芸能人“一日警察署長”は、犯人を逮捕できるか?
おかげさまで、黄色い表紙の『条例集』(幻冬舎新書)のプロモーションが、じわじわと加速中です。
12月22日(火)12:10~
「寺島尚正ラジオパンチ!」(文化放送AM1134)出演予定
12月24日(木)~
『週刊プレイボーイ』「Book or Die」インタビュー掲載予定
12月27日(日)11:00ごろ~
「安住紳一郎の日曜天国」(TBSラジオAM954)出演予定 (通算2回目)
1月27日(水)16:30ごろ~
「玉川美沙たまなび」(文化放送AM1134)出演予定 (通算3回目)
また、明日は「ソフトバンク ビジネス+IT」さまのインタビュー取材をお受けいたします。
つきましては、全国5人のナガミネファンの皆さん、チェックしていただきたいと思います。
なお、ラジオは主に関東圏限定なので、それ以外の地方の方はすみません。
さて、交通安全のキャンペーン期間などに、警察活動のPRのため、人気芸能人や有名人が、「一日警察署長」を務めることがあります。
ザッと探してみたところ、最近は、以下のような有名人が一日警察署長を務めています。
9月18日 埼玉・浦和署 菊川怜さん (タレント)
9月22日 東京・麻布署 米倉涼子さん (女優)
9月26日 山梨・富士吉田署 瀬古利彦さん(マラソン解説者)
10月10日 京都・宇治署 安田美沙子さん(タレント)
10月11日 三重・名張市 「Wエンジン」(お笑いコンビ)
10月18日 東京・東村山署 板野友美さん(AKB48)
12月1日 福岡・粕屋署 高見盛関(大相撲)
12月1日 宮城・仙台中央署 岩隈久志(プロ野球投手)
もちろん、警察官の採用試験も研修も受けていない素人が、いきなり署長職をマトモに務められるわけもありません。
警察署長という肩書きは、どうしても形だけのものだということになりそうです。
じゃあ、そもそも、警察署長とは何なのか?
◆ 警察法 第53条(警察署等)
1 都道府県の区域を分ち、各地域を管轄する警察署を置く。
2 警察署に、署長を置く。
3 警察署長は、警視総監、警察本部長、方面本部長又は市警察部長の指揮監督を受け、その管轄区域内における警察の事務を処理し、所属の警察職員を指揮監督する。[以下略]
……これでは抽象的すぎて、よくわかりませんので、法務省の法令データ提供システム
で、警察署長の一般的な仕事内容について、具体的にザックリ調べてみました。
・ 交番などに届けられた落とし物の管理責任者
・ 警察署にある留置場の管理責任者
・ 路上駐車の特別許可
・ 歩行者天国など、短期間の交通規制
・ クルマの車庫証明交付
・ ストーカー寸前のつきまとい行為をしている者への警告
……こんな感じみたいですね。管理や許可関連が多いみたいです。
では、一日警察署長が、何か犯罪を犯したような人を見つけたとき、逮捕することはできるのでしょうか?
芸能人の一日警察署長には、立派な制服を着ていますが、もちろん正式な警察官としての資格がありませんよね。
なので、法的に問題になります。
条文を見てみましょうか。
◆ 刑事訴訟法 第199条(※通常逮捕)
1 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。
◆ 刑事訴訟法 第210条(※緊急逮捕)
1 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
うーむ…… 「司法警察職員は」という条件が付いていますね。
ちなみに通常逮捕の場合、裁判所へ逮捕状を請求する権限を持つのは「警部以上」の警察官に限られています。
東京都の場合は、コチラ↓。(他の道府県でも同じような規則があります)
◆ 警視庁 司法警察員等の指定に関する規則 第3条(逮捕状、没収保全等の請求をすることができる司法警察員)
警視庁に勤務する警察官のうち、刑事訴訟法第199条第2項の規定により逮捕状を請求することができる司法警察員並びに麻薬特例法第19条第3項及び組織的犯罪処罰法第23条第1項の規定により没収保全等を請求することができる司法警察員は、次に掲げる者とする。
(1) 警視総監
(2) 副総監
(3) 交通部、地域部(自動車警ら隊及び鉄道警察隊並びに遊撃特別警ら隊に限る。)、公安部、刑事部、生活安全部及び組織犯罪対策部に勤務する警部以上の階級にある警察官
(4) 警察署に勤務する警部以上の階級にある警察官
一日警察署長にも、「警部」とか、場合によっては、さらに上の「警視」「警視正」などの階級が付されることがあります。
が、やはり逮捕状の請求など、具体的な職務まではできない、儀礼的・おもてなし的な意味合いが強いと思われます。
やはり、悪い人を見つけても、芸能人の一日警察署長は、自分で逮捕することはできないのでしょうか??
種明かしをすると、たとえ芸能人でも、現行犯逮捕なら可能です。
一日警察署長だけでなく、誰にでも(読者のあなたにも)許されている逮捕手続きだからです。
◆ 刑事訴訟法 第213条
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
今まさに犯罪を犯して逃げようとしている者を捕まえて、社会正義に貢献すると、警察署から表彰を受けることもありますよね。
ただし、現行犯人から反撃されるかもしれませんので、くれぐれもお気を付けて。
無理に現行犯逮捕するよりも、捜査のプロである警察を呼んだほうがいい場面も多いです。
(以上、メールマガジン「ウィークリー?ながみね」のネタを、一部加筆修正してお送りしました。 手抜きと言わないで)
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コメント
おはようございます。随分ご無沙汰しておりました。益々のご活躍ですね。
以前、都内の某駅構内で、警察官が職務質問したとみられる男性と揉み合っているのを加勢したことがあります。
警察官はご年配の方が一人で、帽子が飛ばされており、分が悪い状況でした。本能的に近づき、警察官に問いかけると、「110番して下さい!」と、、、必死に男性を取り押さえようとしておられましたので、私も相手の腕を掴み、動きを封じ込めるとともに、携帯で110番しました。
ほどなく、数名の警察官が駆け寄ってくるや否や、逆に腕を掴まれたのは私の方でした。
直ぐに解放されましたが、男性は、数名の警察官に取り押さえられました。
警察官の職務の大変さを垣間見る出来事でした。問題行動も多く報道される職業の方ですが、日本の治安維持のため頑張って欲しいものです。
投稿: にしざわ | 2009年12月18日 (金) 08:33
コメントありがとうございます。
その男は酔っぱらっていて、気が大きくなって警官に突っかかっていったのかもしれませんね。
公務執行妨害の裁判を観ていると、そういうシチュエーションが多いのですが、いかがでしょう。
今の世の中、相手が何を持っていて何してくるかわかりませんので、にしざわさんの勇気ある行動に敬服します。
投稿: みそしる | 2009年12月18日 (金) 21:37