2010年12月15日 (水)

取調べ可視化推進キャラ「カシカシカ」に、彼女ができた!?

((参考過去記事))
 京都弁護士会が生んだ、「地デジカ」の対抗キャラ

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 おぉ、よかったねぇ。 カシカシカ! クリスマスも寂しくなかろうて。

 可視化推進、女の子キャラの名は、「ビジカシカ」だそうです。

 「ビジュアル」とか「美人」「美女」に引っかけたんでしょうかね??

 二人ともカメラを持っていますが、クリスマスの夜はお互いの姿を撮影するんでしょうか。 楽しそうですね。

 それは公に可視化などせずに、二人だけの思い出にしていただきたいと思います。

 

 

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 きのう、京都市内で開かれた「国選弁護シンポジウム」に行ってきました。

 国選弁護人に対する報酬が少なすぎて、ヘタすれば時給換算でコンビニバイト以下になりかねないことが問題になっているのは知っていましたが、シンポジウムでは、報酬体系が複雑かつ多岐にわたっていて、わかりにくい点も紹介されていました。

 司法試験に受かった頭脳の持ち主ですら「ややこしい」と言うんですから、相当です。

 また、被告人と接見(面談)を重ねても報酬があまり加算されなかったり、保釈に成功した場合の報酬がたった1万円だったり、無罪を勝ち取った場合の成功報酬はあっても死刑回避の報酬が無かったり、さまざまな科学的鑑定の実費支給に上限額があったりと……、充実した弁護活動を進めようとする弁護士のモチベーションを削ぎ、かえってやる気をなくさせるような報酬体系も問題視されていました。

 さらに興味深かったのは、「被疑者国選弁護人」と「当番弁護士」の使い分けですね。

 かつて、私が司法試験の受験をしてたぐらいの時代まで、国選弁護人ってのは、検察に起訴されて初めて付けることができるもの(逮捕から約23日後が目安)、つまり被告人段階でしか付けられないものでした。

 その前に弁護人を付けたきゃ、自分たちの費用負担で法律事務所に連絡して依頼しろよ、という話だったのです。

 それが2006年から、勾留(逮捕から約48時間後が目安)された被疑者にも国選弁護人を付けることができるようになりました。

 
 

◆ 刑事訴訟法 第37条の2
1 死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件について被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合又は被疑者が釈放された場合は、この限りでない。
2 前項の請求は、同項に規定する事件について勾留を請求された被疑者も、これをすることができる。

◆ 刑事訴訟法 第37条の3
1 前条第1項の請求をするには、資力申告書を提出しなければならない。

 
 

 一方で、当番弁護士というのは、いわば「お試しサンプル」(失礼)みたいなもので、1回だけ弁護士が無料で駆けつけて、被疑者の話を聞いてくれるという仕組みです。 その弁護士が気に入ったら、2回目からは私選で弁護人に就いてもらって、接見に来てもらえればいいわけです。

 弁護士会のボランティアで運営されていますから、税金は投入されていません。法律上の根拠も特にありませんが、憲法で保障された弁護人依頼権を、より手厚く保障するシステムだといえます。

 そして、国の制度である国選弁護人が就くまでの時間的な空白を埋めるために、フレキシブルに弁護士会が対応できる当番弁護士を活用すればいい、という話は新鮮でしたね。

 法律の縛りがある国選弁護人と違って、弁護士会が自主的に運営している当番弁護士システムは「いつ以降でなければ受け付けない」という時間的制約がないのです。

 逮捕から48時間以内でも構いませんし、たしか逮捕されていない段階(任意同行での取り調べ)でも当番弁護士は呼べたはずです。

 

 もっとも、被疑者の求めに応じて、当番弁護士がすぐに来てくれなければ、この時間的空白は埋められませんけどね。 特に地方部では、当番弁護士が即座に駆けつける体勢づくりが難しくなっているとも聞きます。

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2010年9月16日 (木)

裁判員制度に警鐘! “直感的にわかる証拠”の罠… 『CSI効果』って何だ?

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 本日行ってまいりました。

 慶応大学のキャンパスって、たぶん初めて行きましたけど、すごいド都会の中にあるんですなー。

 海外からやってこられた講師は、ニール・ファイゲンソン教授と、ジェイヒュン・パク准教授。

 通訳抜きで全部英語で講演しますと言われ、「これはヤバイ! 慶応義塾恐るべし」と、最初は頭の中で警戒警報が鳴り響いたのですが、配付された資料の中に、お二人のなさる話の日本語訳があらかじめ入ってまして、ホッと一安心。

 それをかろうじて目で追いかけながら聞いておりました。 悲しいかな、英語は断片的にしか聞き取れませんけど。

 

 ニール・ファイゲンソン教授のお話の中では、「CSI効果」というものが印象に残りました。

 これは、アメリカの人気社会派ドラマ「CSI:科学捜査班」にちなんだもの。 日本でも放送しているテレビ局がありますので、ご存知の方も少なくないでしょう。

 犯罪事件の隠れた背景を、劇的に、科学のメスを用いてサクサクと捌いてしまう、ああいう気持ちいいドラマに慣れてしまうと……

 陪審員(日本では裁判員)の任務に就いているときにも、目で見て直感的に認識できるような、インパクトの強い映像証拠を欲しがっちゃいがちなんだと。

 また、パソコンソフトを使って綺麗に整えられたプレゼン資料が示されることを期待してしまうのだと。

 これが「CSI効果」なんだそうです。

 むしろ、そうした映像証拠、あるいはパワーポイントで編集されたビジュアル文書が提出されなければ、そのこと自体が裁判員にとってマイナス査定となり、判断に不利に作用してしまう危険があるそうです。

 

 さらに、証拠提出者の意図する方向へ(それが“わざと”か“うっかり”かはともかく)、裁判員の心理を誘導してしまう可能性も指摘されました。

 たとえば、犯行の証拠である、被害者の身体に付けられた歯形を強調するため、フォトショップのような画像編集ソフトで、立体的に浮かび上がらせたり、ノイズとなるようなシワやシミなどを消してみたり、

 本来はカラー映像なのに、あえてモノクロ映像として提示することにより、好ましくないと思われたデータを見えにくくしてみたり、 (映像の改ざんではないので、不正として異議を唱えるのが難しい)

 あるいは、これも実際にアメリカであったケースで、ある鎮痛薬のメーカーが、その薬に心臓発作を引き起こすリスクを知りながら放置して、製造・販売を続けていた法的責任をめぐり、その責任を追及する側の代理人が、最終弁論の際、そのメーカーのテレビCMを法廷で流して、陪審員の大衆心理に訴えかけたこともあったそうです。

 

 ジェイヒュン・パク准教授は、ある興味深い心理実験の成果を紹介してくださいました。

 複雑な数式が出てきて、文系の私は途端に萎えてしまいましたが(心理学もいちおう文系だけど…)、要するに、

 ○ パワーポイントを使って、数枚の単純なスライドを見せただけで、陪審員役の被験者は、その当事者に有利な判断に傾いた。

 ○ パワーポイントを使って作成した証拠の効果が、最も顕著に出るのは、そうした類の証拠を、片方の当事者だけが提出した場合であった。

 ○ ビジュアル証拠を用いない代理人は、準備不足で説得力に欠ける印象を、陪審員役の被験者に与えてしまいがち。

 ○ ビジュアル証拠として、片方がアニメーション(動画)を用い、もう片方が静止画像を用いた場合、アニメーションのほうが判断に有利に作用する傾向がある。

 私は質問をしてみました。

 「いっそのこと、ビジュアル的な証拠を裁判所が採用しない、提出を禁止する、あるいは大幅に制限することはできないのでしょうか?」と。 (もちろん日本語です。 英語の通訳が入りました)

 ファイゲンソン教授は、「イッツ・エクセレント・クエスチョン」と、気遣ってくださった上で、

 「現在のところ、どのような映像証拠を制限すべきなのか、明確なルールは整備されていません。 映像証拠にも大きなメリットがあるので、すべて禁止するのでなく、危険性とトレードオフの関係にあることを意識して扱っていくことが大切。 また、反対側の法律家が、疑わしい映像証拠に、異議を唱えて反論できる機会を保証することが重要です」と答えてくださいました。

 そして、

 さきほどの、歯形の写真をフォトショップで編集された画像をもとに、逆質問されちゃいました。

 「では、逆にあなたに尋ねます。 この映像が証拠として提出された場合、どのような影響があるでしょうか」

 わたしは突然のことに動揺しながら、ありきたりのことを答えました。

 「証拠の提出者や、一般人の判断者にとっては有用かもしれませんが、裁かれる側にとっては必ずしも良いこととはいえないのではないでしょうか」

 それを聞いて、ファイゲンソン教授は、ビミョーな表情をしていましたが、大きく外してはいなかった模様です。

 

 今日知ったことを、いろんなメディアを通じて、書いたり話したりして、皆さんにお伝えしたいと願っています。

 最近、ようやく時間に余裕ができてますので……

 ズバリ、仕事をください。(笑)

 

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2010年7月29日 (木)

しずかちゃんの入浴シーンは児童ポルノ!? 東京都条例案の反対イベントを観覧

 ちょっとご無沙汰してました。

 ここ10日ぐらい、いろんな〆切りが集中していて、テンヤワンヤでしたが、なんとか無事に山を越えることができました。

 

 今さら感のある話題ですが、先週の火曜日(20日)の19:30より開かれたイベント

月刊「創」プレゼンツ / LOFT/PLUS ONE 15th Anniversary 「非実在青少年」とは?「マンガの性表現規制問題徹底討論」

に、顔を出してきたことをご報告します。

 
 

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 お笑い好きなので、芸人のトークライブが多い「ネイキッドロフト」のほうへは何度も足を運んだことがあるんですが、ロフトプラスワンは初めて。

 ということで、ちょっと道に迷いました。 間違えて、音楽ライブハウスの「ロフト」のほうに入ってしまって、店員さんに尋ねる始末。

 このイベント、堅苦しいシンポジウムとは違って、ビールや軽食などもサービスされ(というより、必ず1品以上は注文しなきゃいけないんですが)飲み食いしながら気楽に聴けるイベントです。

 気づけば、ひとりで3800円も使ってました。 店の思うツボ……。
 

 問題の「架空キャラ児童ポルノ規制」改正案ですが、

 漫画やアニメなどで登場する18歳未満という設定の架空キャラクター(改正案では「非実在青少年」という特殊な呼び方をしています)の、

 性交や性交類似行為(フェラチオやAFなど)を「みだりに性的対象として肯定的に描写」することで「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」を、

 不健全図書(18禁)として指定できるというものです。

(改正案条文)

【業界による自主規制対象】(改正案7条2号)
 年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの(以下「非実在青少年」という。)を相手方とする又は非実在青少年による性交又は性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

【都による不健全図書指定対象】(改正案8条2号)
 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、第七条第二号に該当するもののうち、強姦等著しく社会規範に反する行為を肯定的に描写したもので、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく阻害するものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの

 

 しずかちゃんの入浴(シャワー)シーン」は、非実在青少年の性的な描写だから、ドラえもんは成人漫画になるのか? ……という疑問がよくいわれますが、

 改正案条文中の「性交又は性交類似行為に係る」という部分を強調すれば、ここでいう規制には引っかからないように読めますけどね。

 さすがに、シャワー浴びるのが性交類似行為ということにはならないでしょう。 普通に考えて。

 ただ、この世界には「拡張解釈」という(ゴリ押しにも使える)テクニックがありますので、「シャワーを浴びるのは、性交の準備を連想させるのでダメ」とかいう言い分で、規制をねじ込むことも、いちおう可能になってしまいます。


 今回のイベントの話し手ですが、以下のようなメンバー。


【出演】
山本直樹(マンガ家)
藤本由香里(明治大学准教授)
永山薫(評論家)
長岡義幸(インディペンデント記者)
谷雅志(日本雑誌協会編集倫理委員会副委員長)
西沢けいた(民主党都議)
兼光ダニエル真(翻訳家)
大野修一(『COMICリュウ』編集長)
揖斐憲(『サイゾー』編集長)、他。
【司会】
篠田博之(月刊『創』編集長)

 

 この中の長岡さんとは面識があるので、ご挨拶しようかと思ったのですが、皆さんのエロ漫画談義が白熱して、終了予定時刻より1時間以上もオーバーし、終電に間に合わなくなりそうだったので、中座しました(そもそも終了すべき時刻を過ぎてるんだから、中座とはいわないかも)。

 

◆ イベント内で、印象的だった話

 (4時間以上も観て、これだけかい……↓ と自分でも思いますが、全般的には面白かったです)

 


・ 男だけで改正案に反対していると、「自分がエロ漫画を読み続けたいだけだろ」という偏見が避けられないから、女性メンバー(特に子を持つ母親)に、反対側に加わってもらうことは重要。

・ 秋葉原などでアピールするのも大事だが、そのへんの爺さん婆さんや女子大生などに対して説得力のあることをどうやって伝えていくかが課題。

・ 「反対だ」とたくさん言えばいいってもんじゃない。相手に合わせて、反論のスキルアップをしていかなければならない。

・ 大阪府では「BL(やおい)規制」も検討されている。 東京都でも議論が始まった模様。

・ 欧米諸国では、この性的表現の類の規制は、どの出版物でも一律に行われる。 日本では、一般誌には厳しいが、専門誌(美術誌やアングラ誌など)には比較的寛容というダブルスタンダード(二枚舌の基準)がみられる。

・ 「非実在青少年」は、本来はゾーニングの問題(仮に規制が加わっても子どもに読ませないだけで、18歳以上なら問題なく読める)なのだが、未成年が登場人物のエロ漫画をそもそも取り扱わない大手書店やネット書店も多い。だとしたら表現の自由などの問題とも衝突しうる。

・ 東京弁護士会は、改正案の条文を挙げて、さまざまな問題点を指摘しているが、東京都側は「誤解がある」などと反論している。法律家が誤解するような条文というのは、いかがなものか。

・ 石原慎太郎東京都知事は、「非実在青少年」のことを「非現実青少年」と言い間違えていた。

・ 刑法学者の前田雅英教授(東京都青少年健全育成審議会委員)は、参考人聴取でため息混じりに「他の問題も、これくらい真剣に議論してくれたらいいのに」とこぼしていた。

・ アメリカの子どもにとって、アルコールを手に入れるより、規制図書や成人漫画を手に入れるほうが難しくなっている。

・ アメリカの統計によると、エロ本を読まない人に性犯罪者が多いとか!? 子どもの頃に、エロ本をたくさん読んでも、みんな立派な大人になっている。

 

◇◆ お知らせ ◆◇

 先日、詐欺被害に遭った友人ですが、警察と消費生活センターに届け出た結果、相手方弁護士を通じて、振り込んだ金はすべて返ってきたそうです。めでたしめでたし。

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2010年5月22日 (土)

元最高裁判事! 福田博弁護士の講演を聴きに渋谷へ

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 渋谷駅前の歩道橋の上から、こんな感じの光景が見えます。

 (ケータイのカメラでは、これ以上寄ると、デジタルズームに切り替わって、絵が思いっきりボヤけちゃいます。 はよ一眼レフ買えよって話ですが)

 黄色く光る看板が見えますね。

 司法試験界の元祖カリスマ講師にして、自称「憲法伝道師」、伊藤真さんが、大手資格予備校LECを飛び出し、今から15年前にゼロから立ち上げた『伊藤塾(旧:伊藤真の司法試験塾)』の総本山です。

 
 

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 私は司法試験で浪人して、博多にいた頃、この『伊藤塾』ってトコの「在宅生(通信教育)」でした。

 まだDVDが珍しかった1997年6月から、8ミリビデオの映像教材で六法を一から学び直しました(その次の年から、DVD教材になったみたいですが)。

 ホント、憲法だけで入門編と『応用マスター』『論文マスター』『択一マスター』などの基本講座、そのほか、いろんな個別講座などなどありますし、

 六法合わせたら、全部で段ボール大小50箱ぐらいテープが送られてきたんじゃないですかね。

 それから7年が経ち、

 司法試験合格を諦めて、大量に溜まった8ミリビデオテープを、この本部あてに送り返す梱包作業をしているとき、ラベルに書かれた『憲法』や『民事訴訟法』『破産法』などの文字を見ながら、いろんなことを思い出してしまいまして、その悔しさったらなかったですが、

 ……そんなつまらん話はさておき、

 この「伊藤塾」渋谷総本山の一室で、外交官から最高裁判事に就任し、現在は「西村あさひ法律事務所」で弁護士として稼働する、福田博さんの講演が実施されました。

 この講演会は、開塾以来続いている「明日の法律家講座」ってヤツで、本来は志のある塾生に向けられた企画なのですが、われわれ一般の人間も自由に観覧できることになっています。

 受付の女性に、「一般の者ですが、元塾生です」なんて、余計なことを告げ、多くの大学生や司法浪人が入り交じる、懐かしい雰囲気の中へ溶け込みます。

 

 福田さん、外交官時代は『日本の国益』を最重要視してこられたわけですが、だからといって保守的な考え方だと単純につながるわけでもなく。

 最終学歴は、なんてったって、米国イェール大学ロースクール修了ですしねぇ。 キッチリとした本場の“リーガル・マインド”ってやつをお持ち。

 最高裁時代は、国政選挙の「一票の格差」問題で、在任中に一貫して憲法違反の個別意見を出し続けた方としても知られます。

 最高裁の法廷以外の場所で、(元)最高裁判事の方をお見かけするのは初めてなのですが、福田先生は終了予定時刻より30分以上も押しながらも、熱のこもった講演をなさいました。

 テーマはでっかく『日本の民主主義』について。

 そのお言葉の中で、私の心に残ったことを、備忘録として箇条書きにしてみます。

 

■ 「一票の格差」問題について

・ 民主主義の基本原則は多数決。 しかし、まずは投票価値が平等でないと、何が多数かわからない。

・ 「衆議院は3倍まで、参議院は6倍までOK」という、最高裁の「格差論」は、まず選挙区割りありきの議論であり滑稽。 他国では、まず「投票価値の平等」から考えるので、たとえば米国では「1.08倍」以上の格差は認められない。

・ 現代の中国は共産党独裁だが、人口13億に対し、共産党員は7600万。 投票価値の格差を算出すると、約12倍。 日本の格差論を用いれば、共産党独裁だって政府の裁量権の範囲内ということで決着してしまわないか。

・ 都道府県の境界線だって、絶対のものではない。 法律上の手続きで変更できる。

・ 先日、日本国の借金が882兆円に達したというニュースが報じられた。 直接の法律論ではないが、これも投票価値の歪みが遠因にあるのではないか。

・ 投票価値の平等が損なわれたなら、司法は直ちに正すべきだ。 そのうえで選ばれた政治家が示す方針については、司法は一歩引いて謙抑的であるべきだ。

 

■ 矢口長官について

・ 第11代長官の矢口洪一さんは『(司法は)今まで二流の官庁だったものが、急速にそんな権限(※違憲審査権のこと)をもらっても、できやしないです』と発言したことがある。

・ また、『日本司法の違憲審査権は、謙抑的というより臆病なのだ』と発言したこともある。

 

■ 政治一般について

・ 特定の優秀なリーダー・カリスマに頼るのは、民主主義・代表民主制の意図するところではない。 しかし、カリスマ的リーダーの出現で、国が一気に発展するキッカケとはなりうる(マレーシア・マハティーニ首相の例など)。

・ 民主主義と平和が直結するかどうかわからないが、民主主義国同士では、武力に頼る戦争は起こりにくいのは確か。 皆で民主的な議論で平和的解決を目指すからだろう。

 

■ 外交官時代の経験について

・ 他国の外交官から『日本は一流の民主主義国ではない』といわれ、ずっと頭に残っている。

・ 米国女性初の連邦最高裁判事、オコーナーさんと、パーティでご挨拶したことがある。 私は知的な雰囲気の女性が好きなので(笑)、どんな職業なのか尋ねてみると「最高裁に勤めている」と。 何の仕事か尋ねると「判事」だというので、失礼なことをしてしまった(笑)。 オコーナー判事が京都で講演したとき、東京にいる私の所へも挨拶しに来てくれて感激した。

・ 学生時代はほとんど講義に出ず、友人としゃべってばかりいた。 しかし、米ロースクールでは、「よくこれだけ人間を勉強させるな」と思うぐらい勉強させられた。 人間にはそんな時期も必要。

・ 日本人は識字率が高いだけに、外国の本を読んで、何かわかった気になる風潮がある。 できるだけ外国に足を運ぶ機会を見いだして欲しい。

 

■ 最高裁時代の経験について

・ 最高裁判事15人は、たしかに多いが、事件数も多い。 年間2万2千件ほど。

・ そのうち、何を言いたいのか主張がよくわからない上告を『雑件』という。 言葉は悪いが事実(笑)。 これが年間5千件ぐらいある。

・ 10年もやっていたので、最後は半ば惰性でやっていたかもしれないと反省しているが、判事同士で話す機会をもてたのは有意義だった。 最高裁には非常に優秀な人々が揃っている。

・ 判決を出した後に、自分の考えが変わったということは無い。 一部、少数意見を書いたのは納得いっていないからだが(笑)、大多数の全員一致判決は、すべて納得して出している。

・ イスラエルの最高裁長官(元?)、バラク氏と話したことがある。 彼の国の憲法には『イスラエルはユダヤ人国家であり民主主義国家』だと書いてあるが、バラク長官は民主主義を貫き、パレスチナ人など外国人も助ける判決を書き続けたので、多くのユダヤ人から憎まれており、警護が強化されているらしい。

 

■ 司法・法律一般について

・ 最高裁に入りたての頃、「外交官出身の裁判官が、いい裁判官とは限らない」と、きついことを言われたことがあった(笑)。 私に言わせれば、純粋培養の裁判官が必ずしもいい裁判官とは限らない。 いろんな経験を積んだ方がいい。

・ 「視野は広く、発想は柔軟に」。 法律を勉強していると、ややもすると視野が狭くなりがちなので、意識して視野を広く持って欲しい。


■ 私の質問

Q 「最高裁判事は“多忙”だといわれますが、何が一番大変でしたか」

A 「そりゃあ、記録を読むことですね(会場笑) 平均すると1日に8件ぐらい読んだ計算になります。 速読術ってのは役に立ちますね。 これから法律家を目指す人も、スピードを上げて読んで、自分の意見をつくってほしいと思います」

 
 
 

 お知らせのコーナー 

 ● 次の木曜日(27日) 17時ごろから、TBSラジオ『荒川強啓デイキャッチ』に生出演します。 今年早くも3回目のオファーで、ありがたく思います。 しゃべるテーマは「ポエムな地方条例」について。

 ● すでに収録済みなのですが、このたび、ラジオ番組『ベストセラーズチャンネル』に出演させていただく運びとなりました。 今月末、おもに全国のミニFM局で流されます。 ネット配信は6月末ごろとのこと。
 おかげさまで「そういえば自分は昔、世間でベストセラーと呼ばれる本を書いたんだっけ?」と、遠のいた記憶を呼び起こす、いいキッカケとなりました(苦笑)。 ありがたいことに、ちまたで「説諭ブーム」を巻き起こし? 3年前にたくさんの方が読んでくださいましたよね。 今となってはいい想い出です。
 かといって、このまま一発屋で終わる気は微塵も無いけど。

  そんな拙著『裁判官の爆笑お言葉集』ですが、このたび、株式会社オトバンクのご協力で、内容の一部始終が朗読され、まもなくオーディオブック(音声データ)となります。
 オーディオブックは、視覚に障害がある方だけのモノではありませんよ。 この際、通勤電車の中で、裁判官の感動的なお言葉を聴き、泣き濡れてください、皆さん。
 なにしろ女性の読者を中心に「爆笑お言葉集を読んで、泣いちゃいました!」と、著者を戸惑わせるご感想を全国各地から頂戴した本ですし…。
 「オーディオブックだけの特典音声を入れたい」と、オトバンクさんからご提案を受けましたので、『爆笑お言葉集』を世に問うて以降の後日談も入る予定です。 これも麹町で収録済み。

 ● 「笑っていいとも!」(フジテレビ)の月曜日、『せまいハカセの発表会』コーナーに生出演させていただく(かも?)というオファーを頂戴しました。 久しぶりのテレビか?と密かに気を張ってましたが、先月にコーナー自体が終了して、残念ながら立ち消えとなりました。

 ● プレジデント誌の『世のなか法律塾』コーナー、月2回の連載を担当して、もうすぐ3年目に突入します。
 2月の明石遠征に続き、今度は大阪出張かもしれません。 インタビュー取材を申し込む弁護士さんのアポ次第ですが。
 ま、もし大阪出張となれば、スター裁判官ぞろいの大阪地裁傍聴を、ついでに決行するまでなので、ノープロブレム。

 ● 来月号の『会社法務A2Z』(第一法規)より、新連載『おもしLAW(ロー)ニュースで、世界を覗こう!』が始まります。 「お堅い法律記事の中で、のんびり息抜きとして読めるような企画を」とのことで、ありがたいことに、編集部の方が私に白羽の矢を立ててくださいました。 グサッ。(←白羽の矢が、私の頭頂部に刺さった音)
 記念すべき第1回は、インド発『結婚式で泥酔した新郎の代わりに、その弟が新婦と結婚』という珍ニュースから、インドの結婚事情やインド憲法の内容、さらにはカースト制度にまで迫る、深いのか軽いのかよくわからない記事になっています。
 挿し絵イラストが巧いですし、ページレイアウトも明るい雰囲気なので、イラストレーターやデザイナーの方々にも感謝です。
 今まさに、第3回の原稿に着手しています。

 ● 今売りの月刊「サイゾー」47ページにて、福岡の暴力団追放条例についてペラペラしゃべらせていただいた内容をまとめたインタビュー記事を掲載してくださっています。

 ● 今売りの「冤罪ファイル」110ページで、「特急あずさ冤罪事件」の再審開始請求が始まらない、その知られざる理由について、冤罪被害者ご本人や弁護団にお話を伺い、記事を書いています。 ホントは4ページの特集だったのですが、オトナの事情がいろいろいろいろありまして(笑)、1ページ構成となっています。 続きは次号に持ち越し。

 ● 今月27日(木曜)発売、人気漫才コンビ「キングコング」西野亮廣さんの小説『グッド・コマーシャル』ですが、民家に立てこもり住人を人質にとって、身代金を要求する刑事事件がテーマということもあり、私めが担当編集の方を通じて、法律的なアドバイスを2,3させていただきました。 西野さんは感激なさったそうで、あとがきに私の氏名を入れてくださってます。
 シンプルな物語なのですが、いろいろと計算されつくされていて、一方で登場人物がことごとく愛すべきマヌケキャラで面白いです。 たとえを多用し、元気になれる読後感が、芸人さんの書いた小説らしさでしょうね。

  早稲田法学部の学生で、「法律フリーペーパー」を創刊しようと計画する有志がいることを、知人から聞きつけまして。 「法学部の学生に向けて、何かメッセージになる文章を書いてほしい」と、彼に頼まれたので、先ごろ寄稿しました。 さすがに原稿料をもらう気にはなりませんでした。

 ● 「週刊新潮」で、裁判員制度1周年記念の企画が水面下で進行中です。 詳細は言えません。 誰かにマネされたらイヤなので。
 つまり、思いつきさえすれば、誰にでも書ける企画だってコトですが……。 今のところ、7月下旬ごろの発売号に掲載予定。

 ● 6月1日のNHK総合『爆笑問題のニッポンの教養』(PM10:55~)、テーマは「取調室の心理学」。 まさか、あの浜田寿美男先生?

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