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2010年9月21日 (火)

9月14日『押尾学に懲役6年を求刑』…を、テレビはどう報じたか?

 もうすでに判決出ちゃってますし、ずいぶん時間が経っての番組チェックになってしまい、どうも失礼しました。

 「押尾裁判」におけるテレビの報じ方ですが、「意外と慎重にやっておいでだなぁ」というのが第一印象です。

 私のほうこそ、テレビ報道に対する先入観や予断・偏見があったようです。 どうもすみませんでした。 お詫びいたします。

 それでも、判決が出る前にもかかわらず、報道姿勢の偏りや不要と思われる演出等がj若干ながらみられ、ややもすると判断者に予断を生じさせかねない箇所が散見されましたね。

 作り手は無意識でやっているのかもしれません。 ですが、もしも無意識の偏りだとすれば、今後も修正されない可能性があるので、かえってタチが悪いわけです。
 

 なお、当日は、民主党代表選の結果が出るという大ニュースがありましたので、各番組とも、政治ニュースに大幅に時間をさいていたという、全体的な傾向があります。

 

 
 

NEWS FINE (テレビ東京17時台)

扱い:速報ニュースコーナー
時間:1分ほど
内容:客観的情報のみ
BGM:速報コーナーで共通一貫して使われているもの
押尾被告人の発言ナレーション:なし
コメンテーター:なし

 

スーパーJチャンネル (テレビ朝日17時台)

扱い:トップニュース
時間:8分ほど
内容:法廷の様子や押尾被告人の一挙手一投足を、詳細にレポート。法廷画とCGを組み合わせる工夫も。
BGM:ミステリアスで静かな曲 弁護人の無罪弁論シーンで、若干盛り上がるような曲調へ。
押尾被告人の発言ナレーション:若手アナウンサー風・誠実そうな印象
コメンテーター:VTR中に元検察官の若狭弁護士の話。
スタジオコメント:大谷昭宏氏 「求刑は8年ぐらいかと思っていたが6年。刑罰は軽くてもいいから『致死』を認定してほしいという、検察のメッセージだと受け取れる。裁判員がどう判断するか注目したい」

 

FNNスーパーニュース (フジテレビ18時台)
扱い:通常ニュース枠
時間:6分ほど
内容:法廷画や写真などを交え、オーソドックスなレポート調
BGM:サスペンスドラマのような謎めいた感じを演出するもの
押尾被告人の発言ナレーション:野太く男っぽいナレーターが読み上げ
コメンテーター:VTR中にヤメ検の若狭弁護士の話。スタジオコメントなし

 

news every. (日本テレビ18時台)
扱い:トップニュース (17時台は扱い無し)
時間:3分ほど
内容:法廷画が中心のレポート
BGM:全体的に静かでミステリアスな曲調
押尾被告人の発言ナレーション:若手アナウンサー風
コメンテーター:なし

 

NHKニュース9 (NHK総合21時台)
扱い:速報ニュースコーナー
時間:1分ほど
内容:アナウンサーが事実関係のみ述べる
BGM:なし
押尾被告人の発言ナレーション:なし
コメンテーター:なし

 

報道ステーション (テレビ朝日22時台)
扱い:通常ニュース枠
時間:1分ほど
内容:法廷の様子を淡々と説明。
BGM:静かでミステリアスな曲調。弁護人の無罪主張で少し盛り上がる曲調へ。
押尾被告人の発言ナレーション:野太い声のナレーション
コメンテーター:なし

 

NEWS23クロス (TBS23時台)
 扱い無し。

 

ワールドビジネスサテライト (テレビ東京23時台)
 私がオンタイムで確認した限りでは、扱い無し。

 

NEWS JAPAN (フジテレビ24時台)
扱い:通常ニュース枠
時間:1分ほど
内容:法廷画を交えながら、過不足のないレポート
BGM:静かで若干おどろおどろしい曲調
押尾被告人の発言ナレーション:若手アナウンサー風
コメンテーター:なし

 

おはよん (日本テレビ4時~5時半)
扱い無し。

 

めざにゅ~ (フジテレビ4時台)
扱い:速報ニュースコーナー
時間:1分ほど
内容:法廷画を交えながら、過不足のないレポート
BGM:速報コーナーで使われる共通一貫したもの
押尾被告人の発言ナレーション:なし
コメンテーター:なし

 

やじうまプラス (テレビ朝日5時台)
扱い:通常ニュース枠
時間:2分ほど
内容:法廷画などを交えながら、過不足のないもの
BGM:サスペンスドラマで使われるようなミステリアスな曲調
押尾被告人の発言ナレーション:野太く低い声
コメンテーター:なし (ただし、6時台の新聞読みコーナーで、大谷氏が前日夕方と同趣旨のコメント)

 

みのもんたの朝ズバッ (TBS6時台)
扱い:新聞読み
時間:2分+2分ほど (2回に分けて)
内容:デイリースポーツなどの記事を読み上げ
BGM:新聞読みコーナーの一貫したもの
押尾被告人の発言ナレーション:なし
コメンテーター:なし
スタジオコメント:みのもんた氏 「救命措置はしたんだよね。6年が妥当かどうか注目したいですね。薬物は再犯率が高い。薬物が簡単に手に入る世の中は何とかしなければ怖いね」
※7時台にも、オーソドックスなニュースの形で1分ほど紹介。

 

とくダネ (フジテレビ9時台)
扱い:通常ニュース枠
時間:5分ほど
内容:法廷の様子を法廷画などを交えてレポート
BGM:アクション映画のような煽る曲調
押尾被告人の発言ナレーション:ベテランアナウンサーが読み上げ
コメンテーター:若狭弁護士の「懲役6年は軽い」というコメントを紹介。
スタジオコメント:
小倉智昭氏 「この懲役6年という求刑に、この裁判の難しさが出てるんじゃないかという、うがった見方をしてしまうけどね」
高木美保氏 「被害者の遺族が最高に重い刑をって涙ながらに希望してるじゃないですか。それが非常に印象に残っていて。このぐらいの求刑にしとくから、あとはよろしく、っていう検察の考えをちょっと感じるんですけど」

 

スッキリ! (日本テレビ8時台)
扱い:通常ニュース枠
時間:15分ほど
内容:役者が実際に登場して、検察の論告求刑や弁護人の弁論を再現。さらにさかのぼって、過去の公判の様子も役者達が再現。スタジオでも解説。
BGM:ミステリアスなドラマのような曲調
押尾被告人の発言ナレーション:長髪のイケメン役者が、舌っ足らずな口調で再現
コメンテーター:
若狭弁護士「被告人自身が持ってきたMDMAを飲ませたということなら、保護責任がさらに強く認められる」
アメリカ陪審裁判を経験した国際弁護士「裁判員は科学者や専門家でないが、その常識や世界観で判断する」
スタジオコメント:
おおたわ史絵氏「致死の立証は医学的には本当は難しい。しかし、たとえ心臓が止まっていても救急車を呼んだのなら、裁判員の心証もだいぶ違った」
ロバート・キャンベル氏「井戸に落ちた子どもは理屈抜きで助ける。孟子の言葉ですが、日本人の基本的な良識でもある。本件は法律の理屈の問題だが、押尾被告人の自己保身を裁判員がどう見るか」
テリー伊藤氏「田中さんがMDMAを自ら飲んでいる。致死を認めるのは難しいかもしれない

 

ひるおび (TBS12時台)
扱い:通常ニュース枠
時間:25分ほど
内容:論告弁論のニュースは最低限。むしろ、傍聴したリポーターらによる押尾被告人の一挙手一投足をリポートする話題や、裁判員が休日返上で評議を行うニュースを中心に大きく特集。
BGM:VTR中では、ドキュメンタリー番組のような曲調
押尾被告人の発言ナレーション:なし
コメンテーター:なし
スタジオコメント:麻木久仁子氏 「もし自分が裁判員になったら、法的責任と道義的責任とをどう線引きして考えればいいか、難しいと思う。法廷は人格を裁くところでなく、行為を裁くところ」

 

ワイド!スクランブル (テレビ朝日11時台)
扱い:新聞読み
時間:2分ほど
内容:スポーツ報知などの記事を読み上げ。板倉宏教授の「求刑が軽い」とのコメントを紹介
BGM:新聞読みコーナー共通一貫のもの
押尾被告人の発言ナレーション:なし
コメンテーター:なし

 

情報ライブ ミヤネ屋 (日本テレビ15時台)
扱い:通常ニュース枠
時間:18分ほど
内容:法廷画を交えて、さらにスタジオでも解説。検察側と弁護側の主張を、丁寧に表にまとめて対比している。
BGM:アクション映画っぽい、少し大げさな印象のもの数曲 ときおりBGMなし
押尾被告人の発言ナレーション:若手アナウンサー風・誠実そう・棒読み調
コメンテーター:なし
スタジオコメント:
嵩原安三郎弁護士 「最近の検察は厳罰化の傾向があるので、懲役6年の求刑は率直に言って軽い。しかし、去年の執行猶予が取り消されることなども考え、全体のバランスを取ったのだろう。ただ、被告人と田中さん、どちらが用意したMDMAか“不明”という結論に裁判員が至る可能性もあるが、それでも被告人を保護責任者と認定する可能性はある。一緒に山登りをしていて、ひとりが足を滑らせて崖から落ちたら、もうひとりは保護責任者になる。それと同じこと」
岩田公雄解説委員 「裁判員の方はご苦労されるだろうが、一般人の感覚が求められている」
見城美枝子氏 「法律はともかく、人としてどうか。それが重要なわけでしょう。それが裁判員制度の魅力だと思う」
デーブ・スペクター氏 「薬物使用に対しては、アメリカの陪審は日本ほど大きく、保護責任の認定に影響しないだろう。密室で起こった事件だけに、わからないことが多く、法的に裁くことは難しい」

 

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 録画機材の物理的な問題で、日テレの「NEWS ZERO」や、フジテレビの「めざましテレビ」、テレビ朝日「スーパーモーニング」など、いくつかのニュース情報番組につき、チェックが抜けてしまったのが不覚です。

 この日は各局、政治ニュースに総力を注ぎ込んでいたからかもしれませんが、押尾裁判の報道に対する力の抜け具合が如実に出ていました。

 2~3分ぐらいの尺に抑えておく程度が、ちょうどいい塩梅といえそうですね。

 ヤメ検・若狭弁護士の、思わぬ売れっ子ぶりを目の当たりにするという収穫もありましたが……

 やっぱり各局、ヤメ検さんばかり重用しすぎです。

 弁護士業務一筋のベテランからコメントをあまり取らない(取り忘れている)態度も、テレビの報道姿勢に偏りを生む一要素だと指摘せざるをえません。

 各テレビ番組については、今後も同じようなことを、ちょくちょくやっていこうと思います。

 また、スポーツ紙や週刊誌、ネットメディアなどがどう伝えているかについても、検証したいですが、ひとりでやるのは限界がありそうですな。
 でも、結果が面白くなりそうな見込みがあるなら、やりますけど。

 
 (( 参考 ))

 

「押尾裁判」の報道姿勢に見る、メディアの相変わらずっぷり (9月7日)

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コメント

押尾学被告は消極的な殺人者であり、少なくとも10年以上は投獄されるべき。
虚言を吐く悪人・押尾学及び嘘を言って犯人をかばうことを生業としている悪徳弁護士に裁判員はだまされたのかも知れない。
薬物犯罪者は出所後の再犯の可能性は否定できない。

投稿: 左巻き菅 | 2010年9月21日 (火) 07:40

どうもありがとうございます。

裁判員もわれわれと同じ法律の素人ですが、少なくとも「自分の目で証拠に触れ、自分の耳で証人や被告人の話を聞いた」「評議を計42時間も重ねた」という点には決定的な違いがあります。

「居酒屋で他の客が、押尾被告人を極悪人のように言っていて、つい腹の中で笑ってしまった」と、補充裁判員の方が、判決後の記者会見でおっしゃっています。

残念ながら、刑事事件での弁護人の立場は、悲しくなるほど低いです。「騙す」なんてとんでもないファンタジーな話で、無力感や絶望感すら感じる方も多いだろう、という認識です。

弁護人の主張よりも、裁判実務での「落としどころ」「相場観」というものの力学のほうが極めて大きく作用するからです。

そもそも、弁護人の弁論を聞かずに法廷を出て行く傍聴マニアの方が多いですからね。一般の方が抱く弁護人に対するイメージは、それぐらいネガティブなのでしょう。

ここでもし、無罪判決が出たのなら「裁判員を悪魔のテクニックで騙しやがったな、弁護人め」ってことになるかもしれませんが、それでも、今回の弁護人は少なくとも刑事裁判における無力感は覚えずに済んでいるのかなと思います。

いろいろとご不満はおありでしょうが、まだ判決は確定していません。控訴審や上告審裁判官の認定にご期待ください。

投稿: みそしる | 2010年9月21日 (火) 10:13

裁判中継でもあれば、もっと注目されたかもしれないですね。アメリカではOJシンプソン事件やパメラ・スマート事件(映画「誘う女」のモデル)ではテレビで裁判中継してえらく盛り上がったと聞きますし。

日本でも裁判中継をしたら、もっと裁判が注目されるんじゃないでしょうかね? もっとも、裁判の進行の問題やいい映像が取れるかやマイクの集音や色々な問題はあるのだろうけど。

投稿: xxx | 2010年9月22日 (水) 01:40

どうもありがとうございます。

裁判のテレビ中継の有用性は、私もかねてから指摘しているのですが、たしかに克服すべき問題点も多いだろうと予想されます。

というより、問題点をすべて洗い出せておらず、考えがまとまっていません。

この種の問題について記された学術論文や取材記事などを見つけたら目を通したり、私自身で識者にお話を伺ったりして、自分なりのロジックを立ててみたいと思います。このブログでも発表したいです。

投稿: みそしる | 2010年9月22日 (水) 09:26

私もテレビ中継大賛成です。裁判テレビ中継専門のケーブルテレビがもし出来たら長嶺さんに社長になってもらいたいです。
押尾事件は大阪地検改ざん事件で影が薄くなりつつありますね。若狭先生大忙し。これからマスコミではヤメ検弁護士がなにかと重宝される予感がします。

投稿: きたひろさとう | 2010年9月23日 (木) 06:31

長嶺さんが書くとおり、ヤメ検ばかりに聞くというのはフェアじゃなかったと思いますね。
ただ、刑事弁護一筋みたいな弁護士は普段の自分たちの実務で忙しい人が多いんじゃないでしょうかね?

数十人クラスの大弁護団を組んでいれば、広報担当の弁護士がメディアに出て、被疑者弁護の立場でもっとコメントを出せたかもしれませんが、押尾事件の場合は最初に担当していた弁護士は担当中に被告の言葉が信用できないとして辞退したということもあり、弁護人が多くなかったという点もあります。

それと、O・J・シンプソン事件では報道が過熱しているような場合は陪審員が隔離されホテルへの宿泊や他者との接触の禁止を命じられることもありますよね(滅多にないことですが)。今回の押尾学裁判の場合はO・J・シンプソン事件ほどではないにしろ、判決前にあそこまで報道するのはいかがなものかと思いました。

投稿: xxx | 2010年9月23日 (木) 11:28

そんなに報道がおかしく感じませんでした。法律と国民の意見が対局した形になったが、法律も国民の為にあるものだし多くの国民の疑問に答える形で法律の改正をした方がいいと思う。報道がどちらか片寄った意見を発信したのでなく国民は自ら下した答えが判決が軽すぎると多くの人が感じたのではないでしょうか!完全に与論の意見を取り入れない裁判員制度の意味に疑問を感じるし今後同じような事件での判例になる事がなんの抑止力にもならないし怖い事だと感じました

投稿: 高谷ひろゆき | 2010年9月24日 (金) 03:30

皆さん、どうもありがとうございます。私ひとりの力では気づけなかった事柄を、いろいろと知ることができました。


>裁判テレビ中継専門のケーブルテレビ

きたひろさとうさんに大いに出資していただきたいです。(笑)

まず、法廷映像の録画を許可するかどうかですよね。
いくら技術的にコピーガードをかけても限界があります。法廷映像に妙な編集がなされた動画がネットに流されるような事態を、キッチリ取り締まるのか、それとも放置するのか……。

そもそも、法廷映像をテレビに流したとして、映像の著作権は誰に帰属させるべきなのか?

すでにテレビ放映されている国会の証人喚問との比較でも考えてみたいです。

投稿: みそしる | 2010年9月24日 (金) 11:05

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