2009年9月 7日 (月)

裁判員制度を輝かす 100の改善案 〔No.36-45〕

【 36 】
 傍聴席の最前列に“緩衝地帯”を設けては?

 法廷の被告人が傍聴席に飛び込んで、遺族・被害者や傍聴人を襲ったり、逆に、感情的になって行動が止められなくなった遺族・被害者が被告人に飛びかかったりする事態を防ぐため、アメリカなどの刑事法廷では、傍聴席の最前列には、あえて誰も座らせないようにする運用も行われているようです。

 ならば、凶悪事件ばかりを扱う裁判員裁判では、それだけ当事者の感情が爆発するほど膨らむ潜在的リスクがありますから、同じ運用がなされてもいいでしょうね。

 ただし、そのぶん傍聴席が減る結果となるのは、傍聴人としては厳しいですが。

 
 

【 37 】
 裏で隠れての「打ち合わせ?」疑惑問題

 裁判員裁判第1号の法廷で、初日は裁判員からの発言・質問がゼロ、2日目が1回、そして3日目になって、6人の裁判員が各1問ずつの質問を行ったと報じられました。

 「6人全員」がキレイに「1問ずつ」という点に、違和感をぬぐいきれません。

 これでは裁判長が、裁判官が行うべき質問の取捨選択をしているんじゃないかと勘ぐられても仕方がありませんよ。 当の裁判長は「痛くもない腹を探られている」と不愉快かもしれませんが。

 質問内容はプロ裁判官が統制せず、なるべく裁判員が自由に話してもらうのが、庶民感覚を借りる裁判員制度の趣旨にも合うと考えます。

 
 

【 38 】
 「わかりやすさ」のワナ

 生々しい証拠、複雑な事実関係が、CGなどを駆使してビジュアル化されています。

 ただ、「わかりやすくする」とは、「加工する」ということです。

 わかりやすくすればするほど、かえって真実から遠くなる危険が、常につきまとうことを忘れちゃなりません。

 いや、もちろん忘れてはいないと思いますが、ある証拠がどのように加工されたか、その過程は追えるように担保してもらいたいと思います。

 とことん真相を追いたいと希望する裁判員には、ナマの証拠を吟味させることも、真剣に検討していただきたいです。

 

【 39 】
 被害者参加で情緒的になりすぎないように

 

 被害者・遺族による「復讐」の権利を、いったん司法が預かり、法に基づいて客観的に裁くことにしていますが、それだけ、被害者・遺族の悲しみや怒りといった原始的な感情が封じ込められ、被告人が犯した過ちに身をもって気づかせる「感銘力」が薄れる可能性があります。

 その点で、被害者参加という制度趣旨は理解できますね。

 ときには、法廷で感情を爆発させるような場面もあるかもしれません。そうした感情の吐露も、一定程度は尊重すべきです。

 ただ、感情だけで犯罪行為を処理すればいいのなら、裁判は必要ありません。同時に冷静さも求められます。

 ブレーキ役として、裁判官や弁護士の役割も重要ですが、検察とマスメディアが、無意識にせよ被害感情をあおる側面があるので、その自制も欠かせません。

 むしろ、検察が遺族に「事実を淡々と伝えたほうが、人の心を打つ場合もあるんですよ」と説得するぐらいの、引いた立ち位置も必要でしょう。

 
 

【 40 】
 「弁護側求刑」の創設

 従来のような検察官による求刑と同時に、被害者・遺族の意見として、刑罰の希望を述べる機会が与えられるようになりました。

 ただ、弁護人は無罪でも主張しない限り、「寛大なる判決を」「執行猶予を」と述べるだけで、具体的な量刑数値については語りません。

 裁判員に、量刑目安の加減を示すべく、弁護人にも求刑意見を述べられるようにしたほうがいいでしょう。

 ただ、被告人をかばう立場である弁護人が「求刑」(刑罰を求める)というのも、若干の違和感があります。

 「弁護人の量刑意見」ぐらいの、中立的な言葉を作ってみるのもひとつの方向性です。


 

【 41 】
 傍聴券の受け渡しを防ぐ抽選の仕方は?

 多くの人々からの注目を集める裁判では、傍聴席に人が入りきれませんので、事前に整理券が配られ、のちの抽選によって人数が絞り込まれ、正式な傍聴券が配布されます。

 ただ、その抽選で当たる確率を上げるため、大量の整理券をとるだけの目的で、たくさんの臨時アルバイトを動員し、それで得た傍聴券で記者やお抱えのジャーナリストを入れたりしているんですね。

 まぁ、双方の利害は合致してますし、違法でないことは認めますが、「裁判の公開」という原則に反し、まるで金銭で傍聴券を買うようなまねをマスメディアが行うことで、裁判に興味を持った一般の方を閉め出しているのは、いかがなものでしょう。

 これは裁判員制度の問題に限らないのですが、8月3日からの第1号裁判員裁判(東京地裁)でも同様、このアルバイト動員は露骨に行われていて、一部に問題視する向きもあります。

 なお、8月10日から行われた第2号裁判員裁判(さいたま地裁)では、行列に並んで当選した本人しか傍聴券を得られないよう、「リストバンド型」の整理券が配られました。これは一歩前進といえるかもしれません。

 もっとも、整理券と傍聴券を交換した後に、傍聴人をいったん解放してしまったら意味がないわけですが。

 
 

【 42 】
 前科や余罪は、メインの事件と直接関係ないことを説明

 刑事裁判では、起訴されて「公訴事実」という枠のなかで書かれた問題を審理します。

 そのなかで、過去に被告人が行った犯罪の「前科」や「前歴」、ないし、証拠が不足するなどで起訴にまで至らなかった「余罪」は、公訴事実の枠のなかに入っていない以上、審理の対象ではありません。

 そのことは、事前にしっかり裁判員に説明しておく必要があります。

 ただし、メインの事件で、被告人が「有罪」を認めるのであれば、彼/彼女に前科前歴・余罪が存在する事実は、犯罪に染まる生活態度や性格などを示す「情状資料」として扱われる可能性があります。

 メインの事件で無罪を主張している場合には、前科前歴・余罪の存在は、判断者である裁判員に先入観や偏見をもたらすおそれがありますので、慎重に排除していく必要があるでしょう。

 
 
 
 

【 43 】
 異議が出た回答は忘れるように

 質問者が欲しがる回答へと導くかのような誘導尋問、

 同じことを表現を変えながらしつこく質問して、回答が変化していくことを期待する重複尋問(単純に、時間のムダでもありますが)、

 実際に経験・知覚したことしか話せない立場の証人に、意見を求めたり議論を持ちかけるかのような尋問、

 回答者をバカにするような侮辱的な尋問、

 ……などは禁止されています。

 わざと質問者がトラップを仕掛けている場合もあるでしょうし、うっかりやってしまう場合もあるでしょう。

 特に、被告人が無罪を主張している事件で、目撃証人や被害者証人を尋問する場合などで、問題になります。

 本来は、こうしたズルイ尋問に対して、証人が答える前に、相手方の法律家(弁護人や検察官)が異議を出すべきなのですが、そううまくいく場合ばかりとは限りません。

 ズルイ尋問に対し、証人が回答してしまったなら、判断者である裁判官や裁判員は、その回答を頭の中から消す、そうでなくても、判断の資料として使ってはいけません。

 そのことも、裁判員に説明しておく必要があるでしょう。

 裁判員の負担を取り除くことも大切ですが、裁判のルールを貫く配慮も同じように重要です。

 
 
 

【 44 】
 えぐい証拠は、強制的に見せるべきではない

 裁判員裁判では、人が亡くなったような事件を中心的に扱うものですから、被害者の遺体の状況など、非常に凄惨な証拠もあがってきます。

 ただ、そうした証拠を直視しなければ、「有罪/無罪」や「量刑」を判断できない、というケースはごく少数でしょう。

 できれば、見る勇気のある裁判員は、そういった類の証拠も見るべきですが、どうしても見られない場合は、無理強いすべきでありません。

 えぐい証拠を直視できなかった裁判員も、質問や評議など、ほかのシーンで十分に、裁判を充実させる貢献はできるはずです。

 また、凄惨な証拠を見た裁判員と、見られなかった裁判員との間で、まるで立場に差が生じるかのような空気が流れる場面も考えられます。裁判長をはじめとする職業裁判官は、そうした空気を敏感に察知し、公平に意見を述べる機会を与えることが重要でしょう。


 
 

【 45 】
 いわゆる「区分審理」について

 区分審理というのは、たとえば一連のオウム事件のように、凶悪犯罪をたくさん犯している被告人について、裁判が長引きそうな場合に、それぞれの事件を分割して審理する方法です。

 たとえば、別々のタイミングで3つの殺人事件を犯している場合は、それぞれの事件につき、裁判員を6名ずつ召集することになります。そして、各グループの裁判員は、それぞれの担当事件につき、有罪か無罪かの判断さえくだせば、任務から解放されるため、一般国民への負担が軽くなると考えられています。

 ただ、職業裁判官の3名は、殺人事件3件をすべて共通で担当しています。

 ただでさえ法律知識に差があるのに、一連の事件に関する情報量まで、総合的に大きな差が生じてしまっては、個別の事件で駆り出されてくる裁判員が、単に市民参加という外観を満たす目的だけの「お客さん」となってしまう可能性も捨てきれないのです。

 負担を軽くするだけでなく、市民参加という目標がしっかり達成されるような仕組みづくりも忘れてはならないでしょう。

 たとえば、6名の裁判員のうち3名は、比較的時間に余裕のある国民(年金生活者など)のなかから選んで、裁判官と同じように一連の事件を共通で担当させるなど、なるだけ両者が対等に議論できるような環境も、工夫して作れるかと思います。

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2009年8月16日 (日)

裁判員制度を輝かす 100の改善案 〔No.31-35〕

 インターネット放送局「ビデオニュース・ドットコム」の、大人気コンテンツ「マル激・トーク・オン・ディマンド」のゲストとして出演させていただきました!

 

 テーマは、ありがたいことに「最高裁の国民審査」!!

 ビデオジャーナリストの神保哲生さん、社会学者の宮台真司さんと共演させていただきました。 どの裁判官に「×」をつけるべきか、これからのニッポン司法はどうあるべきか、激論を交わしながらも、楽しいひとときを過ごせました。

 すべて視聴するのは有料(月500円)になりますが、ぜひご覧ください! ⇒ こちら

 

 で、明日の朝から、右下の親知らずを抜きに、歯科医院へ行きます……。

 5年前に左下の親知らずを抜いたときは、2時間ぐらいかけて、歯を3つに分割して取り除いたり、血が止まらない口を押さえながら帰りの電車の席に座っていたりと、何かと大変でした。

 明日も、ただでは済まないことが予想されます。 果たして、執筆や裁判傍聴をする余裕があるかどうか? 

 

【 31 】
 選任手続きで、年齢層や性別のバラつきを、あえて平均化させてみては?

 

 日本初の裁判員裁判(東京地裁・8月3日~6日)で、6名の裁判員の内訳は
  ・会社員の女性(50歳)
  ・ピアノ教師の女性(51歳)
  ・アルバイトの男性(61歳)
  ・栄養士の女性(41歳)
  ・契約社員の女性(38歳)
  ・会社員の男性(43歳)

 ……純粋なコンピュータ抽選らしいですから、意図的でなくていいんですが、20歳以上が裁判員の対象資格であることを考えれば、あまりにも中高年層に偏りすぎの気がします。

 ここは、テレビ業界での視聴者分析を見習ってみましょう。

 M1(20歳~34歳男性)、
 F1(20歳~34歳女性)、
 M2(35歳~49歳男性)、
 F2(35歳~49歳女性)、
 M3(50歳~男性)、
 F3(50歳~女性)。

 

 おっ、ちょうど6パターンあるじゃないですか。
 だから、それぞれの層から1名ずつ抽選で選ぶと、裁判員がもっと自然な構成になるかと思います。

 
 
 

【 32 】
 「理由無し不選任」というブラックボックス

 

 裁判員の候補者については、検察官と被告人がそれぞれ4人(+α)を上限にして、理由を示さずに、候補から外す請求をすることができます。

 理由もなしに候補から外されるというと、なんとも気分が悪い感じですが、
 あきらかにやる気がない人、
 裁判員制度に明らかに反対の人、
 暴力団組員、
 被告人と同じ団体(宗教法人など)にいたりする人

 ……などが、裁判員に任命される可能性を、穏当なかたちで排除できるフィルターとしての役割があります。

 ただ、そうした深いレベルの個人情報を扱うわけですから、それ相応の管理体制が求められます。

 また、理由無し不選任が恣意的に行われないよう、外部から弁護士資格者や、法律学の大学教授をオブザーバーとして招いて、適正な手続きの担保にする方法もありえます。

 
 

【 33 】
 「取り調べの可視化」は、最低限の要請

 

 被疑者に対する取り調べで、被疑者が答えた内容を記録した文書を「供述調書」といいます。

 刑事裁判を傍聴していると、供述調書に書かれたことなど言っていないとして、その信用性を争ったり、長期間にわたる取り調べで疲労困憊させて認めさせたりなど……

 取調室での「自白の任意性」を争う場面がみられます。

 ときには、取調室という密室で、取り調べ担当の警察官や検察官から、侮辱的な言葉を吐かれたり、暴行を受けたりしたと主張する被告人もいます。

 そういった担当取調官を法廷に呼び出して、そのときその場で何があったのかを問いただすのですが……

 

取調官は、組織に不利なことは絶対にしゃべるまいと、並々ならぬ覚悟で証言に臨んでいますので、そう簡単には口を割りません。

 しかも、供述調書は検察官や警察官といった「信頼できる公務員」が作成した文書ですから、たとえ弁護人が証拠請求に同意しなくても、ムリヤリ裁判所に提出できるという特別扱いがなされます。

 供述調書など、書面による審理はなるべく省略しようという裁判員制度の趣旨に照らせば、取り調べの様子は録画して、不正がなかったかどうか、あとで客観的・ビジュアル的に検証できるようにしておくのが、最低限の努めだろうと考えます。

 
 

【 34 】
 取調室内への弁護人の立ち会いを認めてください

 

 ハリウッド映画などでは、被疑者が取り調べを受けている横で座っている弁護人が、舌鋒するどく「異議!」などを唱えたりしておる場面を見かけますが、あんなこと、日本ではありえません。

 取り調べを牽制するため、日本の刑事事件の弁護人にできるのは……

 拘置所や警察署まで出向いて、被疑者と面接(接見)して、話を聞いたり、アドバイスしたり、取り調べの様子を日記として書き留めるよう「被疑者ノート」と呼ばれるメモ冊子を差し入れることぐらいですね。せいぜい。

 「人間的な信頼関係を築き、時間をかけてでも粘って自白を取る」ことができる刑事や検事こそ優秀だ、という考え方が、捜査機関の間で定着しています。

 

その考え方が、被疑者の周りに取調官しか頼れる者がいない状態をつくることを正当化しているように思います。

 取調官は、法律知識があり、組織力や国家権力を背後に控えさせながら、被疑者に向き合っています。そんなアンバランスな状態で、対等な人間関係が築けるという考えは、あまりにも一方的・独善的であり、残念ながら、被疑者を不安に陥れ、力づくで自白を取っている事実をぼやかす綺麗事にしか聞こえてきません。

 「自白さえ取れば、こっちのモン」という、取り調べの価値基準そのものの見直しも迫られているように思います。

 「悪いことをやっていたら、素直に認めるべきだ」というのは、被疑者自身の良心に訴えかける、道徳的・倫理的な価値観であって、「悪いことをやっていたら、客観的な証拠で立証する」という法律的な手続きとゴチャ混ぜにしたら、捜査機関の都合のいい解釈を許すだけです。両者は厳格に分けて考える必要があります。

 被疑者の供述調書をとるのは結構ですが、そのときは、弁護人の立ち会いを認めて、適正な手続きに従って供述の記録が行われているか、厳しい目が注がれる必要があります。

 取り調べの最後に「調書の内容に間違いがない」ことを示す儀式として、被疑者が署名・指印をするのですが、特にその際には、被疑者が遠慮したり、あきらめたり、疲労困憊して早く取調室から出たいあまり、あまり慎重に読みこまず、半ば投げやりに署名・指印しているケースが多々見受けられます。
 被疑者は毎日のように取り調べに遭って、孤独に戦っているわけですから、「ちゃんとチェックすべきだ」「自己責任だ」と責めるのも酷です。
 その被疑者が犯罪を犯したとして、取調室で、犯した犯罪以上の事実を認めなければならない筋合いはないわけです。

 なので、弁護人による第三者チェックも求められます。

 


【 35 】
 刑事弁護士の養成・組織化は急務ですね 


 

 3~4日間という短期間で、重大事件の判決まで至る裁判員裁判。それを前提にすれば、刑事弁護士が、いかに短く簡潔な質問で、最大の情報を証人や被告人から引き出すか、洗練された尋問術がますます重要になってくるでしょう。

 それに、検察官の質問に的確に、自信を持って「異議」を出せる、刑事弁護が得意な弁護士資格者を養成して東京・大阪だけでなく、日本全国の地方都市で活躍させる必要があります。

 個人営業やそれに準じた小規模の法律事務所では、裁判員裁判弁護での仕事量の多さが大きな負担としてのしかかります。

 ダラダラとした尋問、同じことを繰り返すしつこい尋問は、弁護人の準備不足が丸見えですが、もし、事務所が小規模ということが理由で、努力だけでは克服できないほどの仕事量を課せられているとしたら、問題は決して放置できません。

 デジタルデータを使用した冒頭陳述や最終弁論が求められますので、そうしたデータ処理に強い人材も確保する必要があります。

 きっと、刑事弁護も半ボランティアのようなかたちでやるのでなく、もっと合理化・組織化の方向へ向かうべき時代にきているのかもしれませn。

 弁護士会としても、裁判員裁判の刑事弁護を多く扱う事務所には、人材や補助金をサポートするなど、充実した裁判員制度支援を行っていただきたい。

 国選弁護の報酬額も、裁判員裁判に関しては、ある程度は上乗せすべきです。

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2009年8月 7日 (金)

裁判員制度を輝かす 100の改善案 〔No.26-30〕

 きのう、共同通信の方から、裁判員裁判の初判決に関してコメントをください、というお電話がありました。

 コメントして、今朝、各メディアへ配信されてるハズなんですけど、少なくともネット上には載ってませんね……。

 けっこう良いこと言ったつもりなのですが、私ごときのコメントでは、まだまだ力不足なんだなぁと痛感しました。

 せっかく私に目を付けていただいて、取材結果を記事に起こしてくださった記者の方に対しても、気の毒な気持ちがあります。

 今までずっと調べ、考えてきた裁判員制度について、意見を話しても、見向きもされないなんて、何が司法ライターだよ……。 自分、もっともっと精進せねば!

  

【 追記 】
 共同通信社の担当記者の方から、メールが届きまして、「コメントは、ネット上の新聞社サイトにはあまり載るものではない」との事情があるようです。 気落ちして損しました。(笑

 
 

 ◇◆◇◆◇

 
 

【 26 】
 裁判員の集中力をキープするため、こまめに休憩をはさむべき。

 

 ふつうに生活している人々は、長時間にわたって「話を聞きながら、メモを取る」という行動に慣れていません。

 なので、集中力がとぎれて大事な話を聞き逃してしまうおそれがあります。

 何かのセミナーや講義を受けているのなら、少しぐらい話を聞き逃しても、それは自分が困るだけですが、裁判は他人に大きな影響を及ぼすものですから、事情が違います。ウカウカしていられません。

 実際には、話を少しぐらい聞き逃しても、あとで映像や速記録などを見返すことができるようですが、裁判員6人それぞれが「あそこをもう一度見たい」「読み返したい」と申し出て、それにいちいち応えていたらキリがありません。

 記録は自宅に持ち帰れるわけがありませんし、裁判所の庁舎内でチェックするしかないわけです。なので、「後で証言を見返せる」といっても限界があると思います。

 

 今週の「裁判員裁判第1号」では、わりとこまめに休廷時間を入れていたようですが、これから何百件・何千件と裁判員裁判が行われていくうちに、運用が裁判長ごとにバラバラになってしまう可能性がありますから、ある程度の共通ガイドラインは必要でしょう。

 
 
 
 

【 27 】
 「被告人」「被疑者」「被害者」という、ややこしい言葉づかいは、なんとかして。

 それぞれ、同じ「ひ」が頭についた言葉で、ややこしいですよね。

 ましてや、「被告人」と「被害者」とでは、まったく立場が逆ですから、混同するのは避けたいところ。

 法律用語に比較的慣れているほうの私でも、法廷の傍聴席で聞いていて「被告人」と「被害者」が一瞬ゴッチャになる場合があります。

 ましてや、法律用語に慣れていない一般の裁判員の方は、とまどわされること必至でしょう。

 その点、マスコミ用語は賢明です。 それぞれ「被告」「容疑者」「被害者」と言い換えていますから、混同するおそれは極めて低い。

 いっそのこと、被告人を「○○さん」と呼んでしまえば、もっと混同しにくくできるでしょう。

 判決が確定するまで、被告人は無罪と推定するのがタテマエですから、「○○さん」という呼称は、そのタテマエにも沿います。

 実際、被告人を「○○さん」と呼ぶ簡易裁判所の裁判官もいます。

 ただ、凶悪事件を裁く裁判員裁判で、被告人を「○○さん」と呼ぶのは、世間からの理解を得られない可能性があります。

 ちなみに、犯罪を犯した疑いがある人物は、逮捕や検挙段階では「被疑者」と呼び、検察官に起訴された時点で「被告人」に切り替わります。

 法律上の扱いもだいぶ異なってくるのですが、それはそれとして。

 
 
 
 

【 28 】
 公判前整理手続きで外された証拠の扱い

 

 裁判員裁判が始まる前に、裁判官・検察官・弁護人の3者だけで非公開の「公判前整理手続き」が行われます。そこで、どの証拠を出して、どれを出さない、などの方針が決められますので、「整理手続きの段階で、裁判の行方が決まってしまう」とさえ言われます。

 その整理手続きの場には裁判員は加われないわけですが、どういう証拠を外したのか、裁判員にリストを見せてほしいですね。

 ある程度、審理が進んだ段階で、ある裁判員が「検察官の証拠請求から外されているようですが、この証拠を一度見ておきたい」と要求すれば、見せる。 せめて見せるかどうか検討すべきだと思います。

 そうしないと、「公判前整理手続きによって、裁判員裁判がセレモニー化・形骸化する!」という批判が、よりリアルなものになってしまいますよ。

 
 
 
 

【 29 】
 裁判員裁判の、テレビ中継を認めてください

 

 世間で注目を集める重大事件の裁判だからこそ、誰でもテレビで見られるようにすべきでしょう。 これぞ「究極の公開裁判」です。

 ただし、裁判員6名の容貌を映すのは控えるべきでしょうね。

 また、裁判をテレビで放送するのなら、NHKにすべきと考えています。 せめて、CSで「裁判専門チャンネル」を作って、そこで流すとか。

 民放で裁判中継するのは「視聴率稼ぎたいだけだろ」と、なんとなく邪推してしまいますね。

 いや、視聴率を稼ぐこと自体は結構ですが、犯罪被害者の感情を犠牲にしてまで行うべきことではありません。

 中継によって裁判がますます「ショー化」するのも見苦しいですし、「テレビに出たいから人を殺した」というヤツが出現しないとも限りません。

 過熱しすぎた報道は「歴史に名を残すには、凶悪犯罪を犯せばいい」と、一部の者に思わせてしまう元です。

 
 
 
 

【 30 】
 「陪審法」は、もう廃止でイイですよね?

 

 欧米諸国で伝統的に実施されている、一般人12人のみで有罪か無罪を決める「陪審制」。

 じつは、大正デモクラシーの一環で、戦前の日本の裁判所でも行われていました。

 しかし、陪審員12人に裁かれるか、それとも職業裁判官が裁くかを、被告人が選べるシステムになっていて、ほとんどが後者を選んでしまったらしいのです。

 日本の陪審制は次第に下火になり、昭和18年、戦争の激化などを理由に「停止」されました。

 その当時に制定された「陪審法ノ停止ニ関スル法律」の、附則3項には「陪審法ハ今次ノ戦争終了後再施行スルモノトシ其ノ期日ハ各条ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム」と書いてあります。

 陪審法は、戦争の終結を「復活」条件として、その機能を「一時停止」したにすぎないはずなのです。

 しかし、

 戦争が終わって60年以上経っても、陪審法の復活など果たされないまま、冷凍庫の奥でカチコチに凍りづけにさせられたまま、あげくのはてには陪審制と両立しえない裁判員制度が、しれっと導入されたのです。

 陪審法(大正12年4月18日法律第50号)は、停止中ながらも、いまだに有効な法律です。ついでに、「陪審法ノ停止ニ関スル法律」も、復活の条件を満たしているのに陪審法を復活させない「ウソ法律」に成り下がってしまいました。

 裁判員制度を導入する以上、これら二つの法律は廃止させるのがスジです。

 そうでないと、「日本の法体系は矛盾をきたしている」と批判されたとしても、仕方がありませんよ。

 それも決して大げさな批判ではないでしょう。

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2009年8月 5日 (水)

裁判員制度を輝かす 100の改善案 〔No.21-25〕

日経ビジネスオンライン
【日刊新書レビュー】

絶対にホームから移動してはいけない
『「この人、痴漢!」と言われたら』(中公新書ラクレ)
粟野 仁雄 著
 (評者 : 長嶺 超輝)

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090804/201706/
↑ 本日付けで一般公開です! よろしくお願いします。

 

 今朝の東京地裁、

 裁判員裁判3日目になりますが、私と友人も含め、裁判所の脇に傍聴希望者1310人が並んでいたそうです。

 きのうよりも減りましたが、あんまり変わっていないともいえます。

 で、今日の結果も例のごとく、ふたりともドボンですね……。

 

 こういう過熱気味の雰囲気は、そう長く続くはずがないので、じっとガマンすることにします。

 そのうち、裁判員裁判が珍しくなくなる時期が来るでしょうから。

 

 明日の午後から判決公判。

 いつもの裁判官3名の横に、裁判員が6名座っている違いはあるものの、やっぱり判決ですからね。

 コレばかりは今までどおり、裁判長の独壇場な気がします。

 もしかしたら、判決公判で意外なハプニングが起きるかもしれませんけどね。

 ……って、ハプニング待ちかよ。

 明日は、書きモノの仕事に専念したい気持ちがありますので、パスして、来週の「裁判員裁判第2号」に、くじ運を賭けようと思います。

 
 
 

 それでは、今日も裁判員制度にツッコミを入れ続けるマラソン企画をお送りします。
 今回は21~25個目です。

 
 

 ◇◆◇◆◇

 
 

【 21 】
 連続開廷での審理は、考え直してほしいです。

 今朝、裁判員を務めていた方が1人、3日目にして体調不良を訴えて途中辞退することになり、補充裁判員と交替になりました。

 裁判審理の過酷さとの因果関係はわかりません。

 ただ、裁判所に通って審理にあたるという、慣れない営みが「毎日」続くことは、心身に負担をきたすのは避けられないでしょう。

 また、過酷さは別に置いても、連続開廷は、決してメリットは大きくないと思います。

 職種によるでしょうが、仕事の穴を連続3日空けるより、3週にわたって週1日ずつ空けるほうが助かる社会人は多いと思うのです。

 それに、今回の第1号裁判員裁判を例にとっても、「月曜に初公判で、木曜に判決」というのは、「結論を出すのを急ぎすぎ」だと見られても仕方がないところです。

 司法のイメージがダウンこそすれ、アップするとは思えません。

 審理の間隔をギリギリまで詰めて「家族や友人に相談させず、裁判員本人の考えで決めてほしい」という意図もあるのでしょう。

 それでも、裁判員が周囲の人に意見を求めるのは、司法への市民参加制度において、あらかじめ想定の範囲内でしょう。

 守秘義務違反のペナルティも科していますから、裁判員だって何でもかんでもペラペラしゃべろうとはせず、自重します。

 それに、守秘義務違反で直ちに実害が発生するようなケースは少ないと考えられますし、プライベートのしゃべりをあまり縛るのはよろしくない。 ちょっとは裁判員の皆さんを信頼してほしいものです。

 相談する相手も「市民」なわけですし、その市民から受けたアドバイスのうち、裁判員本人がどれを拾い上げるかも、その本人の判断に含めて尊重すべきだと思います。

 
 
 

【 22 】
 だから、「週末開廷」を真剣に考えてほしいです

 これから毎年11月ごろに行われるという、「裁判員候補者名簿への登録」の際、

 

「もし、あなたが裁判員として召集されたら、土曜や日曜の参加を希望しますか? それとも、平日での参加でも構いませんか?」と、アンケートをとっておいて、その希望に叶うような選任をするほうが、世間の理解を得やすいと考えます。

 それで、あえて平日参加を受け入れた裁判員へは、支払う日当を上乗せすればいいでしょう。

 休日参加の場合は、サラリーマンやOLを中心に、比較的参加しやすいでしょうから、日当は据え置きにします。

 そのぶん、裁判官に休日出勤の手当てを支給すればいいと思います。

 
 

【 23 】
 まず、裁判員だけで話し合って、その後で裁判官と話し合うようにしてください。

 いくら、食事時間や休廷時間などで、プロ裁判官と一般裁判員が世間話などをして、互いに打ち解けたとしても、やはり評議の場では、法律知識や裁判経験の面で、力関係が違いすぎるでしょう。

 せめて、評議の前半は、立場が対等な裁判員6人だけで話し合って、どんなに初歩的な疑問でも遠慮なく意見を言い合い、勘違いや思い込みなどを修正し合いながら、裁判員だけで意見をある程度固められるように配慮してほしいです。

 そのあとで、プロ裁判官と討論を戦わせれば、より有意義な話し合いになると考えます。

 いきなり裁判官と話し合うのでは、裁判員の意見がプロに誘導される可能性が拭いきれないと危惧します。

 もちろん、裁判員制度の趣旨を理解して、意識の高い裁判官は、裁判員の意見を誘導しそうになる自分を戒めながら、うまく多様な意見を受け入れて評議を進めるでしょう。

 しかし、最終判断に至るまでの、素人のムダな思考回路や脱線など(のように見えてしまう話し合い)にガマンならない裁判官は、話し合いが面倒になって、さっさとケリをつけようと、自らの考える結論へ誘導するおそれがあります。 残念ですが。

 法廷ですら、客観性を欠いて、検察側に有利な立場を前提に質問するなど、流れを誘導する裁判官が散見されます。

 ましてや、非公開の評議室をや。 ……ということなのです。

 
 
 

【 24 】
 「裁判員+裁判官」の意見と、「裁判官のみ」の意見を、両方公開してください

 

 先ほど、「裁判員のみでの評議を前半に」と申し上げました。

 その間に、裁判官3名でも従来どおりの合議を行い、従来の基準で結論を導き出しておくのです。

 そして、判決では、裁判員と裁判官が話し合った結果と、裁判官のみの合議結果を、両方示してほしいと思います。

 

 「主文  被告人を懲役15年に処す。 (なお、職業裁判官3名の合議の結果は、懲役18年でした) 以下、理由を述べます……」

 

 ……というような、判決言い渡しイメージです。

 「導入前」「導入後」を比較する材料がないと、裁判員制度が本当に正しいものなのかどうか検証することが困難になります。

 本当に、現在の裁判員制度システムに自信があるなら、この程度の情報公開はできるはずですし、「なぜ、私たちが裁判員として参加しなければならないか」世間の理解も得やすくなると考えます。

 「導入前」「導入後」の判決内容を比較するのは、裁判員制度推進派にとってもメリットがあるといえるでしょう。

 
 
 

【 25 】
 被告人による「選択制」にしてもいいかも?

 
 

 【24】の意見を前提にして、

 判決言い渡しの前に、被告人に、「裁判員裁判で導いた主文を受け入れるか? それとも、裁判官のみで導いた主文を呑むか?」を選ばせ、被告人が選んだほうの主文に、正式な法的強制力を持たせる……という方法も考えてみました。

 裁判員制度への反対論者にも、ある程度配慮する折衷案といえるかもしれません。

 被告人の気持ちとしても、「仕方がない」と、判決を受け入れやすくなりそうです。

 ただし、この「選択制」だと、裁判員裁判がムダになるおそれがあります。

 この選択を初公判の前にさせればば、裁判官のみの裁判を被告人が選択した場合、裁判員候補者を集める必要はなくなって、ムダも解消されます。

 しかし、今度は裁判員裁判と従来の裁判での、量刑比較ができなくなり、【24】のメリットが失われます。

 難しいですね。

 また、「裁判がゲームっぽくなって、厳粛さが削がれる」という違和感から、このアイデアに反対する立場もありえます。

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2009年8月 4日 (火)

裁判員制度を輝かす 100の改善案 〔No.16-20〕

 裁判員裁判2日目、またしても見事にクジ引きを外しました。

 きのうの傍聴希望者が約2300人でしたが、今朝は9時からの抽選で小雨もパラついていたからか、だいたい1400人ぐらいでしたね。

 若干落ち着きを取り戻しつつありますが、ホンネを言えば、もうちょっと脱落者がたくさん出てきていただきたいものです。

 パラパラ小雨なんて遠慮せず、もっと派手に!

 カミナリと暴風雨で、霞が関大洪水!なんて感じになったら、さすがに傍聴希望者は激減するでしょうが、……私まで脱落してしまいそうです。

 

 ◇◆◇◆◇ 

 

【 16 】
  裁判員の使命感を醸成させるような指名方法は?

 

 単なるクジ引きで選ばれるのでは、「なぜ私が裁判員としての職務を果たなきゃいかんのか」、なかなか使命感が湧き起こりづらいように思います。

 「他の誰かでなく、この私がどうして?」と。

 クジ引きよりも手間はかかりますが、たとえば、介護疲れで母親をつい殺害してしまったという事件の場合は「被告人と同じく、親の介護をしているから」という理由で、何名かスカウトしてもいいでしょうし、
 危険運転致死の場合は「被告人と同じ車種のクルマに乗っているから」などの理由で、市民代表を選んでもいいかもしれません。

 そうなれば、自分の意見をプロの裁判官の前で述べる理由が明確になり、裁判員制度への協力を求めやすくなると思います。

 
 

【 17 】
  日当は5万円ぐらいあげていいかも?

 

 裁判員の日当は最高で1万円らしいですね。これを20倍(月間の平日日数)すれば、新人の裁判官と月額報酬と、ほぼ同じ水準になるそうです。

 ただ、忙しいところを臨時で裁判所まで呼びつけるのですから、もう少しあげてもいいでしょう。

 それが難しければ、「現金に限らない裁判員への謝礼」というかたちを考えてもよさそうです。たとえば「来年度の住民税の控除」とか「将来の年金の上乗せ」とか。

 
 

【 18 】
  あとで冤罪が判明したときは?

 
 裁判員が関わった一審段階で有罪を言いわたしたが、高裁や最高裁、あるいは再審で逆転無罪となった場合、どうするのでしょう。

 有罪を言いわたしてしまった裁判員経験者のなかには、ひとりの人生に取り返しの付かない影響を及ぼしてしまい、良心の呵責にさいなまれる方も多いだろうと思います。

 裁判所において、そのフォローはどうするつもりなのでしょうか。

 「全員で裁くのだから、必要以上に不安に思う必要はない」と、司法は裁判員制度への理解を求めていますが、
 実際に冤罪を引き起こしたとき、「裁判員は悪くない。プロの裁判官であるわれわれだけが悪かった」と、記者会見で謝罪できるわけではないでしょう。

 
 

【 19 】
  行政裁判にも、裁判員を入れてください

 

 刑事裁判だけでなく、国や地方自治体(都道府県や市町村)の政策に関する「行政裁判」も、一般庶民の関心は高く、裁判官とともに審理することも理にかなっています。

 たしかに、一般庶民の判断は、庶民に不利な政策、公金のムダ遣い政策にNoを突きつける方向に強く作用しがちで、バランスがよくないかもしれません。

 しかし、現在の行政裁判じたい、住民側の敗訴率が95%を超えていて、バランスを失しているのです。だから、それぐらい判断を逆方向へ引っぱる力が司法に入り込んでも、決してバチは当たらないと考えます。

 
 

【 20 】
  再審開始決定にも裁判員を入れてください

 
 再審開始決定は、最高裁などが言いわたして確定したはずの判決を蒸し返す「やりなおし裁判」をスタートさせる決定です。

 裁判官の先輩が導いた結論に、後輩の裁判官がNoを突きつける決定なわけで、再審開始決定にゴーサインが出ることは、なかなかないのが現状です。

 よって、この再審開始の判断にも、裁判官の間のしがらみがない一般人を関与させたほうが、事がフェアに進むのではないかと考えるのです。

 ただ、大量の証拠書類を読みこむ必要があるでしょうから、その職務に耐えられ、自分から望んで参加する庶民を、精鋭部隊として裁判員に任命する「志願制」にしてもいいでしょう。

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2009年7月24日 (金)

裁判員制度を輝かす 100の改善案 〔No.11-15〕

【11】 まず「われこそは!」という人だけが参加する、志願制にしてください。

 ここまで負担の重いことを一般国民にやらせるからには、まず、志願者に試してもらって、うまくいくのかどうか検証すべきです。それが本来のスジでしょう。

 裁判員制度って、「自分も裁判員やりたい!」と希望されることもあれば、「絶対やりたくねえ」と、強烈に拒否される場合もあります。

 もし、裁判員制度が人間だったら、かなり魅力的な人物になりそうですね。 きっとモテモテなんだろうなぁ。 いいなぁ~。

 

【12】 裁判員候補から外す必要のない職種が混ざってませんか?

 

 一般庶民の素朴な感覚を刑事裁判に取り入れるという目的からは、弁護士などの法律家や警察官を、裁判員の候補からあらかじめ外すのも、わかる気がします。

 ただ、国会議員や地方議会議員などの政治家、高級官僚、自衛官などを本当に外す必要があるのか、どうしても理解できません。

 彼らにだって、心理的・時間的負担の大きい裁判員になれるチャンスを、平等に与えるべきです。

 なお、2005年のアメリカでは、ブッシュ前大統領のもとに「あなたが陪審員の候補になりました」という通知が届いたそうです。 結局は辞退したようですが、司法が行政に対して遠慮がない、この感じはステキだなと思います。

 

【13】 候補者に、その思想や信条を尋ねるような問診は、やっても仕方ないのでは?

 「警察を信用するか?」「死刑制度に賛成か?」などは、裁判員をやりたい人は「はい」と答えるし、やりたくない人は「いいえ」と答えるもので、別にウソなんていくらでもつけるわけです。

 「国家による思想介入」なんて、デカイ話にする以前に、やっても意味がないと考えます。せいぜい、そういう心の根深い問題を把握し、候補者たちを手玉に取ったような気分にひたるための、問診票作成者の自己満足にすぎないでしょう。

 

【14】 そもそも、裁判員制度を導入する根拠がハッキリしません

 「裁判に、一般市民の感覚を取り入れる」というのも、なぜ取り入れるのか? 取り入れることによって何を実現するのか? が明かされていません。

 裁判官が市民と話し合うことで、裁判官の判断の「誤り」「思い込み」「クセ」などがあぶり出され、そうした誤りを修正・冤罪を防ぐ方向に働くよう期待しているのでしょうか。

 それとも、真実に近づく判断を期待するというより、「自分たちに近い立場の一般市民が、裁判所に関わって決めたんだから、最終判断を受け入れよう」という、世間の“納得”を期待する根拠なのか。

 ふつう、新しい制度が始まるにあたっては、どういう理由で始まるのか、なんとなくわかるものですが、これほど立法趣旨のわからない制度も珍しいです。

 

【15】 10万円の過料なんか、廃止!

 金銭的な罰則ぐらいじゃ、来ない人は来ない。

 それとも、「出頭命令に応じなかったら10万円の過料」というのは、10万円さえ払えば、裁判員候補から外してもらえるという意味なのだろうか? (※罰金と違って、過料は前科にならないため)

 そもそも、10万円の過料なんて、実際に適用できるんだろうか?

 ハッキリ言って、意味なし規定。

 むしろ、裁判員経験者の満足度を上げる方向で、力を尽くすべきだろう。 そのほうが、「自分も裁判員をやってみてもいいかな」と、国民の心を氷解させるようなPRとなりうる。

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2009年7月14日 (火)

裁判員制度を輝かす 100の改善案 〔No.06-10〕

■ 事前に、裁判の基本ルールを説明してください

 庶民の日常感覚を活かすことは大切ですが、無実の人を処罰する間違いを犯さないよう、事前に大切なルールを、裁判員に周知徹底させておくべきだと考えます。

 

【6】 裁判員には事前に「法廷に出てきた証拠だけをもとに判断する」ということを、しっかり説明してください。

 「法廷での態度が悪い」とか「反省の言葉が出ていない」などの印象から、量刑を重くすべきだ、などの意見を出すことは、自由心証主義と呼ばれるタテマエのもと、許されます。

 ただ、「なんとなく、この人が犯人のような気がする」という意見は、証拠をもとにした判断とは言いにくく、なんとかして証拠に結びつけ、「なんとなく」の中身を客観的に他人へ説明できるように整理する必要があるでしょう。

 新聞やテレビの報道は、もちろん裁判の証拠ではないので、判断の参考にはできません。 

 

【7】 裁判員には事前に「証人の証言は、人間の記憶に基づいているので、いつも正しいとは限らない」ということを、しっかり説明してください。

 誰でも実感のあることだと思いますが、記憶というものは思い込みによって、後でいくらでも変化してしまうものです。

 また、質問の仕方によっては、質問者の意図に引きずられて答えてしまう危険性があります(誘導尋問の問題)。

 特に、子どもが証人の場合は、大人が質問を投げかけること自体がプレッシャーになってしまい、質問と違う答えを言えなくなる可能性が指摘されています。

 

【8】 裁判員には事前に「有罪か無罪か、どちらかわからない場合は、無罪の意見を出す」ということを、しっかり説明してください。

 裁判員になったとき「有罪か無罪か、わからなくなった場合はどうするのか」と疑問を持っている方も、決して少なくないと思われます。

 有罪か無罪かわからないときは、無実の可能性があるわけですから、無罪にしなければなりません。 これが「推定無罪」の意味です。 誰にもぬれぎぬを着せないようにするためです。

 客観的にみたら、真犯人に無罪を言いわたしてしまう場合があるかもしれませんが、「真犯人を釈放することになっても仕方ない。無実の人を有罪にして、ぬれぎぬを着せるよりは、よっぽどマシだ」というのが、法律の発想なのです。


【9】 裁判員には事前に「疑わしきは罰せず」とは、何が疑わしいか、ということを、しっかり説明してください。

 ある新聞の投稿欄に、「『疑わしきは厳しく処罰する』という態度で、警察官は治安を守るべきだ」という内容の意見を出していましたが、これは誤解です。

 警察官は、その人(被疑者)が犯罪を犯していることが疑わしい場合に、職務質問をしたり逮捕などの強制処分を行ったりします。

 一方で「疑わしきは罰せず」という場合の「疑わしき」は、検察官の主張が疑わしいときは、無罪を言いわたさなければならないという意味です。

 それぞれ、「疑わしき」を指している主語が違うんです。 なので、両方成立しえます。

 

【10】 裁判員には、事前に「簡単だ」という説明をするだけでなく、正直に「難しい」「悩ましい」「でも、皆さんの知恵が必要」ということを、率直に伝えてほしいです。

 

 「とにかく国民が参加することに意義がある」ような言いぐさは、無責任であると考えます。

 強制的に裁判所へ呼びつける以上、せめて裁判員には使命感のような気持ちを醸成させるような説明が必要だと思います。

 今までの刑事裁判では何が不十分で、その不十分さを埋めるために、国民がどのような役割を果たすべきなのかを開示していただきたいです。

 他人にモノを頼むときは、頼み方ってモンがあろうかと考えます。

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2009年6月23日 (火)

裁判員制度を輝かす 100の改善案 〔No.01-05〕

 「100の改善案」と、大胆にぶちあげておきながら、じつは、まだ53個しか思いついていないんですが…… これから裁判員裁判の法廷を実際に傍聴したりしながら、残り47個を考えていきたいと思います。

 

【1】 対象事件を、ほぼ刑事事件全体へ広げてください。

 いま、裁判員が呼ばれる対象事件は、故意に人を死亡させているような事件を中心に、強盗傷害や通貨偽造、覚せい剤密輸など、凶悪事件が並びます。

 日常生活の中で起こった身内の殺人事件などでは、まだ「庶民感覚」も活かされるでしょうが、あんまり特殊な事件が含まれると、裁判員を入れる効き目があまりないような気もします。

 なので、窃盗や暴行、チカンなど、比較的軽い犯罪にも関与させてください。 その代わり、簡略化されたかたち(裁判官1名+裁判員4名、など)でもいいでしょう。

 
 

【2】 その代わり、対象は「否認事件だけ」にしてください。

 被告人や弁護人が、犯行を認めているような事件については、あとは情状酌量など、量刑の問題しか残っていません。

 「同情の余地があるか」「執行猶予をつけるかつけないか」という話なら、まだわかりやすいですが、「では、懲役2年にするか、3年にするか」という数値の設定になると、技術的な問題になり、なかなか一般人にとって根拠を示しづらいです。

 なので、「この人がやったのか? それとも、やったとは疑わしいか?」を問う、もっと具体的な状況判断の場面で、庶民の英知は活かされるべきと考えます。 冤罪の悲劇を少しでも減らすためにも。

 刑事裁判での有罪率99.9%という日本の現状において、裁判員は、「検察官が起訴した以上は有罪じゃないか」という先入観を抱かずに審理に臨める貴重な存在です。

 
 

【3】 候補者100人は呼びすぎ?

 100人も集めておいて、理由を公表せずに8人程度を外し、最終的にはクジで6人+補充裁判員1人だけを選ぶわけです。

 結局、残り90人あまりは、4000円程度の手当てだけ受け取って、選任されなかった理由も告げられず、午前中であっさり帰される。 それは気の毒です。

 たくさん候補者を呼んでおいて、そのなかから6人+αしか選ばないんですから、大半は無駄足になってしまいます。 皆さん、貴重な時間を費やして裁判所くんだりまで来ているわけですから、交通費を支給すれば済む問題じゃありません。

 それに、候補者をたくさん集めると、まるで、そのなかから裁判所に都合のいい人物をえり好みして裁判員に仕立て上げているような印象を与えてしまい、その点でもよろしくないです。

 皆さん忙しいのだし、呼び出す候補者は30人程度でいいのではないでしょうか。 ご検討くださいますようお願いします。

 

 

【4】 法廷に窓をつけてください。

 法廷の空気は乾きすぎていて、裁判の途中で、私はしょっちゅう咳き込んでしまい、すごく気を遣ってしまいます。

 東京地裁の402号法廷、あるいは地方都市の裁判所に出向くと、窓が付いてたりしますが、大半の法廷は、四方を壁に囲まれた異質な空間です。

 裁判所の裁きが、地に足の付いたものであるよう、太陽や風をいっぱいに取り込めるような仕組みになってほしいと願います。

 
 

【5】 法廷に、花のひとつぐらい生けてください。

 ほとんど同じ理由です。 少なくとも大都市圏の裁判所の法廷は、誰かの人生を左右する場所としては、あまりにも殺風景です。

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