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2009年8月 1日 (土)

それは穴埋めクイズか? 検察の“こすい?作戦”その2

>>> 起訴罪名の一部隠し発表 「名誉を配慮」と長野地検

 長野地検は24日、長野県飯田市の民家で女性にナイフを突きつけ金を奪ったとして、強盗などの疑いで逮捕された男の同地検松本支部による起訴を公表した際、起訴罪名について裁判員裁判対象事件とした上で「住居侵入、強盗■■」と2文字を黒塗りにして隠した。
 該当する罪名は強盗強姦(ごうかん)、強盗殺人などの可能性があるが、地検は説明を拒み、理由について「関係者のプライバシーと名誉」として具体的には明らかにしなかった。
 被害者名を伏せ犯行日時も「平成21年」、場所は「長野県」以下が黒塗り。犯行の中身や状況の大半も黒塗りとなり、被告がどこで何をしたことを罪に問うのか、公には不明確なままとなった。[※以降略] (2009/07/24 共同通信)

 

 いやぁ、意味不明な処理です。

 いったい何をどう保護しようとしているのか。

 裁判員対象事件だということは公表しているわけですから、「強盗未遂」とか「強盗予備」などの比較的軽い罪ではないはず。 記事にもあるとおり、強盗強姦か強盗殺人、あるいは強盗傷害などだと、おのずと絞り込めるわけです。

 しかも、被害者を匿名で保護すべきだという要請が作用するとなると、やはり性犯罪の可能性は高いですね。おそらくは強盗強姦だろうと考えるのが自然です。

 犯行日時は、今年だということだけが特定され、何月何日かは不明。犯行場所は「長野県」ということだけ特定され、市町村レベルは公表されていないそうですね。

 さらに、犯行内容については「被害者宅に侵入してナイフを顔に押しつけ金を要求し、現金12万円とキャッシュカードを奪った」という強盗部分だけ明らかにして、■■に関する犯行は明らかにされていません。

 仮に性犯罪だとして、その被害の様子を具体的に描写する必要はないですし、「被害者と泣く検察」を標榜する機関としては、それはそれでプライバシーや名誉を保護する判断としてありえます。

 そこまでは理解できるとしても、はたして、正確な罪名まで隠す必要性はあったのでしょうか。

 「被害者保護」の要請は大切ですが、こうした長野地検の扱いは、いささか過剰反応のような気がします。

 

 山下隆志次席検事は、裁判は公開であり公判が始まれば罪名も明らかになるとの記者の指摘に「検察が罪名を出すと事件が分かり、事件が分かると中身が分かる。中身が分かると関係者が保護されない」と主張した。 (2009/07/24 共同通信)

 

 保護されるべきだと検察が主張する「関係者」が、具体的に何を指しているのかも、よくわかりませんね。

 被害者やその家族を保護すべきなら、そう言えばいいはずであり、あえて「関係者」とぼかす必要もなかろうと思います。

 一方で、被告人については、住所と職業(無職)、氏名まで具体的に公表しているので、保護する気はないということがわかります。 だったら、なぜ「関係者」というアイマイな表現にしたのか。

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コメント

ナガミネさんに聞きたいんだが、
20世紀の有名事件で海外逃亡や共犯者裁判のために公訴時効が成立しておらず
起訴がされていない容疑者が存在する事件は
これから起訴されれば裁判員制度の対象になるの?

・テルアビブ空港乱射事件
1972年5月30日、岡本公三が他2人と
イスラエルテルアビブのロッド国際空港(現:ベン・グリオン国際空港)のターミナルで
自動小銃と手榴弾で攻撃。ターミナルに居合わせた民間人ら死者24人を殺害した。
レバノンに亡命中の岡本公三が起訴されたら、殺人罪で裁判員の対象か?

・地下鉄サリン事件
1995年3月20日、オウム真理教は東京都地下鉄でサリンを散布し12人を殺害、5510人が重軽症にさせた。
逃亡中の高橋克也と菊池直子が起訴されたら、殺人罪で裁判員の対象か?

そういや
・よど号ハイジャック事件(小西隆裕・魚本公博・若林盛亮・赤木志郎)
・ダッカハイジャック事件(坂東国男・佐々木規夫)
・仮谷清志さん拉致監禁事件(平田信)
は裁判員制度の対象外だっけ?

もっとも、日本赤軍事件やオウム真理教事件では
「裁判員や親族に対して危害が加えられるおそれがあり、裁判員の関与が困難な事件」(裁判員法第3条)
として裁判員制度の対象外となる可能性が十分に考えられるんだけど・・・

投稿: ががが | 2009年8月 6日 (木) 23:36

>ががが さま

 
コメントをくださいまして、ありがとうございます。

あくまで、非法律家の見解としてお答えいたします。

裁判員法2条1項では、裁判員対象事件を識別する原則論として、以下の2パターンの条件しか掲げていません。

-------------------------------
一  死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
二  裁判所法第二十六条第二項第二号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)
-------------------------------
 

事件がいつ、どこで発生したかは、条件に含まれていないのです。

がががさんの挙げていらっしゃる「テルアビブ空港乱射事件」「オウム真理教事件」は、日本の検察が被疑者を殺人罪等で起訴すれば、上記の1号に該当するため、裁判員対象事件として扱われると思われます。

もっとも、ご指摘のとおり裁判員法3条の例外規定が適用され、対象とならない場合もありえます。こればっかりは裁判所の裁量事項ですので、私のような部外者では、はたして例外が適用されるのか否か、事前に予想して言い当てることは困難です。

また、ハイジャック(航空機強取)は、1号に該当しますので、裁判員対象事件です。

そして、仮谷さん事件の場合ですが、共犯である井上嘉浩につき、一審では逮捕監禁しか認めませんでしたが、二審で逮捕監禁「致死」まで認定していますね。

よって、この判決実績がある限り、平田信が検挙されたとすれば、検察は致死罪で起訴する可能性が高いですから、その場合は、前述の2号該当で裁判員裁判になります。もっとも、絶対ではありません。致死罪で起訴するかどうかは担当検察官の決断ひとつです。

投稿: みそしる | 2009年8月 7日 (金) 12:37

ありがとうございます。

直近の事件では
・2009年1月14日の中央大学教授刺殺事件(精神鑑定中)
・2009年4月7日の西淀川女児遺棄事件(2009年6月10日起訴)
・2009年7月18日の千葉団地殺人事件(まだ起訴されてない?)
などでマスコミが物凄く騒いだ有名事件の裁判員制度は大注目の可能性がありますね。裁判員制度が施行され続ければ、マスコミもネタには困らないね。

個人的には裁判員制度施行(2009年5月21日)の直前に起訴された
・2009年3月26日起訴 元厚生次官宅連続襲撃事件(被害者が厚生次官)
・2009年4月17日起訴 千葉東金女児殺害事件(被疑者が軽度の知的障害)
・2009年4月29日起訴 舞鶴女子高生殺害事件(状況証拠のみ)
が裁判員制度で審理されればどうなっていたことか・・・。特に後者2つは検察には不利になるか?

投稿: ががが | 2009年8月 8日 (土) 01:00

>また、ハイジャック(航空機強取)は、1号に該当しますので、裁判員対象事件です。

でも、1970年のよど号事件の犯人は当時ハイジャック防止法がなかったから、憲法の法の遡及処罰禁止規定でハイジャック防止法では処罰できませんよね(ハイジャック防止法自体がよど号事件の影響で制定された物だし)。国外移送目的略取罪、強盗致傷罪とかかな?

田中義三は国外移送目的略取罪、強盗致傷罪で求刑15年に対し判決は懲役12年だったはず。

投稿: ががが | 2009年8月 8日 (土) 03:35

そうですね。すみません。よど号事件に関しては前言撤回いたします。強盗致傷罪で1号該当です。

投稿: みそしる | 2009年8月 8日 (土) 15:57

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