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2011年3月16日 (水)

この際「義援金詐欺」について考えてみる

 
 このたびの被災地に義援金を送るに際しては、2つの心配があります。
 
 ひとつは、最初からだますつもりの変な団体に義援金を託して、全部持って行かれるんじゃないかという心配。
 
 もうひとつは、いちおう被災地に義援金は送るんだけども、その団体が事前にかなりの金額を人件費や手数料などの名目で「中抜き」してしまい、被災者へ渡るお金が目減りするのではないか、という心配です。

 

■ 1.最初から送る気がない「ニセ募金団体」パターン

 
 こういう“純粋”な義援金詐欺団体は、数が少なくて規模も小さいので、向こうから積極的に仕掛けてくる傾向があります。

 あるときは、街頭で募金を呼びかけたり、あるときは、キャッチセールスのような要領で、あるいは民家に直接訪問してみたりすることもあるでしょう。

 もちろん、郵便や電話、電子メール、ツイッターなどで、義援金を振り込むよう頼んでくる「振り込め詐欺」の形態で近寄ってくることも十分に考えられます。

 接触してきた人物が、いくら魅力的な異性であろうと、「私も東日本震災の被災者(の家族)なんです」などと泣き落としで攻めてこようと、決して惑わされないように気をつけて下さい。
 

 
 こうした詐欺に引っかからないためには、自分が義援金送付を託したい団体を“自分で決める”という心がけをすれば十分かと思います。

 
 
 特に募金という手法で義援金詐欺をはかってくる手口についてお話ししたいのですが、募金活動を始めるのに公的な機関による審査などはありません。

 歩道の構造や通行に影響があるような看板や幕など設置するやり方なら、警察署に「道路使用許可」を届け出る必要があります。
 しかし、歩道のジャマにならないかどうかの審査なので、その募金団体が本物かニセモノかまで、警察でいちいちチェックすることはないわけです。

 
 
 
◆ 道路法 第32条(道路の占用の許可)
1 道路に次の各号のいずれかに掲げる工作物、物件又は施設を設け、継続して道路を使用しようとする場合においては、道路管理者の許可を受けなければならない。
  一  電柱、電線、変圧塔、郵便差出箱、公衆電話所、広告塔その他これらに類する工作物
  二  水管、下水道管、ガス管その他これらに類する物件
  三  鉄道、軌道その他これらに類する施設
  四  歩廊、雪よけその他これらに類する施設
  五  地下街、地下室、通路、浄化槽その他これらに類する施設
  六  露店、商品置場その他これらに類する施設
  七  前各号に掲げるものを除く外、道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある工作物、物件又は施設で政令で定めるもの

 
◆ 道路法施行令 第7条(道路の構造又は交通に支障を及ぼすおそれのある工作物等)

 法第32条第1項第七号 の政令で定める工作物、物件又は施設は、次に掲げるものとする。
   一  看板、標識、旗ざお、パーキング・メーター、及びアーチ
   二  工事用板囲、足場、詰所その他の工事用施設
   三  土石、竹木、瓦その他の工事用材料
 [※以下略]

 

 
 その募金活動が詐欺かどうか、前もって点検してほしい、と思う人もいるでしょう。

 アメリカでは、過去に、募金活動の事前チェックをする規制があったようなのですが、1980年にその規制が憲法違反・無効とされたこともあるようです。
 
 募金の大半を手数料として得る意図で、慈善団体の代行として募金活動をし、寄付金を集めた「テレマーケティング社事件」について、2003年、アメリカ連邦最高裁は、詐欺罪の成立を認めたものの、募金活動を国などが事前チェックすることについては、やはり認めなかったといいます。

 それは、どうしてなのか。

 募金活動は、広い意味で「言論の自由・表現の自由」の一環として支えられていると考えられます。日本国憲法でいえば21条1項ですね。

 この自由は、数ある基本的人権の中でも、民主国家で人が人として生きるために非常に重要なものだと位置づけられています。

 
 

◆ 日本国憲法 第21条
1  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

◆ 日本国憲法 第11条
 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

  

 いくら、募金詐欺を防ぐためとはいえ、国家がこうした表現の自由に基づく活動を前もって規制することをいったん許せば、そのような規制が別の言論領域へも拡散してしまい、私たちの自由な活動が萎縮してしまうのでは、という心配があります。
 そのため、少なくとも日本やアメリカでは募金の事前チェックは認められていないようです。 他の国ではわかりませんが、ほぼ同様に認められないでしょう。

 このように、募金活動が規制されない実情を逆手にとり、おおっぴらなニセ募金活動が大阪で行われたことがありました。

 彼らは日本で初めて詐欺罪で検挙されたニセ募金団体となっています。

 主犯格である被告人は、まず「喫茶店でのケーキ作りの手伝い募集」「玩具店でのクリスマス用おもちゃの在庫管理」「パン屋でのパン作りの手伝い」といったアルバイト募集広告も出し、100人ぐらいの若者を集め、彼らを街頭に立たせて「難病で苦しむ子供たちのために、募金をお願いします」と言わせたとされます。
 しかし、「募集内容と違う仕事をさせられた」という当たり前の苦情が求人誌の出版社に寄せられ、本件が発覚しました。 

 

>>> ニセ街頭募金 詐欺罪成立 個別被害の特定不要/最高裁
 難病の子供を支援する街頭募金を装い現金をだまし取ったとして、詐欺罪などに問われたチラシ配布員横井清一被告(39)の上告審で、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)は被告の上告を棄却する決定をした。決定は17日付。懲役5年、罰金200万円の実刑とした1、2審判決が確定する。
 同小法廷は決定で、街頭募金詐欺のように、多数の人から幅広く金をだまし取る事件では、個別の被害者と被害金額を特定しなくても、被害総額などを示せれば、全体として詐欺罪が認定できるとの初判断を示した。
 詐欺罪は被害者を欺いて財物を交付させる犯罪のため、本来、被害者とその被害金額などを特定する必要がある。しかし、今回の事件は通行人から募金を受けてだまし取る手口のため、被害者を特定するのは難しく、検察側は「2004年10~12月に大阪市や京都市などで不特定多数から総額約2500万円をだまし取った」と主張。弁護側は「被害者ごとの被害金額を特定する必要がある」と反論していた。(2010.3.20 読売新聞)
 
< 最高裁判決全文 >

 
 ちなみに、一審の担当が、「大阪の名物判事」と名高い杉田宗久裁判長。「難病支援という美名の下に私腹を肥やそうとするなど言語道断。社会的影響は非常に大きい」(時事通信) と厳しく断じたそうです。

 
 

■ 2.義援金の一部を「中抜き」するパターン

 義援金詐欺は、もってのほかですが、義援金を受け付ける企業や団体が、その一部を手数料や人件費などの名目で「中抜き」している実態もあると聞きます。
 
 さきほどご紹介した、アメリカの「テレマーケティング社事件」では、集めた寄付金のうち、なんと85%を手数料として受け取り、慈善団体の手元には、残り15%しか渡らなかったといいます。

 これはあまりにもひどい高率の手数料ですし、しかも最初から仕組んで、募金に応じた人々に事実を隠していたことから、詐欺罪の成立が認められました。
 
 もちろん、義援金を被災地の人々に手渡すプロセスで現実にかかる、ある程度の実費はやむを得ない。しかし、預かった義援金から実費以上のお金を着服することになれば、業務上横領罪にだってなりかねないと思うのです。

 義援金を渡した被災者に領収書を発行してもらうわけにもいかないし、「中抜き」の実態はブラックボックスですよね。そのあたり、法規制は無いんでしょうか。

 振り込んだお金が100%義援金として被災者に渡されるとは思わないほうがいいようです。これこそ悲しいほどの自己責任。

 ニュージーランド地震で日本政府が現地へ義援金を送った際には、日本赤十字社に委託したようです。 ほかにも赤い羽根の中央共同募金などもありますね。

 ただ、これらの組織によって、義援金が一部中抜きされてないのかどうか、こればっかりは何ともいえません。

 信じたいのはやまやまですが、手元に客観的データや証拠がまるでありませんもん。
 
 なので、皆さんが各自で、心から信用できる企業や組織に託すしかないようです。
 
 

 
 ……こんなもん、もはや法律論でも何でもないな。

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コメント

義援金詐欺は本当にヒドいですね。
以前、確か東野圭吾さんだったかな……? とにかく推理小説家の方が、災害に対して真っ先に動き出すのは政治家でもボランティアでもなく犯罪者だ、というようなことを書いていたのを思い出します。

しかし、その大阪での「ニセ募金団体」で逮捕された人。求人内容への苦情から発覚するなんて、ずる賢いのか間抜けなのかわかりませんね!


僕も少ないながらも寄付金を送ろうと思ったんですが、どこを信頼すればよいのかわからず……個人で送れば余計な混乱を招くかもしれないし、結局、好きな芸人の方が公演会場に設置する募金箱に募金することにしました。疑い始めればキリがないことですからね。

投稿: nobuton | 2011年3月18日 (金) 15:30

どうもありがとうございます。

「疑い始めたらきりがない」、これは非常に大事なところで、そして、私が書き忘れていた点でして(笑)、どこかで踏ん切りをつけないと、何もできません。

私は、サンドウィッチマンさんが関わっている「東北魂」なら、まぁ問題ないのかなと。

もし、何か裏で変なことがあれば、それはサンドウィッチマンのふたりを騙していることになるので、決してタダでは済まさないでしょう。

投稿: みそしる | 2011年3月19日 (土) 11:22

私も義援金の収支報告書が公開されない現状でどれだけ信用していいのか大変疑問に思っていました。
大変参考になりました。

投稿: 福岡市 | 2011年3月22日 (火) 11:45

参考にしていただけて幸いです。

すでに、東京・立川駅前で、手作り募金箱をひっさげていた男が逮捕されていますし、日本赤十字のサイトを装ったフィッシング詐欺まで発生していると聞きます。

何か抜本的な解決策がないかと思う次第です。

投稿: みそしる | 2011年3月24日 (木) 05:45

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