2011年3月19日 (土)

私の知らない『原発裁判』の世界 【01】北青森の“世界初システム”原発

 私は決して原発推進派ではなかったのですが、「原発建設反対」や「原発差し止め」を唱える裁判に対して、ある種の偏見があったのも確かです。 ほとんど関心を寄せていませんでした。
 
 こうした裁判の原告代理人は、周辺住民の「人格権」や「環境権」など、憲法の条文や最高裁の判例でもハッキリしていない、かなり抽象度の高い基本的人権を大上段から振りおろしているように見えるため、主張の中身もボンヤリしていて、なんだか鼻につくなあと思っていたんですね。

 ましてや、動物や植物などを原告に据えて訴えるなんてマネは、法のロジックを借りて感傷的な気分をアピールするのもほどほどにしてほしいと、違和感を覚えていたものです。

 しかし、皆さんもご存じの通り、そうも言っていられない事態になっています。ただでさえ新規計画が難航してきた事業なんですし、これだけの暴逆風が吹いたなら、今後はきっとこれ以上、国内に新しく原子力発電所を建設することはできないでしょう。
 既存の原発も、国が新たな安全基準を設けて、設備を再点検・再強化してもらい、30年程度の寿命が来たら、その原子炉には順次引退してもらわなければならないと思います。

 原子力発電の燃料であるウランやプルトニウムは、火力発電の燃料である石油や石炭、天然ガスよりも、発電効率が断然いいし、二酸化炭素も出さないし、風力や太陽光などよりも安定的にエネルギーが供給される。
 なので、資源に乏しい我が国で原子力発電は、安全性と引き替えに「ベース電源」として重要な役割を果たしてきたのも確かです。今では忌み嫌われてますが、かつては敗戦からの復興、高度成長を象徴する夢のパワープラントだったのです。
 
 そんな原発を減らし、いずれ無くしたいのであれば、電力生産の視点からは「原子力に代替されうる安全でエネルギー」について、そして電力消費の立場からは「電気使用量をなるべく少なく、かつ文化的レベルも下げない生活」について、私たちは真剣に考えなくてはなりません。

 省エネルギーを「エコ」と言い換えた広告代理店のセンスには恐るべきものがありますが、もはや、エコはファッション的なものでも何でもないのです。 今週から、特に関東地方において、エコはリアル。 エコを推進しなければ、突然停電が起きるというリアリティーに裏づけられています。

 そこで、原発の建設に反対する原告は、安全性への疑問の他、どのような根拠で「原発不要」と主張しているのか。先入観を持たずに、北の事例からひとつずつ検討していくことにしました。
 情報量が膨大で整理が大変ですが、法律ライターを名乗っていた自分が恥ずかしくなるほど、原発訴訟について知らなかったことがたくさんありました。

 

【大間原子力発電所】 青森・大間町 (建設中)

 

 着工:2008年
 運用:2014年予定
 出力:138.3万kW予定 (※福島第一原発1~6号炉の、約3分の1)

 大間原子力発電所の概要 (青森県ホームページ)

 (大間町の特産品:クロマグロ・昆布)

 
 

■ 「フルMOX」という最先端方式

 
 大間原発は、現時点で、国内で認可された最後の例となっています。
 約500キロも離れた遠隔地から、東京電力の送電線を通して、首都圏の電力をまかなう計画です。 しかし、このたびの福島第一原発の事故により、今週木曜日(17日)、建設中止が決定しました。
 
 大間原発の最大の特徴は、ウランとプルトニウムの混合燃料(MOX)を、そのまんま使えるところ。こうした「プルサーマル」方式の原子炉は、福島第一原発3号炉など、他にもあるんですが、一般的なプルサーマルは、ウランとMOXを一定割合で混ぜて利用しています。
 一方、大間原発はMOXだけで発電するつもりでデザインされた、世界初の原発だそうです。
 
 ウランの燃えかす(放射性廃棄物)であるプルトニウムをリサイクルできるので、ウランを新たに輸入せずに済んで経済的だったり、やっかいな放射性廃棄物を処理する手間が省けるので、MOXの活用にはメリットがあるとされます。
 しかし、MOXのデメリットは、ウランよりも放射能が高いため、人間を含む生物にとって、さらに危険な燃料といえる点ですね。 大間原発から津軽海峡を隔てて約20キロの位置に、北海道・函館市があります。

  

■ 大間原発差し止め訴訟 (現在、一審で審理中)

 
<2008年5月>
 原子力安全保安院が、電源開発(Jパワー)に対して、大間原発の工事計画を認可。当時は2012年3月からの運用が目標とされた。

 

<2008年6月>
 大間原発訴訟の会が、設置を許可した経済産業省に異議申し立て。

 

<2010年7月>
 提訴 (函館地裁・蓮井俊治裁判長)
 
 【原告】 大間原発訴訟の会(本部・函館市)
  ↓
  ↓ 許可取り消し、建設差し止め、精神的苦痛の損害賠償510万円
  ↓
 【被告】 国・電源開発

 

<2010年12月>
 第1回口頭弁論。
 
 原告は、
  ・ MOX燃料の放射能の高さ
  ・ 津軽海峡の底に活断層がある事実

   ……を示して安全性への疑問を提示。

  ・ 周囲の海水より約7度高い排水が、毎秒91トン放出

   ……される予定であることから、生態系への影響を提示。
  
 被告である国と電源開発は、原告請求の棄却を求めた。

 
 
 <2011年3月>

 建設の中止 (∵福島第一原発事故を受けて)

 

 

(※ 次回は「福島第一原発」をめぐる裁判を探します )

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