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2010年5月24日 (月)

松本零士『銀河鉄道999』作中の、架空法律

 漫画・ゲームや小説の中に登場する“架空の法律”を分析して、

 現実の法と比較したり、

 法制度を間接的に学べたり、

 あるいは“架空の法律”の全貌を勝手に想像する本

  という、ざっくりした企画を先日、某出版社の編集者にご相談したところ……

 「その企画は、ウチでは難しいですけど、そういう法律、『銀河鉄道999』でも出てきますよね?」と、ひとこと。

 すみません、あんまり存じ上げない、との返答をすると、

 「今度、コピーをお送りします」

 とのこと。

 仕事に繋がらないのに、ホントかね?

 あんまり期待しないで待っていましたら、なんと、その発言にウソはありませんでした。

 その編集の方、『銀河鉄道999』劇画の写しをたくさん、宅配便で送ってきてくださいましたよ。

 素晴らしいですねぇ。 ありがとうございます。

 いつか、仕事をご一緒してみたいもんです。(ボソッ)

 
 

■ 宇宙鉄道運行規則(銀河鉄道規則)

 

 『銀河鉄道999』の作中では、「宇宙鉄道の運行規則」というものが存在します。

 その第17条で、

 いったん宇宙鉄道に乗った者は、途中下車できない。

 また、列車が引き返すことも許されない。

 と定められているそうです。 (『出発(たびだち)のバラード』より)

 

 また、銀河超特急999号が盗賊に乗っ取られ、その盗賊が軌道を変えるよう求めたのですが、

 機関車の制御コンピュータは、「軌道ノヘンコウハデキマセン!! 銀河鉄道キソク第27条デ!」と返答し、拒否しました。(『大盗賊アンタレス』より)

 なぜ途中下車できないのか、どうして引き返せないのか、その立法趣旨は不明ですし、「銀河鉄道キソク」と「宇宙鉄道運行規則」が同じものなのかどうかも作中からは確認できませんが、

 物語世界に緊張感を与えるのに、架空のルール設定が一役買っているといえそうです。

 

 

■ 完全睡眠法

 

 銀河鉄道が停車した「夜のない街」という駅。

 その街では、夜間に外出してうろつきまわると、「完全睡眠法違反」として取り締まりを受けます。

 夜7時ごろに、人気のない道を歩いていたメーテルを見つけて、警察は「抵抗すれば射殺する!! 指示に従わない場合も射殺する!!」と、かなりムチャで物騒な警告をしています。

 なぜ夜間外出が許されないのか。

 それは街の郊外にある、光り輝く湖に棲む巨大飛行生物「ヘローン」を守るため。

 ヘローンは、人間に危害を加えない、とても恥ずかしがり屋の生物だそうで、真夜中にだけ空を飛び、朝方にまた湖に戻るのです。

 「人間とヘローンが、昼と夜を分け合う」という立法趣旨により、夜間はヘローンの行動が優先される模様です。

 ちなみに、メーテルの発言によると「ヘローン飛行妨害罪」というのもあるそう。

 まぁ、いくら飛行中のヘローンが、人間に姿を見られたくないといっても、夜間外出しただけで警察に射殺されてしまうとは極端ですけど、

 一方で、人間の都合だけを優先しない「環境法」の理念を先取りしている話といえそうです。 完全睡眠法。

  

■ 楽国法

 

  『銀河鉄道999』作中世界において、土星の衛星タイタンでは、個人の自由が最優先され、反対に個人の自由を妨げると罪になるという「楽国法」が定められています。 (『タイタンの眠れる戦士』より)

 もともとは、勇気と誠実さにあふれる人々がタイタンに移住し、この星を理想郷として作り上げたようなのですが、いまや人殺しも自由。

 「楽園に住む人間の心は、だんだんすさんで、あれはてていくみたいだね」と、鉄郎は悟ります。

 
 

■ 「花の都」の法律

 

 到着する前から、花だらけの素敵な星だと、鉄郎が喜んだ「花の都」駅。

 この惑星を覆っている花は、その昔、誰かが持ちこんだ外来植物であり、見た目はキレイだが、毒の花粉を持っているというのです。

 星の住人によると「人口が100年間で80%も減った」といいます。

 しかし、この星の法律で「花に手をかけたりしたら死刑」、「もっと強い天敵になる花を持ちこむことも禁止」。

 ある家族は苦渋の決断をし、大量の毒花に一斉に火を放ち、星の住人たちの犠牲として、みずから命を絶ちます。

 「宇宙の人柱ね……」とつぶやくメーテル。

 

 外来生物による環境危機の問題だけでなく、「悪法も法として遵守すべきか?」という哲学的な問題まで突きつける。

 表現者としての松本零士先生、あなどれません。

 でも、提訴はお手柔らかに。

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2010年5月22日 (土)

元最高裁判事! 福田博弁護士の講演を聴きに渋谷へ

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 渋谷駅前の歩道橋の上から、こんな感じの光景が見えます。

 (ケータイのカメラでは、これ以上寄ると、デジタルズームに切り替わって、絵が思いっきりボヤけちゃいます。 はよ一眼レフ買えよって話ですが)

 黄色く光る看板が見えますね。

 司法試験界の元祖カリスマ講師にして、自称「憲法伝道師」、伊藤真さんが、大手資格予備校LECを飛び出し、今から15年前にゼロから立ち上げた『伊藤塾(旧:伊藤真の司法試験塾)』の総本山です。

 
 

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 私は司法試験で浪人して、博多にいた頃、この『伊藤塾』ってトコの「在宅生(通信教育)」でした。

 まだDVDが珍しかった1997年6月から、8ミリビデオの映像教材で六法を一から学び直しました(その次の年から、DVD教材になったみたいですが)。

 ホント、憲法だけで入門編と『応用マスター』『論文マスター』『択一マスター』などの基本講座、そのほか、いろんな個別講座などなどありますし、

 六法合わせたら、全部で段ボール大小50箱ぐらいテープが送られてきたんじゃないですかね。

 それから7年が経ち、

 司法試験合格を諦めて、大量に溜まった8ミリビデオテープを、この本部あてに送り返す梱包作業をしているとき、ラベルに書かれた『憲法』や『民事訴訟法』『破産法』などの文字を見ながら、いろんなことを思い出してしまいまして、その悔しさったらなかったですが、

 ……そんなつまらん話はさておき、

 この「伊藤塾」渋谷総本山の一室で、外交官から最高裁判事に就任し、現在は「西村あさひ法律事務所」で弁護士として稼働する、福田博さんの講演が実施されました。

 この講演会は、開塾以来続いている「明日の法律家講座」ってヤツで、本来は志のある塾生に向けられた企画なのですが、われわれ一般の人間も自由に観覧できることになっています。

 受付の女性に、「一般の者ですが、元塾生です」なんて、余計なことを告げ、多くの大学生や司法浪人が入り交じる、懐かしい雰囲気の中へ溶け込みます。

 

 福田さん、外交官時代は『日本の国益』を最重要視してこられたわけですが、だからといって保守的な考え方だと単純につながるわけでもなく。

 最終学歴は、なんてったって、米国イェール大学ロースクール修了ですしねぇ。 キッチリとした本場の“リーガル・マインド”ってやつをお持ち。

 最高裁時代は、国政選挙の「一票の格差」問題で、在任中に一貫して憲法違反の個別意見を出し続けた方としても知られます。

 最高裁の法廷以外の場所で、(元)最高裁判事の方をお見かけするのは初めてなのですが、福田先生は終了予定時刻より30分以上も押しながらも、熱のこもった講演をなさいました。

 テーマはでっかく『日本の民主主義』について。

 そのお言葉の中で、私の心に残ったことを、備忘録として箇条書きにしてみます。

 

■ 「一票の格差」問題について

・ 民主主義の基本原則は多数決。 しかし、まずは投票価値が平等でないと、何が多数かわからない。

・ 「衆議院は3倍まで、参議院は6倍までOK」という、最高裁の「格差論」は、まず選挙区割りありきの議論であり滑稽。 他国では、まず「投票価値の平等」から考えるので、たとえば米国では「1.08倍」以上の格差は認められない。

・ 現代の中国は共産党独裁だが、人口13億に対し、共産党員は7600万。 投票価値の格差を算出すると、約12倍。 日本の格差論を用いれば、共産党独裁だって政府の裁量権の範囲内ということで決着してしまわないか。

・ 都道府県の境界線だって、絶対のものではない。 法律上の手続きで変更できる。

・ 先日、日本国の借金が882兆円に達したというニュースが報じられた。 直接の法律論ではないが、これも投票価値の歪みが遠因にあるのではないか。

・ 投票価値の平等が損なわれたなら、司法は直ちに正すべきだ。 そのうえで選ばれた政治家が示す方針については、司法は一歩引いて謙抑的であるべきだ。

 

■ 矢口長官について

・ 第11代長官の矢口洪一さんは『(司法は)今まで二流の官庁だったものが、急速にそんな権限(※違憲審査権のこと)をもらっても、できやしないです』と発言したことがある。

・ また、『日本司法の違憲審査権は、謙抑的というより臆病なのだ』と発言したこともある。

 

■ 政治一般について

・ 特定の優秀なリーダー・カリスマに頼るのは、民主主義・代表民主制の意図するところではない。 しかし、カリスマ的リーダーの出現で、国が一気に発展するキッカケとはなりうる(マレーシア・マハティーニ首相の例など)。

・ 民主主義と平和が直結するかどうかわからないが、民主主義国同士では、武力に頼る戦争は起こりにくいのは確か。 皆で民主的な議論で平和的解決を目指すからだろう。

 

■ 外交官時代の経験について

・ 他国の外交官から『日本は一流の民主主義国ではない』といわれ、ずっと頭に残っている。

・ 米国女性初の連邦最高裁判事、オコーナーさんと、パーティでご挨拶したことがある。 私は知的な雰囲気の女性が好きなので(笑)、どんな職業なのか尋ねてみると「最高裁に勤めている」と。 何の仕事か尋ねると「判事」だというので、失礼なことをしてしまった(笑)。 オコーナー判事が京都で講演したとき、東京にいる私の所へも挨拶しに来てくれて感激した。

・ 学生時代はほとんど講義に出ず、友人としゃべってばかりいた。 しかし、米ロースクールでは、「よくこれだけ人間を勉強させるな」と思うぐらい勉強させられた。 人間にはそんな時期も必要。

・ 日本人は識字率が高いだけに、外国の本を読んで、何かわかった気になる風潮がある。 できるだけ外国に足を運ぶ機会を見いだして欲しい。

 

■ 最高裁時代の経験について

・ 最高裁判事15人は、たしかに多いが、事件数も多い。 年間2万2千件ほど。

・ そのうち、何を言いたいのか主張がよくわからない上告を『雑件』という。 言葉は悪いが事実(笑)。 これが年間5千件ぐらいある。

・ 10年もやっていたので、最後は半ば惰性でやっていたかもしれないと反省しているが、判事同士で話す機会をもてたのは有意義だった。 最高裁には非常に優秀な人々が揃っている。

・ 判決を出した後に、自分の考えが変わったということは無い。 一部、少数意見を書いたのは納得いっていないからだが(笑)、大多数の全員一致判決は、すべて納得して出している。

・ イスラエルの最高裁長官(元?)、バラク氏と話したことがある。 彼の国の憲法には『イスラエルはユダヤ人国家であり民主主義国家』だと書いてあるが、バラク長官は民主主義を貫き、パレスチナ人など外国人も助ける判決を書き続けたので、多くのユダヤ人から憎まれており、警護が強化されているらしい。

 

■ 司法・法律一般について

・ 最高裁に入りたての頃、「外交官出身の裁判官が、いい裁判官とは限らない」と、きついことを言われたことがあった(笑)。 私に言わせれば、純粋培養の裁判官が必ずしもいい裁判官とは限らない。 いろんな経験を積んだ方がいい。

・ 「視野は広く、発想は柔軟に」。 法律を勉強していると、ややもすると視野が狭くなりがちなので、意識して視野を広く持って欲しい。


■ 私の質問

Q 「最高裁判事は“多忙”だといわれますが、何が一番大変でしたか」

A 「そりゃあ、記録を読むことですね(会場笑) 平均すると1日に8件ぐらい読んだ計算になります。 速読術ってのは役に立ちますね。 これから法律家を目指す人も、スピードを上げて読んで、自分の意見をつくってほしいと思います」

 
 
 

 お知らせのコーナー 

 ● 次の木曜日(27日) 17時ごろから、TBSラジオ『荒川強啓デイキャッチ』に生出演します。 今年早くも3回目のオファーで、ありがたく思います。 しゃべるテーマは「ポエムな地方条例」について。

 ● すでに収録済みなのですが、このたび、ラジオ番組『ベストセラーズチャンネル』に出演させていただく運びとなりました。 今月末、おもに全国のミニFM局で流されます。 ネット配信は6月末ごろとのこと。
 おかげさまで「そういえば自分は昔、世間でベストセラーと呼ばれる本を書いたんだっけ?」と、遠のいた記憶を呼び起こす、いいキッカケとなりました(苦笑)。 ありがたいことに、ちまたで「説諭ブーム」を巻き起こし? 3年前にたくさんの方が読んでくださいましたよね。 今となってはいい想い出です。
 かといって、このまま一発屋で終わる気は微塵も無いけど。

  そんな拙著『裁判官の爆笑お言葉集』ですが、このたび、株式会社オトバンクのご協力で、内容の一部始終が朗読され、まもなくオーディオブック(音声データ)となります。
 オーディオブックは、視覚に障害がある方だけのモノではありませんよ。 この際、通勤電車の中で、裁判官の感動的なお言葉を聴き、泣き濡れてください、皆さん。
 なにしろ女性の読者を中心に「爆笑お言葉集を読んで、泣いちゃいました!」と、著者を戸惑わせるご感想を全国各地から頂戴した本ですし…。
 「オーディオブックだけの特典音声を入れたい」と、オトバンクさんからご提案を受けましたので、『爆笑お言葉集』を世に問うて以降の後日談も入る予定です。 これも麹町で収録済み。

 ● 「笑っていいとも!」(フジテレビ)の月曜日、『せまいハカセの発表会』コーナーに生出演させていただく(かも?)というオファーを頂戴しました。 久しぶりのテレビか?と密かに気を張ってましたが、先月にコーナー自体が終了して、残念ながら立ち消えとなりました。

 ● プレジデント誌の『世のなか法律塾』コーナー、月2回の連載を担当して、もうすぐ3年目に突入します。
 2月の明石遠征に続き、今度は大阪出張かもしれません。 インタビュー取材を申し込む弁護士さんのアポ次第ですが。
 ま、もし大阪出張となれば、スター裁判官ぞろいの大阪地裁傍聴を、ついでに決行するまでなので、ノープロブレム。

 ● 来月号の『会社法務A2Z』(第一法規)より、新連載『おもしLAW(ロー)ニュースで、世界を覗こう!』が始まります。 「お堅い法律記事の中で、のんびり息抜きとして読めるような企画を」とのことで、ありがたいことに、編集部の方が私に白羽の矢を立ててくださいました。 グサッ。(←白羽の矢が、私の頭頂部に刺さった音)
 記念すべき第1回は、インド発『結婚式で泥酔した新郎の代わりに、その弟が新婦と結婚』という珍ニュースから、インドの結婚事情やインド憲法の内容、さらにはカースト制度にまで迫る、深いのか軽いのかよくわからない記事になっています。
 挿し絵イラストが巧いですし、ページレイアウトも明るい雰囲気なので、イラストレーターやデザイナーの方々にも感謝です。
 今まさに、第3回の原稿に着手しています。

 ● 今売りの月刊「サイゾー」47ページにて、福岡の暴力団追放条例についてペラペラしゃべらせていただいた内容をまとめたインタビュー記事を掲載してくださっています。

 ● 今売りの「冤罪ファイル」110ページで、「特急あずさ冤罪事件」の再審開始請求が始まらない、その知られざる理由について、冤罪被害者ご本人や弁護団にお話を伺い、記事を書いています。 ホントは4ページの特集だったのですが、オトナの事情がいろいろいろいろありまして(笑)、1ページ構成となっています。 続きは次号に持ち越し。

 ● 今月27日(木曜)発売、人気漫才コンビ「キングコング」西野亮廣さんの小説『グッド・コマーシャル』ですが、民家に立てこもり住人を人質にとって、身代金を要求する刑事事件がテーマということもあり、私めが担当編集の方を通じて、法律的なアドバイスを2,3させていただきました。 西野さんは感激なさったそうで、あとがきに私の氏名を入れてくださってます。
 シンプルな物語なのですが、いろいろと計算されつくされていて、一方で登場人物がことごとく愛すべきマヌケキャラで面白いです。 たとえを多用し、元気になれる読後感が、芸人さんの書いた小説らしさでしょうね。

  早稲田法学部の学生で、「法律フリーペーパー」を創刊しようと計画する有志がいることを、知人から聞きつけまして。 「法学部の学生に向けて、何かメッセージになる文章を書いてほしい」と、彼に頼まれたので、先ごろ寄稿しました。 さすがに原稿料をもらう気にはなりませんでした。

 ● 「週刊新潮」で、裁判員制度1周年記念の企画が水面下で進行中です。 詳細は言えません。 誰かにマネされたらイヤなので。
 つまり、思いつきさえすれば、誰にでも書ける企画だってコトですが……。 今のところ、7月下旬ごろの発売号に掲載予定。

 ● 6月1日のNHK総合『爆笑問題のニッポンの教養』(PM10:55~)、テーマは「取調室の心理学」。 まさか、あの浜田寿美男先生?

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2010年5月15日 (土)

ベテラン裁判長、日替わりの苛立ち

>>> 京都地裁:裁判長怒る 「居眠りする人は出ていって」

 京都地裁で11日にあった点滴水混入事件の裁判員裁判で、難解な医学用語の多用のためか多数の傍聴者らが居眠りを始め、怒った裁判長が“水入り” を宣言した上、「居眠りしたい人は出ていって」とくぎを刺す珍事があった。地裁は再開後、廷内に監視役とみられる職員を配置した。
(※中略)
 昼休みを挟んで午後1時10分に始まった公判で、検察官が死亡した四女の投薬状況や病理鑑定について説明。「β-Dグルカンはいわばカビの残がい」「直接の死因は両側性多発性肺動脈内血栓塞栓(そくせん)症」などの専門用語を連発した。すると約40分後、増田耕兒裁判長が「10分間休廷します」と急に話を遮り、「あちこち居眠りしている」とやや声を荒げた。

 再開後、検察官は「基礎資料の説明でどうしても単調になってしまう。もう少しご容赦を」と釈明。関係者席と傍聴席の間にある扉付近には休廷前までいなかった地裁職員が陣取り、傍聴席の様子に目を光らせた。

 一方、裁判員6人は午後4時半の閉廷まで目をしっかり開けて聞いていた。しかし、四女の主治医への質問はなく、検察側、弁護側、裁判官が病状の変化を詳細に尋ねた。(毎日新聞 2010年5月11日)


 

 入院中の幼い娘3人に打たれた点滴の中に、水道水(スポーツドリンクも混ぜて腐らせたとの見方も)を混入して、1人死亡、2人に傷害を負わせた疑いで起訴された母親の裁判。

 わざと他人を死亡させた「傷害致死」の疑いがある刑事事件であるため、裁判員が召集されるとなりました。

 事件の一部始終を把握するまでのプロセスの中で、医学用語が続出して難解なこともあって、通常は2~3日で終わるところ、本件は9日間という長期日程が組まれ、さらに裁判員にもわかりやすい書き下ろしの医学用語集を配るなどして、特別な対応をしているようです。

 さすがに、平日9日間を裁判に費やせる立場の一般人は多くなく、裁判員候補者のうち、60%以上について辞退が認められたそうです。

 さらに、長丁場の裁判の中で、裁判員への負担が重くなることが予想され、その身に何が起こるかわからないため、補充裁判員(控え)を4人も任命しました。

 ともかく、異例ずくめの裁判員裁判。

 増田裁判長も、集中力を切らさないよう、真剣に審理に臨んでいたのでしょう。裁判長自身も昼下がりで眠く、意識が飛ばないように必死で耐えていたのかもしれません。

 が、遠慮なくグースカ寝ている傍聴人たちをチラホラ眼下にみて、思わずイラッとしたのでしょう。

 私も正直、法廷でメチャクチャ眠くなることはありますが、どうしても我慢できない場合は、自発的に法廷から出て行きます。 傍聴席で寝ていることを裁判長や書記官から注意されるのは恥ずかしいですから。

 洗面台で顔を洗ったり、東京・霞が関の合同庁舎なら、地下にファミリーマートがありますから、そこで眠眠打破を買って飲んで、もう一度エレベーターで法廷に戻ることもあります。

 法廷では眠気覚ましでガムも噛めないので、ちょっと面倒ですね。

 そして、この件に関しては続報が。

 

>>> 裁判員裁判:「首振り」裁判員に予断 裁判長また怒り--京都地裁

 京都地裁で公判が続いている娘3人への点滴水混入事件の裁判員裁判で、前日は傍聴人の居眠りに怒った裁判長が12日、審理中にうなずいたり首を振ったりする傍聴人の態度に苦言を呈し、禁止を命じた。極めて難解な審理の中で、裁判員に予断を与えないよう配慮した措置とみられる。

 裁判関係者によると、検察官や弁護人の言葉に身ぶりで反応を示す傍聴人がおり、午後の公判の冒頭、書記官が「殊更に反応を示さないで」と異例の注意。続いて、増田耕兒裁判長が「首を振ったりうなずいたりしないでください。(裁判員が)気になりますんで」と語気を強めた。(毎日新聞 2010年5月13日)

 

 今度は、傍聴席で知ったかぶりして、しきりに頷く傍聴人にイライラさせられてしまったようです。

 たしかに、たまに見かけますけどね。 法律的な主張が飛び交うたびに、わかったような顔してコクコクと首を縦に揺らす、アピールのうるさいオッサンは傍聴席で珍しくないです。

 あまり聞き慣れない医学的な議論をしっかり把握しようと、増田裁判長も一語一句聞き漏らさず、頭もフル回転状態で対処していたのでしょうね。

 そんな中で傍聴人がお気楽に頷いてたら、「ホントにわかってんだろうな?」と言いたくなってしまいそうです。

 でも、検察官や弁護人など、説明を行っている当の本人たちからすれば、傍聴席からの反応は少し嬉しいものなのかもなぁ……とも思います。

 かつて学習塾講師をやっていた時代のことですが、授業で会心の解説を果たしても無反応・無関心の連中が多い中、最前列でいちいち頷く一部の生徒が、私はかわいくて仕方ありませんでした。

 ま、それとこれとは別ですけどね。

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2010年5月 7日 (金)

袴田死刑囚への刑執行停止を、千葉景子法相へ申し入れ (法務省19階・大臣室にて)

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 本日17時、袴田巖死刑囚救援議員連盟(会長:牧野聖修[民主党衆院議員])が、袴田巖氏の死刑の執行停止(刑事訴訟法479条)を命じるよう、千葉法務大臣に要望書を渡すセレモニーが行われました。

 もちろん、冤罪を認めて裁判所が再審無罪を言い渡すのが、本来の筋道なのですが、最高裁が再審請求を退けてから、まだ2年ぐらいしか経っていないため、今の段階で正攻法は難しい。

 よって、袴田さんに精神障害の症状がみられることを根拠に、緊急の人道的対応として、せめて死刑が執行されないように求めるというのです。

 

 いちおう、フリーランスの人間にも開かれた場だということだったので、取材のエントリーをしたうえで、私も行ってみたのですが……

 もしや、フリーライターは、自分ひとりか? という印象でした。

 テレビカメラに関しては、テレビ朝日しか入ってませんし。

 もったいない。

 

発言の文字起こし (2010/05/10に補足)

【牧野会長】
 4月22日にですね、袴田巖さんを何としても支援するということで、議員連盟ができました。
 超党派で、そして60名ほどの皆さんにご参加をいただきまして、その折、袴田さんのお姉さんのひで子さん、親族の皆さん、それから弁護団の皆さん、それから再審要求のためのボランティアをしている皆さん、それからボクシング関係の皆さんですね、長い間支援活動でご活躍の、たくさんの皆さん、そんな皆さんからですね、私どもが受け取った要望書をですね、今回大臣にお渡しさせていただいて。
 刑事訴訟法479条ですか、死刑囚が心神喪失した場合は、大臣の命令によって死刑を停止できるという条文がありますので、私ども議員連盟としては、それに基づいて袴田さんへの執行を停止していただければ。
 非常にまぁ、健康が優れないと、心身喪失というより人格が崩壊というところまで来てますのでね、これは人権上極めて重要な問題ですので、新しい政権になったことですし、ご配慮いただいて、できるだけ早く問題を解決して、健康を回復するように、法務大臣からお力添えをいただきたい。そういうことで今日は参りました。よろしくお願いいたします。

【千葉法相】
 わかりました。では確かに受け取りました。



 このセレモニーが、正味5分ぐらい。

 そのあとは、法務省ビルの1階ロビーで、ぶらさがり記者会見が行われるとのことで、満員のエレベーターで降りて、議連のセンセイ方を待つこと、15分。

 どうやらその間、非公開の場で、千葉法相との会談が行われていたようですね。

 そして、にわかにロビーが騒がしくなり、国会議員のお歴々がお出ましに。

 しかし、鈴木宗男事務局長は、「じゃあ、牧野先生! あとはヨロシク頼みます!」と、いつものハイトーンボイスで、その場を会長に託し、さっさとどこかへ行ってしまいました。

 牧野会長の話によると、千葉法務大臣は、死刑執行停止に関して、とても前向きな反応をしていたそうです。

 千葉さんは、もともと“人権派(市民派?)”の弁護士として活躍後に政界入りしていますし、そもそも死刑制度に反対の立場を明確にしていますから、そうした反応もうなずけます。

 が、牧野会長は「まだどうなるかわからない」と、慎重な姿勢を崩しません。

 千葉法相も鳩山総理と同様、ある意味で政治的理想が高い方なのかもしれませんが、現実に政権運営をする立場となると……

 「あちらを立てれば、こちらが立たず」 何が支障となるか予断を許しませんからね。

 また、牧野会長は袴田死刑囚との面会を早期に実現させたいと、議連としての抱負も語っていました。

 

 記者会見が済んで、ボイスレコーダーのスイッチを切り、その場を離れると……

 なんと、一部の記者が、牧野会長と名刺交換をしているではありませんか!!

 「おぉ! そういうの、アリなんだ!」

 「おいらも、国会議員の名刺ほしいぜ!」

 と思いましたが、ここで再び牧野会長に近づくと、単なるミーハー野郎みたいで格好悪いなと感じ、なんとなく遠慮してしまいましたね。

 今にして思えば、「行っときゃよかったな~~」と、ちょっと後悔してますが。

 

 そして恥ずかしながら、こういう取材において、私は素人みたいに、携帯電話のカメラを使っちゃってます。

 いちおう、ソニーのサイバーショット内蔵の携帯電話ですので、デジカメとしての性能自体はマズマズなんですが……

 ボタンを押してからシャッターが切れるまでに、ヘタすると3秒ぐらいのタイムラグが生じてしまいます。

 そうなると、たとえば会長から法相へ要望書が手渡されるような決定的瞬間を、どうしても撮り逃してしまうんですよねぇ……。

 そんなていたらくもあって、今日、がぜん一眼レフのデジカメが欲しくなりました。

 帰り道、「一眼レフが落ちてないか」 なんとなく駅のホームをキョロキョロしてみたりsweat02

 ……まぁ、買うとしたら、自腹で必要経費にするかなぁ。

 

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