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2009年8月16日 (日)

裁判員制度を輝かす 100の改善案 〔No.31-35〕

 インターネット放送局「ビデオニュース・ドットコム」の、大人気コンテンツ「マル激・トーク・オン・ディマンド」のゲストとして出演させていただきました!

 

 テーマは、ありがたいことに「最高裁の国民審査」!!

 ビデオジャーナリストの神保哲生さん、社会学者の宮台真司さんと共演させていただきました。 どの裁判官に「×」をつけるべきか、これからのニッポン司法はどうあるべきか、激論を交わしながらも、楽しいひとときを過ごせました。

 すべて視聴するのは有料(月500円)になりますが、ぜひご覧ください! ⇒ こちら

 

 で、明日の朝から、右下の親知らずを抜きに、歯科医院へ行きます……。

 5年前に左下の親知らずを抜いたときは、2時間ぐらいかけて、歯を3つに分割して取り除いたり、血が止まらない口を押さえながら帰りの電車の席に座っていたりと、何かと大変でした。

 明日も、ただでは済まないことが予想されます。 果たして、執筆や裁判傍聴をする余裕があるかどうか? 

 

【 31 】
 選任手続きで、年齢層や性別のバラつきを、あえて平均化させてみては?

 

 日本初の裁判員裁判(東京地裁・8月3日~6日)で、6名の裁判員の内訳は
  ・会社員の女性(50歳)
  ・ピアノ教師の女性(51歳)
  ・アルバイトの男性(61歳)
  ・栄養士の女性(41歳)
  ・契約社員の女性(38歳)
  ・会社員の男性(43歳)

 ……純粋なコンピュータ抽選らしいですから、意図的でなくていいんですが、20歳以上が裁判員の対象資格であることを考えれば、あまりにも中高年層に偏りすぎの気がします。

 ここは、テレビ業界での視聴者分析を見習ってみましょう。

 M1(20歳~34歳男性)、
 F1(20歳~34歳女性)、
 M2(35歳~49歳男性)、
 F2(35歳~49歳女性)、
 M3(50歳~男性)、
 F3(50歳~女性)。

 

 おっ、ちょうど6パターンあるじゃないですか。
 だから、それぞれの層から1名ずつ抽選で選ぶと、裁判員がもっと自然な構成になるかと思います。

 
 
 

【 32 】
 「理由無し不選任」というブラックボックス

 

 裁判員の候補者については、検察官と被告人がそれぞれ4人(+α)を上限にして、理由を示さずに、候補から外す請求をすることができます。

 理由もなしに候補から外されるというと、なんとも気分が悪い感じですが、
 あきらかにやる気がない人、
 裁判員制度に明らかに反対の人、
 暴力団組員、
 被告人と同じ団体(宗教法人など)にいたりする人

 ……などが、裁判員に任命される可能性を、穏当なかたちで排除できるフィルターとしての役割があります。

 ただ、そうした深いレベルの個人情報を扱うわけですから、それ相応の管理体制が求められます。

 また、理由無し不選任が恣意的に行われないよう、外部から弁護士資格者や、法律学の大学教授をオブザーバーとして招いて、適正な手続きの担保にする方法もありえます。

 
 

【 33 】
 「取り調べの可視化」は、最低限の要請

 

 被疑者に対する取り調べで、被疑者が答えた内容を記録した文書を「供述調書」といいます。

 刑事裁判を傍聴していると、供述調書に書かれたことなど言っていないとして、その信用性を争ったり、長期間にわたる取り調べで疲労困憊させて認めさせたりなど……

 取調室での「自白の任意性」を争う場面がみられます。

 ときには、取調室という密室で、取り調べ担当の警察官や検察官から、侮辱的な言葉を吐かれたり、暴行を受けたりしたと主張する被告人もいます。

 そういった担当取調官を法廷に呼び出して、そのときその場で何があったのかを問いただすのですが……

 

取調官は、組織に不利なことは絶対にしゃべるまいと、並々ならぬ覚悟で証言に臨んでいますので、そう簡単には口を割りません。

 しかも、供述調書は検察官や警察官といった「信頼できる公務員」が作成した文書ですから、たとえ弁護人が証拠請求に同意しなくても、ムリヤリ裁判所に提出できるという特別扱いがなされます。

 供述調書など、書面による審理はなるべく省略しようという裁判員制度の趣旨に照らせば、取り調べの様子は録画して、不正がなかったかどうか、あとで客観的・ビジュアル的に検証できるようにしておくのが、最低限の努めだろうと考えます。

 
 

【 34 】
 取調室内への弁護人の立ち会いを認めてください

 

 ハリウッド映画などでは、被疑者が取り調べを受けている横で座っている弁護人が、舌鋒するどく「異議!」などを唱えたりしておる場面を見かけますが、あんなこと、日本ではありえません。

 取り調べを牽制するため、日本の刑事事件の弁護人にできるのは……

 拘置所や警察署まで出向いて、被疑者と面接(接見)して、話を聞いたり、アドバイスしたり、取り調べの様子を日記として書き留めるよう「被疑者ノート」と呼ばれるメモ冊子を差し入れることぐらいですね。せいぜい。

 「人間的な信頼関係を築き、時間をかけてでも粘って自白を取る」ことができる刑事や検事こそ優秀だ、という考え方が、捜査機関の間で定着しています。

 

その考え方が、被疑者の周りに取調官しか頼れる者がいない状態をつくることを正当化しているように思います。

 取調官は、法律知識があり、組織力や国家権力を背後に控えさせながら、被疑者に向き合っています。そんなアンバランスな状態で、対等な人間関係が築けるという考えは、あまりにも一方的・独善的であり、残念ながら、被疑者を不安に陥れ、力づくで自白を取っている事実をぼやかす綺麗事にしか聞こえてきません。

 「自白さえ取れば、こっちのモン」という、取り調べの価値基準そのものの見直しも迫られているように思います。

 「悪いことをやっていたら、素直に認めるべきだ」というのは、被疑者自身の良心に訴えかける、道徳的・倫理的な価値観であって、「悪いことをやっていたら、客観的な証拠で立証する」という法律的な手続きとゴチャ混ぜにしたら、捜査機関の都合のいい解釈を許すだけです。両者は厳格に分けて考える必要があります。

 被疑者の供述調書をとるのは結構ですが、そのときは、弁護人の立ち会いを認めて、適正な手続きに従って供述の記録が行われているか、厳しい目が注がれる必要があります。

 取り調べの最後に「調書の内容に間違いがない」ことを示す儀式として、被疑者が署名・指印をするのですが、特にその際には、被疑者が遠慮したり、あきらめたり、疲労困憊して早く取調室から出たいあまり、あまり慎重に読みこまず、半ば投げやりに署名・指印しているケースが多々見受けられます。
 被疑者は毎日のように取り調べに遭って、孤独に戦っているわけですから、「ちゃんとチェックすべきだ」「自己責任だ」と責めるのも酷です。
 その被疑者が犯罪を犯したとして、取調室で、犯した犯罪以上の事実を認めなければならない筋合いはないわけです。

 なので、弁護人による第三者チェックも求められます。

 


【 35 】
 刑事弁護士の養成・組織化は急務ですね 


 

 3~4日間という短期間で、重大事件の判決まで至る裁判員裁判。それを前提にすれば、刑事弁護士が、いかに短く簡潔な質問で、最大の情報を証人や被告人から引き出すか、洗練された尋問術がますます重要になってくるでしょう。

 それに、検察官の質問に的確に、自信を持って「異議」を出せる、刑事弁護が得意な弁護士資格者を養成して東京・大阪だけでなく、日本全国の地方都市で活躍させる必要があります。

 個人営業やそれに準じた小規模の法律事務所では、裁判員裁判弁護での仕事量の多さが大きな負担としてのしかかります。

 ダラダラとした尋問、同じことを繰り返すしつこい尋問は、弁護人の準備不足が丸見えですが、もし、事務所が小規模ということが理由で、努力だけでは克服できないほどの仕事量を課せられているとしたら、問題は決して放置できません。

 デジタルデータを使用した冒頭陳述や最終弁論が求められますので、そうしたデータ処理に強い人材も確保する必要があります。

 きっと、刑事弁護も半ボランティアのようなかたちでやるのでなく、もっと合理化・組織化の方向へ向かうべき時代にきているのかもしれませn。

 弁護士会としても、裁判員裁判の刑事弁護を多く扱う事務所には、人材や補助金をサポートするなど、充実した裁判員制度支援を行っていただきたい。

 国選弁護の報酬額も、裁判員裁判に関しては、ある程度は上乗せすべきです。

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コメント

こんばんは、お久ぶりです。お元気でしたか?!

歯っ!痛そうですね(;;)どうか、明日は頑張ってください。

罪と罰の事典は、ニュースの度に活用させていただいておりますよ~、正しすぎる法律用語のほうは、まだ読み終わってなくって、出版のペースが早くて読者としても嬉しい悲鳴なのですが、なかなかついていけておりません。

最近、仕事場でも裁判員が話題になり、候補者になった場合のマニュアルのようなおふれも回覧しましたよ。長嶺さんの本は学生図書館にも早速登場してました~!

投稿: まつたけ | 2009年8月16日 (日) 22:55

 はじめまして。私も三十代のとき右下、左下の親知らずがなかなか抜けず大変な思いをしました。確か一時間以上はかかったと記憶しています。念のため一週間位は自宅療養したほうがよさそうですよ。ちなみに下の親知らずは大学病院の口腔外科でも処置してくれるそうです。立派な外科手術のようです。

投稿: きたひろさとう | 2009年8月17日 (月) 00:06

ご無沙汰しております。

親知らずとは大変ですね。私の親知らずは、抜歯には至らないだろうと歯科医に言われ、とにかく歯医者が怖い私は、取りあえず安心しております。

現代人が猿人から進化する過程において、顎が退化したものの、歯の本数は減らなかったため、顎に入りきらなくなったのが親知らずなのだとか、、、

人類の進化を親知らずでご実感できますね!って、笑い事ではありませんね。お大事に。。。

投稿: にしざわ | 2009年8月17日 (月) 21:58

長嶺様
初めてお邪魔します。
The Journalを拝見して、お伺いしております。
ご主張は、何れも真っ当なご意見で実現に越したことはありません。
ただ、何れも「他人任せ」の感が拒めないのは残念なところです。
そこで、オピニオンとしての長嶺さんにお願いしたいのですが、「一票の格差」の是正のための運動に参加なさいませんか。
一人一票実現国民会議
http://blg.hmasunaga.com/sub2/index.html
という運動がございます。
趣旨にご賛同戴ければ幸いです。

投稿: 「気弱な地上げ屋」 | 2009年8月18日 (火) 15:28

>まつたけさん

ごぶさたです。いつも応援ありがとうございます。大変うれしいです。

あんまりモノを噛めないので、ウィダーインゼリーで腹ごしらえしながら、次の本の条例ネタ探しだけは細々と続けていたのですが、なんとか復活しました。

国民審査の準備にかまけて、次回作の原稿がだいぶ遅れていますが、いま一気に仕掛けています。

 

>きたひろさとう さま

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

前回は歯医者を2軒まわって断念し、3軒目の福岡日赤病院でようやく抜いてもらいました。

今回は、ネットで評判のいい都内の歯医者を調べて行ったので、非常にスムーズに事が進み、拍子抜けしています。

私も先日初めて聞いたのですが、たしかに親知らずを抜くのは外科手術なんですよね。

 

>にしざわ さま

そうなんです。黄色人種の歯並びが比較的よくないのは、混血の結果、あごと歯のサイズが合ってないから?だとか、それっぽい話を、どこかで読んだことがありますね。

私の場合、でかい親知らずが斜めに生えてきていて、隣の奥歯と衝突するため、痛みが発生したり、虫歯が広がったりするおそれがあるそうで、抜く必要があります。

親知らずがまっすぐ生えてくる人は、お墓に入るまで親知らずと共存しても問題ないみたいですね。

 

>地上げ屋さま

お知らせくださいまして、ありがとうございます。

すでに、主宰者の升永弁護士からメールでご連絡を頂戴しておりまして、「忘れられた一票2009」という国民審査サイトから、一人一票アンケートサイトへリンクさせていただいています。

今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: みそしる | 2009年8月19日 (水) 15:48

プレジデントロイターの記事「タクシーが遠回り。差額は返してもらえるか?」を読ませて頂きました
残念ながら、この記事は一方的で反論する「場」すら与えられないというお粗末ものなので、失礼ですがこの場をお借りして質問と現状について書かせて頂きたいと思います。
私は都内のタクシー会社(グリーンキャブ)で勤続10年になります。最近はクレーマー、乗り逃げ、寸借詐欺、そして強盗が多く旅客の20人に一人(つまり一日に二人程度)はクレーマーです。
「コンプライアンス」などと言う言葉が使われるようになってから、急激にクレーマーが増えたと、実感していますが、、、
さて、記事の中で長嶺さんは
「乗客に断りもなく、合理的なルートを選択することを怠ったタクシー運転手に「債務不履行」があるという。」と伝聞??で書かれています。
さて「合理的なルート」とは何を指しているのでしょうか?
例えば、代沢4丁目から信濃町まで。下北沢タウンホール前から新宿駅南口まで。「合理的なルート」とはどれでしょうか?
曜日、時間、お客様のニーズ。それぞれ違うのですが。「遠回りでも良いから早く」「とにかく近い道で」「銀杏並木が見たいから遠回りでも外苑経由で」等々、ニーズは様々です
しかし、初めて東京に来てタクシーに乗ったお客様、あるいは最初からクレームをつけてただ乗りしたい人間にはどのルートが良いのでしょうか?
あくまでもどれだけ時間がかかろうと最短距離ですか?(もちろん時間メーターは上がりますね)
現実も知らないで「この注意義務違反の有無をめぐる問題が、実際上、争点になるので、その立証責任を相手方に押しつけてしまえる乗客側のメリットは大きい。」この記事は何なのですか。
NHKの西口から新宿パークタワーまで、「道はまかせる」といわれ(当然直進です)「おい!貴様遠回りだろ、、」なーんてありえないと?あるんです頻繁にね。
自分が知らない世界の事を「伝聞で」さも当たり前のように書かれるのは如何なものかと思います。
最後に
「運賃に疑問があれば、まずは運転手と交渉し、車内に表示されたタクシー会社の連絡先に電話を入れる。そして、妥当と思う額を支払い、自分の連絡先を渡して降車すべきだと加茂弁護士は助言する。乗り逃げと誤解されないよう、落ち着いて振る舞いたい。」この件ですが、現在ほとんどのタクシー会社では録音をしていますし、メーター料金を払って頂けないのでしたら110番通報しております。
無知をさらすのならせめて「伝聞」は辞めておいた方がよいですね。

投稿: 小林 | 2009年8月20日 (木) 21:19

>小林 様

貴重なご意見を頂戴しまして、どうもありがとうございます。

恐れ入りますが、プレジデント誌の掲載記事に対するご意見を、私の個人ブログに書きこんでいただくのは、正直申し上げて非常に困ります。

 

理不尽な言いがかりを付けてくる乗客に苦しめられ、悩まされながら、勤務にあたっておられる小林様のお気持ちは察するに余りあります。

ひとつ申し上げられるとすれば、あの記事は最初から悪意を抱いてタクシーに乗るような輩に関しまして、まったく考慮の前提から外している点です。

法律構成を悩むまでもなく、その者に道義的もしくは法的責任があることに争いはないからです。

あしからずご了承くださいますようお願いいたします。

「世のなか法律塾」は、私ひとりの力で動いている企画ではございませんので、できましたら、正式にプレジデント社あてに、クレームのお便りを頂戴できれば幸いです。さらに的確な返答をご提示できるかと存じます。

投稿: みそしる | 2009年8月22日 (土) 11:16

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