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2009年2月 5日 (木)

今年の通常国会 注目の法案たち

■民法の改正案

 

 <婚姻適齢>
 日本国内で結婚できる年齢は「男18、女16」です。これは常識になってますよね。この常識が近いうちに変わるかもしれません。 女性の婚姻適齢を引き上げ、いずれも「18歳以上」が条件とするのが、本法案のまず一つ目。

 <待婚期間>
 また、現行の民法で、女性は離婚後6カ月経たないと再婚しちゃいかんと定められています。 この待婚(再婚禁止)期間は、離婚した女性に子どもが産まれた場合、誰の父親なのかをハッキリさせるために空白を設けるものとされていますが、これを「100日」(3カ月チョイ)に縮める案も出ています。
 こちらの根拠も、「両性の本質的平等」(憲法24条)に立脚するのでしょう。

 ただ、100日間どころか、待婚期間の規定すらない(廃止された)国もあるようですね。 時代の流れにより、DNA鑑定など、客観的に父子関係を推認する手段が出てきましたし、社会常識やライフスタイルも変化しています。

 いま、性行為の根拠は、婚姻関係に基づくモノだけでしょうか。 婚姻関係が破綻寸前になっている人が、その関係修復を半ばあきらめ、配偶者以外の者と性行為に及ぶことも十分にありえます。 そのことを「不貞」「ふしだら」と非難する声だって、もはや日本国内においてもそう大きくないような気がしています。(私見)

 

 <選択的夫婦別姓>
 ほかには、選択的に夫婦別姓を認める条文も提出されています。 個人的にはこの件について保守的な意識でして、自分のかみさんになる人には「長嶺」の姓としてほしいのが本音です。

 もちろん、いろんな事情で別姓を選択する夫婦は、それはそれでいいのでしょう。 ただ、すんごい中途半端ですよね。 そんなら同棲ないし事実婚でよかろうと。

 情緒的な話ですが、苗字が統一されているために家族や親戚一同が一体性を保てる、という心理的効果は軽視できないなと思います。

 「たとえ苗字は別々でも、互いを思う感情はバッチリ溶け合ってるのよ」と、強く思いこめる人々は幸せですが、人間って、けっこうカタチから入っちゃうものだと思うので。

 いや、「苗字は一緒でも、墓は別」という夫婦もいるそうですし、一概にはいえないのかも。 いずれにせよ、これからますます、婚姻制度の意味そのものが薄れていくのは確実な流れです。

 

 <非嫡出子の法定相続分における差別規定>
 さらに、嫡出子(結婚している夫婦の間で生まれた子)と、非嫡出子(そうでない子)との間で、法定相続分が違っていましたが、それを同じに扱う案も提出されています。この問題につき最高裁はまだ違憲判決を出していませんが、少数ながら違憲とする判事がいる現状も無視できませんな。


 

■刑事訴訟法の改正案

 なんといっても、「取り調べの場に、弁護人が立ち会える」という提案は大きいですね。 ハリウッド映画などではよく見かける場面ですが、今の日本ではありえません。

 日本の弁護人は、被疑者・被告人と接見して、透明プラスチックの壁ごしに「キミはひとりじゃないからガンバレ」と励ましたり、「これに取り調べの状況を毎日メモしなさい」と、ノートを渡したりするのが精一杯。

 いや、被疑者の取り調べ段階で弁護人が就いているなら、むしろ幸せなほうです。自力で弁護士に頼めない被疑者には国選弁護人が就くことになりますが、それはさんざん取り調べが行われ、起訴された後にようやく、ですからね。

 取り調べを担当する警察官や検察官は、いったい何をやっているのか、誰も客観的に検証することはできません。
 手がかりになるのは、被告人が法廷で話した内容ぐらいのもの。もちろん、被告人が何と弁解しても、裁判官からは疑いの目で見られるのが現実です。取調官が作成した供述調書の内容も、被疑者が話した内容をどこまで忠実に再現していることやら。

 
 
 

■刑法の改正案

 大きな目玉は、「不正指令電磁的記録作成・取得罪」(いわゆるコンピュータウイルス罪)の導入案です。これはおそらく可決成立するのでしょう。

 今の法律上、コンピュータウイルスを作ること自体は犯罪じゃありません。それどころか、わざと他人のパソコンに送り込むことも、その人の仕事(業務)を妨害しない限りは、原則として罪に問えません。その規制の穴をふさごうというんですね。

 ただ、この改正をもってしても、「他人の携帯電話の番号メモリーを勝手に消去すること」や「他人のテレビゲームのセーブデータを勝手に消去すること」などは、依然として犯罪にはなりません。ご注意を。(※民事上の損害賠償責任は負うかもしれませんが)

 
 

■ 児童買春、児童ポルノ処罰法の改正案

 一時期さわがれた「児童ポルノの単純所持罪」法案です。本来は、去年の11月に成立している予定だったのですが、いろいろあって延びているみたいですね。

 ここでいう児童ポルノには、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」(同法2条3項3号)まで広く含まれます。

 蒸し暑い夏の日の昼下がり、家の庭のビニールプールで無邪気に遊んでいる、わが幼い娘の写真まで、ヘタしたら「児童ポルノ」として扱われ、それをパソコン内に保存している父親に対する別件逮捕の口実に使われるのではないか?と懸念する声もあります。

 また、他人からメールなどでムリヤリ、大量の「児童ポルノ」画像を送りつけられた人も、所持罪として取り締まりの対象にするのでしょうか。

 「警察も、さすがにそこまではしないだろう」と信用したいところですが、何かの間違いで万が一でも逮捕の矛先が向けられたら、私たちは逆らえませんよね。逆らったら公務執行妨害ですからね。

 安全装置は徹底して取りつけておくに越したことはありません。 そこで当法案には「自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者」という限定が付いています。

 性的好奇心を満たす目的というのも、非常にあいまいな表現ですので、100%の安全弁にはなりえませんが、捜査機関に対し、まったく限定なくフリーハンドの権限を託してしまうよりはマシなのでしょう。

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コメント

お早うございます^^
そしてお久しぶりです。

改正法案はとても興味深いです。
特に刑事訴訟法とコンピュータウイルス罪。

刑事訴訟法の改正に関しては裁判員制度が絡んでる
のかなぁなんて思ったり。
コンピュータウイルス罪は…有り難い法案なのかも
しれませんが、それでも皆さん、法の穴を探して頑
張るんでしょうね^^;

長嶺さんの本もこっそり購入させて頂く予定です。

この前、うちの大学の学生選書ツアー【学生が本屋
さんに行って、3万円分購入可能なツアー】で長嶺
さんの本が購入されてました。
それを見てニヤッと笑ったうちは怪しい奴です。

投稿: 架図南 | 2009年2月 6日 (金) 09:56

>架図南さん

あー、ビックリした。 学生さん、私の本を3万円分買ってくれたのかと思った…。もちろん1冊で十分です。

高田純次さんのように「読まなくていいよ、買ってくれれば」と言える度胸はないので、できれば読んでもいただきたい。

架図南さん、こっそり購入するんですか? いやいや、胸を張って堂々とお買い上げを。 けっして恥ずかしい本じゃないので、たぶん。

 
そのとおり、弁護人立ち会いとか取り調べ録画、公判前整理手続きなどは、裁判員制度が引き金で導入された(されようとしている)のでしょうね。

これらの制度ができれば、日本の刑事訴訟も一歩前進ですよ。

できれば、これらの制度と引き替えに、裁判員制度が静かに廃止されれば、一番キレイなかたちかなと思ってます。

滅びの美学ですね。(^_^;

投稿: みそしる | 2009年2月 6日 (金) 18:03

こんにちは
山本モナさんに対する一連のバッシング報道を見ると
不貞行為を世間様は、「ふしだら」と思ってる様ですよ。
まあ、テレビに露出している分と人の私生活を覗き見たい野次馬根性な部分はあると思いますが

個人的には婚姻が成立した場合は
如何なる理由があろうとも不貞行為はあってはならんと思います
それが、大人のマナーですし、何より関係が破綻しているなら
離婚をした方が後腐れがないですしね


弁護人立ち会い制度も、そうですが
民放連が刑事裁判の可視化を目的に
裁判でのカメラ持ち込みを要望している様です。
野次馬根性で、なければいいのですが・・・・・

投稿: アンコウ | 2009年2月 6日 (金) 18:48

>アンコウさん

そのとおりですよね。 不貞行為など、断じてあってはならん! (モテない男は、最初から不貞なんかできん!)

のですが、私は「ダンナが全面的に悪くて(浮気や暴力が典型ですな)、長年ふさぎこんでいた奥さまが他の男に……」という場面を想定していたので、まぁそれなら同情の余地もあるかなと思いました。

もちろん、アンコウさんのように、かっこよくバシッと関係解消を突きつけるのがケジメでしょうが、性格やバックボーンは人それぞれなので、既婚者全員がそういう選択をできるとは限りません。

もし、それとは別の選択をする人がいたとして、自分はどう思うかな?という前提で書いてみました。

 
そして、「人情お言葉集」にも少し書きましたとおり、もし裁判をテレビで放送するのなら、せめてペイチャンネルかNHKにすべきと考えています。

民放で裁判中継するのは「視聴率稼ぎたいだけだろ」と、なんとなく邪推してしまいますね。

いや、視聴率を稼ぐこと自体は結構ですが、犯罪被害者の感情を犠牲にしてまで行うべきことではありません。中継によって裁判がますます「ショー化」するのも見苦しいですし、「テレビに出たいから犯罪を犯す」というヤツが出現しないとも限りません。

TVマスコミに携わる人々自体が野次馬根性を持っているというより、彼ら彼女らはわりと客観的で、野次馬根性のある一部の視聴者のためにコンテンツを提供する、という意識のほうが、きっと強いでしょうね。

「売れる」から、その需要に応えているだけで、観る人さえいなければ、裁判中継ビジネスなど成立しえないのです。

投稿: みそしる | 2009年2月 7日 (土) 00:37

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