若手弁護士が出すソルティードッグに、涙の隠し味
>>> 弁護士バー「のめません」 若手ら計画、所属先が警告
バーテンダーは弁護士。法律相談も受け付けます―。こんな「弁護士バー」を都内で開く構想が、法に抵触する可能性を指摘する弁護士会から〝待った〟をかけられている。企画した若手らは、早期実現で社会の理解を得たい考えだ。
コンセプトは「もしもに備えて、かかりつけの弁護士に出会う店」。弁護士がボランティアでバーテンダーを務め、飲食面のプロスタッフも加わる計画。既に運営主体の社団法人を設立し、来年3月のオープンを目指している。
企画した第二東京弁護士会所属の外岡潤(そとおか・じゅん)弁護士(29)や、知人で元システム開発会社役員の三上泰生(みかみ・やすお)氏(33)によると、トラブルを避けるため、(1)弁護士は店内で飲酒しない(2)本格的な法律相談を受ける場合は時間や場所を変える―などと定め、10人前後の若手が参加に興味を示したという。
ところが、二弁が資金や経営ノウハウなどを支える民間会社の事業参加を問題視。弁護士以外の法律事務の取り扱いや周旋を認めない弁護士法72条などを盾に、今月4日には書面で「計画の自制を促す」と“警告”する事態になった。
外岡弁護士と三上氏は二弁に理解を求める一方、「『バーが社会に不利益か』という視点で、実際に開店して直接訴える方法も考えたい」と話している。 (共同通信社 2009/12/12)
弁護士バー、のめません。 記事の見出しが、ニクイぐらいウマイですねぇ。
「人権派」「革新」のイメージが強い第二東京弁護士会ですら、この新しい試みに物言いを付けるということですから、問題が大きいのでしょう。
いわゆる「非弁提携」というヤツで、弁護士が弁護士以外の人と業務提携しちゃいけないという決まりがあります。
まぁ、要は他業種と提携しなければいいわけで、弁護士だけでバーを経営してみせれば、たぶん法律上の問題はクリアなんでしょうが……
現実的には、飲食業のプロのサポートを得たいところでしょう。
◆ 弁護士法 第27条(非弁護士との提携の禁止)
弁護士は、第72条乃至第74条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
◆ 弁護士法 第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
◆ 弁護士法 第77条(非弁護士との提携等の罪)
次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。
一 第27条(中略)の規定に違反した者
三 第72条の規定に違反した者
こうした条文が問題になるのは、ほとんど、揉め事を見つけてくるのが巧い「事件屋」と、法律は得意だが営業活動が苦手な売れない弁護士がタッグを組むケースです。
依頼人の足元を見て、ワケのわからない名目で金銭をむしり取り、食い物にする、その程度がひどい場合には、刑事事件として立件されることもあります。
ただ、今回のように、客を集める飲食業と弁護士が組むというのは……
もちろん、形式的には弁護士法に抵触するように見えますが、依頼人が食い物にされるようなリスクと直結するわけではありません。
新しい発想で、依頼人を集める仕掛けを作ろうとしている若手に、得体の知れない恐怖を抱く、殿様商売のベテラン弁護士が、嫌がらせでいちゃもんをつけている可能性も否定できませんね。
バーという業態を介すれば、一般のお客さんにとっては、弁護士との敷居が低くなり、気軽に相談できる雰囲気が作れそうな気がします。
まぁ、うまく行きそうな気がするだけで、実際にはどうなんでしょうか。
一度やってみないとわかりませんよね。
そう、一回やらせてみればいいんです。
話題性でマスメディアの目を惹き、最初は大勢のお客さんを集めるでしょうが、その勢いが継続するかどうかは、今後の「口コミ」次第だと思います。
入口であるバーがオシャレでも、肝心の事件処理がフニャフニャだと台無しですからね。 本人も重々わかっていると思いますが。
いくら酒に酔っているとはいえ、依頼に結びつくかどうか皮算用しながら話を聞いている弁護士バーテンダーに、腹を割って告白してくれる客が本当にいるのかどうか。
1000人中999人の客が、普通のバーと同じように利用するのを承知の上で、残り1人にすべてを賭ける! ぐらいの覚悟が必要かもしれません。
まぁ、弁護士バーがうまくいって、弁護士会など煩さ型のOKが出たら、マネする弁護士がたくさん出てくるのは、想像に難くありません。
バーに限らず、対話が重視される接客業が、弁護士業と組むってコトだったら、いろいろと応用も利きそうですしね。
弁護士居酒屋、弁護士占い、弁護士キャバクラ、弁護士デリヘ……
冗談はさておき、この外岡潤弁護士。 巣鴨に「法律事務所 おかげさま」というネーミングの事務所を開設しているそうです。
自己紹介の文章が、やたらめったら謙虚なのが気になります。 世の中には「慇懃無礼」という言葉もあることですし、
まぁ、そんなコトより、
いずれ巣鴨地蔵通り商店街に、明治大正時代の古民家を移築・再生して、土間と囲炉裏のあるバリアフリーの事務所を作るのが夢です! ( http://okagesama.jp/access.html )
ぬぉぉ、素晴らしい! 外岡弁護士!
フワフワした、地に足の付いてない弁護士バーなんぞより、こっちの企画を真っ先に実現させるべきでは?
「介護・福祉系」の弁護士を謳うのなら。
私が司法浪人時代に温めていた「巣鴨とげぬき法律事務所」構想に非常に近く、とても期待が持てます。
深刻な法律トラブルに巻き込まれる可能性が高いのは、オシャレバーに通うような年齢層の人々より、貯蓄はあるけど孤独暮らしで身寄りのないお年寄りのほうだと思うのです。
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コメント
弁護士に相談したい場合、弁護士会の法律相談センターに行くか、イエローページに載っている法律事務所に電話をかけまくりアポイントをとりやっと相談できる現状において弁護士バーは画期的ですね。私としては、腰の低くて小回りの利く先生が増えてほしいですね。弁護士も接客業、サービス業なのですから。
投稿: きたひろさとう | 2010年1月 2日 (土) 06:46
弁護士さんに相談するのは、けっこう勇気がいりますよね。
相手がどういった方かわからず、どこまで踏み込んで話をしてよいものかと悩む場面もあるかと思います。
こういった試みは、その場で相談をするというよりは、弁護士さんを知るよい機会(場所)だと思います。
ふだんから話のできる弁護士さんがいれば、いざというときに信頼して相談することができます。
しかし反面、こういった事例が増えてくれば、悪用するひとも出てくるのが人の世です。
ぜひ、明確なルールを作って運営していただきたいと思います。
投稿: | 2010年1月 2日 (土) 18:22
>きたひろさとう さん
そう、弁護士はサービス業なのですが、誰もが改行を許されるサービス業ではないので、裁判所の近くに事務所を構えて客を待つ「殿様商売」でも問題なかったのでしょうね。
> さま
テレビ番組のおかげで、弁護士という職業がだいぶ身近になっている印象ですが、実際に相談をする段になると、まだまだ敷居が高いのが現状ですかね。
あえて「弁護士バー」というギリギリの線を狙わずとも、「非弁提携」というルールの範囲内で、まずは工夫を凝らすこともできるかなと思いますけどね。
チャレンジ精神には拍手を送りたいです。
投稿: みそしる | 2010年1月 6日 (水) 20:05
少し遅いコメントで…すいません。
私自身も、弁護士の敷居を下げるべきだと考えていますが、この件は、みそしるさん同様、ちっと違うだろうと考えています。弁護士として本当に顧客の立場に立とうとする意欲があるのなら、もう少し違ったマーケティング(営業)があると思います。
真剣に悩んでいる人や、生活に貧窮している人が、バーに行きますか?お金持ちしか行かないでしょう。このマーケティング(営業)には反対です。
敷居を下げるという観点では、もう少し違った手法を取るべきだと思います。
投稿: ある弁理士 | 2010年1月13日 (水) 00:02
>ある弁理士さま
どうもありがとうございます。
業務提携先が、オシャレなバーであるべき必然性や、「結局バーテンダーの真似事をやってみたいだけじゃないのか?」という疑問に、この弁護士さんが明確に答えられれば、うまくいきそうな気もしますが、どうなんでしょうか。
お金持ちしかバーに行かないかどうかはともかく(お金持ちも離婚や借金などの問題で真剣に悩んでいる場合があるでしょうし……)、「なぜ、あえてバーなのか?」と、今一度、自問自答してみる価値はあるのかな、と思います。
投稿: みそしる | 2010年1月14日 (木) 05:30