2005年10月30日 (日)

自民党の新憲法草案(新旧対照表)

 「GHQ占領下で押し付けられた憲法は放棄し、自主憲法を創りあげる」という理念を持つ人々が集まって、1955年に結成された自由民主党。その結党から50周年を迎えた今年、このような最初の叩き台を提示したことは象徴的なことだと思われます。

 ただ、今の時期になって憲法の中身を慌てて総取っかえしようとするから、たまりにたまった様々な問題がゴッチャゴチャに混在してしまい、大ごととなるんです。まるで、大プロジェクトである夏休みの宿題を、ひたすら8月末日へ先送り(※後まわし)にしてきた小学生(※20年前の私)を見ているようです。

 まぁ、以下のような内容の憲法草案を出されて、左ウィングに陣どってらっしゃる方々が黙っていられるわけがありません。今後、どこまで巻き返しを図ることができるかにも注目です。来年には、民主党や公明党も草案を出したいとのことですので、「何が出るかな♪」と、お待ちしておりますよ。


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 ◆前文 ※改正
 日本国民は、自らの意思と決意に基づき、主権者として、ここに新しい憲法を制定する。
 象徴天皇制は、これを維持する。また、国民主権と民主主義、自由主義と基本的人権の尊重及び平和主義と国際協調主義の基本原則は、不変の価値として継承する。
 日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し、自由かつ公正で活力ある社会の発展と国民福祉の充実を図り、教育の振興と文化の創造及び地方自治の発展を重視する。
 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に願い、他国とともにその実現のため、協力し合う。国際社会において、価値観の多様性を認めつつ、圧政や人権侵害を根絶させるため、不断の努力を行う。
 日本国民は、自然との共生を信条に、自国のみならずかけがえのない地球の環境を守るため、力を尽くす。

 (現行:前文)
 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
 


◆第9条の2(自衛軍) 【新設】

1 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する。

2 自衛軍は、前項の規定による任務を遂行するための活動を行うにつき、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

3 自衛軍は、第1項の規定による任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。

4 前2項に定めるもののほか、自衛軍の組織及び統制に関する事項は、法律で定める。

(現行:第9条)
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 (※草案では、『9条の2』新設と矛盾しないよう、この現行9条2項が削除されています。 なお、2項冒頭の『前項の目的』が何を指すかについての解釈には、大きく2つの学説があり、自衛戦争ならば許容されるとする説は「侵略戦争を放棄する目的」であると限定して捉え、あらゆる対外戦争を放棄する説は「戦争を放棄するに至った動機」であると広く捉えています。)

(参考:自衛隊法 第7条)
 内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。

(参考:自衛隊法 第83条)
1 都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を長官又はその指定する者に要請することができる。

(参考:国際連合憲章 第51条)
 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

◆第12条(国民の責務) ※改正
 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、保持しなければならない。国民は、これを濫用してはならないのであって、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う。

(現行:憲法第12条)
 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

◆第14条(法の下の平等)※改正
1 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

(現行:第14条)
1 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 (※なお、通説では『社会的身分』を、自己の意志をもって離れることのできない固定した地位、として解釈しておりますので、現行憲法のもとでも、身体的・精神的・知能的障害がある状態を「社会的身分」に含めて捉え、国家や地方自治体が、法の下で平等に接する対象としております。)

◆第19条の2(個人情報の保護等)【新設】
1 何人も、自己に関する情報を不当に取得され、保有され、又は利用されない。
2 通信の秘密は、侵してはならない。

(参考:個人情報の保護に関する法律)
第1条(目的)
 この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。

第2条(定義)
1 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。

第3条(基本理念)
 個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきものであることにかんがみ、その適正な取扱いが図られなければならない。

第4条(国の責務)
 国は、この法律の趣旨にのっとり、個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な施策を総合的に策定し、及びこれを実施する責務を有する。

第5条(地方公共団体の責務)
 地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その地方公共団体の区域の特性に応じて、個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。


◆第20条(信教の自由)※改正

3 国及び公共団体は、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超える宗教教育その他の宗教的活動であって、宗教的意義を有し、特定の宗教に対する援助、助長若しくは促進又は圧迫若しくは干渉となるようなものを行ってはならない。

(現行:第20条)
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

◆第21条(表現の自由)※改正
1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、何人に対しても保障する。

(現行:第21条)
1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。


◆第21条の2(国政上の行為に関する説明の責務)【新設】

 国は、国政上の行為につき国民に説明する責務を負う。

(参考:行政機関の保有する情報の公開に関する法律)
第1条(目的)
 この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。

第3条(開示請求権)
 何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長(※中略)に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる。

◆第25条の2(国の環境保全の責務)【新設】
 国は、国民が良好な環境の恵沢を享受することができるようにその保全に努めなければならない。

(参考:環境基本法)
第1条(目的)
 この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。

第2条(定義)
1 この法律において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
2 この法律において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
3 この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(※中略)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(※中略)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(※中略)に係る被害が生ずることをいう。

◆第25条の3(犯罪被害者の権利)【新設】
 犯罪被害者は、その尊厳にふさわしい処遇を受ける権利を有する。

(参考:犯罪被害者等基本法)
第1条(目的)
 この法律は、犯罪被害者等のための施策に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、犯罪被害者等のための施策の基本となる事項を定めること等により、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とする。

第2条(定義)
1 この法律において「犯罪等」とは、犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。
2 この法律において「犯罪被害者等」とは、犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族をいう。

◆第29条(財産権)※改正
2 財産権の内容は、公益及び公の秩序に適合するように、法律で定める。この場合において、知的財産権については、国民の知的創造力の向上及び活力ある社会の実現に留意しなければならない。

(現行:第29条)
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

◆第44条(議員及び選挙人の資格)※改正
 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律で定める。この場合においては、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。

(現行:第44条)
 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。

 (※なお、通説では『社会的身分』を、自己の意志をもって離れることのできない固定した地位、として解釈しておりますので、現行憲法のもとでも、身体的・精神的・知能的障害がある状態を「社会的身分」に含めて捉え、議員となりうる資格につき差別的取り扱いを禁じる対象としております。)

◆第52条(常会)
2 常会の会期は、法律で定める。【新設】

 (※なお、『常会』とは、通常国会のことです。)

(参考:国会法 第10条)
 常会の会期は、150日間とする。但し、会期中に議員の任期が満限に達する場合には、その満限の日をもつて、会期は終了するものとする。

◆第54条(衆議院の解散)
1 第69条の場合その他の場合の衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する。【新設】

 (※なお、『第69条の場合』とは、衆議院が内閣不信任案を可決した場合[or信任案を否決した場合]です。)

◆第64条の2(政党)【新設】
1 国は、政党が議会制民主主義に不可欠の存在であることにかんがみ、その活動の公正の確保及びその健全な発展に努めなければならない。
2 政党の政治活動の自由は、制限してはならない。
3 前2項に定めるもののほか、政党に関する事項は、法律で定める。

(参考:政党助成法)
第1条(目的)
 この法律は、議会制民主政治における政党の機能の重要性にかんがみ、国が政党に対し政党交付金による助成を行うこととし、このために必要な政党の要件、政党の届出その他政党交付金の交付に関する手続を定めるとともに、その使途の報告その他必要な措置を講ずることにより、政党の政治活動の健全な発達の促進及びその公明と公正の確保を図り、もって民主政治の健全な発展に寄与することを目的とする。

第2条(政党の定義)
1 この法律において「政党」とは、政治団体(※中略)のうち、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
  一  当該政治団体に所属する衆議院議員又は参議院議員を5人以上有するもの
  二  前号の規定に該当する政治団体に所属していない衆議院議員又は参議院議員を有するもので、直近において行われた衆議院議員の総選挙(※中略)における小選挙区選出議員の選挙若しくは比例代表選出議員の選挙又は直近において行われた参議院議員の通常選挙(※中略)若しくは当該通常選挙の直近において行われた通常選挙における比例代表選出議員の選挙若しくは選挙区選出議員の選挙における当該政治団体の得票総数が当該選挙における有効投票の総数の100分の2以上であるもの
2 前項各号の規定は、他の政党(※中略)に所属している衆議院議員又は参議院議員が所属している政治団体については、適用しない。

◆第72条(内閣総理大臣の職務)※改正
1 内閣総理大臣は、行政各部を指揮監督し、その総合調整を行う。
2 内閣総理大臣は、内閣を代表して、議案を国会に提出し、並びに一般国務及び外交関係について国会に報告する。

(現行:第72条)
 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。

(参考:内閣法 第5条)
 内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する。

(参考:内閣法 第6条)
 内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。 

(参考:内閣法 第7条)
 主任の大臣の間における権限についての疑義は、内閣総理大臣が、閣議にかけて、これを裁定する。 

(参考:内閣法 第8条)
 内閣総理大臣は、行政各部の処分又は命令を中止せしめ、内閣の処置を待つことができる。

 
 

◆第73条(内閣の職務)

 内閣は、他の一般行政事務のほか、次に掲げる事務を行う。

  六 法律の規定に基づき、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。 ※改正

(現行:第73条)
 六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。

◆第76条(裁判所と司法権)
3 軍事に関する裁判を行うため、法律の定めるところにより、下級裁判所として、軍事裁判所を設置する。【新設】

◆第79条(最高裁判所の裁判官)
2 最高裁判所の裁判官は、その任命後、法律の定めるところにより、国民の審査を受けなければならない。※改正
3 前項の審査において罷免すべきとされた裁判官は、罷免される。

(現行:第79条[直接投票による国民審査])
2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
4 審査に関する事項は、法律でこれを定める。

◆第79条(最高裁判所の裁判官)
5 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、やむを得ない事由により法律をもって行う場合であって、裁判官の職権行使の独立を害するおそれがないときを除き、減額することができない。※改正

◆第80条(下級裁判所の裁判官)
2 前条第5項の規定は、下級裁判所の裁判官の報酬について準用する。※改正

(現行:第79条[最高裁判事の待遇保障])
6 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

(現行:第80条[下級裁判事の待遇保障])
2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

◆第83条(財政の基本原則)
2 財政の健全性の確保は、常に配慮されなければならない。【新設】

◆第86条(予算)
1 内閣は、毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その審議を受け、議決を経なければならない。
2 当該会計年度開始前に前項の議決がなかったときは、内閣は、法律の定めるところにより、同項の議決を経るまでの間、必要な支出をすることができる。【新設】
3 前項の規定による支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。【新設】

(現行:財政法 第30条)
1 内閣は、必要に応じて、一会計年度のうちの一定期間に係る暫定予算を作成し、これを国会に提出することができる。
2 暫定予算は、当該年度の予算が成立したときは、失効するものとし、暫定予算に基く支出又はこれに基く債務の負担があるときは、これを当該年度の予算に基いてなしたものとみなす。

◆第89条(公の財産の支出及び利用の制限)※改正
1 公金その他の公の財産は、第20条第3項の規定による制限を超えて、宗教的活動を行う組織又は団体の使用、便益若しくは維持のため、支出し、又はその利用に供してはならない。
2 公金その他の公の財産は、国若しくは公共団体の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対して支出し、又はその利用に供してはならない。

(現行:第89条)
 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

◆第91条の2(地方自治の本旨)【新設】
1 地方自治は、住民の参画を基本とし、住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施することを旨として行う。
2 住民は、その属する地方自治体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し、その負担を公正に分任する義務を負う。

◆第91条の3(地方自治体の種類)【新設】
1 地方自治体は、基礎地方自治体及びこれを包括し、補完する広域地方自治体とする。
(以下略 ※同2項は現行92条とほぼ同じ内容のため)

◆第92条(国及び地方自治体の相互の協力)【新設】
 国及び地方自治体は、地方自治の本旨に基づき、適切な役割分担を踏まえて、相互に協力しなければならない。

◆第94条の2(地方自治体の財務及び国の財政措置)【新設】

1 地方自治体の経費は、その分担する役割及び責任に応じ、条例の定めるところにより課する地方税のほか、当該地方自治体が自主的に使途を定めることができる財産をもってその財源に充てることを基本とする。

2 国は、地方自治の本旨及び前項の趣旨に基づき、地方自治体の行うべき役務の提供が確保されるよう、法律の定めるところにより、必要な財政上の措置を講ずる。

3 第83条第2項の規定(※財政の基本原則 前出)は、地方自治について準用する。

(参考:地方交付税法)
第1条(この法律の目的)
 この法律は、地方団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能をそこなわずに、その財源の均衡化を図り、及び地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによつて、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする。

第2条(用語の意義)
 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
  一  地方交付税  第6条の規定により算定した所得税、法人税、酒税、消費税及びたばこ税のそれぞれの一定割合の額で地方団体がひとしくその行うべき事務を遂行することができるように国が交付する税をいう。

◆第95条 削除

(現行:第95条[特別法の住民投票])
 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

◆第96条(改正)※改正
1 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議に基づき、各議院の総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票において、その過半数の賛成を必要とする。

(現行:第96条)
1 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。


そのとき自衛隊は戦えるか
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2004年11月12日 (金)

自民党が国民審査制度を廃止しようとしている

 皆さん、おひさしぶりです。ひさしぶりすぎて、私ひとりしか読者がいなくなっているのかもしれないという思いが、チラッと頭をよぎりつつも、とにかくおひさしぶりです。
 先月1日に念願の上京を果たしたわけですが、インターネットが使えない環境の中で、いろんな情報収集に数十倍ぐらいの手間がかかってしまったため、生活を軌道に乗せるのに四苦八苦しておりました。そして昨日、ようやく我が部屋にADSLが開通いたしました。わたしの新生活もちょっぴり文化的なものになったところで、このブログも更新再開というわけです。

 ご挨拶は以上で失礼させていただいて、去る6月に発表された、憲法改正の「論点整理(案)」自民党憲法調査会「憲法改正プロジェクトチーム」作成)なるものについてです。私は別に護憲論者でも何でもありませんが、今まで数ヶ月間、ロクに目を通してこなかったことを後悔してしまうほど、ツッコミどころ満載の内容に仕上がっております。まぁ、たしかに自民党も「この案をたたき台にしてくれ」ぐらいの意識で出してきているんでしょうが。

 今回は『六 司法』の章について特集してみようと思います。なお、引用文中の誤字脱字は、私が勝手に修正しました。

1 共通認識

 次の点については、異論がなかった。

○ 最高裁判所による違憲立法審査権の行使の現状には、極めて不満がある。

○ 民主的統制を確保しつつも政治部門が行う政策決定・執行に対する第三者的な立場から憲法判断をする仕組み(憲法裁判所制度、あるいは最高裁判所の改組など)について検討すべきである。

○ 裁判官の身分保障のあり方について見直すべきである。

○ 民事・刑事を問わず裁判の迅速化を図るべきである。

 おおむねその通りなんでしょうけど、司法という「第三者的な立場」による憲法判断をしづらくしているのは、政治部門の憲法解釈や運用を一手に引き受けている内閣法制局の現状にも原因がありそうです。政府が国会へ提出しようとする法案は、すべてこの内閣法制局によって点検されます。その点検があまりに微に入り細に入りという感じなので、最高裁が事後チェックする余地がないほどなんですね。立法・行政・司法の三権を実質的に掌握している、世論から浮き上がった、その選良的官僚組織を横に置いて、司法へ一生懸命民主的コントロールを向けようとしても、私には目くらましだとしか思えません。

2 改正意見

 現憲法第6章(司法)に関する改正意見は、次のとおりである。

○ 最高裁判所裁判官の国民審査の制度(現憲法79条)は廃止し、廃止後の適格性審査の制度についてはさらに検討を行うべきである。

○ 最高裁判所裁判官の任期は10年とし、再任を行わないものとする。

○ 下級裁判所の裁判官の任期は、3年を下回ってはならず、10年を超えてはならないとすべきである(再任は妨げないものとする)。

○ 一定の場合には裁判官の報酬(現憲法79条・80条)を減額することができる旨の明文規定を置くべきである。

 憲法調査会第7回会合議事録(司法について)

 いやいやいや、ちょっと待っていただきたいですね。自民党のオッサンオバサンの皆様。国民審査はたしかに形骸化・儀式化しています。衆議院総選挙の投票がようやく終わって帰ろうとしていたら、もう1枚紙を渡されて「最高裁判所の裁判官を審査しろ」なんて言われても、有権者はみんな戸惑うしかありません。司法試験受験生ですら、最高裁長官の名前だけでも挙げられたら御の字だと思います。
 読売新聞が毎年憲法記念日に作成している「読売憲法試案」でも、国民審査制度はとっくに削除されていますし、実効性には乏しいとされています。

 しかし、最初の国民審査が始まってから55年、これまで19回行われてきて、その形骸化・儀式化の現状を改善し、本気で克服しよう、息を吹き返してやろうとした動きが少しでもあったでしょうか。最高裁判決の審査資料といったら、投票日の3,4日前に各家庭のポストに届く、ペラの藁半紙1枚。あとは同じ頃、朝日・毎日・読売・東京の各新聞に各判事へのアンケート記事が申し訳程度に載せられているぐらい。判例解説も文字の羅列のみで、一般の読み手に本気で分からせようという気持ちが微塵も感じられません。
 国民審査制度が形骸化している理由は、有権者に判断能力が無いからではありません。有権者によってちゃんと判決内容を吟味できるようなシステムとして整備されてしまえば困る人たちがいるからでしょう。

 じゃあ、廃止してどうするのかというと、最高裁判事を国民が審査する代わりに、参議院に審査させようというんですから驚きです。形骸化した制度のフォローを、形骸化した組織に託そうというのは、冗談としてもイマイチでしょう。それにますます司法が政治に遠慮ないし追従して、やたらと憲法判断を回避してしまう発想を加速させるものではないですか。さらに、ただでさえ国民から遠い存在である裁判所が、世論から孤立していく方向性は不可逆的なものになることでしょう。
 なるほど、これが半世紀に1度の「司法制度改革」の顛末というわけですね。

 おそらく、このまま行けば、最高裁判事の国民審査は、次回の衆院選(たぶん2007年の夏ごろに衆参同日選として行われそうな雰囲気ですが)にともなう第20回目で最後になりそうです。私はそのときまでに、審査対象の裁判官について、私なりの審査資料を作成し、ここに分かりやすく整理・図解し、編集して公開していこうと考えています。ゆくゆくは、選挙の投票に出かける気概のある有権者の皆さんなら、誰でも一読してスッと理解できるほどの内容にまで洗練させて、できれば、出版にまで漕ぎ着けていきたいという思いもございます。そうして、国民審査をもっと緊張感あるイベントにしてみたいんです。
 なお、才口判事と津野判事に関しては、ネットや紙の上で揃う資料はほぼ集め終わりました。この点で、東京は素晴らしいですね。九州くんだりに比べれば情報が格段に集めやすいです。これからは、周辺取材から始めて、ご本人インタビューの実現に向けて準備を整えていきます。

 ちなみに、現在の最高裁判事・北川弘治氏が、12月26日に定年退官されます。また、同じく梶谷 玄氏も、来年1月14日に退官なさいます。後任の判事はだいたい1ヶ月ほど前に内定が出るようですので、両判事の後任についての報道にも、そろそろ注目していきたいところです。

 


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