【マイナー罰則(1)】 臓器売買罪
今月20日発売の「罪と罰の事典」(小学館)は386ページあり、けっこうボリュームのある本なのですが、それでも収録しきれず、泣く泣く削ろうと決めた罰則たちを、ここでひっそりと紹介してみます。
臓器売買罪(臓器の移植に関する法律11条、20条)
<緊急逮捕が可能>
<時効5年>
<国外犯:日本国民による犯行なら、この法律で処罰>■どんな犯罪?
移植手術に使われる人間の臓器(心臓・肺・肝臓などの内臓、および眼球)を、勝手に他人へ譲り渡したり、他人から譲り受けたり、またはその間を取りもったり、これらの対価や謝礼などとしてお金などを授受したり(その約束や要求も含む)すること。
■どんな罰則?
1カ月~5年(懲役)
1万円~500万円(罰金) [併科あり]※[両罰規定あり] 法人に500万円以下の罰金。
※授受されたお金は没収される。
植物状態と違って「脳死」は、人工呼吸器が実用化されたことによって初めて生じた状態であり、新しい問題です。
現代医学による回復は無理だけれども、心臓が動き、呼吸もある人を、はたして「死者」として扱うべきか、生き死にに関わる価値観は人それぞれで、一概に処理するのは難しいところです。
10年前にできたこの法律に基づき、脳死者からの臓器移植手術が、今までに80例ほど実施されているとのこと。
日本国内では、昭和40年代に起こった衝撃的な「和田心臓移植事件」の後遺症をまだ引きずっているともいわれ、臓器移植手術の実施は低調です。
心停止後の腎臓移植の場合は別として、脳死臓器移植に至るまでに「脳死者が15歳以上」「脳死者が記入済みのドナーカードを所持」「脳死者の親族の同意」など、さまざまな条件が課されています。
なお、移植用というわけでない臓器が売買される可能性もあります。 物騒な話ですが、多額の借金をかかえ、返せなくなって、取り立て人から「カラダで返せ。お前の腎臓売るぞ」と脅される場面ですかね。
この場合は、そうした臓器を取り出す目的で、人をさらったり売り買いした時点で、加害目的の略取誘拐罪(刑法225条)や、加害目的の人身売買罪(刑法226条の2)が成立するようです。
これらの最高刑は懲役10年。 臓器売買罪よりも重い法定刑が設定されています。
| 固定リンク
「★『罪と罰の事典』(小学館)」カテゴリの記事
- 罰則全書(2008.07.15)
- 通称「ツミダス」(2008.11.24)
- 「罪と罰の事典」…ラフすぎるラフ画(2009.01.25)
- 「罪と罰の事典」…ざっくりした目次(2009.01.27)
- 【マイナー罰則(1)】 臓器売買罪(2009.02.07)
「私の知らないマイナー法の世界」カテゴリの記事
- 私の知らない軽犯罪法の世界(2005.02.04)
- 私の知らない航空法の世界(2005.06.10)
- 消費者の射幸心をあおる機動戦士(2005.10.27)
- 花屋さんの森林法違反(2005.11.15)
- ホントに詐欺で立件できる? 耐震偽装 <1>(2006.04.29)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント