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2009年5月31日 (日)

改正薬事法が潰すもの

 6月1日、つまり明日、改正された薬事法が施行されます。

 改正の目玉は、薬の「対面販売の原則」を徹底すること。

 なので、インターネットや電話を通じての通信販売は、ビタミン剤など副作用が極めて少ない薬品をのぞき、全面的に禁止されることになります (今まで通信販売を使ってきた患者については、いちおう2年間の猶予期間あり)。

 ただ、「対面販売」というもので、薬の副作用を食い止める利益が、てんびんの片方にあるとして、もう片方に、「持病などで動くのが困難な人、過疎地で薬局が身近にない人の手元に、薬が届く利益」を乗せたとしたら、はたしてどっちに傾くのか。

 

 北陸や九州などの地方には「伝統薬」というジャンルが根強く残っています。

 基本は自然界から取れる生薬をベースに作られていますから、たとえば妊婦さんが飲んでも問題のない薬など、ケミカルな薬剤では代替できない効能が期待されるようです。

 何百年間にわたる歴史や伝統は、他の追随を許さない立派なものなのですが、基本的には先祖代々続く零細企業で、大量生産も難しいので、全国の薬局へ販路を広げるような方法をとれない。

 そこで、「電話」という販売方法が唯一の命綱になるわけです。

 しかし、薬事法の改正が、その命綱を断つことになりかねません。このままでは。

 

 なぜ、そこまでして当局は対面販売にこだわりたいのでしょう。

 薬剤師による問診なら、電話やネットでもできますよね。

 もし、副作用などの説明が、パソコン画面上に文章で示されるだけでは不十分で、口頭で聞かせないとダメというのであれば、電話販売までは認めてもいいんじゃないでしょうか。 せめて、副作用が比較的少ない伝統薬については。

 十把一絡げで、いっぺんに慌てて規制してしまう、雑な感じが気になります。 これでは、対面販売推進に「裏」があると勘ぐられても仕方がない。


 

 先週月曜日、薬品ネット販売会社のケンコーコムと有限会社ウェルネットが、国を相手どって東京地裁に提訴しています。 もちろん、薬事法改正に物申す内容です。

 患者さんの「身体の安全」を確保するとされる対面販売の徹底が、ネット販売会社の「営業の自由」を侵害する…… というありがちな構図では、本来の問題が矮小化されるでしょう。

 対面販売の徹底によって、薬品が手に入りにくくなり、かえって一部の患者さんの身体の安全を阻害してしまうリスクについて、正面から議論していっていただきたいと願います。

 しかも、ネット販売などを禁じているのが薬事法そのものでなく、薬事法施行規則と呼ばれる、厚生労働省が一方的に定めた、国会の民主的手続きを経ていないルールであるということにも問題があるでしょう。

 法律を超えるレベルの強い規制を、施行規則で行うことは、国民主権に沿わないはずです。

 ともかく、裁判の行方に注目しましょう。 裁判所は、ものの道理が通る数少ない役所のひとつだと信じております。

 

◆ 薬事法施行規則 第15条の5(薬局医薬品の販売等)
  薬局開設者は、薬局製造販売医薬品(令第三条第三号に規定する薬局製造販売医薬品をいう。以下同じ。)その他の一般用医薬品以外の医薬品 (以下「薬局医薬品」という。)を販売し、又は授与する場合には、調剤及び医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に、当該薬局において、対面で販売させ、 又は授与させなければならない。

◆ 薬事法施行規則 第15条の6(薬局医薬品を販売等する場合における情報提供等)
1 薬局開設者は、その薬局において薬局医薬品を販売し、又は授与する場合には、調剤及び医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師をして、その適正な使用のために必要な情報を提供させなければならない。
2 薬局開設者は、前項の規定による情報の提供を、次に掲げる方法により、調剤及び医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師に行わせなければならない。
 一  当該薬局内の情報提供を行う場所(薬局等構造設備規則第一条第一項第十号に規定する情報を提供するための設備がある場所をいう。次条、第十五条の十三及び第十五条の十四において同じ。)において、対面で行わせること。
 二  医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者における当該医薬品の使用が適正なものであること又は不適正なものとならないことを確認するための質問又は説明を行わせること。
 三  次に掲げる事項を記載した書面を用いて説明を行わせること。
  イ 当該医薬品の名称
  ロ 当該医薬品の有効成分の名称(一般的名称があるものにあつては、その一般的名称。以下同じ。)及びその分量(有効成分が不明のものにあつては、その本質及び製造方法の要旨。以下同じ。)
  ハ 当該医薬品の用法及び用量
  ニ 当該医薬品の効能又は効果
  ホ 当該医薬品に係る使用上の注意のうち、保健衛生上の危害の発生を防止するために必要な事項
  ヘ その他当該医薬品を販売し、又は授与する薬剤師がその適正な使用のために必要と判断する事項

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