そうだ! 今度は、弁護人が無罪証拠をギゾーしましょっか!
このままでは、無罪判決が出て負けてしまう!
ピンチ!
…そこで、
客観的な物証をイジって、不利な形勢を一発逆転。
被告人を有罪にねじこもうとする悪辣検察官。
……もし、そんな小説や戯曲を誰かが書いたなら、
「さすがにありえない設定」
「いくら何でも都合よすぎ」
「そんなに検察が嫌いかよ」
と、腹いっぱい批判されるでしょう。
ただし、先週まではね。
今週からは、そんな乱暴なキャラ設定も、俄然リアリティを帯びるようになってしまいました。
>>> 【検事逮捕】 「ひどい」「正義が感じられない」と足利事件の菅家さん
栃木県足利市で平成2年、女児が殺害された足利事件で再審無罪となった菅家利和さん(63)は22日午前、大阪地検特捜部の主任検事による証拠品改竄(かいざん)事件について「(大阪地検検事は)ちょっとひどい。足利事件でDNA鑑定が偽造されていたら、私は完全にアウトだった。検事からは正義とか、そういうものが感じられない」と批判した。 (2010年9月22日 MSN産経)
警察が証拠を捏造したとみられる事件は、近年では高知白バイ事件など、チラホラ見られるわけですけど、
検察が証拠を捏造することなど前代未聞です(被告人の供述を捏造した調書を作ることは…… まぁともかく)。
それでも、偽造証拠が法廷で採用されて有罪判決が出されなかっただけでも、不幸中の幸いですかね。
というより、そんな事態が仮に起これば、不幸を通り越して、ニッポン司法が吹き飛び散らかる不祥事ですが。
古今東西、自らの力を誇示したい者たちは、その立ち振る舞いをなるべく隠そうとしました。 人々に対しての権威づけとして使えるだけでなく、他人が知りえないものは、後々になって「無いもの」として工作することができます。
「情報公開」「可視化」なんて、そうした権威づけや偽装工作に逆行する流れなので、彼らにとっては冗談じゃないわけです。
自分の過去をかばいたくなるのは、人間の本性みたいなもの。 捜査・取り調べをしていれば、平気でウソをつく被告人にはいくらでも出くわすでしょう。
そうなると、
「真面目にやっているのがバカバカしい」
「こっちだって、多少のウソや手心、お目こぼし、出任せにでっちあげに粉飾サジ加減を加えてもいいんじゃないか」
「大丈夫、被告人と違って、俺たちの『ウソ』は社会正義に基づいている」
などという考えが頭をもたげてしまう捜査官も、一部にいておかしくありません。
そうなると、せっかく誠実に仕事をしている貴重な検察官まで「真面目にするのがバカバカしい」と思ってしまうモラルハザードを生みかねませんよね。
「見えないものは無いものとできる」便利さに慣れてしまうと、自分を厳しく律することが苦手になる人がいても、仕方ありません。
でも、自分の仕事に対する誇りを失った人物なんか、警察や検察に限らず、どこにでもいるでしょ。
そう、私たちは弱い生き物なのです。
問題は、そういう自分自身で心にブレーキをかけられない人間に対して、なんらかの形で「外圧」が加えられてこなかったことです。
むしろ、そうした外圧は、検察自身も徹底して拒んできたともいえます。 検察にとって都合の悪い報道をしたマスメディア関係者を出入り禁止にするような対応なんて、その格好の例ですよね。
検察は昔から、事件のシナリオを組み立てる才能に長けているようですが、そもそもシナリオとは、人々が楽しむために書かれるべきものでしょう。
自分たちの都合で好きなようにシナリオを書くライターなど、三流以下だと、あえて断言します。
これから懸念されるのは、今度は弁護士のほうが無罪証拠を偽造したりしないか? ……ってことですが、
せっかくリスクを冒して偽造しても、それを裁判官が黙殺して結局は有罪が出るんなら、ムダですね。証拠を偽造する動機の湧きようがないですかね。
弁護人って、刑事法廷での立場がバカバカしくなるぐらい弱くて、私も傍聴席で時おり切なくなり、一筋の涙が流れ落ちます。
かつては私も憧れていた職業なのに。
◆ 刑法 第104条(証拠隠滅等)
他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
◆ 検察庁法 第23条
1 検察官が心身の故障、職務上の非能率その他の事由に因りその職務を執るに適しないときは、検事総長、次長検事及び検事長については、検察官適格審査会の議決及び法務大臣の勧告を経て、検事及び副検事については、検察官適格審査会の議決を経て、その官を免ずることができる。
2 検察官は、左の場合に、その適格に関し、検察官適格審査会の審査に付される。
一 すべての検察官について3年ごとに定時審査を行う場合
二 法務大臣の請求により各検察官について随時審査を行う場合
三 職権で各検察官について随時審査を行う場合
◆ 検察官適格審査会令 第1条
1 検察官適格審査会(以下「審査会」という。)の委員のうち、衆議院議員又は参議院議員たる委員以外の者は、次に掲げる者につき、法務大臣がこれを任命する。
一 最高裁判所判事 1人
二 日本弁護士連合会の会長
三 日本学士院会員 1人
四 司法制度に関し学識経験を有する者 2人
2 前項第一号及び第三号の委員は、それぞれ最高裁判所判事及び日本学士院会員の互選による。
◆ 検察官適格審査会令 第6条
審査会は、審査のため必要があるときは、法務大臣又は検察庁の長に対し書類の提出を求め、又は必要な事項の報告を徴することができる。但し、捜査中の犯罪事件については、この限りでない。
◆ 検察官適格審査会令 第7条
審査会は、審査に付された検察官及びその者の属する検察庁の長をして会議に出席して意見を述べさせることができる。
2 審査会は、審査に付された検察官に不適格の疑があるときは、当該検察官に対し、あらかじめ相当な期間を置いて会議の理由を通告した上、会議に出席して弁解し、且つ、有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
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コメント
検察内において、如何に沢山の事件を捜査、起訴そして有罪を勝ち取るかが「デキル特捜検事」の基準だったのでしょう。そのためには手段を選ばない。あるときは法を犯してでも。
故意があったとか無かったとか言い訳せず前田検事男らしく自白してほしいです。大阪地検の検事正
殿組織ぐるみでもみ消しましたと記者会見して頭を下げてはいかがでしょう。それだけでもこの事件だいぶ印象が変わるはずです。下手な法律家特有の詭弁、屁理屈、言い訳を繰り返すと検察ほんとうにまずいところまで堕ちてしまいそうです。
投稿: きたひろさとう | 2010年9月26日 (日) 07:27
そうなんです。近ごろ刑事裁判を傍聴していて、法廷で被告人を容赦なく責める検察官に対して、つい「よく言うわ、偉そうに」「いちいち大げさに言うなや」などと思ってしまいます(以前も多少は思ってましたが…)。
これまで、固すぎる殻をかぶって必死に権威を守ってきた組織ですが、尖閣諸島がらみの被疑者「お目こぼし」の一件もありますしね……。
今こそ検察の問題点を洗いざらいにしておかないと、きたひろさとうさんのおっしゃるとおり、取り返しの付かないことになるでしょう。
投稿: みそしる | 2010年9月26日 (日) 08:31
>今度は弁護士のほうが無罪証拠を偽造したりしないか?
弁護士が登場する頃は犯人が逮捕勾留又は起訴以降だから、それから弁護士が証拠を偽造するのはかなり難しくないですか?
せいぜい羽賀研二の裁判のように嘘をつく歯科医の証人を連れて嘘で無罪とさせる程度では(まあ歯科医が偽証したかどうかは裁判で係争中なのですが)。FDのような物証の偽造はまず難しいです。
暴力団絡みの詐欺事件では山本至弁護士の犯人隠避罪の立件があったなあ。あれって一審有罪だった気がするが、最終的にどうなったんだろう? 関元隆弁護士が暴力団事件で証人威圧罪をしたのもあった気がする。
>故意があったとか無かったとか言い訳せず前田検事男らしく自白してほしいです。
>大阪地検の検事正殿組織ぐるみでもみ消しましたと記者会見して頭を下げてはいかがでしょう。
こんなコメントは、黙秘権を否定して自白強要させる悪しき捜査機関となんら変わりはないのではないですか?
自分たちが気に入らない事件の追求には「犯人視するリークは公務員法違反」「不起訴の見込み報道は公務員法違反ではなく歓迎」「推定無罪で犯人視するな」「政党代表選挙に出るなというのは推定無罪に反する」とか言うくせに、
自分たちが気に入る事件の追及には「推定無罪」などおかまいなく、検事の犯人視の祭りあげをしているのはダブルスタンダードだと思います。
投稿: xxx | 2010年9月29日 (水) 12:35
コメントありがとうございます。
>弁護士が登場する頃は犯人が逮捕勾留又は起訴以降だから、それから弁護士が証拠を偽造するのはかなり難しくないですか?
はい、一般論としてはかなり難しいと思いますよ。
ただ、難しい中にも、事件の種類や背景などによって難易度は変わってくると思います。それに、私選弁護人の中には、被疑者・被告人のことを検挙前から知っている間柄である方もいるでしょう。
また、偽装の中でもアリバイ工作なら、割合やりやすい部類に入るのではないかという気がします。 関係者の口裏合わせだけで済めば、なおのことですし。
投稿: みそしる | 2010年9月29日 (水) 13:23