!

 あんなオマケみたいな頼りないヒモ使って、どうやって自分を殺めるの? たくさん集めてつなげるんですか?

 ふーん、  そこまで面倒くさいことをやる情熱があるんなら、 生きろ!

 強度的にも不可能じゃないですかねぇ。 実験はしませんけど。

 

 じゃ、じゃあ、お守りのヒモの部分を切って持ってけばいいのかね?

 差し入れはできても、バチ当たりそうやな。


◆ 刑事施設及び被収容者等の処遇に関する法律 第44条 (金品の検査)
 刑事施設の職員は、次に掲げる金品について、検査を行うことができる。
 三 被収容者に交付するため当該被収容者以外の者が刑事施設に持参し、又は送付した現金及び物品

◆ 同 第46条(差入物の引取り等)
 刑事施設の長は、第四十四条第三号に掲げる現金又は物品が次の各号のいずれかに該当するときは、その現金又は物品を持参し、又は送付した者(以下「差入人」という。)に対し、その引取りを求めるものとする。
 一 被収容者に交付することにより、刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがあるものであるとき。
(※以下略)

◆ 同 第47条(物品の引渡し及び領置)
2 次に掲げる金品は、刑事施設の長が領置する。
 一 前項各号に掲げる物品のうち、この法律の規定により被収容者が使用し、又は摂取することができるもの以外のもの
(※以下略)

◆ 同 第52条(領置物の引渡し)
 刑事施設の長は、被収容者の釈放の際、領置している金品をその者に引き渡すものとする。

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