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2011年1月22日 (土)

キネマ旬報ベストテン 文化映画 第1位獲得 『ショージとタカオ』がスゴイ理由

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 皆さん、映画はよくご覧になりますか。

 じつは私、あんまり頻繁には観ないんですが、何の因果か、とあるドキュメンタリー映画の上映委員会メンバーに選ばれてしまいました。

 茨城県内で発生した布川事件という強盗殺人事件で、犯人として疑われて逮捕され、無期懲役囚として約18年間服役し、1996年に仮釈放された2人の男性、現在はやりなおし裁判が結審し、この3月16日に無罪判決が言いわたされる見通しになっています。

 この布川事件のやりなおし裁判を傍聴しようと、昨年夏から月1ペースで開かれた公判めがけて、茨城まで傍聴券を取りに行ったのですが、相変わらずのクジ運不足のため、ことごとく外れる始末。

 そんな中、昨年11月に、茨城でひとりの女性と出会いました。

 映像ディレクターの井手洋子さん。

 このたび、布川事件をテーマにして、初めて映画を撮ったらしいのです。

 たまたま上映会の日取りが近かったので「ぜひ観に来てください」と誘われました。

 なにしろ、テーマが冤罪がらみなので、重苦しくて暗くて、説教くさい内容なのかなという先入観があって、正直あまり期待していなかったのですが……

 意表を突かれましたね。

 冤罪をテーマと位置づけている映画で、この感想がふさわしいかわからないのですが、

 面白かったです。

 
 1996年、冤罪被害にあった2人の男性、桜井ショージさんと杉山タカオさんが、刑務所の門から出てきた瞬間からデジカムをまわし続け、右も左もわからない「浦島太郎状態」のところから、少しずつ普通の生活を取り戻していく様子を、丹念に記録しているのです。

 「冤罪は許されない!」というメッセージ、まぁ、それも大切で、作品中にも大いに盛り込まれてはいるのですが、井手監督は、そうした運動とか啓蒙のために作品を作っているのではないようです。

 あくまで「昔はチンピラで、お互いに嫌っていたふたりの男が、冤罪という理不尽な《共通の敵》と戦っている」「でも、未だにふたりの間には微妙な距離感がある」「失われた約30年の歳月を埋め合わせることが、いかに大変か」などという生身の事実に驚き、そこから得た素朴な感銘が、作品の根底に流れている印象を受けました。

 その感想を率直に監督へ伝えますと、「上映委員会へのメンバー」に、またしてもお誘いを受けたと、こういう経緯です。

 現在は、来たる3月16日の無罪判決を見据えての劇場上映に向けて、みんなで着々と準備を進めているところです。とはいっても、ほかのメンバーは私なんかよりずっと年上なんですけどね。自分の親と似たような年齢の方も多いです。

 そもそも冤罪に関係する仕事では、ほとんどの場合、私が一番「若造」になるので、けっこう気を遣います。 同年代の人には、まぁ会わないことこの上なし。

 おなか周りが気になりだした35歳の男が「若造」という肩書きでいいのかどうか。 まぁいいでしょう。

 

■ 「ショージとタカオ」の生活を、14年間も追い続けたスゴさ

 途中で何度か撮影を中断した時期もあったらしいですが、仮釈放の瞬間からデジカムをまわし続けた、その膨大な積み重ねが、通りいっぺんの理屈では伝えきれない事実の「手ざわり」を全体に感じさせるものになっています。

 一般的な冤罪系の映画であれば、やりなおし裁判(再審)を開くよう粘り強く求めていくという、司法作用のプロセスをマトモに描いてしまって、観客の層をきわめて限定的にしがちです。

 しかし、本作品はそうした角度だけでなく、新しい仕事に就くための葛藤、現代の世の中に対する素朴な疑問、多くが機械化された社会システムに少しずつ慣れていく適応過程、支援者からの厳しい言葉、50歳からの婚活、など、一見なんでもない事柄も丹念に描いています。

 おふたりにとっては、この「なんでもない事柄」こそが曲者で、社会的にゼロの位置から「普通」を取り戻していくことの過酷さを如実にあらわしているのだと思います。

 

■ いかにも冤罪映画っぽい暗さを感じさせないスゴさ

 井手監督は、何か動きがあった節目の日だけでなく、なんの変哲もない日にも桜井さんと杉山さんのもとに出向いて撮影を行っています。 なので、おふたりの飾らないホンネが見え隠れしているところも興味深いです。

 被写体のご本人は少し恥ずかしいかもしれませんが、そうしたホンネの言葉をしっかり紹介することで、説教くさくなく、広く一般の観客を受け入れられる懐の深い作品に仕上がったのだと思います。

 ときにはおふたりも、井手監督の存在が疎ましかったりしたようですが、心を許すだけの信頼関係も生まれたようですね。

 

■ キネマ旬報で高い評価を受けたスゴさ

 私自身、いい作品だとは思っていましたが、このたび、名誉ある映画賞をいただきました。ありがたいことです。

 http://www.kinejun.com/kinejun/best10/tabid/64/Default.aspx

 井手さん自身、飾らないながらもユニークな方なので、これからテレビ番組などに出演して、その人柄にも注目されればいいなと思っています。

 
 

< マスコミ向け試写日程 >

 ●1月25日(火)15時30分~
 ●1月27日(木)19時~
 ●2月 2日(水)15時30分~
 ●2月 8日(火)19時~
 ●2月10日(木)15時30分~

場所:TCC試写室



 今後の一般向け上映会 ・ 劇場ロードショーの予定



   ショージとタカオ

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コメント

最近見た映画は、日本軍人を八つ裂きにする中国映画を大連で観ました。日本国内では記憶にない程、観ていないですね!!

映画の価値が分かる人間ではありませんが、是非観てみたいと思います。

ところで、アダムとイヴが禁断の果実に手を出したのも実は冤罪だったりしませんか?

投稿: にしざわ | 2011年1月25日 (火) 20:08

>にしざわさま

膨大な取材に基づく記録映画でもあり、同時に一般の方も楽しめる作品になっていると思います。

イブは、蛇にそそのかされて禁断の木の実を食べて、イブはアダムをそそのかして禁断の木の実を食べさせたって話でしたっけ。

食べちゃいけないものだとわかっていて、その禁を破って食べたのなら、ふつうに罪(原罪?)が成立すると思いますけどね。 あとは酌量で刑が減軽されるかどうかの問題かもしれません。

キリスト教の神様は、アダムとイブに情状酌量しなかったみたいですけど……。

ただ、他人に騙され、自分の本意に反して罪を犯したという点で、広い意味では「ヌレギヌを着せられた(冤罪)」と言えるのかもしれないですね。

投稿: みそしる | 2011年1月25日 (火) 23:07

気になる映画です。関西圏での上映情報もぜひお知らせください。

投稿: 花子 | 2011年1月31日 (月) 09:23

>花子さま

いらっしゃいませ。『ショージとタカオ』に興味を持ってくださいまして、ありがとうございます。

まずは、関東地方の映画館で、お客さんがそれなりに入るよう実績を重ねていけば、関西進出も決して難しくはないと思います。

上映予定が決まり次第、このブログやツイッター(nag_masaki)などでお知らせします。

投稿: みそしる | 2011年1月31日 (月) 14:55

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