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2010年3月30日 (火)

理屈っぽいと、裁判員になれない?

>>> 「理屈っぽそうな人除外」 弁護人、5人不選任請求

 昨年7月、ゴム袋に入れた覚せい剤をのみ込み営利目的で密輸したとして、覚せい剤取締法違反などの罪に問われ、裁判員裁判となった運転手柏倉進(かしわくら・すすむ)被告(40)の弁護人が、裁判員の選任手続きで理由を示さずに特定の候補者5人を選ばないよう東京地裁に請求し、認められていたことが19日、分かった。
 弁護人が明らかにした。選任手続きは17日で、弁護人は「候補者の雰囲気や外見から判断し、理屈っぽいような人を外し、情に厚そうな人は残した」と話している。 [後略]  (共同通信 2010/03/19)



 

◆ 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律 第36条(理由を示さない不選任の請求)
1 検察官及び被告人は、裁判員候補者について、それぞれ、4人[中略]を限度として理由を示さずに不選任の決定の請求(以下「理由を示さない不選任の請求」という。)をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、補充裁判員を置くときは、検察官及び被告人が理由を示さない不選任の請求をすることができる員数は、それぞれ、同項の員数にその選任すべき補充裁判員の員数が1人又は2人のときは1人、3人又は4人のときは2人、5人又は6人のときは3人を加えた員数とする。
3 理由を示さない不選任の請求があったときは、裁判所は、当該理由を示さない不選任の請求に係る裁判員候補者について不選任の決定をする。
4 刑事訴訟法第21条第2項の規定は、理由を示さない不選任の請求について準用する。

 
 
 

 現在の裁判員裁判では、裁判員6名に加えて補充裁判員を1~2人任命する運用が多いでしょうから、裁判員法36条2項で、理由なし不選任を弁護人・検察官で5人ずつ行うことができます。

 このニュースの件でも、同じく、裁判員の候補者の中からランダムに選ぶ前に、弁護人と検察官で最大5人ずつ、いわば門前払いで外すことができることになっています。

 「理由なし不選任なのに、理由を発表してどないすんねん??」と思うわけですが、導入されたばかりの裁判員制度に対する理解を求めるため、透明化を図ろうとしているんでしょうかね。

 それにしても、理由なし不選任を、わずかな時間内に見た目やフィーリングで選別するしかないという、まるで初対面同士の集団婚活パーティーのような現状では、こうした情報公開はかえって逆効果に繋がるような気も。

 パッと見で「理屈っぽそう」「情に厚そう」と決めつけて、ムリヤリ選別するぐらいなら、初めから理由なし不選任の権利を放棄したほうがいいのでは? 弁護人さん。

 情に厚い人を残した結果、求刑:懲役8年、罰金300万円に対し……

 判決:懲役6年、罰金150万円となったそうですが、

 これは、刑の減軽を図りたい弁護方針にとって、功を奏したのかどうか……?

 放っておいても大差ない結果になったんじゃないの?

 なかなか因果関係の判断は微妙なところです。

 

 せっかく仕事や家事を休んで裁判所までやってきた候補者を、雰囲気やフィーリングを根拠に帰らせる「理由なし不選任」については、いろいろと懸念されている部分があるようです。

 もちろん、裁判の公平性を保つために、有効な使い方をすることはできます。

 たとえば、なんらかの宗教の教祖が被告人になっているとして、同宗教の信者が裁判員を務めることは、さすがに問題です。 (もっとも、その宗教独特の服装や印を付けていないと、見た目で区別できないでしょうが)

 裁判員を務めるにあたって、いろいろと介助や通訳が必要となると想像される身体障害者などについて、「作業負担を減らすため」あらかじめ検事が候補から外してしまうのではないか? など、心配される材料も尽きません。

 大阪では実際に、「富裕層っぽい候補者は、温情が得られないと考えて不選任にした」と発表した弁護人もいるようですし……

 ものすごい偏見です。 そんなもん、人によるわ。

 どこまで法律家の自律的裁量に任せるべきか、そろそろ考える時期に来ているのかもしれませんよ。

 理屈っぽそうな候補者を弁護人が外した後、それに対抗して、被告人に同情しそうな候補者を検察官が外していたら、制度の存在意義がようわからんようになりますし。

 

 理由なし不選任については、欧米の陪審制でも、同様の仕組みがあるようです。

 ハリウッド映画の法廷モノで、たまに取り上げられる「陪審コーディネーター」という職業。 陪審員の候補者の出身地や人種、家族構成や趣味嗜好などのデータを徹底的に調べあげて、被告人にとって有利な陣営で固める裏工作をするようですが、

 映画の話なので、どこまで演出が含まれているか定かではありません。

 ただ、そこは訴訟大国。 実際に陪審コーディネーターみたいな人が、かなり踏み込んだところまで噛んでいて、陪審評議に影響を及ぼしている可能性は否定できません。

 
 

 そういえば昨日、建設中の新東京タワー(東京スカイツリー)が、日本一の高さに達したと報道されました。

 今日、たまたま新橋方面で仕事があったので、ビルの谷間にかろうじて顔を出す、元祖東京タワーを撮影。

20100318134251

 

 まるで、縦横無尽に走る電線に、窮屈そうに絡まっているがごとし。

 まぁ、撮影のやり方次第なのですが。

 1958年生まれ、51歳の東京タワー。

 ちょっぴり哀愁を感じます。

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