“カレログ”の社長にお会いした
新刊『恋の六法全書』の中で、他人のGPS位置情報を自動的に取得するようなソフト(アプリ)を、その人のスマートフォンなどに勝手に導入するような行為は犯罪ですよ、と書いたところ、最近話題の“彼氏情報追跡サービス”「カレログ」の社長からお声がかかり、先日、インタビュー取材を受けてまいりました。
私自身、意外だったのですが、書籍や雑誌など、紙ベース媒体の編集プロダクションの方が、スマートフォンアプリの開発に乗り出し、その一環で開発されたもののようなんですね。
もともとは、会社における従業員の管理(内勤の人の出退勤管理や営業の人のルート確認など)に、携帯端末のGPS機能を活用しようというBtoBのものとして開発され、それをBtoCでやろうとしたときにたどり着いた発想が「恋人の居場所が気になる女性」をターゲットにした、問題のカレログなんだそうです。
カレログの社長って、もっとズル賢くて、要領よく立ち回るような、一筋縄ではいかない人物を想像していたのですが(IT社長への偏見…?)、地に足の着いた、物静かで誠実な作り手だとの印象を受けました。
昨今の各方面からの猛烈な批判を受けて若干自信喪失気味なのか、それとも、もともとそういう慎重な気質をお持ちの方なのか。
インタビュー取材の第一声から、社長はカレログ問題に関する釈明を先回りして滔々と述べていました。
総務省のお偉いさんにまで呼び出されて、注意を受けたという話も。 ……まぁ、それはそうでしょうね。私も最初にツイッターで知った時点で「こりゃマズいな」と思いましたから。
「挑戦しているベンチャー企業って大好きなんです」「開発力・技術力には敬意を表しますが、問題は技術の使い方ですかね」ということを二言三言ほど返させていただき、カレログはどうあるべきなのか、世の中の恋愛に対して、IT技術や法律はどんな貢献をできるのか、1時間ぐらい話を交わしました。
私はカレログ反対というか、懐疑派です。法律的にも大きな問題を含むだけでなく、それ以前に「そんなに恋人の行動を必死に追いかけて、関係が本当に発展するのかね? その後どうすんの?」という根本的な疑問もあります。
それに、カレログの位置情報は、大まかな範囲しか提供されません。 たまたま繁華街の居酒屋に友人と長居していたのが、近くのラブホ街に入り浸っていたと彼女に誤解されたら、目も当てられませんよね。
不用意に使えば、恋人同士の絆が深まるというより、むしろケンカ別れにつながる危険性が高いと思われます。 恋人の位置情報を勝手に知ろうと考える発想自体、「疑いから入る」という関係ですから、どうかと思いますね。
それに、監視をすり抜けようと思えば、いくらでもできてしまうわけです。行動を補足されたくない時間帯があれば、駅のコインロッカーにしばらく預けるとかね。
そうなると「不安に伴う疑いに対して、偽装工作で返す」という、恋する二人にあるまじき状態になることが、容易に想像されます。
その一方、私自身、カレログに対する偏見や認識を改めなければならないなと反省すべき点もありました。
法律的に最も心配される問題は「GPS位置情報を捕捉される側の同意をとっているかどうか」ですが、最新版の「カレログ2」では、相手方の知らないうちにインストールされないよう、相手宛にメールを送って同意をとるようにしたそうです。
工夫して改良を重ねているようですが、もちろん、これでも完全に問題がクリアになるわけではありません。行動を追いかけて束縛したい恋人のメールボックスまで勝手に覗いて、勝手に同意の操作をすれば同じことなんですが、どこまで企業努力で同意のフォローをするか、限界もありますよね。
犯罪に問われるリスクだけでなく人間関係が悪化するリスクまで乗り越えて、恋人の位置情報を無断で追いかけようとするなら、もはや自己責任の世界でしょう。
若い人が使ってみて、こっぴどく失敗し、いっぺん懲りればいいと思います。
スマートフォンアプリは、閉塞感あふれる今の時代に珍しく、未来への希望に満ちたコンテンツですので、カレログが今後、どのように発展・進化していくのか、どういう形で恋人たちの関係を深め、思い出作りに寄与していくツールになりうるか、私としても外野から楽しみにしています。
ただし、カレログが世の恋人たちの幸せを支えるツールになりえず、むしろ人間関係に脅威を与えるものであれば、潔くさっさと止めて、他のものを開発しなければなりません。 それが企業の責務ですし、そのほうがビジネスとしても有意義だと思います。
以上のようなことを述べた、今回のインタビュー記事は、カレログ独自のウェブサイトやメールマガジンに載るそうですので、できあがりを今から心待ちにしています。 詳しい内容は、そちらで代えさせていただきます。
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