オトナ年齢 … 20歳から「18歳」へ下げようとしてるのはナゼ!?
◆ 民法 第4条(成年)
年齢20歳をもって、成年とする。
>>> 成年年齢 18歳に「反対」6割/読売新聞世論調査
読売新聞社が12、13日に実施した全国世論調査(面接方式)によると、民法が定める成年年齢を、現在の20歳から18歳に引き下げることに賛成と答えた人は36%で、反対は59%だった。成年年齢の引き下げの是非については法制審議会(法相の諮問機関)で検討に入っているが、今回の調査では慎重な意見が多かった。
(※中略)
反対と答えた人に理由を三つまで挙げてもらったところ「精神的に未熟だ」59%、「経済的に自立していない人が多い」51%――が目立った。賛成の理由は「引き下げることで大人としての自覚をうながせる」68%、「十分な判断力がある」55%などの順だった。
現在は20歳から認められる行為のうち、18歳から認めてもよいと思うもの(複数回答)では「選挙での投票」が46%で最も多く、「親の同意がない結婚」21%、「飲酒」17%が続いた。(読売新聞 2008. 04. 20)
政治経済、芸能スポーツなどに比べると、いまいちマイナーな書きネタである法律ですが、法律はときに、改正されることによって世間の常識すらひっくり返してしまう場合があります。 よくもわるくも。
「法律なんてカンケーねー」と思っている人も、はたして常識の変化からは逃れられるでしょうか。
でも、今回変えようとしている常識については、私はだいぶ懐疑的ですね。
憲法改正の是非を決める国民投票が18歳からできるようになるのを皮切りに、一般的な成人年齢も20歳から18歳に下げたいんだそうですが、いわれている理由が「諸外国の標準に合わせるため」というのが、よくわからないというか、情けないですよね。
法律の条文には、そういう文章表現になった根拠(立法趣旨)というのが、裏に必ず隠れてますし、そこを分析するのが法律学の面白さのひとつです。
ただ、成年が「20歳から」とか「18歳から」とか、その数字そのものに、なにか明確な医学生理学的・心理学的な根拠があるわけではありません。 ただ、「オトナなら構わないけど、ガキがやるのはちょっと……」という社会的な事実はいくつもあって、どこかで線引きしなければならないわけです。
どこかで公的に、一律の年齢で線引きする営み自体に意味があるのであって、18歳という数字に、意味はないんですね。 どう考えても。
だから、「諸外国の標準に合わせるため」に18歳にしようというのも、日本が世界標準に合わせることそのものに意味があるといいたいのでしょう。 18歳というラインに正しさを求めているというよりも。
これから国際交流が進むにつれて、そういう基本的な要素がズレていれば、いろいろと不都合が起こるんじゃないかとか、そんなボンヤリした心配をなさってるんでしょうかね。
そんな寝言は、世界じゅうの通貨や言語を統一してから言いなさい。
ちなみに、この日本ですでに、18歳をもって成人になる方々はいらっしゃいます。 雑学に詳しい方ならご存知かと思いますが。
◆ 皇室典範 第22条
天皇、皇太子及び皇太孫の成年は、18年とする。
さらにちなみに、民法4条が改正されたからといって、現在20歳にならきゃできないことが、すべて一斉に18歳からできるようになるわけではありません。
民法4条は、意外と影響力が弱いんですよ。
< 現行法上、20歳になったらできること >
■ 一般的な契約を、ひとりで確定的に(親らの承諾なしに)締結できる。
・ 公職選挙で投票する。
・ 酒を飲む。
・ たばこを吸う。
■ 競馬・競輪・競艇・オートレースで賭ける。
・ 中型自動車(5~11トン)の運転免許
・ 国民年金の加入義務。
・ 被疑者の氏名・顔写真の公表。
・ 裁判員の候補に選ばれる可能性。(来年より)
……以上に挙げたうち、■太字の項目のみが、民法4条と連動します。 ほかは、すべて、それぞれの根拠条文の改正が別途必要になります。
理屈をいうなら、民法4条は「成年」とは何かを定義する条文なので、民法の成人年齢を動かしたとき、たとえば「未成年者はできない」という構成になっている条文には影響をおよぼしますが、「20歳未満はできない」のような構成になっている条文には、影響しないのです。
もっとも、民法4条を変えるチャンスがあれば、ついでに他の条文改正も一緒に行うでしょうけどね。
成人式は絶対に三十歳にすべき。社会に出て世の中のことがわかって、ようやく成人させたほうがいいね。成人式で暴れる若者がいるってニュースになってたけど、それはしょうがないよなぁ。まだ大人になってないんだから。あんなの昔の中学生みたいなもんだからね。昔の二十歳と今の二十歳は違うんだから、そのへんは臨機応変にしないと。ただ、ひとつ問題なのは、三十前で犯罪を犯しても少年Aって出ることかな。
(高田純次「適当教典」河出文庫 P.171より)
さすがです。 最新作「ザ・マジックアワー」が大ヒット中の三谷幸喜監督すら、一目置く男。 天才が認めた天才は、言うことが違います。
全体的に下ネタ満載の有り難い教典なのですが、この部分だけ妙にキレイにまとまってるのが、素晴らしい。
そういえば、私もむかし、似たようなことを書いたおぼえがありますけどね。 「女は20歳、男は35歳で成人」とか書いたような。
私も今年で33歳。 まだまだ少年の澄んだ心を持っておりますよ。 自分で言ってりゃ、世話ないけど。
純次教祖のご意見と、どちらがふさわしいかは、皆さんのご判断におまかせします。
ただねぇ、やっぱり、大人と子どもの境界線を「年齢で切る」という発想は、もう古いのかな、という気もしてきます。
かりに同年代でも、精神的な中身には個人差が大きいじゃないですか。
もっと実質的な基準で、大人と子どもを峻別すべきだと思いますよ。
たとえば……
そうですねぇ………
「新婚さんいらっしゃい」の「YesNoマクラ」の使い方に気づいたらオトナ、意味がわからないうちはコドモ。
……ダメっすかねぇ。
「プレー」と「プレイ」の違いがわかったらオトナ、とか?
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コメント
今晩は。お久しぶりですm(u_u)m
うちも改正には疑問ですね。
国際的にそうだから~とか、うちは少年法を専門に
勉強してるのですが、少年による凶悪犯罪が増えた
から~や自覚が増して少年犯罪が減少するから~とか
言われてます。
初めての少年法改正では、アメリカでは厳罰化して
少年犯罪が減少したから~という意見があったんだとか…。
でももともとそんな議論が出たのって、国民投票法
でしたっけ??あれが、18歳以上と規定してたんです
よね。確か…。
うちはその法律修正したらいいんじゃない??なんて
思ってます。
まぁそんな簡単じゃないですけど…^^;
それに年齢で大人は決めれませんよね。
子ども心を持った大人もいれば、凄い知的というか
感心してしまうような考えを持った子どももいます
よね^^;
ちなみに、YesNoマクラの使い方も『プレー』と
『プレイ』の違いが分かりません。
うちは法律上成人ですが、成人になれませんねぇ~【笑】
今日裁判傍聴行きましたよ。
常習賭博と詐欺の罪で問われた初公判を傍聴しました。
裁判所は飲み物が安いので、学生には助かります【笑】
でも…なんで安いんでしょうね??
投稿: 架図南 | 2008年6月13日 (金) 18:59
おぉ、いらっしゃいませ。(^^)
おっしゃるとおり、国民投票が「18歳以上」を有権者としている規定を変えればいいんですが、なんらかの具体的な不都合が生じない限りは、このままかもしれませんね。
YesNoマクラは、恥ずかしがり屋さんの新妻のほうに、YesかNoか決める権限があるようですよ。で、旦那は毎日Yesのほうがうれしい……かどうかは、人によるか。
たまには、NoをYesに変える力量が旦那には求められるでしょうか。余計なお世話か。
「プレイ」と「プレー」の違いは、今考えると、なんか違うような気もします。 撤回で。
ボウリング場にも「1プレイ300円」とか書いてありそうですし。
常習賭博とは、わりと貴重な罪名に出会えましたね。詐欺ということは、イカサマ付きか何かでしょうか。
裁判所のジュースが安いのは、なんででしょうねぇ。職員の福利厚生の一環?(←テキトー)
むかし、日雇いバイトで2日間だけビックカメラに派遣されたのですが、缶コーヒー70円でしたよ。
たしかあれはビックカメラでした。あちこち行きすぎてわかんなくなってるんですが。
逆に、観光地の山の頂上とかは、缶ジュース1本150円とか160円とかで売られてますよね。補充の手間がかかるのでしょうが、買う側としては足元を見られているような気分になりますね。(^^;
投稿: みそしる | 2008年6月16日 (月) 21:50