斬新!? 「振り込め空き巣」という珍手口
出版取次のトーハンが運営するオンライン書店「e-hon」 28日付の総合売り上げランキングにおきまして……
「裁判官の人情お言葉集」が3位、「裁判官の爆笑お言葉集」が17位に入っております(ともに幻冬舎新書)。
ありがたい! どうもありがとうございます!
裁判員制度のシステムを解説する本は、近年たくさん出版されています。 一方で、このお言葉集シリーズを読んでいただいたからといって、同制度の全貌がわかるようになるわけではありません。
しかし、法律や裁判のことが何もわからない方でも、「人が人を裁く」という営みについて、いま一度深く考える機会にしていただける本になっていると自負しています。
裁判官の法廷における具体的な発言例を、コミカルかつシリアスに採り上げているからです。
題材が題材だけに、「コミカル」のサジ加減には苦心しましたが…。
読者層の男女比が、ほぼ同じか、むしろ女性のほうが多いといわれているのも、このシリーズの特徴です。
第2弾の「人情お言葉集」は、第1弾の「爆笑お言葉集」の弱かった要素を補強してお送りしています。
書店の棚の前で「こんな本は立ち読みで十分」と判断なさった皆さんも、一度は「人情」にも触れてみてくださいね。
さて、以下、だいぶ古いネタですので、ご存知の方も少なくないでしょうが、空気を読まずに引用してみます。
>>> 「振り込め」新手口 誘い出しそのすきに空き巣 埼玉
埼玉県警は16日、振り込め詐欺の手口で高齢者に電話で現金を用意させて呼び出し、そのすきに空き巣に入る、新手の窃盗事件が県内で14日に2件相次いだ、と発表した。県警で警戒を呼びかけている。
県警捜査3課によると、14日午前10時半~午後7時、蕨市の無職男性(80)と川口市の無職男性(81)にそれぞれ、「携帯電話番号が変わった」と、息子を名乗る男からの電話が数回入った。「息子」は「金が必要だ」などと現金200万円を用意するよう要求、その上で駅などで待ち合わせの約束をして、2人を外出させたという。
待ち合わせ場所に「息子」が現れないため2人が帰宅したところ、蕨市の男性方からは現金255万円や貴金属が入った金庫2個、川口市の男性方からは商品券や指輪など約6万8千円相当が盗まれていた。いずれも窓ガラスが工具で割られ、室内が荒らされていたという。 (2009年1月17日 asahi.com)
振り込め詐欺の手口の一部が、まだ「オレオレ詐欺」と呼ばれていた時代(仮に「振り込め第1世代」とします)、詐欺グループの連中は、どうやってターゲットを絞っていたかといえば、「タウンページから、お年寄りっぽい氏名を探し、そこに片っ端から電話をかける」という、じつに粗雑で素朴なマネでした。
しかし、犯行グループにとっては、何の事前準備も行動も必要なく、密室で実行でき、それで完結しうる「メリット」があったといえます。
電話口で「オレオレ」と言ってみても、面識なき相手には、孫娘しか、いや、孫すらいないかもしれません。都合が悪くなったら、黙って一方的に電話を切ればいいのです。対人コミュニケーションが苦手なオレオレ詐欺師にとっては、この「気軽さ」もメリットになりえました。
第1世代の手口がマスメディア等を通じて世間に浸透していくにつれ、やがて、「交通事故にあったから示談金相当額を振り込んで」という言い訳で、同じ電話に警官役や弁護士役まで登場させる「劇場型」オレオレ詐欺(第2世代)が出現します。
この段階になると、相手が息子や孫だと思い込んでいる本人にも、事前に無言電話を何度もかけ、携帯の電源を切らせておく詐欺グループが散見されました。
これは、相手がお金を振り込むにあたって、いま一度本人へ確認の電話をかけた場合、本人にその電話をとらせないようにするためです。
こうした詐欺グループは、第1代のようにアトランダムに電話をかけるのではなく、携帯ナンバーなど、「オレオレ」の隠れ蓑にする本人の個人情報をも、ある程度掌握していたのです。
そして、ATMの警備などがますます強化された昨年の後半あたりからは、振り込みを避け、郵便局の「エクスパック500」など、荷物追跡サービスのある配達手段で現金を送らせる「振り込ませない詐欺」が一部に現れました。
(※もちろん、「エクスパックで現金は送れない。現金書留でしかダメ」というのが、日本郵便の公式見解です)
では、今回の犯行は何なのでしょう。 「振り込め第4世代」なのでしょうか?
おそらく、まったく違います。
「お宅のお爺さん、交通事故に遭ったんですってね」などとウソを言い、家人を外出させ、そのすきに空き巣を働くような手口は、わりと古典的に伝わっています。
そういった、外出させるための用事をこじつける口実が「ATMでの現金振り込み」に代わっただけのことでしょう。もちろん、その口実が「振り込み」でなければならぬ必要性など皆無です。
多額の現金をおろすために、通帳や印鑑などの貴重品も持って出歩くでしょうから、むしろ空き巣をやるには不利な条件ではないかと、余計な心配をしてしまいます。
振り込め詐欺を警戒した川口市の被害者夫婦は、「現金の手渡しならいい」と応じたのですが、犯行グループは「危ないから待ち合わせ場所には持ってこないで」と仕向けた模様です。
このやりとりからして、かなり怪しげ。 犯行グループが用意していた想定問答の範囲外の答えが返ってきて、焦ったのかもしれませんね。
しかし被害者の側も、「息子」と名乗る男が真実の息子である、わずかな可能性を考え、気の毒にも出かけざるを得なかったのでしょう。
それにしても、振り込め詐欺と違って、この「振り込み空き巣」は密室だけで完結しません。 ターゲットの自宅住所や資産状況などの個人情報を調べ、付近まで赴いて、被害者が外出するまで待ち伏せまでしなければなりません。
これは非常に面倒ですし、被害者と鉢合わせするリスク、怪しまれて通報される危険すら負っています。
彼らはいったい何がしたかったんでしょう。
空き巣グループが、“流行り”の振り込め詐欺に憧れたんでしょうか?
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